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石川 力*; 中山 勝政*; 鈴木 渓
Physical Review D, 104(9), p.094515_1 - 094515_11, 2021/11
被引用回数:4 パーセンタイル:37.94(Astronomy & Astrophysics)「ウィルソン・フェルミオン」と呼ばれる格子上のフェルミ粒子に対する近藤効果を記述する模型を構築し、様々な物理現象の予言・解明を行った。模型として、軽いウィルソン・フェルミオンと重いフェルミオンとの4点相互作用を含むカイラルGross-Neveu模型に対する平均場アプローチを用いた。結果として、ゼロ質量のウィルソン・フェルミオンからなる有限密度媒質において近藤効果が実現可能であることを示し、それに伴う近藤凝縮と軽いフェルミオン対の凝縮(スカラー凝縮)との共存相が存在可能であることを示した。このとき、スカラー凝縮が消える臨界的な化学ポテンシャルの値は近藤効果によってシフトする。さらに、負質量を持つウィルソン・フェルミオンにおいては、パリティ対称性が自発的に破れた相(Aoki phase)が生じることが知られているが、Aoki phaseが生じるパラメータ領域近傍で近藤効果も増幅されることを示した。本研究の発見は、ディラック半金属,トポロジカル絶縁体などの物質や、将来的な格子シミュレーションにおける不純物の役割を明らかにするために役立つことが期待される。
石川 力*; 中山 勝政*; 鈴木 渓
Physical Review Research (Internet), 3(2), p.023201_1 - 023201_23, 2021/06
カシミール効果は、何らかの粒子のゼロ点エネルギーが2枚の平行平板の存在によって歪められることによって生じる物理現象である。格子上の自由度においては、エネルギーと運動量の分散関係はブリルアンゾーンの範囲で周期性を持つため、それに対応してカシミール効果も変化するはずである。本研究では、ナイーブ・フェルミオン,ウィルソン・フェルミオン,(メビウス・ドメインウォール・フェルミオン定式化に基づく)オーバーラップ・フェルミオンなどの格子フェルミオン系におけるカシミール効果の性質を理論的に調べた。特に、, , 次元において周期境界条件または反周期境界条件を持つ系について系統的な解析を行った。中でも、ナイーブ・フェルミオン,負質量を持つウィルソン・フェルミオン,domain-wall heightが大きい場合のオーバーラップ・フェルミオンなどの系において、奇数格子と偶数格子の間でカシミールエネルギーの大きさが振動する現象が見られた。この振動現象は、高運動量を持つ自由度(ダブラー)の存在に起因している。このような新奇なカシミール効果は、トポロジカル絶縁体のような物性系の実験や格子シミュレーションによって将来的に検証されることが期待される。
石川 力*; 中山 勝政*; 鈴木 渓
Physics Letters B, 809, p.135713_1 - 135713_7, 2020/10
被引用回数:10 パーセンタイル:76.76(Astronomy & Astrophysics)本論文では、相互作用のない格子フェルミオンにおけるカシミールエネルギーの定義を世界で初めて提案する。我々はこの定義を用いることで、空間方向に周期境界条件や半周期境界条件が課された1+1次元時空におけるナイーブ・フェルミオン,ウィルソン・フェルミオン,(メビウス・ドメインウォール・フェルミオン定式化に基づく)オーバーラップ・フェルミオンに対するカシミール効果の性質を調べた。ナイーブ・フェルミオンにおいては、奇数個・偶数個の格子に対してカシミールエネルギーが交互に振動するという結果が得られた。ウィルソン・フェルミオンにおいては、格子サイズがの領域で、連続理論のディラック粒子におけるカシミールエネルギーとよく一致する結果が得られた。この結果は、格子シミュレーションによってカシミール効果を測定する際に、ウィルソン・フェルミオンによる格子正則化を用いることで離散化誤差をよく制御できることを意味している。さらに、(メビウス・ドメインウォール・フェルミオン定式化に基づく)オーバーラップ・フェルミオンはトポロジカル絶縁体の表面モードに対応しており、様々なモデルパラメータ依存性も調べた。これらの発見は、対応する格子構造を持つ物性系や、格子上の数値シミュレーションによっても検証されることが期待される。
石川 力*; 中山 勝政*; 末永 大輝*; 鈴木 渓
Physical Review D, 100(3), p.034016_1 - 034016_14, 2019/08
被引用回数:5 パーセンタイル:31.16(Astronomy & Astrophysics)本論文では、ゼロ温度および有限温度におけるカイラル対称性の自発的破れに対する有限体積効果を検証するために、中間子がプローブとして役立つことを示した。まず、2+1フレーバーの構成子クォークを含む線形シグマ模型を用いることで、平均場に対するCasimir効果を解析した。この解析では、反周期境界条件でカイラル対称性が回復し、周期境界条件で対称性の破れが増幅するという結果が得られた。さらに、有限温度・体積平面における平均場の相図を示した。中間子に対しては、カイラルパートナー構造に基づく有効模型を構築した。ここで、中間子質量の体積依存性は、平均場によって与えられる。中間子は平均場を含むため、中間子と比べて体積変化に対する応答が鈍いことが判明した。高温・周期境界条件においては、中間子の質量シフトに異常が見られることを発見し、この振る舞いは将来の格子QCDシミュレーションによる検証で役立つことが期待される。さらに、コンパクト化空間次元の数の依存性も調べた。
岩瀬 彰宏*; 知見 康弘; 石川 法人; 中谷 力造*; 加藤 雄三郎*; 福住 正文*; 土田 秀次*; 馬場 祐治
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 245(1), p.141 - 144, 2006/04
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Instruments & Instrumentation)高エネルギーイオン照射下でのPd-Si系におけるPd中のSi原子の拡散について、放射光X線光電子分光法を用いて調べた。試料は、Si単結晶上にPdを堆積させて作製した。Pd層の厚さは10-300nmであった。照射前には、Pdのみの光電子スペクトルが観測され、Siは全く観測されなかった。3MeV Si, 1MeV O又は200MeV Xeイオンを照射すると、バルクSiの1s電子の結合エネルギーより約3eV高いところに付加的な光電子スペクトルの成分が現れた。この結果は、高エネルギーイオン照射によってSi-Pd界面からPd層表面までのSi原子の拡散が誘起されたことを示唆している。結合エネルギーのシフトは、SiからPdへの電子の移動に起因していると解釈される。イオン照射誘起拡散を反映した光電子スペクトルのイオン種及びイオン照射量依存性について議論する。
石川 寛匡*; 鈴木 祥子*; 吉河 朗*; 大矢 恭久*; 奥野 健二*; 落合 謙太郎; 今野 力; 藤井 俊行*; 山名 元*
no journal, ,
核融合増殖ブランケット増殖材に14MeVの中性子が照射され、その際に生成する照射欠陥がトリチウムの放出挙動に影響を及ぼすことが考えられる。本研究では候補材料の一つであるアルミン酸リチウム(LiAlO)の14MeV中性子照射と熱中性子照射を実施し、電子スピン共鳴(ESR)法を用いて、LiAl O中に生成した照射欠陥の熱アニーリング挙動について比較検討した。ESRスペクトル測定結果から、両照射試料には酸素空孔に電子が1つ捕捉された状態であるFセンターを含む種々の照射欠陥を形成し、照射欠陥の消滅過程には速い過程と遅い過程の2つの過程が存在することがわかった。また、遅い過程における14MeV中性子及び熱中性子照射試料の活性化エネルギーはそれぞれ、0.64eV, 1.1eVとなることから、酸素が酸素空孔に回復する過程が両中性子照射試料間で異なることを示唆する結果を得た。
鈴木 渓; 石川 力*; 中山 勝政*; 末永 大輝*
no journal, ,
D中間子はカイラル凝縮に対するシンプルなプローブであることが期待される。QCD真空においてCasimir効果を考えるとき、QCD真空の非摂動的性質は系の体積や境界条件に伴い変化する。本講演では、Casimir効果によるカイラル対称性の自発的破れの変化と、それに対するD中間子の応答に着目し、カイラルパートナー構造に基づく有効ラグランジアンを用いることで、体積・境界条件・温度依存性や格子QCDシミュレーションへの応用などについて議論を行う。
石川 力*; 中山 勝政*; 鈴木 渓
no journal, ,
本講演では、相互作用のない格子フェルミオンにおけるカシミールエネルギーの定義を提案する。我々はこの定義を用いることで、空間方向に周期境界条件や半周期境界条件が課された次元時空におけるナイーブ・フェルミオン,ウィルソン・フェルミオン,(メビウス・ドメインウォール・フェルミオン定式化に基づく)オーバーラップ・フェルミオンに対するカシミール効果の性質を調べた。ナイーブ・フェルミオンにおいては、奇数個・偶数個の格子に対してカシミールエネルギーが交互に振動するという結果が得られた。ウィルソン・フェルミオンにおいては、格子サイズがの領域で、連続理論のディラック粒子におけるカシミールエネルギーとよく一致する結果が得られた。この結果は、格子シミュレーションによってカシミール効果を測定する際に、ウィルソン・フェルミオンによる格子正則化を用いることで離散化誤差をよく制御できることを意味している。さらに、(メビウス・ドメインウォール・フェルミオン定式化に基づく)オーバーラップ・フェルミオンはトポロジカル絶縁体の表面モードに対応しており、様々なモデルパラメータ依存性も調べた。これらの発見は、対応する格子構造を持つ物性系や、格子上の数値シミュレーションによっても検証されることが期待される。
石川 力*; 中山 勝政*; 鈴木 渓
no journal, ,
従来から知られている近藤効果は、金属中の伝導電子と局在不純物間の相互作用によって生じる量子現象である。近年では、ディラック半金属やトポロジカル絶縁体,高密度クォーク物質のような「相対論的」フェルミオンを含む系における近藤効果も注目されている。特に、2013年に初めて予言されたQCD近藤効果は、有限密度クォーク物質中の不純物(ヘビー)クォークによって誘起されることが期待される現象である。しかし、QCD近藤効果が量子色力学(QCD)のどのパラメータ領域で実現するのか、さらに格子QCDシミュレーションによってどのように検証され得るかはまだ明らかでなく、将来的な課題となっている。本講演では、赤外領域でディラック粒子として振る舞う格子フェルミオンの一例としてウィルソン・フェルミオンに注目し、有効模型を用いて近藤効果が生じることを示す。さらに、格子系に特有の性質、他の非摂動効果との競合現象、格子シミュレーションへの実装における問題点などを議論する。