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河裾 厚男; 荒島 裕信*; 前川 雅樹; 伊藤 秀明*; 兜森 俊樹*
Journal of Alloys and Compounds, 486(1-2), p.278 - 283, 2009/06
被引用回数:9 パーセンタイル:48.55(Chemistry, Physical)TiCrV基水素吸蔵合金の劣化現象を陽電子消滅法により研究した。繰り返しの水素吸蔵と放出過程において、水素吸蔵量が減少するとともに、陽電子寿命が伸長した。これは、水素化により結晶格子が膨張するためとして説明できる。500Cの熱処理により、水素吸蔵量はほぼ初期値まで回復した。しかし、陽電子寿命は初期値には回復しなかった。これは、残留する転位による影響であると考えられる。水素吸蔵特性の劣化は、安定水素化物の形成と転位の発生によるものと推測される。
河裾 厚男; 荒島 裕信*; 前川 雅樹; 伊藤 秀明*; 兜森 俊樹*
Materials Science Forum, 607, p.122 - 124, 2008/11
アーク溶解法によって作製したTiCrV水素吸蔵合金中の水素吸蔵サイクルに伴う格子欠陥の発達過程を陽電子寿命測定法を用いて研究した。一回の水素化では転位型欠陥が生成することが見いだされた。転位に付随する陽電子寿命値は、さらなる水素吸蔵サイクルではほとんど変化しないことが見いだされた。この結果は、一回の水素化で導入された転位密度が陽電子捕獲率のダイナミックレンジを越える量であることを示している。20回の水素化では、400500ピコ秒と1.92ナノ秒の長寿命成分が得られた。これらの陽電子寿命は、さらなる水素吸蔵サイクルでも変化しないが対応する強度は増加することが見いだされた。おそらく、水素吸蔵サイクルで生成した空孔型欠陥が集積してマイクロボイドに発達したものと考えられる。一方200回の水素化後、水素吸蔵量は初期値の90%まで低下することが明らかになった。転位型欠陥とマイクロボイドの生成が、水素吸蔵量の低下の一因となっていると推測される。
松林 政仁; 飯倉 寛; 安田 良; 伊藤 秀明*; 久保 和也*; 荒島 裕信*; 海老澤 孝*
no journal, ,
燃料電池は次世代のクリーンなエネルギー源と期待されており、その水素ガス供給源として水素吸蔵合金が注目されている。一方実用化に向けては、水素吸蔵に伴う合金の体積膨張を考慮した水素吸蔵合金タンクの構造,タンクへの合金充填方法,充填密度等の最適化が重要課題となっている。本研究では、中性子ラジオグラフィを用いて合金及びタンク中の水素濃度分布を調べた。吸放出処理を100サイクル及び140サイクル実施した後のタンクを可視化した結果、水素濃度の高い領域がガス吸放出口付近で観察された。さらに断層撮影法により、同じ領域に高い水素濃度を有した合金粒子が多数存在することが確認された。これらの粒子は他の領域の物と比べて粒径が大きく、数多くの吸放出処理を繰り返した後においても微粉化せず水素ガスを放出していなかった。その結果として、これら大きな合金粒子はタンクの底に移動し集まったと考えられる。加えて、ガスの吸放出口付近に粒子が集まる現象は補強用リブの構造が影響しているものと推察された。
河裾 厚男; 前川 雅樹; 荒島 裕信*; 伊藤 秀明*; 兜森 俊樹*
no journal, ,
全率固溶系の三元合金であるTiCrVの初期吸蔵量は3.8mass%と高く、バナジウム組成比が高い場合には、材料劣化(吸蔵量の低下)も抑制されることが知られている。しかし、バナジウム組成比が低い場合には、初期の吸蔵・放出サイクルで急激な劣化が起こる。そこで、本研究では、TiCrV合金について陽電子消滅測定を行い、その劣化原因を探ることにした。水素吸蔵量,平均陽電子寿命及びXRD(110)ピーク半値幅の吸蔵・放出サイクル(N)依存性を調べた。水素吸蔵量はN=50までに初期の80%程度まで減少し、その後N=1000までほぼ一定であることが見いだされた。平均陽電子寿命とXRDピーク半値幅はサイクル初期段階で増加し、その後一定値をとる。これは、水素吸蔵量の変化とほぼ同期していることから、陽電子消滅やXRDピーク半値幅の変化をもたらす材料の微視的な変化が、水素吸蔵量減少の原因であると推定される。TiCrV中の単一原子空孔の理論的な陽電子寿命は、約205ピコ秒である。このような陽電子寿命は解析からは得られなかった。陽電子寿命の増加は、水素吸蔵に伴う体積膨張を考慮することで説明できると考えられる。