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石川 法人; 福田 将眞; 中嶋 徹; 小河 浩晃; 藤村 由希; 田口 富嗣*
Materials, 17(3), p.547_1 - 547_21, 2024/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0.04(Chemistry, Physical)340-MeV Auイオンビームを照射した天然ジルコニアにおいて形成されたイオントラックとナノヒロックを透過型電子顕微鏡で微細観察した。ナノヒロックの寸法が10nm程度であり、局所溶融した領域の寸法と同程度であることが分かった。したがって、一旦溶融した結果としてイオントラックとナノヒロックが形成されたことが分かる。次に、イオントラックを観察すると長方形の断面形状をしており、かつ結晶構造が大きく溶融前と変化していないことが分かった。したがって、他のセラミックスと異なり、ジルコニアにおいては、局所溶融後に、結晶構造を反映した異方的な再結晶化が起きていることが強く示唆される。一方で、イオントラックの中心部には、飛跡に沿った低密度のコア領域が形成されており、イオンビームが入射した表面への物質移動により物質欠損が形成されていることも判明した。物質欠損を伴う条件では再結晶化が不十分となり、飛跡のごく近くでは低密度コア領域が形成されていると説明できる。
石川 法人; 藤村 由希; 近藤 啓悦; Szabo, G. L.*; Wilhelm, R. A.*; 小河 浩晃; 田口 富嗣*
Nanotechnology, 33(23), p.235303_1 - 235303_10, 2022/06
被引用回数:4 パーセンタイル:48.5(Nanoscience & Nanotechnology)高速重イオンを微小入射角で照射したNb添加SrTiOの表面ナノ構造を調べた成果についてまとめた。セラミックスに対して高速重イオンを微小入射角で照射すると、ヒロックチェーン(イオンの飛跡に沿って、複数個並んで形成されるナノヒロック)が表面付近に形成されることが知られている。我々は、ヒロックチェーンの形態・性状をAFM(原子間力顕微鏡)とSEM(走査型電子顕微鏡)を利用して、詳細に調べた。その際に、全く同じヒロックチェーンを、AFMとSEMのそれぞれで観察することに成功した。AFMの観察データは、先行研究の示す通りに、ヒロックチェーンが形成されていることを示している一方で、SEMの観察データは(同じヒロックチェーンを観察しているにもかかわらず)ヒロックチェーンをつなぐ黒い線状コントラストも現れることが判明した。これらの新しい損傷データをもとに、ヒロックチェーンの形成メカニズムについて推論した。さらにTEM(透過型電子顕微鏡)観察し、微小入射角で照射した際に形成される特殊なイオントラック損傷の形成プロセスを明らかにした。
末吉 哲郎*; 榎畑 龍星*; 日高 優夏*; 入江 将大*; 藤吉 孝則*; 奥野 泰希*; 石川 法人
Physica C, 582, p.1353824_1 - 1353824_5, 2021/03
被引用回数:1 パーセンタイル:7.92(Physics, Applied)高温超電導体YBaCuOyにおいて、イオン照射法を利用して三次元に配置された柱状欠陥を導入した。その際に、柱状欠陥の導入角度 (=45, 60, 80)を変化させたときの臨界電流密度の磁場角度依存性を系統的に調べた。その結果、が大きい時には、磁場角度にピークが現れるものの、全体の大きな向上が見られなかった。柱状欠陥の導入角度が大きい場合には、磁束線のチャネルフローの影響が大きく、Jc向上につながりにくい、と説明できる。一方で、が小さい時には、広い磁場角度領域にわたって顕著なの上昇が見られた。
奥野 泰希*; 石川 法人; 秋吉 優史*; 安藤 太一*; 春元 雅貴*; 今泉 充*
Japanese Journal of Applied Physics, 59(7), p.074001_1 - 074001_7, 2020/07
被引用回数:3 パーセンタイル:19.49(Physics, Applied)AlInGaP太陽電池における低エネルギー電子線照射環境における照射損傷を予測する際には変位損傷量法が用いられるが、原子変位しきい値エネルギーの設定によって予測値が大きく異なってしまう。したがって、妥当な原子変位しきい値エネルギーを設定することが不可欠である。本研究では、60keV電子線をAlInGaP太陽電池に照射し、P原子の原子変位しきい値エネルギーを正確に導出した。さらに、本研究で得られた原子変位しきい値エネルギーを利用して、太陽電池の性能劣化を予測できることも実験的に立証した。
片岡 憲昭*; 中嶌 純也; 三輪 一爾; 廣田 誠子*; 坪田 陽一; 山田 椋平; 藤通 有希*; 石川 純也*; 砂押 正章*
保健物理(インターネット), 54(2), p.140 - 145, 2019/06
2018年12月1日に日本保健物理学会若手研究会と若手放射線生物学研究会が開催した合同勉強会(東京大学本郷キャンパス)について報告するものである。
喜多村 茜; 石川 法人; 近藤 啓悦; 藤村 由希; 山本 春也*; 八巻 徹也*
Transactions of the Materials Research Society of Japan, 44(3), p.85 - 88, 2019/06
高速重イオンがセラミックスに真上から入射すると、イオン一つに対してヒロック(ナノメートルサイズの隆起物)が一つ表面に形成される。一方で近年、SHIがチタン酸ストロンチウム(SrTiO)や酸化チタン(TiO)の表面をかするように入射した場合、表面にはイオンの飛跡に沿って連続的に複数個のヒロックが形成されると報告された。これらは原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察されており、観察結果にはAFMのプローブ寸法由来の測定誤差を含んでいる。そこで本研究では、ヒロックのサイズより十分小さい分解能(1.5nm)を有し、非接触で観察可能な電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて連続ヒロックを観察し、形状の違いを検討した。SrTiOはNbを添加することで電気伝導性が発現する。SrTiO(100)とNbを0.05wt%添加した単結晶SrTiO(100)に対し、350MeVのAuビームを、単結晶表面に対するイオンの入射角が2度以下となるよう照射した。照射後のFE-SEM観察によって、SrTiO(100)表面には長さ数百nmにわたって直径20nmのヒロックが連続的に形成されていた一方で、Nbを添加したSrTiO(100)表面では、ほぼ同じ長さで凹状に溝が形成されていることがわかった。これらの形状の違いは電気伝導性とそれによる熱伝導性の違いが起因し、イオントラックの温度が融点付近になるSrTiO(100)ではヒロックが、昇華温度にまで上昇するNb添加SrTiO(100)では溝ができると考えられる。
中島 健次; 川北 至信; 伊藤 晋一*; 阿部 淳*; 相澤 一也; 青木 裕之; 遠藤 仁*; 藤田 全基*; 舟越 賢一*; Gong, W.*; et al.
Quantum Beam Science (Internet), 1(3), p.9_1 - 9_59, 2017/12
J-PARC物質・生命科学実験施設の中性子実験装置についてのレビューである。物質・生命科学実験施設には23の中性子ビームポートがあり21台の装置が設置されている。それらは、J-PARCの高性能な中性子源と最新の技術を組み合わせた世界屈指の実験装置群である。このレビューでは、装置性能や典型的な成果等について概観する。
山根 祐一; 天野 祐希; 田代 信介; 阿部 仁; 内山 軍蔵; 吉田 一雄; 石川 淳
Journal of Nuclear Science and Technology, 53(6), p.783 - 789, 2016/06
被引用回数:5 パーセンタイル:43.41(Nuclear Science & Technology)高レベル放射性廃液(HALW)から放出される放射性物質の放出挙動について、沸騰事故条件での実験研究を行った。実験室規模の再処理で得られたHALWを用いた実験で、Ru, Tc, Cs, Sr, Nd, Mo, RhなどのFP核種とCm及びAmなどのアクチニドの放出割合を測定した。結果として、Ruの放出割合は0.20、FP核種やアクチニドの放出割合は1であった。Ruは気相中にミスト及びガスとして放出された。Ruの放出量の、試料溶液中のRuの初期濃度に対する依存性は弱かった。FP核種とアクチニドは非揮発性で、気相中にミストとして放出された。その放出量は、試料溶液中の初期濃度が大きいほど多かった。Ruの放出割合とNOx濃度は試料溶液の温度の上昇に合わせて増加した。RuとNOxの多くは200から300Cの間の、互いにほぼ同じ温度において放出された。ミストその他の粒子状物質の粒径分布を測定したところ、150C以下と200C以上で、互いに異なった分布が得られた。
内山 軍蔵; 田代 信介; 天野 祐希; 阿部 仁; 山根 祐一; 吉田 一雄; 石川 淳
Proceedings of 21st International Conference & Exhibition; Nuclear Fuel Cycle for a Low-Carbon Future (GLOBAL 2015) (USB Flash Drive), p.1056 - 1063, 2015/09
再処理施設高レベル廃液の沸騰事故時における放射性物質の放出量評価データ取得に関する実験研究を行っている。本研究では、コールド基礎実験、コールド工学実験及びホット実験を行っている。これまでの実験の結果、高レベル模擬廃液の沸騰事故条件ではRu及びTcは揮発性を有し、ガス状及びミスト状で放出され、その他のFP元素は非揮発性であり、ミスト状で放出されることがわかった。高レベル摸擬廃液からの非揮発性FP元素の放出率は、10程度であった。Amなどのアクチニド元素の放出率は、非揮発性FP元素とほぼ同程度であった。
天野 祐希; 渡邉 浩二; 田代 信介; 山根 祐一; 石川 淳; 吉田 一雄; 内山 軍蔵; 阿部 仁
日本原子力学会和文論文誌, 14(2), p.86 - 94, 2015/06
再処理施設における高レベル濃縮廃液(HALW)の蒸発乾固事故により放射性物質が放出されるおそれがある。特に、揮発性の高いルテニウム(Ru)はHALW貯槽から外部へ放出される可能性がある。また、放射性物質の放出とともに、HALW中の硝酸塩の熱分解によって窒素酸化物(NOx)も発生する。発生したNOxは揮発性Ruの放出に対する物理的な駆動力として作用するだけでなく、揮発性Ruとの酸化還元反応による揮発性Ruの分解及び生成に影響を与える可能性もある。本研究では、600Cまで模擬廃液を加熱し、NOxの発生に関するデータを取得した。模擬廃液乾固物からのNOxの発生は、200C以上で顕著となり約600Cまで継続し、約340C付近で最大となることが分かった。さらに、各ランタノイド元素の硝酸塩は模擬廃液中の様にそれらが共存する場合にはほぼ同じ温度にて同時に熱分解を生じること、Ruの硝酸塩が熱分解することで生じるRu酸化物はランタノイド元素の硝酸塩の熱分解温度を低温側に遷移させることを示唆する結果を得た。
内山 軍蔵; 田代 信介; 天野 祐希; 阿部 仁; 山根 祐一; 吉田 一雄; 石川 淳
Proceedings of International Waste Management Symposia 2014 (WM2014) (Internet), 9 Pages, 2014/05
再処理施設高レベル廃液の沸騰事故時における放射性物質の放出量評価データ取得試験研究を行っている。これまでの試験の結果、非放射性模擬廃液を用いたコールド基礎試験では、様々な試験条件における放出挙動データを取得し、Ruは揮発性を有し、ガス状及びミスト状で放出され、その他のFP元素は非揮発性であり、ミスト状で放出されることを示した。コールド工学試験では、FP元素の放出に及ぼす廃液貯槽の空間的な影響データを取得し、気相に放出された非揮発性FP元素の大部分は廃液貯槽内壁に付着することを示した。放射性廃液を用いたホット試験では、放射性物質の放出挙動データを取得し、コールド基礎試験の結果とほぼ同程度の放出割合であるこことを示した。
天野 祐希; 渡邉 浩二; 阿部 仁; 石川 淳; 田代 信介; 山根 祐一; 内山 軍蔵
no journal, ,
再処理廃液に含まれる硝酸塩の示差熱熱重量分析(TG-DTA)を行うとともに、速度論的解析を行うことで硝酸塩の熱分解反応の反応速度定数を得た。得られた定数を用いて計算したTG-DTA曲線と実測値を比較し、定数の妥当性を評価した。
天野 祐希; 渡邉 浩二; 石川 淳; 田代 信介; 阿部 仁; 山根 祐一; 吉田 一雄; 内山 軍蔵
no journal, ,
高レベル濃縮廃液に含まれる代表的な元素の硝酸塩の熱分解特性データを組合せることで、同廃液乾固物の熱分解挙動及びNOx発生速度の計算による再現を試みた。熱分解に伴う質量減少挙動については試験結果と同様の傾向を再現できたが、NOx発生挙動については試験結果を再現できなかった。その原因は、複数の金属硝酸塩の共存により脱硝反応後に複酸化物が生成されているためと考えられる。
田代 信介; 松本 哲也; 片岡 修; 天野 祐希; 阿部 仁; 山根 祐一; 吉田 一雄; 石川 淳; 内山 軍蔵; 上田 吉徳*; et al.
no journal, ,
高レベル濃縮廃液が設計上の想定を超えて、沸騰して乾固状態に至る過程までの放射性物質の放出挙動にかかわるデータを小規模のコールド試験により測定した。高レベル濃縮廃液を模擬して27元素を硝酸溶液に溶解させて酸濃度を2Mとした試料を掃気しながら300Cまで加熱した。試料から気相に移行した水蒸気,ガス状,エアロゾル状物質を凝縮器,エアフィルター,ガス吸収瓶で捕集し、ICP-MSを用いて各試料中の模擬FP元素量を定量した。その結果、沸騰して乾固状態に至る過程までのCs及びRuの気相への支配的な移行挙動として、それぞれ、ミスト放出, RuOガス放出が示唆される結果が得られた。実際の高レベル濃縮廃液を用いた既往研究と異なり、凝縮液試料から求めたRuの気相への積算移行割合がCsよりも全体的に13桁程度大きかった原因としては、RuOの生成を抑制する還元性の亜硝酸の存在の有無が影響した可能性が考えられる。
田代 信介; 松本 哲也; 片岡 修; 天野 祐希; 阿部 仁; 山根 祐一; 吉田 一雄; 石川 淳; 内山 軍蔵; 上田 吉徳*; et al.
no journal, ,
高レベル濃縮廃液が沸騰して乾固状態に至る事故時における放射性物質の放出挙動にかかわる研究を行っている。非放射性の模擬FP元素(27元素)を硝酸溶液に溶解させて作製した模擬高レベル濃縮廃液(模擬廃液)を用いた実験室規模コールド実験を行い、模擬廃液が沸騰して乾固状態(300C)に至る過程における模擬FP元素の気相への移行割合を初期FP元素濃度をパラメーターとして取得した。模擬FP元素の分析にはICP-MSを用いた。実験の結果、Ruの積算移行割合は初期Ru濃度が増加すると減少するが、CsやNdの積算移行割合は初期FP濃度にほとんど依存しないことがわかった。
関根 由莉奈; 石川 希*; 深澤 倫子*
no journal, ,
ポリビニルアルコール(PVA)ハイドロゲルは、柔軟で高い生体適合性を有することから生体材料として展開されている。特に、反復凍結融解法により生成する物理架橋PVAハイドロゲルは架橋剤を含まないため、低毒性の材料として応用が期待されるが、強度や耐久性の向上等の課題が残されている。本研究では、反復凍結融解に伴うゲル中の水と高分子ネットワークの構造変化を調べることを目的として、ラマン散乱測定を行った。結果、凍結融解の反復回数に伴いO-H伸縮振動の振動数は増加し、14回を超えると減少した。これは、凍結融解の回数に伴い水の構造が変化したことを示す。ゲルのミクロ構造と機械的特性の関係を調べるため、圧縮試験を行った。結果、反復回数に伴い力学強度は増加したが、10回を超えると減少傾向を示した。本研究の結果は、反復回数がある一定値を超えるとPVAハイドロゲル中の水分子及び高分子ネットワーク構造変化し、力学強度が減少することを示す。以上の結果を基に、凍結融解に伴うゲルの構造変化のメカニズムを議論する。
奥野 泰希; 喜多村 茜; 石川 法人; 秋吉 優史*; 安藤 太一*; 春元 雅貴*; 柴田 優一*; 今泉 充*; 山口 真史*
no journal, ,
宇宙太陽電池の変位損傷量(DDD)法は、低エネルギー電子照射時の劣化予測において、はじき出し閾値エネルギー(Ed)の影響を大きく受ける。本研究では、現在のDDD法におけるAlInGaP太陽電池にとって予測不可能な劣化が観察された。この知見は、現在のDDD法では、低エネルギー電子への曝露中に予測される劣化量が実際の値と異なる可能性がある。しかし、材料中のEd値が再評価されると、非イオン化エネルギー損失は、低エネルギーを含む広範囲のエネルギーを有する電子の照射下でのAlInGaPの正確な誘導欠陥率を示し、正確な劣化予測ができることを示唆している。
喜多村 茜; 石川 法人; 近藤 啓悦; 藤村 由希; 山本 春也*
no journal, ,
高速重イオンがセラミックスに真上から入射すると、イオン一つに対してヒロック(ナノメートルサイズの隆起物)が一つ表面に形成される。一方で、高速重イオンがチタン酸ストロンチウム(SrTiO)や酸化チタン(TiO)などの試料表面をほぼ平行に斜入射すると、イオンの飛跡に沿って連続的に複数個のヒロック(連続ヒロック)が形成される。先行研究では原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察されており、観察結果にはAFMのプローブ寸法由来の測定誤差が含まれている。本研究では、ヒロックのサイズより十分小さい分解能(1.5nm)を有する電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて連続ヒロックを観察し、形状変化過程について検討した。最も知られている連続ヒロックの形成過程は、試料の結晶構造に由来した電子濃度の分布が入射イオンのエネルギー付与強度に起因して規則的に等間隔でヒロックが形成されるとしている。本研究ではSrTiO表面での連続ヒロックが、等間隔に形成されていなかったことから、SrTiOにNbを添加して電気伝導性を発現させた電子濃度の偏りが小さい試料を用いて比較検討を行った。これらの結果から、連続ヒロックの形成メカニズムとして、試料表面でイオン飛跡付近が溶融した後に溶融部分がレイリー不安定性に基づいて球状に分裂するという新しいモデルを提案する。
石川 法人; 近藤 啓悦; 藤村 由希; 喜多村 茜
no journal, ,
100MeV以上の高速重イオンをセラミックスに照射すると、照射損傷が形成される。耐照射性の高いセラミックスを照射環境で使用する場合、照射損傷の度合いが小さいことが材料を応用する際のメリットである。一方で、照射損傷を予測するための照射損傷データを取得するためには、かすかな照射損傷を敏感に検知する手法を新規に開発する必要がある。サファイアの照射損傷は、X線回折法を用いて格子歪みという形で検知することが可能であることが分かっているが、その空間分解能はmmオーダーであり、mオーダーの歪み分布を検知するためには、新しい手法の開発が必要とされる。本研究では、EBSD(電子線後方散乱回折法)を利用すると、その目標が達成できる可能性に着目し、照射試料の歪み分布の検知を試みた。その結果、例えば340MeV Auイオンを照射したサファイア単結晶において、照射部の結晶格子膨張を検知することができ、かつmオーダーの歪み分布を視覚化することに成功した。興味深いことに、照射部と隣り合った未照射部においても照射の影響がみられ、その未照射部の結晶格子が収縮する様子も視覚化することができた。
石川 法人; 近藤 啓悦; 藤村 由希; 喜多村 茜
no journal, ,
セラミックスへ100MeV以上の高速重イオンを試料に照射すると、イオンとターゲット材料の電子との間の非弾性衝突(いわゆる電子的阻止能に相当)が支配的に照射損傷の形成に関与することが知られている。これまで多くの照射損傷メカニズム研究が行われてきたが、耐照射性の高いセラミックスの場合には、照射影響が小さいために、損傷を定量化すること自体が困難であり、照射損傷メカニズムを解明するためには照射損傷を定義することから始めなくてはならない。本研究では、サファイア(AlO)を対象材料として選定し、高速重イオン照射に伴う格子間隔変化を空間マッピング分析した結果、(照射領域は均一に照射したにもかかわらず)結晶格子間隔の変化が照射/未照射境界の付近で顕著に現れることを明らかにしたので、その結果を報告する。