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大島 武; 小野田 忍; 岩本 直也; 牧野 高紘; 新井 学*; 田中 保宣*
Physics and Technology of Silicon Carbide Devices, p.379 - 402, 2012/10
炭化ケイ素(SiC)半導体ダイオード及びトランジスタの放射線照射効果に関する研究について述べる。具体的には、SiC金属-酸化膜-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の線照射について、しきい値電圧及びSubthreshold領域の電流-電圧特性の変化から、デバイス特性を劣化させる要因である酸化膜の固定電荷と界面準位に関する情報を得る。また、SiCトランジスタ(MOSFET, 金属-半導体(MES)FET, 静電誘導トランジスタ(SIT))の線照射効果を従来のシリコン(Si)トランジスタと比較することでSiCデバイスの高い耐放射線性を示す。加えて、SiCダイオードへのイオン照射により発生する誘起電荷を単一イオン入射イオンビーム誘起過渡電流(TIBIC)測定の結果より明らかにし、重イオン入射の場合に見られるイオン誘起電荷の再結合といったキャリアダイナミクスについて言及する。
大島 武; 小野田 忍; 田中 保宣*; 新井 学*
Isotope News, (686), p.8 - 12, 2011/06
耐放射線性炭化ケイ素(SiC)デバイスの開発に関して、原子力機構がこれまで行ってきた研究・開発を中心にレビューする。具体的には、SiC金属-酸化膜-半導体(MOS)電界効果トランジスタ(FET),金属-半導体FET(MESFET)及び静電誘導型トランジスタ(SIT)といった、異なる構造を有するSiCトランジスタの線耐性を検討した結果について紹介する。SiC MOSFETでは、従来のシリコン(Si)MOSFETに比べて二桁高い、数MGyまでの耐放射線性を示すことを紹介する。加えて、MOSFETの耐放射線性は酸化膜の作製方法により異なり、水蒸気による酸化の方が乾燥酸素による酸化に比べて優れた耐性を示すこと、この理由が、線照射により酸化膜/半導体界面に発生する欠陥(界面準位)量が酸化方法により異なるためであることを説明する。さらに、酸化膜を有さないMESFET及びSITでは、MOSFETを超える10MGy耐性を有することを紹介する。
田中 保宣*; 小野田 忍; 高塚 章夫*; 大島 武; 八尾 勉*
Materials Science Forum, 645-648, p.941 - 944, 2010/04
炭化ケイ素(SiC)埋込みゲート静電誘導型トランジスタ(BGSIT)と一般的なシリコン(Si)金属・酸化膜・半導体トランジスタ(MOSFET)の放射線耐性を評価し、その耐放射線性の比較を行った。Si MOSFETの場合、100kGy程度と低い照射量で、オン電圧が劣化した。この原因は結晶欠陥にあると考えられる。また、閾値電圧も放射線に対して非常に敏感に応答し、正電荷捕獲と界面準位の競合の結果として劣化することがわかった。さらに、降伏電圧と漏れ電流も減少することがわかった。一方、SiC-BGSITは10MGyという高線量域まで、すべての特性が維持され、高い耐放射線性があることがわかった。
大島 武; Lee, K. K.; 石田 夕起*; 児島 一聡*; 田中 保宣*; 高橋 徹夫*; 吉川 正人; 奥村 元*; 荒井 和雄*; 神谷 富裕
Materials Science Forum, 457-460(Part2), p.1405 - 1408, 2004/06
(001)立方晶炭化ケイ素(3C-SiC)ホモエピタキシャル膜上に作製した金属-酸化膜-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の電気特性とチャンネル方向([-110]方向に垂直,水平)の関係を調べた。その結果、両方のMOSFETともにしきい値電圧は-0.5V、チャンネル移動度は215から230cm/Vsと同様であることが見いだされた。このチャンネル移動度の値はこれまでに六方晶SiCでは達成されていない優れた値である。サブシュレショールド領域でのドレイン電流の値を調べたところ、[-110]に垂直のMOSFETは10Aオーダーであるのに対し、[-110]に平行なMOSFETは10Aオーダーと二桁も高いことが明らかとなった。これは、3C-SiC基板を[-110]方向にアンジュレーションをつけたSi基板にエピタキシャル成長するが、成長後にもその際の欠陥が残留し、伝導に影響するため[-110]に沿うように電流が流れる場合はリークが大きくなるためと考えられる。
大島 武; Lee, K. K.; 石田 夕起*; 児島 一聡*; 田中 保宣*; 高橋 徹夫*; 吉川 正人; 奥村 元*; 荒井 和雄*; 神谷 富裕
Japanese Journal of Applied Physics, Part 2, 42(6B), p.L625 - L627, 2003/06
被引用回数:39 パーセンタイル:77.47(Physics, Applied)炭化ケイ素(SiC)半導体は、大電力・高周波素子への応用が期待されているが、結晶成長や素子作製技術が確立しておらず、実用化への課題となっている。特に、金属-酸化膜-半導体(MOS)電界効果トランジスタ(FET)のチャンネル移動度の向上は実用化に不可欠となっている。これまで、結晶作製技術の問題より六方晶SiCが主な研究対象であったが、近年、立方晶SiC(3C-SiC)の厚膜化が可能となり、その厚膜を基板とすることでホモエピタキシャル成長を行うことが可能となった。本研究では、化学気相法により1650Cでホモエピタキシャル成長させた立方晶SiC上にMOSFETを作製した。MOSFETのソース,ドレイン領域は800Cでのイオン注入及び1650Cで3分間のAr熱処理することで作製し、ゲート酸化膜は1100Cでの水素燃焼酸化により形成した。電気特性よりチャンネル移動度を見積もったところ260 cm/Vsという非常に優れた値が得られた。また、酸化膜耐電圧を計測したところ絶縁破壊開始電界が8.5MV/cmというほぼ理想値を得た。
T.Henkel*; 田中 保宣*; 小林 直人*; I.Koutzarov*; 奥村 元*; 吉田 貞史*; 大島 武
Mat. Res. Soc. Symp. Proc., 512, p.163 - 168, 1998/00
シリコンカーバイドへスカンジウム及びガリウムの注入を行い、ラザフォード後方散乱、ラマン分光、フォトルミネッセンスにより評価を行った。室温でガリウム注入(110/cm)を行うと、アモルファス化はしないが非常に多くの欠陥が形成される。その後熱処理により結晶は回復し始め、1630Cでの熱処理で結晶性は未注入試料まで回復することがわかった。スカンジウム注入においてもガリウムとほぼ同様の結果であった。ラマン分光の結果は、注入後TO,LOともにピークは減少したが、1500C以上の熱処理を行うと未注入試料と同程度まで回復した。電気特性については、1700C熱処理の試料についてキャリア濃度を測定したところ、ガリウム注入試料の方が、スカンジウム注入試料よりキャリア濃度が多く、アクセプタ不純物として有効であった。
木下 明将*; 田中 保宣*; 田中 知行*; 福田 憲司*; 荒井 和雄*; 大島 武; 菱木 繁臣
no journal, ,
宇宙や原子力の分野において使用される半導体デバイスは放射線に強いことが求められる。耐放射線半導体としてSiCは有力な候補として考えられており、SiCが大容量パワーデバイスとしての研究が広く行われている。SiCの耐放射線性は、その利用方法から放射線検出器としての報告が多くされているが、大容量パワーデバイスとしての耐放射線性の報告は少ない。そこで、600V耐圧のSiCショットキーバリアダイオード(SBD)を作製し、線を照射することによる電気特性の変化を測定することで耐放射線性の評価を行った。その結果、47.5Mradの線照射によって耐圧の変化は見られなかったが、ショットキー障壁高さが照射後に増加する素子とわずかに減少する素子の2グループが存在することが判明した。
田中 保宣*; 小野田 忍; 大島 武
no journal, ,
革新的な原子力制御・保全システムを構築するためには、耐熱・耐放射線性を有する半導体素子を開発する必要がある。本研究では、耐放射線性に優れた炭化ケイ素(SiC)を用い、静電誘導トランジスタ(SIT)を開発した。開発したSiCSITは、ゲート電圧が-16Vの時に、チャネルが完全にピンチオフし、その際のブロッキング電圧が1200Vであった。さらに、ゲート電圧が2.5Vの時に、オン抵抗が0.15であった。これらの値は、SiCの物理限界に極めて近い値であり、パワーデバイスとして非常に優れた特性を持つSiC-SITの開発に成功したと言える。作製したSiC-SITに加え、Si-MOSFETやSi-IGBTに対して、10MGyまで線照射試験を行った。その結果、Si-MOSFETやSi-IGBTと比較してSiC-SITは、照射前後のオン電圧及び耐圧の変化が小さく、強い放射線環境下においても、安定した動作が可能であることがわかった。
小野田 忍; 大島 武; 田中 保宣*; 高塚 章夫*; 八尾 勉*
no journal, ,
炭化ケイ素静電誘導トランジスタ(SiC SIT)、Si電界効果トランジスタ(Si MOSFET)、及びSi絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Si IGBT)に10MGyまで線を照射し、半導体素子の性能を表す指標であるオン電圧と降伏電圧の変化を調べた。その結果、SiC-SITやSi MOSFETでは、オン電圧の変化が微少であるのに対して、Si IGBTでは、数百kGy程度でもオン電圧が急激に増加することがわかった。一方、SiC-SITやSi IGBTでは、降伏電圧の変化が微少であるのに対して、Si MOSFETでは、吸収線量の増加とともに降伏電圧が低下してしまうことがわかった。オン電圧や降伏電圧が劣化する現象は、放射線環境下で使用する半導体にとって、致命的な欠点である。Si MOSFETやIGBTでは、このような致命的な電気特性の劣化が観察されたが、SiC-SITでは、10MGyという大線量の線照射後も初期特性からの大きな変動はなく安定した電気特性が得られた。以上のことから、SiC半導体の優れた耐放射線性を実証することができた。
田中 保宣*; 小野田 忍; 大島 武
no journal, ,
東日本大震災では東京電力福島第一原子力発電所(東電福島第一原発)の原子炉が壊滅的なダメージを受け、一刻も早くその作業環境が改善されることが望まれる。最近では、無人ロボットを活用したセンシングやがれき撤去作業等が試みられているが、このような無人ロボットは当然のことながら電動制御されており、そこには必ず半導体が活用されている。本研究では原子力用耐放射線性半導体デバイスの開発を目指し、半導体材料として一般的なSi(シリコン)よりも高い耐放射線性が期待できるSiC(炭化珪素)のトランジスタに対して、10MGyまでの線照射を行った。さらに、本トランジスタを回路に組み込み、直流モーターを駆動させながら、SiCトランジスタに線を照射する実験を行った。その結果、数MGyという高放射線環境下での動作を確認でき、その高い耐放射線性を実証した。