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長澤 尚胤; 金田 綾子*; 松崎 友章*; 金澤 進一*; 八木 敏明; Tran, M. Q.*; 三友 宏志*; 吉井 文男; 玉田 正男; Quynh, T. M.*
JAEA-Review 2006-042, JAEA Takasaki Annual Report 2005, P. 53, 2007/02
デンプンを原料とする植物由来プラスチックであるポリ乳酸(以下PLAと略記)は、約170Cの高い融点を有し、透明性や機械的特性などが優れていることから、実用化に一番近い材料として有望視されている。しかし、PLAは約60Cを超えると熱変形し、強度が低下するという欠点があるため、耐熱性の向上が必要とされている。ここでPLAの耐熱性改善に対して、放射線照射による橋かけ構造を導入することを試みた。PLAに融点以上の温度(180C)でポリマー重量に対して3重量%濃度の各種多官能性モノマーを添加して線照射したPLAのゲル分率を測定した結果、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)とトリメチルプロパントリアクリレート添加した系のみ、50kGy照射で80%のゲルが生成し、効果的に橋かけ反応が起きた。橋かけ前後の熱機械的分析の結果、未照射PLAでは、約60Cのガラス転移温度以上で急激に変形し、約100Cで測定不可能になる。3%TAIC濃度で50kGy照射したPLAでは、約60Cで変形せず、200Cでも5%しか変形しないことから、橋かけ構造導入により耐熱性が極めて大きく向上することがわかった。放射線照射によって橋かけしたPLAを熱収縮チューブに応用した。橋かけPLAを200Cで2.5倍に膨張させ、室温で冷却固定すると熱収縮チューブにでき、このチューブを160C以上で再加熱すると、元の大きさに収縮して電線などの結束部分の保護材として利用できる。
長澤 尚胤; 金田 綾子*; 金澤 進一*; 八木 敏明; 三友 宏志*; 吉井 文男; 玉田 正男
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 236(1-4), p.611 - 616, 2005/07
被引用回数:80 パーセンタイル:97.88(Instruments & Instrumentation)生分解性のポリ乳酸は硬く、透明性のよい樹脂であるが、ガラス転移温度60C以上で変形が起きるため、耐熱性の改善が急務である。これを改善するには橋かけ構造の導入が有効であるため、反応性の多官能性モノマーについて検討した結果、トリアリルイソシアヌレートが橋かけに最も有効であることを見いだした。照射橋かけにより耐熱性が向上したポリ乳酸は、融点(160C)以上でも融解しないことから熱収縮チューブへの応用を可能にした。また、橋かけPLAは結晶化が起こらないため熱湯を注いでも透明性を保持しており、食器類への応用が期待できる。
三友 宏志*; 金田 綾子*; Tran, M. Q.*; 長澤 尚胤; 吉井 文男
Polymer, 46(13), p.4695 - 4703, 2005/06
被引用回数:116 パーセンタイル:94.31(Polymer Science)植物産生プラスチックであるポリL乳酸(PLLA)は、ガラス転移温度(Tg)である約60C以上で軟化する性質を持っており、耐熱性に乏しい材料である。このTg以上での軟化を改善する目的で、PLLAに少量の橋かけ助剤を添加して所定線量の電子線を照射して、高分子鎖間に橋かけ構造を導入して耐熱性をはじめとした諸物性の変化について検討した。さまざまな橋かけ助剤の中からトリアリルイソシアヌレート(TAIC)が最も効果的に橋かけ構造を導入でき、3%TAIC添加で50kGy照射した条件で橋かけしたPLLAがTg以上での軟化を抑制することを見いだした。この橋かけしたPLLAは、結晶化するための分子運動性を阻害するような分子鎖ネットワークを広範囲に形成しているため、低結晶化度を示した。さらにPLLAの再結晶化温度である90Cで熱処理と照射により橋かけしたPLLAのTg以上での軟化を完全に改善することができた。また、プロテナーゼ酵素による生分解性試験の結果、未橋かけPLLA(未照射PLLA)に比べ、橋かけしたPLLAは分解しにくく、橋かけ構造導入によって生分解性を制御できることがわかった。