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湯口 貴史*; 伊藤 大智*; 横山 立憲; 坂田 周平*; 鈴木 哲士*; 小北 康弘; 八木 公史*; 井村 匠*; 甕 聡子*; 大野 剛*
Lithos, 440-441, p.107026_1 - 107026_14, 2023/03
被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Geochemistry & Geophysics)本研究は、花崗岩質プルトンのジルコン成長過程を解明するために、3次元立体的なカソードルミネセンス(CL)パターン,U-Pb年代,チタン濃度,Th/U比の変動に基づく新しいアプローチ方法を提案するものである。また、本研究では、九州中央部に位置する大崩山花崗岩(OKG)のジルコン成長過程に着目し、この方法を用いて花崗岩質プルトンの形成に至るマグマ溜まりでの結晶化プロセスの解明を目的とした。大崩山花崗岩体は黒雲母花崗岩(BG),角閃石花崗岩(HG),角閃石花崗閃緑岩(HGD)の3つの岩相から構成されている。まず、ジルコン結晶の3次元内部構造と成長様式を明らかにするため、試料の多断面についてCL観察を行った。同時に、試料の中心部のジルコンのU-Pb年代とチタン濃度も測定した。CLパターンから確認できるオシラトリーゾーニングの3次元分布からは、結晶核を決定することができる。花崗岩試料のジルコンU-Pb年代とTi濃度の同時測定は、花崗岩マグマが固化するまでの時間-温度(t-T)履歴を示すものである。BG, HG, HGDの温度履歴はマグマ溜り内での類似した冷却挙動を示し、16Maから10Maの間にジルコン結晶化温度から黒雲母K-Ar系の閉鎖温度まで急速に冷却されたことがわかった。また、Th/U比の温度に対する変化も、約670Cの境界で異なる傾向を示した。マグマ溜まりでの分別結晶は670C以上で著しく進行し、670C以下では結晶化が緩やかになり、マグマ組成の変化が小さくなっていたことが示された。BG, HG, HGDの温度に対するTh/U比の変化は共通の傾向を示し、すなわち大崩山花崗岩体の3つの岩相の分別結晶化の進行は同じ挙動を示し、マグマ溜り全体で同じ挙動を示すことが示された。
湯口 貴史*; 山嵜 勇人*; 石橋 梢*; 坂田 周平*; 横山 立憲; 鈴木 哲士*; 小北 康弘; 三戸 和紗*; 井村 匠*; 大野 剛*
Journal of Asian Earth Sciences, 226, p.105075_1 - 105075_9, 2022/04
被引用回数:4 パーセンタイル:49.4(Geosciences, Multidisciplinary)LA-ICP質量分析法によりジルコンのシングルスポットからU-Pb年代とチタン濃度を同時に取得することで、花崗岩質マグマの時間-温度履歴を解明するのに必要なジルコンの結晶化年代と結晶化温度を推定することができる。黒部川花崗岩体は、苦鉄質火成包有物(MMEs)を多量に含む岩体である。本研究では、このMMEsに対してジルコンのU-Pb年代とチタン濃度を同時に取得する方法を適用した。MMEs及び母岩について共通の冷却過程が認められ、この冷却は150万年前から50万年前に生じたことが明らかとなった。また、ジルコンの結晶化温度から黒雲母K-Ar系の閉鎖温度にかけての冷却は、100万年以内に急冷したことが分かった。本研究によって得られた時間-温度履歴と母岩の岩石学的記載から、マグマチャンバーを通じたMMEsの浮揚、移動、拡散が150-50万年前に停止したことが示唆され、また、それ以降に大規模な温度上昇が生じていないことから、この時期に黒部川花崗岩体が定置したと考えられる。
小北 康弘; 三戸 和紗*; 石橋 梢*; 坂田 周平*; 大野 剛*; 鈴木 哲士*; 横山 立憲; 鏡味 沙耶; 長田 充弘; 湯口 貴史*
no journal, ,
本研究では、遠野岩体の各岩相の貫入・定置年代とその時の温度条件を明らかにし、岩相ごとの温度-時間履歴に制約を与えることを目的として、遠野岩体の3岩相それぞれに含まれるジルコンを対象にU-Pb同位体分析とTi濃度定量分析を実施し、ジルコンの結晶化年代と結晶化温度を推定した。さらに、ジルコンのHf同位体組成から、各岩相の起源マグマに関する議論も行う。
湯口 貴史*; 伊藤 大智*; 横山 立憲; 坂田 周平*; 鈴木 哲士*; 小北 康弘; 八木 公史*; 井村 匠*; 甕 聡子*; 大野 剛*
no journal, ,
本研究では、花崗岩体中のジルコン成長プロセスを評価するために、三次元的なカソードルミネッセンス(CL)パターン,U-Pb年代,チタン濃度,Th/U比を組み合わせた新たな手法を提案する。また大崩山花崗岩体のジルコンの成長から、マグマ溜りプロセスの発達に関する検討を行った。大崩山花崗岩体は鉛直方向に変化する3つの岩相から構成される。試料はそれぞれの岩相から採取した。ジルコン結晶の三次元な成長様式は、ジルコンの複数断面から得られたCLパターンから評価した。花崗岩体のジルコンU-Pb年代とチタン濃度の同時定量は、ジルコンの結晶化年代と温度の決定を可能にし、花崗岩質マグマの温度時間履歴の導出を可能にする。また、本研究で実施するU-Pb年代とチタン濃度の同時定量は、ジルコンの結晶化温度の変化とTh/U比の変化を関連付けること、さらには、マグマ溜り中の温度変化に対する分別結晶の程度の変化を論ずることを可能にする。
鈴木 哲士*; 浅井 信夫*; 中島 和夫*; 小北 康弘; 横山 立憲; 坂田 周平*; 大野 剛*; 湯口 貴史*
no journal, ,
島弧-海溝系の沈み込み帯ではしばしば、マグマの生成量が増加する時期「フレアアップ」が存在し、東北日本の北上山地に分布する白亜紀深成岩体はフレアアップによって形成されたことが報告されている。北上山地の白亜紀深成岩体の中には、沈み込み帯で一般的に形成されるカルクアルカリからショショナイト質マグマの他にアダカイト質マグマの活動が関与すると考えられる岩体が存在するが、それらのマグマの貫入・定置機構(特にマグマの貫入・上昇、定置、固化に至るまでの冷却過程、貫入速度)は不明瞭である。そこで本研究では、カルクアルカリからショショナイト質マグマとアダカイト質マグマの両方から形成されたと考えられる堺ノ神深成岩体を対象として、その貫入・定置機構を明らかにすることを目的として岩石学的・年代学的研究を行った。岩体の広域的な範囲から岩石サンプルを採取し、露頭情報、モード、全岩化学組成などの空間的岩石学的特徴を把握した。これに加え、ホルンブレンドを用いた地質温度・圧力計から温度・圧力条件を導出するとともに、ジルコンU-Pb年代・Ti濃度同時定量を行うことで温度・時間履歴を構築した。本報告では、これら温度・圧力履歴と温度・時間履歴を組み合わせることで、マグマの貫入・上昇、定置、固化に至るまでの冷却過程、およびマグマの定性的な貫入速度の違いの議論を行う。