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光安 優典*; 岡 壽崇; 高橋 温*; 木野 康志*; 奥津 賢一*; 関根 勉*; 山下 琢磨*; 清水 良央*; 千葉 美麗*; 鈴木 敏彦*; et al.
Radiation Protection Dosimetry, 199(14), p.1620 - 1625, 2023/09
ESRを用いた線量計測を行う際は、ESRスペクトルを複数成分でカーブフィットし、炭酸ラジカル強度だけを抽出する必要がある。複数成分を同時にフィッティングする従来の方法では、うまく解析が収束しない例が見られ、その場合、当該個体の線量推定が不可能になってしまう。そこで、我々は複数成分のうち、主要な炭酸ラジカルと有機物ラジカルを最初にフィットし、そのあとに残りの成分をフィットする新しいアルゴリズムを開発して、より多くの個体のESRスペクトルを解析可能にすることを検討している。新しいアルゴリズムで福島県で捕獲した野生ニホンザルの歯を解析したところ、従来の方法では解析できなかった個体の炭酸ラジカル強度も抽出でき、線量推定可能になった。
光安 優典*; 岡 壽崇; 高橋 温*; 木野 康志*; 奥津 賢一*; 関根 勉*; 山下 琢磨*; 清水 良央*; 千葉 美麗*; 鈴木 敏彦*; et al.
KEK Proceedings 2022-2, p.120 - 125, 2022/11
ESR線量計測法による低線量被ばくの評価においては、生体試料由来の試料の不均一さや低S/N比試料によるESR測定の不確実さなどのために炭酸ラジカル強度のばらつきが大きいことが問題となっており、これらの原因によってESR線量計測法の検出下限値の改善が困難であった。そこで本研究では、ESR測定時の石英管や試料の磁場中での設置方向など、あるいはS/N比向上のための繰り返し測定の回数などが、得られたESRスペクトルの多成分解析にどのように影響を及ぼすかを調べ、再現性の高い測定・評価方法を検討した。
岡 壽崇; 高橋 温*; 小荒井 一真; 木野 康志*; 関根 勉*; 清水 良央*; 千葉 美麗*; 鈴木 敏彦*; 小坂 健*; 佐々木 啓一*; et al.
Journal of Radiation Research (Internet), 63(4), p.609 - 614, 2022/07
被引用回数:0 パーセンタイル:29.28(Biology)日本人小児の乳歯のESR線量計測法の検出可能線量を調べたところ115mGyと見積もられた。また、エナメル質と象牙質の比重の違いを用いた重液分離法によるエナメル質抽出を実施したところ、従来のドリルで削り出す方法とほぼ同等の純度のエナメル質が得られただけでなく、従来法が適用できなかった動物の歯のエナメル質抽出にも有効な抽出法であることがわかった。
光安 優典*; 岡 壽崇; 高橋 温*; 小荒井 一真; 木野 康志*; 奥津 賢一*; 関根 勉*; 山下 琢磨*; 清水 良央*; 千葉 美麗*; et al.
KEK Proceedings 2021-2, p.91 - 96, 2021/12
歯のエナメル質中に放射線によって生成した炭酸ラジカルを指標にして、原爆の被ばく者やチェルノブイリ原子力発電所事故の被ばく者の線量推定に使用されてきたESR線量推定法を、野生ニホンザルに適用することを試みている。ニホンザルのエナメル質のESRを可能にするための分析前処理法を検討し、福島県で捕獲した野生ニホンザルの線量推定を行うとともに、ESR信号の解析方法などについて議論した。
小荒井 一真; 松枝 誠; 青木 譲; 柳澤 華代*; 寺島 元基; 藤原 健壮; 木野 康志*; 岡 壽崇; 高橋 温*; 鈴木 敏彦*; et al.
Journal of Analytical Atomic Spectrometry, 36(8), p.1678 - 1682, 2021/08
被引用回数:3 パーセンタイル:57.04(Chemistry, Analytical)ウシの硬組織用のSr分析法をICP-MS用いて開発した。0.1gの硬組織に対して、従来の放射能測定法より低い検出下限値で、11時間での分析を可能とした。そのため、ICP-MS法は微小な骨や歯試料を対象とした迅速かつ有効な分析手法となり得る。
香西 直文; 佐藤 淳也; 大杉 武史; 下山 巖; 関根 由莉奈; 坂本 文徳; 大貫 敏彦
Journal of Hazardous Materials, 416, p.125965_1 - 125965_9, 2021/08
被引用回数:16 パーセンタイル:85.07(Engineering, Environmental)Radiocesium-bearing SSA was solidified in geopolymer (GP) and ordinary Portland cement (OPC) and the characteristics of the solidified bodies were investigated by various aspects including mechanical strength, transformation of SSA components during solidification, and radiocesium confinement ability by leaching test. After static leaching test at C, Cs was hardly leached out from the GP-solidified bodies containing SSA at 30 wt% to ultrapure water ( 0.1%), whereas more than 30% Cs was leached from the OPC-solidified bodies containing SSA at 30 wt%. GP is far superior to OPC for solidifying radiocesium-bearing SSA.
高橋 温*; 千葉 美麗*; 棚原 朗*; 相田 潤*; 清水 良央*; 鈴木 敏彦*; 村上 忍*; 小荒井 一真; 小野 拓実*; 岡 壽崇; et al.
Scientific Reports (Internet), 11(1), p.10355_1 - 10355_11, 2021/05
被引用回数:5 パーセンタイル:42.99(Multidisciplinary Sciences)The Fukushima-Daiichi Nuclear Power Plant (FNPP) accident released substantial amounts of radionuclides into the environment. We collected 4,957 deciduous teeth, from children living in Fukushima and reference prefectures. Radioactivity was detected in most of the teeth examined and was attributed to the presence of natural radionuclides, including K and daughter nuclides in U and Th series. Additionally, artificial radionuclides, Sr and Cs, were detected in the teeth obtained from children from Fukushima and the reference prefectures. However, these radionuclides were not believed to have originated from the FNPP accident. Because the teeth examined in the present study were formed before the FNPP accident occurred, the aforementioned findings may serve as important control data for future studies regarding the radioactivity of teeth formed after the FNPP accident.
岡 壽崇; 高橋 温*; 小荒井 一真; 光安 優典*; 木野 康志*; 関根 勉*; 清水 良央*; 千葉 美麗*; 鈴木 敏彦*; 小坂 健*; et al.
Radiation Measurements, 134, p.106315_1 - 106315_4, 2020/06
被引用回数:4 パーセンタイル:54.54(Nuclear Science & Technology)ニホンザルのエナメル質中に誘起された炭酸ラジカルと吸収線量の関係(検量線)を電子スピン共鳴(ESR)法で調べた。ニホンザルのエナメル質のESR測定で検出できる線量の下限(検出限界)は33.5mGyであり、ヒトのエナメル質の検出限界と同等であった。作成した検量線を用いて、福島県で捕獲した7頭の野生ニホンザルの線量を評価したところ、45mGyから300mGyの被ばくをしていることがわかった。
関根 由莉奈; 元川 竜平; 香西 直文; 大貫 敏彦; 松村 大樹; 辻 卓也; 河崎 陸*; 秋吉 一成*
Scientific Reports (Internet), 7(1), p.2064_1 - 2064_8, 2017/05
被引用回数:34 パーセンタイル:75.38(Multidisciplinary Sciences)Ca欠損アパタイト材料を用いた汚染水からのSrの有用性について調べた。最初に、同じ2価イオンであるMg及びCa存在下でのSr (0.05mmol/L)の吸着率を調べた。Ca欠損アパタイトは他のイオン存在下においても高いSr吸着性を維持した。例えば、0.1から1.0mmol/LのMg及びCa存在下において80%以上の吸着率を示した。一方、通常のアパタイトでは少量のMg及びCaが存在する条件でSrに対する吸着性は著しく低下した。0.01から10mmol/LのSrを含む水溶液を用いた吸着評価においても、Ca欠損アパタイトは通常のアパタイトよりも高い吸着性を示した。EXAFSを用いてCa欠損アパタイトにおけるSrの吸着挙動について評価したところ、通常のアパタイトと比べてSrが選択的に吸着するサイトが存在することが示唆された。
関根 敏彦; 澤田 真一; 八巻 徹也; 浅野 雅春; 鈴木 晶大*; 寺井 隆幸*; 吉田 勝
Transactions of the Materials Research Society of Japan, 31(4), p.871 - 874, 2006/12
架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を基材とする電解質膜のメタノール透過特性を調べた。イオン交換容量(IEC)の高い膜ほどメタノール透過係数Pは大きくなり、これは膜が膨潤して親水性領域が広がるため、メタノールの拡散が促されたからだと考えられる。しかし、2.7meq/gと最大のIECを持つ膜においてもPはNafionよりも低く、このことは、架橋PTFE電解質膜は直接メタノール型燃料電池用電解質膜としての高い応用性を有することを意味する。また、IEC=1.2meq/gのときでは、PTFE主鎖の架橋密度が高くなるほどPは低下し、未架橋膜では1.110cm/sであったのに対して、400kGy架橋膜では0.310cm/sになった。膜の膨潤性は、架橋構造の付与,架橋密度の増加により低下し、Pと同様の挙動を示した。この結果から、主鎖骨格への架橋構造の付与により、メタノールの透過経路である親水性領域の拡大が抑制されたことが、Pが低減した理由であると考えられる。
関根 敏彦; 八巻 徹也; 鈴木 晶大*
東京大学アイソトープ総合センターニュース, 37(1), p.2 - 5, 2006/06
本研究では、DMFCへの応用が期待される架橋PTFE電解質膜に対してトリチウムをトレーサーとして用いた水/メタノールの透過実験を行い、それによりメタノール透過機構に関する知見を得たので、その一端を紹介する。放射能既知のトリチウム水及び純水とメタノールから、300Bq/mLの放射能を持つ濃度2mol/Lのメタノール水溶液を調製した。電解質膜で仕切った2室型セルに、トリチウム水をトレーサーとして含むメタノール水溶液と純水をそれぞれ満たし、拡散透析を行った。その結果、Nafionにおけるメタノール拡散は非常に速く、その大部分をPTFE主鎖部が担っている一方、炭化水素系グラフト側鎖とのハイブリッド構造を持つ架橋PTFE電解質膜では、この主鎖部の拡散がほとんど起こらないことが優れたメタノール透過抑制能の起源であることがわかった。今後は、本研究を継続させることでメタノール透過機構を明らかにし、そこで得られた基礎的な知見を膜設計に反映させることによって、さらなる高性能化を目指していく。
飯田 芳久; 大貫 敏彦; 磯部 博志; 柳瀬 信之; 関根 敬一; 吉田 英一*; 湯佐 泰久*
Journal of Contaminant Hydrology, 35, p.191 - 199, 1998/00
被引用回数:4 パーセンタイル:18.72(Environmental Sciences)変質過程での花崗岩中の希土類元素の移行挙動を解明するために、東濃ウラン鉱床を対象として、これまで岩石中の希土類元素の分布を研究してきた。試料は土岐花崗岩の変質・未変質部より採取した。希土類元素濃度は中性子放射化分析法により、鉱物相は粉末X線回折法及びSEMにより測定した。元素分析は、ICP発光分析法により行った。変質試料中では、未変質試料に比べ軽希土類元素濃度が高かった。変質・未変質試料中には、一般に希土類元素を含むとされる鉱物が観察されたが、変質試料中にのみCa,希土類元素の炭酸塩鉱物が見られた。変質試料中のCa,軽希土類元素濃度が高いことから、これらの元素が熱水によって移行し、炭酸塩鉱物として結晶化したと考えられる。
大貫 敏彦; 柳瀬 信之; 関根 敬一; 磯部 博志; 永野 哲志; 坂本 義昭
Journal of Nuclear Science and Technology, 34(12), p.1153 - 1158, 1997/12
被引用回数:26 パーセンタイル:86.43(Nuclear Science & Technology)非晶質鉄鉱物の結晶化過程におけるウランの再分配挙動を、選択的抽出法により検討した。硝酸鉄溶液中に1mg・l1のウランを混合し、PHを6.5に調整して得た初期の沈澱は、全てTAO溶液により溶解した。また、溶液中のウラン濃度は1%以下であった。このことは、ほとんどのウランが非晶質の鉄鉱物に吸着していることを示している。鉄とウランの沈澱は、時間の経過とともに一部がTAO溶液では溶けないで残った。この場合、TAO溶液により抽出されるウランの量は、残査沈澱物の量が増えるに伴い減少した。溶液中のウランの濃度はやはり1%以下であった。これらの結果から、非晶質鉄鉱物の結晶化過程において、ウランは溶液中にはき出されず、結晶質および非晶質の鉄鉱物に吸着していることがわかった。
中山 真一; 佐藤 努; 永野 哲志; 柳瀬 信之; 山口 徹治; 磯部 博志; 大貫 敏彦; 関根 敬一
JAERI-Review 95-011, 94 Pages, 1995/07
環境安全研究部地質環境研究室は、高レベル放射性廃棄物の安全評価および処分システムの性能評価のための基礎研究を担う研究室のひとつであり、放射性核種-地下水-岩石・鉱物間に起こる相互作用、すなわち放射性核種の地球化学的挙動に関して、天然現象の観測および試料の観察に基づく研究(ナチュラルアナログ研究)、ならびに室内における実験的研究を進めてきた。本報告書は、本研究室における研究活動の背景、位置付けおよび成果をまとめたものであり、それを通して、われわれの研究の地球化学的基礎研究としての、かつ地層処分のための研究としての意義を明確にした。またそれとともに廃棄物処分の分野における基礎研究の必要性・重要性を強調した。本報告書は当研究室が拠って立つべき存在意義である。
大貫 敏彦; 村上 隆; 関根 敬一; 柳瀬 信之; 磯部 博志; 小林 義威
Materials Research Society Symposium Proceedings, Vol. 176, p.607 - 614, 1990/00
変質した石英-緑泥石中のウラン系列核種移行挙動をオーストラリア、クーンガウにおける核種濃度分布データを用いて研究した。U/UおよびTh/U放射能比の分布から、核種の移行は深さにより異なることが明らかとなった。また、U/UとTh/Uの関係から、UとUの遅延係数は異なりUの遅延係数がUよりも大きかった。その値は深さにより異なり、浅層部では1.1、中層部では1.9であった。X線回折解析より、緑泥石が変質により、カオリナイト-スメクタイトおよびゲータイト、ヘマタイトへ変わっているのが観察された。深さによるウラン系列核種の移行挙動の違いは緑泥石の変質に伴う層構成分質の違いによるものと考えられる。
八巻 徹也; 関根 敏彦; 澤田 真一; 浅野 雅春; 寺井 隆幸*; 前川 康成
no journal, ,
架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)電解質膜におけるメタノール輸送挙動と架橋構造の関連性について検討を行った。100kGy架橋PTFE電解質膜の室温におけるメタノール透過係数はイオン交換容量とともに高くなり、3.0meq/gの膜で最大値1.810cm/sに達した。同条件下のナフィオンが1.910cm/sを示したのと比較するといずれの膜でも低い値であり、架橋PTFE電解質膜の高いメタノール透過抑制能が明らかになった。この結果を未架橋,400kGy架橋電解質と比較することにより、架橋構造の導入,架橋密度の増加がメタノール透過性を大きく低下させることが確認できた。膨潤度だけでなく、透過係数と分配係数,溶解度から計算されるメタノールの拡散係数も透過抑制能に寄与していることが示唆された。
八巻 徹也; 澤田 真一; 浅野 雅春; 吉田 勝; 前川 康成; 関根 敏彦; 寺井 隆幸*
no journal, ,
放射線を用いてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜に架橋構造を付与し、そこへスチレンをグラフト重合することで作製される燃料電池用電解質膜の物質輸送特性について、特に架橋とプロトン伝導性,メタノール透過性との関係を調べた。実験では、架橋密度の異なる架橋PTFE膜から合成した電解質膜に対し、温湿度制御下の交流インピーダンス測定によるプロトン伝導率,高濃度メタノール水溶液下におけるメタノール透過係数を測定した。プロトン伝導率は架橋密度が高い方が優れており、この結果については、含水による体積変化が抑制され膜内のプロトンが高濃度に存在することによると解釈している。一方、メタノール透過抑制能は、最高で従来膜の10倍まで向上し実用化の要求を満たすことが明らかになった。架橋構造による膨潤抑制と、実験値から計算される拡散係数(透過の速度を表す)の低下との両方が本結果に寄与していることが示唆された。
八巻 徹也; 澤田 真一; 関根 敏彦; 浅野 雅春; 寺井 隆幸*; 前川 康成
no journal, ,
今回、架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)電解質膜のメタノール輸送挙動について、分配係数K,溶解度Sに基づき詳細な検討を行った。1.03.0meq/gのイオン交換容量(IEC)を有する架橋PTFE電解質膜に対し、2mol/Lメタノール水溶液に浸漬したときの膜内における溶液の体積分率をSとした。SはIECの増大に対して増加する傾向を示し、IEC=2.0meq/gの膜ではNafionとほぼ等しくなった。一方Kは、パーベーパレーションを応用した方法により求めた。すなわち、透過したメタノール/水混合蒸気を液体窒素でコールドトラップした溶液の濃度を膜内濃度とし、供給側との濃度比をとった。その結果、Nafionにおいて1を超え、水溶液中のメタノールが選択的に透過するという特性を示唆した。これに対し、架橋PTFE電解質膜ではIEC増加により大きくなるがすべて1以下であり、膜内へのメタノール含浸自体が抑制されることがわかった。以上より、拡散係数DについてはNafion比で1/22/3と計算された。架橋PTFE電解質膜における高いメタノール透過抑制能は、主として選択性と拡散速度の違いで説明可能であると考えられる。
八巻 徹也; 澤田 真一; 関根 敏彦; 浅野 雅春; 西村 秀俊*; 鈴木 晶大*; 寺井 隆幸*; 前川 康成
no journal, ,
前回、放射線による架橋,グラフト重合で作製される架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)電解質膜のメタノール輸送挙動について、メタノールの透過係数Pだけでなく分配係数K,溶解度Sを求め、それらの値から拡散係数Dを算出した。今回は、トリチウムをトレーサーとして用いることでメタノール透過中における水の拡散係数D (cm/s)を求め、さらに検討を進めた。架橋PTFE電解質膜のDはイオン交換容量によらずNafion以下であり、膜内における物質拡散の抑制が示された。Dがほかの多くの電解質膜と同様に、イオン交換容量の増加とともに高くなる傾向が見られたのに対し、Dはそれほど大きな相関が確認されなかった。メタノール-電解質間の相溶性(パラメータ)から、膜内のメタノールはスルホン酸基と強く相互作用していることが示唆されており、その拡散についても、スルホン酸基の形成する親水性領域の変化から直接的な影響を受けると考えられる。
関根 敏彦; 澤田 真一; 八巻 徹也; 浅野 雅春; 鈴木 晶大*; 寺井 隆幸*; 前川 康成
no journal, ,
直接メタノール型燃料電池用の高分子電解質膜(ナフィオン膜と放射線グラフト電解質膜)における水輸送特性を追跡するための唯一の方法として、トレーサー透過法の利用を発想している。本研究では、トリチウム水(HTO)トレーサーによる膜透過試験の応用可能性について、重酸素水(HO)の結果と比較しながら検討した。簡単な同位体交換理論に従い、HTO透過係数の測定値P(HTO)は実験で使用した試験水溶液中のHOとCHOHの存在比に依存すると仮定することによって、実質的なHTO透過係数P(HTO)を計算した。ここで重要なのは、P(HTO)とP(HO)との間に非常に小さいが有意な差が確認されたことである。この結果は、膜内スルホン酸基との水素結合の強弱でT/H同位体交換速度が異なり、それが結果としてHTO輸送を決定づけていることを示唆している。