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報告書

断層変位地形が不明瞭なひずみ集中帯におけるリニアメントカタログの作成; 南九州せん断帯における事例(受託研究)

後藤 翠; 佐々木 亮道*; 小松 哲也; 三輪 敦志*; 照沢 秀司*; 楮原 京子*; 島田 耕史

JAEA-Research 2020-013, 88 Pages, 2020/11

JAEA-Research-2020-013.pdf:22.86MB
JAEA-Research-2020-013-appendix(CD-ROM).zip:0.18MB

活断層を見出す調査技術の向上は、地層処分事業を進めるにあたって、断層のずれに伴う透水性の増加が生じる場所を避ける観点から重要である。通常、活断層の存在は、断層運動の地形学的痕跡である断層変位地形の空中写真判読と、現地の地質調査により確認する。しかし、地形学的な痕跡が不明瞭な場合の調査手法は十分整備されていない。そこで、本研究では、既往の地形学的手法を高度化する観点から、活断層を見出す指標となり得る地形学的特徴の直線状ないし弧状配列(リニアメント)を、通常の活断層研究ではほとんど無視されるような明瞭さが乏しいランクまで判読した。調査地域は、測地学的なひずみ集中帯であり、1997年鹿児島県北西部地震(Mj 6.6)の震源断層が伏在している南九州せん断帯である。本研究では、1/25,000地形図62枚の範囲の空中写真判読を実施し、得られた1,327条のリニアメントを地形図上に示し、リニアメントの分布密度,方向性,長さ,地形,地質などの項目について整理した。その結果、南九州せん断帯方向の東西系のリニアメントが西部で卓越し、鹿児島県北西部地震の余震分布域ではリニアメントが高密度で分布することが明らかとなった。これらの結果とともに、明瞭さ,方向,長さなどと地形的特徴の組み合わせによる類型化に基づく代表的な13条のリニアメントについてカタログをとりまとめた。

論文

Subsurface geometry and structural evolution of the eastern margin fault zone of the Yokote basin based on seismic reflection data, northeast Japan

楮原 京子; 石山 達也*; 今泉 俊文*; 宮内 崇裕*; 佐藤 比呂志*; 松多 信尚*; 三輪 敦志*; 井川 猛*

Tectonophysics, 470(3-4), p.319 - 328, 2009/05

 被引用回数:5 パーセンタイル:18.86(Geochemistry & Geophysics)

横手盆地東縁断層帯は、1896年陸羽地震の地表地震断層である。本研究では、陸羽地震の地表地震断層(断層帯北部)を対象に原子力機構が実施した高分解能反射法地震探査の結果を中心に、変動地形学的調査・構造地質学的調査を組合せて総合的な活断層調査を実施し、本地域の構造発達史を明らかにした。その結果、本断層帯は活断層の地表トレースや浅層の地下地質構造が走向方向に変化しているにもかかわらず、断層構造はいずれも盆地側へ新たな分岐断層を形成してきたことがわかった。また、バランス断面法を用いて得られた過去数100万年間のすべり速度と、一回の地震時あるいは段丘面の変形から推定される過去数万年間における変位量・すべり速度の分布パターンが一致しないことが明確となった。こうした断層帯に沿ったすべり速度の違いは、地表地震断層の形成された層準・すなわち中新統海成泥岩の物性に影響されていると考えられる。

論文

横手盆地東縁断層帯の後期鮮新統$$sim$$更新統のフィッション・トラック年代

小坂 英輝*; 楮原 京子; 三輪 敦志*; 今泉 俊文*; 黒澤 英樹; 野原 壯

地学雑誌, 117(5), p.851 - 862, 2008/10

奥羽脊梁山脈及びその周辺に分布する後期鮮新世以降の地層は、東北日本の短縮変形ステージに属し、奥羽脊梁山脈周辺の断層褶曲帯の発達に伴い堆積したものと考えられる。奥羽脊梁山脈西縁を限る断層褶曲帯及び周辺の地質構造の発達過程を明らかにするために、奥羽脊梁山脈西縁に分布する後期鮮新統$$sim$$更新統(田沢層・栗沢層・千屋層)において露頭観察と地層中に挟在する酸性火山岩5試料のFT年代測定を行った。その結果、本断層褶曲帯の活動変遷に関連する地層の年代として、2.7$$pm$$0.4$$sim$$0.93$$pm$$0.14Maが得られた。また層相の特徴を踏まえると、本地域で酸性火山活動のあった1Ma以前に断層活動に伴う地形変化が生じた可能性が高い。

論文

Effects of earthquakes and faulting on the deep geological environment based on case studies in Japan

石丸 恒存; 丹羽 正和; 黒澤 英樹; 楮原 京子

Proceedings of 2008 East Asia Forum on Radwaste Management Conference (2008 EAFORM 2nd Conference) (USB Flash Drive), 6 Pages, 2008/10

高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全性確保にあたっては、変動帯に位置する我が国では、地震・断層活動が地質環境に与える影響を評価することが重要となる。地震・断層活動が地質環境に与える影響のうち、断層活動に伴う岩盤変位は、直接的な岩石の破壊のみならず周辺岩盤に透水性の高い破砕帯を形成するため、水理学的な影響を及ぼす可能性がある。本研究においては、我が国の代表的な横ずれ断層である跡津川断層帯を対象とした事例研究を行い、活断層に沿った破砕帯の分布頻度は、断層から500m離れると減少することがわかった。また、活断層沿いで行った断層水素ガス測定の結果からは、水素ガスの放出量と破砕帯の内部構造との関連性が見いだされ、断層水素ガスを利用した調査手法は破砕帯内の流体移行経路の把握に役立つという見通しを得た。

論文

横手盆地東縁断層帯・千屋断層の形成過程と千屋丘陵の活構造

楮原 京子*; 今泉 俊文*; 宮内 崇裕*; 佐藤 比呂志*; 内田 拓馬*; 越後 智雄*; 石山 達也*; 松多 信尚*; 岡田 真介*; 池田 安隆*; et al.

地学雑誌, 115(6), p.691 - 714, 2006/12

過去数万年$$sim$$数百万年の逆断層の活動性を明らかにするため、横手盆地東縁活断層帯が分布する千屋丘陵と地質構造の発達過程の研究を実施した。浅層反射法地震探査,詳細な地形調査,地質調査及び総括的なバランス断面法の解析により、千屋丘陵とそれを形成した断層の構造及びそれらの発達過程が明らかになった。地質調査では、継続的な断層活動の開始時期が2.7Maより後と推定され、総合的なバランス断面解析の結果は、前縁断層の形成開始時期が千屋丘陵北部より中部のほうが早いことを示唆した。また、地形調査の結果、千屋丘陵の形成時期はその中央部で最も早く(0.35Ma以降)、その後丘陵は断層活動に伴って隆起し、東に傾動しながら拡大したと推定される。

論文

秋田県・千屋断層の陸羽地震断層露頭

今泉 俊文*; 楮原 京子*; 大槻 憲四郎*; 三輪 敦志*; 小坂 英輝*; 野原 壯

活断層研究, (26), p.71 - 77, 2006/06

2005年夏に千屋丘陵の西麓(花岡地区)・大道川の河岸で、陸羽地震時に形成されたと考えられる断層露頭を発見した。この露頭によって、千屋断層の(陸羽地震時)地表トレースが地形境界に沿って大きく湾曲することが明確になった。このような逆断層のトレースの湾曲がどのように形成されたのか、逆断層の先端(地表)から地下の断層形状・構造を解明するうえでも重要な露頭と考えられる。

口頭

岐阜県古川町杉崎における断層露頭とその意義について,1

楮原 京子; 黒澤 英樹; 小坂 英輝*; 石丸 恒存

no journal, , 

跡津川断層帯と高山-大原断層帯の境界に位置する岐阜県古川町杉崎に、バイパス工事に伴って、断層露頭(太江断層)が出現した。本研究では太江断層の性状とその活動性を明らかにするために、空中写真判読と露頭周辺の地表踏査、及び断層露頭の観察を行った。その結果断層露頭の認められた河谷に沿って三角末端面や対頂谷などの地形異常が多く認められ、地点数はわずかであるが、数m程の谷の屈曲や扇状地の撓みも認められた。このことから、太江川の河谷が断層(線)谷であり、太江断層は北側隆起を伴う右横ずれ断層であると判断される。さらに、跡津川断層帯及び高山-大原断層帯の変位様式の違いに基づくと、太江断層は、跡津川断層帯に属すると推察される。本断層のグルーピングに関しては、地質調査や物理探査を行うなど、本地域の地下構造とあわせて吟味する必要があるが、山間部に発達する活構造の連続性を検討するうえで、本断層の構造を理解することは重要である。

口頭

岐阜県古川町杉崎における断層露頭とその意義について,2

楮原 京子; 黒澤 英樹; 小坂 英輝*; 石丸 恒存

no journal, , 

岐阜県飛騨市古川町杉崎におけるバイパス工事に伴って断層露頭が出現した。この断層は、構造性の地形であると疑われつつも、これまで活断層として注視されることはなかった断層である。本研究では本断層(太江断層)の性状とその活動性を明らかにするために、空中写真判読と露頭周辺の地表踏査、及び断層露頭の観察を行った。断層露頭では、風化花崗岩と花崗岩類の礫を含む砂礫層が、N74$$^{circ}$$ W 67$$^{circ}$$ NEの断層面で接しており、地形調査結果を踏まえると、太江断層は北側隆起を伴う右横ずれ断層であると判断される。太江断層露頭の発見は、山間部における活動性の低い断層の活動性評価には、より詳細な調査の必要性を再認識させるものであった。

口頭

水素ガス放出の割れ目構造の依存性; 岐阜県古川町杉崎における断層露頭を例に

黒澤 英樹; 石丸 恒存; 楮原 京子; 小坂 英輝*; 島田 耕史

no journal, , 

断層活動による周辺岩盤への影響を検討するうえでは、断層や節理群を含めた割れ目の特徴とその形成について理解することが重要である。すなわち、新たな割れ目の形成や割れ目の伸長,流体の移行経路の変化などを把握するため、活断層や地質断層近傍で、どのような割れ目が形成されているか、その特徴は何かなど、基礎的な情報・事例を蓄積する必要がある。筆者らは、このような断層活動の影響にかかわる調査手法の一つとして、断層破砕帯などから放出される水素ガスを利用した調査手法の適用性の検討を進めている。本調査では、跡津川断層から南へ約8km離れた飛騨市古川町杉崎における太江断層の断層露頭において、断層破砕帯や節理から放出されるガス(H$$_{2}$$, CH$$_{4}$$, CO$$_{2}$$)の濃度測定を行った。その結果、高濃度放出の地点は、主断層沿いと主断層から南側(下盤側)に離れたX面に対応される断層破砕帯に認められた。一方、低濃度放出または非放出の地点は、主断層沿いのR1面,P面に対応される断層破砕帯及び主断層から北側(上盤側)に離れたX面とP面に対応される節理に認められた。以上から、本手法の適用により断層周辺岩盤において、流体の移行経路となる割れ目を把握できる可能性が示された。

口頭

太江断層西端付近における断層分布と変位速度

岩沢 冴子*; 中村 耕佑*; 安江 健一*; 立石 良*; 寺門 隆二*; 楮原 京子*; 丹羽 正和; 黒澤 英樹*

no journal, , 

太江断層は、岐阜県高山市上宝町荒原付近から、同県飛騨市古川町杉崎付近まで、概ね東北東-西南西方向に延びる活断層である。本研究では、過去の露頭写真の判読、現地の地形・地質調査、C-14年代測定から太江断層西端部の詳細な断層分布と上下変位の平均変位速度を明らかにした。

口頭

南九州せん断帯におけるリニアメントの分布

佐々木 亮道*; 小松 哲也; 三輪 敦志*; 照沢 秀司*; 楮原 京子*; 比嘉 咲希*

no journal, , 

南九州せん断帯を事例に断層変位地形と特定できないが節理や断層などの弱線構造の存在を示唆するリニアメントの抽出を目的として空中写真判読を実施した。その結果、鹿児島県側の中部および宮崎県側の中部付近に卓越するEW方向のリニアメントは、南九州せん断帯に関連する節理や断層などの弱線構造の存在を反映している可能性があること、一方で、NE, NW方向のリニアメントは、四万十帯等の地質構造を反映している可能性が高いことがわかった。

口頭

逆断層における地下構造調査技術; 東北地方の例

楮原 京子; 黒澤 英樹; 石丸 恒存; 野原 壯

no journal, , 

概要調査地区の選定に際しては、既知の活断層が存在する場所は含めないこととされており、断層の影響を排除できるように活断層から適切な距離を置くこととされている。一方、活断層の数万年以上の活動において、断層は伸長・分岐を伴いながら発達してきたと考えられる。このため、将来の断層活動の影響範囲を検討するためには、現在の断層がどのような発達段階にあるのかを知ることが重要となる。このような背景から、原子力機構では、断層の性状や発達過程の理解に主眼を置き、事例研究を通じて、地形・地質,地球物理学的手法などの技術を組合せた活断層調査手法の整備を進めている。逆断層の場合、活断層の伏在や複雑な地層変形を伴う場合が多いため、その性状と発達過程を理解するためには、変動地形と地下構造の両面から取り組むことが重要と考える。特に地下の断層構造の把握は、将来、変形しうる領域を特定する際に重要な情報となる。そのため、日本の典型的な逆断層帯である横手盆地東縁断層帯を事例対象に実施し、総合的な取り組みによって、現在に至る断層の発達過程や、地形・地質と断層構造との関連を、定性的かつ定量的に評価できる可能性を得た。

口頭

断層ガスを利用した断層調査技術の適用性検討

黒澤 英樹; 石丸 恒存; 丹羽 正和; 島田 耕史; 楮原 京子

no journal, , 

概要調査地区の選定に際しては、既知の活断層が存在する場所は含めないこととされており、断層活動の影響を排除できるように活断層から適切な距離を置くこととなる。概要調査段階においては、周辺に分布する断層の活動性の評価とともに、断層活動の影響範囲について、断層周辺の岩盤の破断・破砕に伴う地下水移行経路の形成による水理学的な影響も考慮した検討が必要となる。このため、原子力機構では、事例研究を通じて、地球化学的調査などを活用した断層の活動性の調査技術や断層活動に伴う周辺岩盤への力学的・水理学的な影響範囲に関する調査研究を進めている(地下の活断層の調査技術,断層影響評価モデルの開発($$<$$全体計画(A)-(3)-1$$>$$)。このうち、断層周辺の流体移行経路(水理学的な影響範囲)を把握するための地球化学的調査技術として、断層水素ガスを利用した断層調査手法(1)の適用性の検討を行っている。本発表では、中部地方に分布する横ずれ活断層である跡津川断層や阿寺断層を対象に事例研究を実施し、破砕帯から放出される水素ガス濃度測定により流体移行経路となりやすい構造を把握できる見通しを得たことについて紹介する。

口頭

Examination of an investigation technique for activity on a fault-related fold in the Tenpoku region, northern Hokkaido, Japan

野原 壯; 小坂 英樹*; 楮原 京子*; 三輪 敦志*; 常盤 哲也; 今泉 俊文*

no journal, , 

活断層情報から求めた地殻歪とGPS情報から求めた地殻歪の不整合は、未知の活断層の存在を示す可能性があり、地層処分における課題のひとつである。この問題について本研究ではプレート固着域の影響が小さい天北地域の断層関連褶曲のひとつであるサロベツ断層帯を対象に検討した。断層関連褶曲の地殻短縮速度を推定するため、地質学的情報を用いたバランス断面法解析を実施した。サロベツ断層帯の平均的な短縮速度と測地学的情報とを比較した結果、両者の間には顕著な不整合は認められない。本研究の結果は、断層関連褶曲の長期的変遷の推定には、地質構造の変遷を踏まえた地殻短縮速度の調査が重要なことを示している。活断層の活動性の不確実性を低減するうえで、断層関連褶曲の地殻短縮速度に関連した複数の手法を組合せた多面的調査によるアプローチは有効と考えられる。

口頭

横ずれ断層活動に伴う周辺岩盤の歪と縦ずれ分布パターンによる地表変形; 四国の中央構造線活断層系を事例とした数値解析

楮原 京子; 高田 圭太*; 後藤 秀昭*; 黒澤 英樹; 石丸 恒存

no journal, , 

横ずれ断層では、断層活動に伴う歪を反映して、断層近傍に隆起・沈降性の変形が現われる。本研究では、四国の中央構造線活断層系を事例に、活断層トレースに基づく断層モデルを作成し、ディスロケーションプログラムCoulombを使って断層が活動した際の歪変化と上下変位,体積歪を計算した。中央構造線では、地表付近では高角横ずれ断層であるのに対し、地下深部では、北傾斜の低角断層であることが知られている。そこで、本研究では、まず、各断層の断層面の姿勢による上下変位量分布の違いを検討するため、既存の知見・解釈を踏まえて、(1)鉛直断層モデル,(2)高角断層モデル,(3)地表付近では高角断層モデルとして地下では低角化するモデル、の3パターンを設定した。各モデルの計算の結果、断層近傍の上下変位量とその広がりについて、主として地下における断層面形状の違いに起因する明瞭な相違が現れた。今後、横ずれ断層の活動に伴う周辺岩盤の変形領域を推定する手法として、断層モデルを使った数値解析の有効性を評価する。

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