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谷口 直樹; 建石 剛*; 福留 和幸*; 西村 務*; 川上 進
JNC TN8400 2005-014, 36 Pages, 2005/07
低酸素濃度環境で代表的な腐食生成物であるマグネタイトを炭素鋼に接触させると,炭素鋼の腐食が加速されるという報告がある。オーバーパックの長期腐食挙動を評価するうえで,マグネタイト共存下での腐食機構を明らかにすることが重要である。マグネタイト共存下において,鉄の溶解反応であるアノード反応とカップルするカソード反応としてマグネタイト中の3価鉄の還元反応と水素発生反応の2種類が挙げられる。前者が支配的であればFe(III)の消費によってやがて腐食の加速は停止するが,後者が支配的であれば腐食加速現象は持続する可能性がある。本研究ではマグネタイトによる腐食機構解明に資することを目的としてマグネタイトまたは模擬腐食生成物共存下での炭素鋼の浸漬試験を行い,腐食速度と水素発生挙動を調査した。まず,模擬腐食生成物中のFe(III)/Fe(II)比を変えて溶封アンプル中で浸漬試験を行った。その結果,Fe(III)/Fe(II)比が大きいほど腐食速度は大きくなり,Fe(III)/Fe(II)比がマグネタイトの化学量論比(=2)以上の場合に急激に腐食速度は大きくなった。水素発生速度は模擬腐食生成物が共存しない場合に比較して数倍加速されたが,Fe(III)/Fe(II)比が増えても水素発生速度は変化しなかった。この結果より,顕著な腐食の加速は過剰のFe(III)を含むマグネタイトの共存で起こり,そのカソード反応はFe(III)の還元が主であることがわかった。また,過剰のFe(III)を含まない場合でも数倍程度の腐食加速は起こり,そのとき水素発生反応が支配的となることが示唆された。 次に,過剰のFe(III)を含まないマグネタイトを用いて炭素鋼の腐食に伴う水素発生速度の経時変化を測定した。その結果,マグネタイトの共存によって浸漬初期には数倍10倍近く水素発生反応が増加した。しかし,約130日後には水素発生反応の加速は認められなくなった。 以上の試験結果から,マグネタイトによる炭素鋼の腐食加速のオーバーパック長期健全性への影響は小さいと考えられる。