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石田 真也; 深野 義隆
日本機械学会論文集(インターネット), 88(911), p.21-00304_1 - 21-00304_11, 2022/07
炉心損傷事故(CDA)の初期の段階である起因過程の評価に係る解析コードSAS4Aに関しては、これまでにCDAの代表的な事象である流量喪失時炉停止失敗事象(ULOF)に対してPIRT手法を適用し、評価手法の信頼性向上が図られている。本研究では、PIRT手法を用いてUTOPの分析を行って物理現象を抽出するとともに、それらの物理現象にランク付けを行って8つの重要現象を抽出し、ULOFとの違いを明らかにした。さらに、抽出した重要現象に対して評価マトリクスを作成し、評価マトリクスに沿って妥当性確認を行った。評価マトリクスの作成においては、UTOPの重要現象に対してULOFの評価マトリクスで網羅されていない部分に対して妥当性確認を行った。本研究によって、SAS4Aをより広範な事故事象へ適用することが可能となり、当該コードの信頼性を大きく向上させることができた。
石田 真也; 深野 義隆
第25回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集(インターネット), 4 Pages, 2021/07
ナトリウム冷却高速炉のシビアアクシデント研究では炉心損傷事故(CDA)の適切な評価が重要となる。CDAの初期の段階である起因過程の評価手法に関しては、これまでにCDAの代表的な事象である流量喪失時炉停止失敗事象(ULOF)に対してPIRT手法を適用し、評価手法の信頼性向上が図られている。本研究ではULOFと同様に代表的な事象である過出力時炉停止失敗事象(UTOP)に対してPIRT手法を適用し、16の物理現象を抽出するとともに、それらの物理現象にランク付けを行って8つの重要現象を抽出した。また、反応度変化に係る物理現象は主に冷却材のボイド化と燃料の移動によるものであるため、燃料の破損後の物理現象としては、ULOFとUTOPとで事象進展が異なっているにもかかわらずランク付けは同じとなるが、燃料の破損に至るまでの冷却材に関する物理現象のランクは、定格流量の冷却材が流れていることによりUTOPの方がULOFよりも低い結果となることが分かった。
石田 真也; 川田 賢一; 深野 義隆
Mechanical Engineering Journal (Internet), 7(3), p.19-00523_1 - 19-00523_17, 2020/06
ナトリウム冷却高速炉の炉心損傷事故(CDA)の起因過程を評価する安全解析コードSAS4Aの客観的な検証の十分性を示すためにSAS4Aの検証にPIRT(Phenomena Identification and Ranking Table)手法を導入した。当該手法に基づいて、課題と検証の目的の明確化、対象施設とシナリオの選定、FOMと重要現象の選定を行い、解析モデルと試験の検討結果を併せて検証マトリクスを作成した。作成した検証マトリクスと試験解析の結果によって、起因過程評価に必要な解析モデルが不足なく検証されていることを示した。加えて、今回の検証マトリクスは各物理現象の関連性も含んだ総合的な検証となっているため、この検証マトリクスを用いた検証は高い信頼性を有する検証であると言える。すなわち、本研究によって、SAS4Aコードの信頼性を大きく向上させることができた。
石田 真也; 川田 賢一; 深野 義隆
Proceedings of 27th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-27) (Internet), 10 Pages, 2019/05
高速炉の安全研究の分野では炉心損傷事故(CDA)が評価上重要な課題であるとして、当該事故に関する評価手法の研究開発が進められて来ている。その中でSAS4AはCDAの起因過程(IP)の事象進展を評価するために開発が進められている解析コードである。本研究ではSAS4Aの信頼性向上のため、PIRT手法を適用したSAS4Aの検証を行った。SAS4Aの検証は、(1) CDAの代表的な事象であるULOFに対する評価指標(FOM)の選択、(2) ULOFに関連する物理現象の抽出、(3)物理現象のランク付け、(4)評価マトリクスの構築、(5)評価マトリクスに基づく試験解析、という流れで実施し、これによりSAS4Aの信頼性向上を図ることができた。
深野 義隆
Journal of Nuclear Engineering and Radiation Science, 5(1), p.011001_1 - 011001_13, 2019/01
高速炉は軽水炉と比較して、燃料要素が密に配置されていること、出力密度が高いこと等から、炉心局所事故はナトリウム冷却高速炉の安全評価の中で重要視されてきた。このうち、仮想的集合体入口瞬時完全閉塞(HTIB)事象は最も厳しい結果を与える。既往研究では、SAS4Aコードを用いたHTIB事象の評価が実施されているが、本研究ではSAS4Aコードの出力制御系モデル等を追加するとともに、改良したSAS4Aコードを用いて「もんじゅ」のHTIB事象の評価を実施し、既往研究の結論が変わらないことを確認した。さらに、本研究では、HTIB事象を模擬した4種類の炉内試験を用いてSAS4Aコードの妥当性確認を行った。これによってSAS4AコードをHTIB事象の影響評価に適用することの妥当性がさらに高められた。
今泉 悠也; 山田 文昭; 有川 晃弘*; 矢田 浩基; 深野 義隆
Mechanical Engineering Journal (Internet), 5(4), p.18-00083_1 - 18-00083_11, 2018/08
ループ型高速炉において想定される液位確保機能喪失(LORL)に対しては、ナトリウム汲み上げあるいはサイフォンブレークといった液位確保対策が考えられるが、それらの対策の有効性を評価するために、液位計算プログラムを開発した。確率論的リスク評価(PRA)により発生確率が無視できないため、本研究では、一次主冷却系での2か所漏えいが発生するものとして評価を行った。従来の保守的な想定に替り、漏えいの原因となる現実的な配管破損規模の検討を行うとともに、代表的な事故シーケンス及び漏えい箇所を選定した上で、炉容器内の液位の変化を計算した。さらに、液位確保策への影響を明らかにするため、より大きな破損規模での計算も行った。その結果、液位確保対策を考慮すれば、一次主冷却系での2か所漏えいが発生した場合においても、一次冷却材の循環ループを維持することができることを明らかにした。
西村 正弘; 深野 義隆; 栗坂 健一; 鳴戸 健一*
Journal of Nuclear Science and Technology, 54(11), p.1178 - 1189, 2017/11
被引用回数:2 パーセンタイル:22.85(Nuclear Science & Technology)FBRの燃料集合体は、稠密に配置され出力も高いことから、シビアアクシデントの起因事象の一つとして局所事故(LF)が考慮されている。この研究では最新知見を反映し、流路閉塞を起因とした局所事故のPRAを実施した。その結果、局所閉塞を起因とした局所事故による炉心損傷の伝播は、発生頻度およびコンシケンスの両面から、ATWSやPLOHSのCDFと比較して無視しうる程小さいことが定量的に示された。
深野 義隆
Proceedings of 25th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-25) (CD-ROM), 10 Pages, 2017/07
既往研究では、SAS4Aコードを用いた仮想的燃料集合体入口瞬時完全閉塞(HTIB)事象の評価が実施されているが、本研究ではSAS4Aコードに出力制御系モデルを追加するとともに、改良したSAS4Aコードを用いて「もんじゅ」のHTIB事象の評価を実施した。出力制御系を考慮した結果、出力領域中性子束高、または遅発中性子検出法によって原子炉は安全にシャットダウンされることを明らかにした。したがって、既往研究におけるHTIB事象の影響は流量減少時反応度抑制機能喪失事象と比較して非常に小さいという結論が本研究によって強く支持された。さらに、本研究では、HTIB事象を模擬した炉内試験を用いてSAS4Aコードの妥当性確認を行った。これによってSAS4AコードをHTIB事象の影響評価に適用することの妥当性がさらに高められた。
山田 文昭; 今泉 悠也; 西村 正弘; 深野 義隆; 有川 晃弘*
Proceedings of 25th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-25) (CD-ROM), 10 Pages, 2017/07
ループタイプ・ナトリウム冷却高速原型炉の設計基準事故(DBA)を超える除熱機能喪失の一つとして、2箇所の1次冷却材漏えいによる原子炉容器液位確保機能喪失(LORL)のシビアアクシデント(SA)評価手法を開発した。2ヶ所の1次冷却材漏えいは、DBAの出力運転中の1ヶ所の1次冷却材漏えいに伴う原子炉停止後の低温停止中に、別ループの1次冷却系配管において2ヶ所目の漏えいが発生し、過度に原子炉容器(RV)液位が低下し、LORLに至る可能性がある。本論文では、想定される漏えい部位の組合せから、厳しいRV液位となる代表事故シーケンスの選定、RVへの冷却材ナトリウムの汲み上げ、1次主冷却系のサイフォンブレークによるRV内冷却材ナトリウムの汲み出し停止の液位確保策、RV液位を過度計算するプログラム、液位計算プログラムを用いた代表事故シーケンスのRV液位挙動を示した。評価の結果、DBAを超える2ヶ所の1次冷却材漏えいに対して、2ヶ所目漏えいに対する液位確保策により崩壊熱除去運転に必要なRV液位が確保され、除熱機能喪失を防止できることを明らかにした。
深野 義隆
Proceedings of 2017 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP 2017) (CD-ROM), 9 Pages, 2017/04
除熱機能喪失(LOHRS)事象は高速炉の最も支配的なシビアアクシデントのシーケンスである。このため、本研究では、燃料被覆管ギャップの大きい条件及び被覆管の破損を想定した場合のLOHRS事象における炉心の著しい損傷に対する安全余裕について検討した。改良した解析コードを用いて解析した結果、燃料被覆管ギャップの大きい条件及び被覆管の破損を想定しても、燃料の溶融やさらなる破損伝播がないことを明らかにした。すなわちLOHRS事象時の炉心の著しい損傷に対する高い安全裕度が確認された。これらの結果はシビアアクシデントあるいは設計基準外事象の安全上の判断基準の策定における重要なエビデンスとして有効活用される予定である。
森 健郎; 大平 博昭; 素都 益武; 深野 義隆
Proceedings of 2017 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP 2017) (CD-ROM), 9 Pages, 2017/04
長期全交流電源喪失(SBO)のようなシビアアクシデントに対する安全対策は、高速増殖原型炉であるもんじゅにおいても求められており、その検討のためにプラント動特性解析コードの妥当性確認が必要である。これまでに自然循環時に重要な現象となる集合体間熱移行及び炉心冷却材の流量再配分を考慮するために、原子炉全集合体モデルが開発され、試験施設やプラントで実施された自然循環試験に基づき、妥当性確認が実施された。本研究では、もんじゅにおけるSBOの評価を合理的に行うために、同モデルをもんじゅの炉心解析モデルに適用し、熱出力40%タービントリップ試験の解析を実施した。試験結果をよく模擬できており、同モデルの圧力損失モデルが妥当であることを確認した。また、同モデルを用いてSBOの解析を実施した結果、集合体間熱移行及び流量再配分の効果によって集合体出口ナトリウム温度のバラツキが小さくなり、均一な温度となることを確認した。炉心冷却材の最高温度を合理的に評価するためには、両現象を集合体毎に適切にモデル化する必要があり、同モデルの有用性を確認した。
深野 義隆
Proceedings of 11th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics, Operation and Safety (NUTHOS-11) (USB Flash Drive), 12 Pages, 2016/10
炉心局所事故はナトリウム冷却高速炉(SFR)においてシビアアクシデントの一つの原因となり得ると歴史的に考えられてきたため、確率論的、決定論的安全評価や実験研究が多くの国で実施されてきた。燃料ピンの自然破損は、その頻度の高さと破損伝播の可能性から、これらの確率論的安全評価において、炉心局所事故の最も支配的な起因事象と考えられてきた。既往研究では、燃料ピンの自然破損からの損傷拡大(FEFPA)に至る可能性のある4つのメカニズムが同定された。これらのメカニズムは任意のSFRに適用可能な安全評価コードにモデル化された。この評価手法を用いて常陽、「もんじゅ」(現行炉心及び高度化炉心)、JSFRの4つの炉心におけるFEFPAの安全解析を実施した。その結果、4つの異なる炉心設計によって解析結果は異なるものの、これらのSFRでFEFPAが生じる可能性は非常に低いことを本研究で明らかにした。これらの結果はSFRの経済性を向上させる破損後の継続運転の将来的可能性を示唆するものである。
西村 正弘; 深野 義隆; 栗坂 健一; 鳴戸 健一*
Proceedings of 13th Probabilistic Safety Assessment and Management Conference (PSAM-13) (USB Flash Drive), 12 Pages, 2016/10
FBRの燃料集合体は、稠密に配置され出力も高いことから、シビアアクシデントの起因事象の一つとして局所事故(LF)が考慮されている。もんじゅでは、設計基準事故(DBA)として1サブチャンネル完全閉塞が想定した評価が実施され、被覆管破損は限定された領域にとどまり、著しい炉心損傷にいたらないことが示されている。それに加えてひとつの設計基準事故を超える事象として、燃料集合体の中心66%が平板によって局所的に閉塞した事象の評価が実施されている。しかしながら、このような決定論的評価は現実的な想定に基づいていないことが実験の結果から明らかになってきている。それゆえ、この研究では最新知見を反映し、流路閉塞を起因とした局所事故のPRAを実施した。その結果、局所閉塞を起因とした局所事故による炉心損傷の伝播は、確率およびコンシケンスの両面から、ATWSやPLOHSのCDFに包含されうることが示された。
深野 義隆
Proceedings of 2016 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP 2016) (CD-ROM), p.347 - 356, 2016/04
燃料ピンの自然破損、局所的過出力、流路閉塞のような炉心局所事故の多様な起因事象のうち、仮想的集合体入口瞬時完全閉塞(HTIB)事象は最も厳しい結果を与える。炉心局所事故の幅広い起因事象を包絡する評価として、既往研究ではSAS4AコードによるHTIB事象の影響が評価されている。SAS4Aコードは仏国CABRI炉や米国TREAT炉における多くの炉内試験によってその妥当性が確認されているが、これらの試験の多くは、過出力と組合わせた流量減少条件下で実施された。これらの流量減少型試験と比較して、HTIB事象における流量変化は非常に急激である。したがって、本研究では、特にTIB事象発生後に起きる冷却材沸騰、被覆管溶融、溶融被覆管の移動、燃料溶融及びラッパー管破損のモデリングについて、仏SCARABEE炉を用いたHTIB試験を用いて追加的かつより目的に相応しい妥当性確認が行われた。SCARABEE炉では、19本あるいは37本ピンバンドルを用いた4つのTIB試験が実施された。HTIB事象後に起きるであろう次の現象について、SAS4Aコードによるこれらの試験の解析結果は試験結果との良好な一致を示した。(1)冷却材沸騰及び被覆管ドライアウトのタイミング及びその進展、(2)被覆管溶融のタイミング及び溶融被覆管の移動挙動、(3)燃料の溶融、崩壊及び移動のタイミングとその進展、(4)ラッパー管溶融貫通のタイミング。したがって、既往研究におけるHTIB事象の影響の評価へSAS4Aコードを適用することの妥当性が本研究によってより高められた。
今泉 悠也; 深野 義隆
Proceedings of 2016 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP 2016) (CD-ROM), p.357 - 363, 2016/04
SFRにおける炉心崩壊事故の起因過程を解析するコードとして開発されたSAS4Aコードは、今後安全審査においても採用される可能性があり、また実験的知見による妥当性確認が行われる必要がある。そこで本研究では、国際共同CABRIプロジェクトによる実験結果を使用して、本コードの妥当性確認を行った。なお本研究で妥当性確認の対象としたCABRIの3試験は全て、中程度の燃焼度(6.4at%)の中空燃料について行われたものである。ここでは、SFRにおけるULOFの条件を模擬するため、流量減少(LOF)及び過渡過出力(TOP)により構成された過酷な印加条件が与えられた。TOPが印加されたタイミングは、冷却材温度が沸点近傍に達した時点、あるいは被覆管溶融の数秒後であった。解析の結果、冷却材沸騰のタイミング、沸騰中のボイド領域拡大、溶融燃料の移動・再凍結挙動などについて、CABRIの試験結果との良好な一致が得られた。本解析の結果、SAS4Aモデルの冷却材沸騰及び再配置モデルについての妥当性確認がなされた。
深野 義隆; 鳴戸 健一*; 栗坂 健一; 西村 正弘
Journal of Nuclear Science and Technology, 52(9), p.1122 - 1132, 2015/09
被引用回数:3 パーセンタイル:28.28(Nuclear Science & Technology)炉心局所事故(LF)はナトリウム冷却高速炉(SFR)におけるシビアアクシデントの一つの要因と考えられてきたことから、LFの拡大に関わる実験研究、決定論的、確率論的安全評価(PRA)が多くの国で実施されてきた。燃料ピンの自然破損(AFPF)は既往PRAにおいて、原子炉運転中の発生頻度の大きさと燃料要素の破損伝播(FEFP)の可能性から、LFの最も支配的な起因事象と考えられてきた。本研究では、最新知見に基づき、最新の異常時運転手順書を反映した日本のSFR原型炉(「もんじゅ」)におけるAFPFからのFEFP(FEFPA)のPRAを実施した。本PRAの起因事象であるSFRのAFPFの発生頻度は最新のAFPFの経験のレビューに基づき、複数の手法を用いてアップデートした。その結果「もんじゅ」におけるAFPFの発生頻度及び炉心損傷頻度(CDF)は、既往PRAと比較して無視し得るレベルまで大幅に低下した。したがって、「もんじゅ」におけるFEFPAのCDFは、発生頻度と結果の重大性の両面からATWSまたはPLOHS事象に包絡され得る。
深野 義隆; 西村 正弘; 山田 文昭
Proceedings of 16th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-16) (USB Flash Drive), p.5687 - 5698, 2015/08
ナトリウム冷却高速炉の日本の原型炉における設計基準事故では、以下の炉心損傷の判断基準が用いられている。(a)燃料が溶融しないこと、(b)燃料被覆管が破損しないよう、被覆管最高温度が830C未満であること、(c)冷却材が沸騰しないこと。一方、設計基準外事故やシビアアクシデント(SA)においては、被覆管破損は許容されるが、炉心の冷却が維持され、燃料が溶融しないことが要求される。崩壊熱除去機能喪失(PLOHS)事象はSAの最も支配的な重要事故シーケンスの一つであり、本研究では、PLOHS時に燃料被覆管の破損を仮定した場合の炉心の著しい損傷に対する安全余裕について検討した。最新知見のレビュー結果から、下記の3つが炉心の著しい損傷に至るメカニズムとして抽出された。(1)燃料ナトリウム反応生成物の形成に伴う燃料溶融、(2)隣接ピンからのジェット状のガス放出による除熱低下、(3)同ジェット状のガス放出による機械的負荷。これらのメカニズムをFUCAコードに組込み、解析評価した結果、少なくとも、冷却材温度が950
Cに至るまでは、炉心の著しい損傷に至らないことを明らかにした。すなわち、PLOHS時に被覆管が破損しても、炉心の著しい損傷に至るまで大きな安全余裕があることがわかった。
山田 文昭; 有川 晃弘*; 深野 義隆
Proceedings of 23rd International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-23) (DVD-ROM), 7 Pages, 2015/05
ナトリウム冷却高速炉において低圧である冷却材配管のギロチン破断は物理的に生じないが、高速増殖原型炉もんじゅでは安全評価の一つとして、ギロチン破断を念のために仮想的に設定し、許認可のための評価を行ってきた。本論文では、もんじゅ1次主冷却系配管大口径破損時の炉心冷却能力評価において、評価結果に影響を及ぼす現象について、以下のこれまでの試験データの蓄積を踏まえ、解析評価の妥当性を検証した。(a)炉心流量低下に伴い生じる炉心ナトリウム沸騰に関する試験データ、(b)1次主冷却系循環ポンプトリップ後のフローコーストダウンのもんじゅデータ、(c)燃料被覆管の破損評価に用いるLMP回帰曲線の照射済み燃料被覆管急速加熱バースト試験データ、さらに、原子炉トリップ信号応答時間等のもんじゅ実機データも適用し、炉心冷却能力を最新評価した。その結果、燃料被覆管の破損率は従来評価を上回ることなく、あえて1次主冷却系配管にギロチン破断を仮定したとしても、炉心の大規模な損傷に至らないことを評価した。
深野 義隆
Annals of Nuclear Energy, 77, p.376 - 392, 2015/03
被引用回数:12 パーセンタイル:74.12(Nuclear Science & Technology)炉心局所事故(LF)はナトリウム冷却高速炉(SFR)において、その開発当初からシビアアクシデントの一つの要因と考えられてきた。LFの3つの主要な起因事象、燃料ピンの自然破損、局所過出力、大規模閉塞の影響に対する「もんじゅ」の安全評価は既に実施され、1集合体内の損傷に留まる結果が得られている。仮想的集合体入口瞬時完全閉塞事象(HTIB)の発生頻度は無視できるが、HTIBはLFの中で最も厳しい結果を与えるため、炉内試験が行われてきた。このため、本研究では、過去の実験を基に最も早い事象進展シナリオを新たに提案するとともに、HTIBに関連する現象に対して追加的にその妥当性を確認したSAS4Aコードを使用して、HTIB事象の影響に対する「もんじゅ」の安全評価を実施した。本評価によって、HTIB事象の影響は、「もんじゅ」のシビアアクシデントの代表的事象であるULOF事象よりはるかに小さいことを明らかにした。したがって「もんじゅ」における全てのLFの影響はULOF事象に包絡されると言える。この評価手法は他のSFRにおける保守的な安全評価にも適用可能である。
深野 義隆
Journal of Nuclear Science and Technology, 52(2), p.178 - 192, 2015/02
被引用回数:4 パーセンタイル:36.12(Nuclear Science & Technology)ナトリウム冷却高速炉(SFR)の開発当初から炉心局所事故は過酷事故の一つの原因と考えられ、多くの国で研究が実施された。燃料ピンの自然破損は、その発生頻度の高さと破損伝播の可能性から、最も支配的な起因事象と考えられている。炉心局所事故の最新レビューによって燃料ピンの自然破損からの損傷拡大(FEFPA)に至る4つのメカニズムを抽出した。本研究では、熱的,機械的,化学的破損伝播を含むFEFPAの評価手法を開発し、全てのSFRに適用可能な安全評価コードとして整備するとともに、「もんじゅ」のFEFPAを評価した。その結果、「もんじゅ」ではFEFPAが起こる可能性は低く、仮に損傷拡大を仮定しても、損傷は最大でも1集合体内に留まることを明らかにした。この結果は「もんじゅ」の経済性を向上させる燃料ピン破損後の長期運転の可能性を示すものである。