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谷川 博康; Sokolov, M. A.*; 澤畠 篤司*; 橋本 直幸*; 安堂 正己; 芝 清之; 榎本 正人*; Klueh, R. L.*
Journal of ASTM International (Internet), 6(5), 10 Pages, 2009/05
F82Hに代表される低放射化フェライト鋼の靱性評価には、現在マスターカーブ法(MC法)が用いられているが、この手法は破壊起点が一様に分布していることを前提としている。一方、近年の研究より、MC法の許容値以下の値で破断したF82HではアルミナとTa酸化物の複合介在物が破壊起点に存在することが示されてきた。本研究では、複合介在物が鋼中に不均一に分布すること,低温では割れやすくなることが、靱性値に影響を与え、MC法による靱性値推定に影響を与えている可能性を示した。
谷川 博康; Klueh, R. L.*; 橋本 直幸*; Sokolov, M. A.*
Journal of Nuclear Materials, 386-388, p.231 - 235, 2009/04
被引用回数:32 パーセンタイル:87.82(Materials Science, Multidisciplinary)低放射化フェライト鋼は、573K 5dpaの照射によって、さまざまな照射硬化・照射脆化を示すが、これらの現象は従来考えられてきたような、照射による転位組織発達のみで説明できないことがわかっている。本論文では、F82H, ORNL9Cr、及びJLF-1といった代表的な低放射化フェライト鋼を対象に、詳細な微細組織解析を実施し、その現象解明を試みた。その結果、転位組織変化に加え、主要析出物分布の変化が明らかになったほか、析出物のアモルファス化、及びナノ析出物の生成が明らかになり、これらの現象が、573K熱平衡状態に達しようとする過渡現象として解釈しうる可能性が示された。
谷川 博康; 廣瀬 貴規; 芝 清之; 笠田 竜太*; 若井 栄一; 芹澤 久*; 川人 洋介*; 實川 資朗; 木村 晃彦*; 幸野 豊*; et al.
Fusion Engineering and Design, 83(10-12), p.1471 - 1476, 2008/12
被引用回数:78 パーセンタイル:97.44(Nuclear Science & Technology)低放射化フェライト鋼は、核融合ブランケットシステムに用いられる構造材料の第一候補材として知られている。日本で開発が進められている低放射化フェライト鋼F82Hは、高温強度と溶接性を重視して成分調整が計られた鋼である。そのデータベースは、存在する低放射化フェライト鋼のうちで最も充実している。本論文は、F82Hの開発状況をレビューし、近年の日本における研究開発から示されたITER-TBM製作に向けた技術的課題を整理し示すことを目的とする。
谷川 博康; 酒瀬川 英雄; 橋本 直幸*; Klueh, R. L.*; 安堂 正己; Sokolov, M. A.*
Journal of Nuclear Materials, 367-370(1), p.42 - 47, 2007/08
被引用回数:26 パーセンタイル:83.55(Materials Science, Multidisciplinary)代表的な低放射化フェライト鋼(F82H, JLF-1, ORNL9Cr, Niドープ材)は、300C 5dpaの中性子照射により、異なる照射硬化,照射脆化を示すことがわかっている。転位組織に大きな違いがないことから、これらを対象として照射後鉄鋼材料の析出物解析を行った。報告済みの抽出残渣解析に加えて、抽出レプリカ試料、及びTEM薄膜試料を作成し、析出物のサイズ分布、及び構造についての情報を得ることができた。その結果、照射硬化が大きな鋼(ORNL9Cr, Niドープ材)では、微細析出物の増加が顕著であった。一方、照射硬化が小さかったJLF-1では小さな析出物が消滅し、析出物が成長していることがわかった。析出物の主たる析出サイトであるパケットサイズを基準として、析出物量変化に対する硬化量を整理したところ、単純な相関関係にのることがわかった。また、上記の相関関係は、ホールペッチ則によって説明できることが示された。なお、本研究は核融合研究開発における日米協力計画として実施された。
Baluc, N.*; Gelles, D. S.*; 木村 晃彦*; 實川 資朗; Klueh, R. L.*; Odette, G. R.*; Van der Schaaf, B.*; Jinnan, Y.*
Journal of Nuclear Materials, 367-370(1), p.33 - 41, 2007/08
被引用回数:214 パーセンタイル:99.78(Materials Science, Multidisciplinary)低放射化フェライト鋼に関する最近の研究成果をまとめて示す。低放射化フェライト鋼はさまざまな中間的な段階(部品等)を経て利用される。これらには、例えば、板材,管材,粉末冶金HIP材,液相/固相接合材等がある。これらは加工や熱処理の履歴を反映して性質がある程度異なる。加えて、使用に際して照射の効果を受ける。しかし、このような違いや照射の影響を含めても、低放射化フェライト鋼は、ITERのテストブランケットへの適用に関して、十分な強度を有する。一方、DEMOへの利用には、IFMIFによる性能評価を含めて、特に、多量の核変換生成水素及びヘリウムの影響について、さらなる研究の余地がある。
谷川 博康; 澤畠 篤司; Sokolov, M. A.*; 榎本 正人*; Klueh, R. L.*; 香山 晃*
Materials Transactions, 48(3), p.570 - 573, 2007/03
被引用回数:22 パーセンタイル:71.21(Materials Science, Multidisciplinary)核融合炉構造材料の第一候補材料として期待される低放射化フェライト鋼は、照射後にも高い靱性を有することが求められる。本研究では、延性脆性遷移領域において散発的に低靱性を示す傾向のある低放射化フェライト鋼F82H IEAヒート材について、その要因と考えられる微細組織、及びその微細組織と靱性特性との相関について、特に介在物に着目して調査を行った。その結果、本来MX析出物の析出による耐熱性向上をねらって投入されたTaが、Ta酸化物あるいはアルミナとの複合介在物を形成し、その結果としてF82Hの靱性特性に影響を及ぼしている可能性が明らかになった。
谷川 博康; 酒瀬川 英雄*; Klueh, R. L.*
Materials Transactions, 46(3), p.469 - 474, 2005/03
被引用回数:21 パーセンタイル:74.20(Materials Science, Multidisciplinary)核融合炉材料構造材料として開発されてきた低放射化フェライト鋼については、これまで多くの照射実験が行われてきた。中でも300Cでの照射による強度特性変化の評価は、水冷却ブランケット構造を基本設計とする日本の開発方針においては、もっとも重要なものである。これまで300
C, 5dpa照射された低放射化フェライト鋼(F82H, JLF-1, ORNL9Cr等)について引張強度,衝撃特性,微細組織について調べた結果、鋼によって異なる特性変化を示すが、これらの違いは照射によって形成される転位ループによっては十分説明できないものであった。そこで本研究では析出物挙動に着目した研究を行った。研究にあたっては特に平均的な情報を得るために、抽出残渣法により析出物量を測定し、さらに残渣についてX回折による構造解析、及び化学分析を行った。その結果、照射によって、析出物(主としてM
C
)が増加する傾向にあること,析出物に含まれるCr量が増加する一方でW量が減少すること,MX系析出物が消滅したこと、が明らかになった。
谷川 博康; 橋本 直幸*; 酒瀬川 英雄*; Klueh, R. L.*; Sokolov, M. A.*; 芝 清之; 實川 資朗; 香山 晃*
Journal of Nuclear Materials, 329-333(1), p.283 - 288, 2004/08
被引用回数:19 パーセンタイル:74.76(Materials Science, Multidisciplinary)低放射化フェライト鋼は、核融合炉ブランケット構造材料の候補材料である。これまでの研究により、300C5dpaの中性子照射による鋼の延性脆性遷移温度がF82H(Fe-8Cr-2W-V-Ta)に比べて、ORNL9Cr-2WVTa及びJLF-1(Fe-9Cr-2W-V-Ta-N)が小さいことが明らかになっている。これらの違いは、照射硬化の影響のみでは説明することができない。また一方、Cr量の違いとして解釈できるものでもない。本研究では、これらの鋼の衝撃特性変化の違いについて、その要因を探るべく、微細組織解析を行った、その結果について報告している。
谷川 博康; 橋本 直幸*; Sokolov, M. A.*; Klueh, R. L.*; 安堂 正己
Fusion Materials Semiannual Progress Report for the Period Ending (DOE/ER-0313/35), p.58 - 60, 2004/04
本報告は、日米協力に基づき著者が米国オークリッジ国立研究所において、High Flux Isotope Reactor(HFIR)を用いて行った研究の成果である。低放射化フェライト鋼の延性脆性遷移温度評価はマスターカーブ法による評価が中心となるが、F82H鋼の評価においては、遷移温度領域において特異な低靭性データが得られることが問題となっており、本研究によって、その原因と解決法が示唆された。まず予亀裂周辺のミクロ組織は、光学顕微鏡,SEM,方位像顕微鏡(OIM),TEMによって観察された。この一連のクラック前方周辺のTEM試片はFIB加工によって作製された。さらに試験後の破面観察も行われた。光学顕微鏡観察の結果、疲労予亀裂の形成は、始め直線的であるが、そのあと旧オーステナイト粒界に沿って進み、最終端では、23の方向に分かれている傾向にある。SEMとOIMの結果より、予亀裂周辺と予亀裂前方のミクロ組織は、典型的なF82H鋼の疲労組織に見られるようなセル構造を呈していた。さらにクラック前方の領域から得られたTEM像と、逆極点図形は、この構造変化を支持するものである。予亀裂の分離や予亀裂前方のセル構造は、破壊靭性に影響することから、粗大な旧オーステナイト粒を持つ鋼の場合、疲労予亀裂の影響が遷移温度領域における特異な低靭性として現れやすい可能性があることを指摘した。
谷川 博康; 酒瀬川 英雄*; Payzant, E. A.*; Zinkle, S. J.*; Klueh, R. L.*; 香山 晃*
Fusion Materials Semiannual Progress Report for the Period Ending (DOE/ER-0313/35), p.37 - 40, 2004/04
本報告は、日米協力に基づき著者が米国オークリッジ国立研究所において、High Flux Isotope Reactor(HFIR)を用いて行った研究の成果である。HFIR 11Jキャプセルで照射された代表的なフェライト鋼(F82H, JLF-1, ORNL9Cr, NiドープF82H)を対象に、照射された鉄鋼材料の抽出残渣試料を対象とした、X線回折分析(XRD)による析出物解析を世界で初めて行った。さらに非照射材と時効材も同様に調べられた。その結果、M23C6の明瞭なピークはすべての試片について見られたが、特に照射後靭性の良好な鋼(JLF-1, ORNL9Cr)では、照射前に顕著であったTaリッチ析出物(MX系析出物)のピークが、照射後に消滅していることがわかった。このことからJLF-1やORNL9Crが照射後靭性特性に優れている理由として、照射によりTaリッチ析出物が分解され、Taが強制固溶したことによる可能性を指摘した。
谷川 博康; 酒瀬川 英雄*; Zinkle, S. J.*; Klueh, R. L.*; 香山 晃*
Fusion Materials Semiannual Progress Report for the Period Ending (DOE/ER-0313/35), p.30 - 32, 2004/04
本報告は、日米協力に基づき著者が米国オークリッジ国立研究所において、High Flux Isotope Reactor(HFIR)を用いて行った研究の成果である。HFIR 11J照射された代表的なフェライト鋼(F82H, JLF-1, ORNL9Cr, NiドープF82H)を対象に、照射された鉄鋼材料について抽出残渣法によって得られた析出物のX線回折の解析を世界で初めて実施し、さらに照射によって生じた析出物に関する変化を調べるために、これらの析出物量の変化の測定が行われた。測定には2つの異なるフィルター(細かいものと粗いもの)が析出物の大きさから照射による影響を明らかにするために用いられた。同様に、これらは比較のため非照射材に関しても行われた。その結果、照射によってF82H, Ni添加F82H, JLF-1, ORNL9Crについては大きい析出物量は増加し、またJLF-1では微細な析出物が消滅していたが、Ni添加F82H鋼においては、微細な析出物の増加が見られた。以上の結果から、非照射下では変化が生じない温度域(300C)であっても、照射下では顕著な変化が析出物分布に現れることが示された。
谷川 博康; 酒瀬川 英雄*; 橋本 直幸*; Zinkle, S. J.*; Klueh, R. L.*; 香山 晃*
Fusion Materials Semiannual Progress Report for the Period Ending (DOE/ER-0313/35), p.33 - 36, 2004/04
本報告は、日米協力に基づき著者が米国オークリッジ国立研究所において、High Flux Isotope Reactor(HFIR)を用いて行った研究の成果である。JLF-1やORNL9Crの靭性特性は、F82Hに比べて照射後の延性脆性遷移温度変化が小さく、優れていることから、これらの相違をミクロな観点から明らかにする目的で、析出物の分布を解析するために、各種フェライト鋼(F82H-IEA, F82H HT2, JLF-1とORNL9Cr)非照射材より抽出レプリカ試片を準備した。これらの試片について、TEMにより析出物のサイズ分布、SEMにより化学組成の解析が行われた。さらに、後方散乱電子像は、Ta-richな析出物をほかの析出物と分離するのに効果的であることを示した。F82Hについては、主な析出物はM23C6であり、形状は丸状である。一方、JLF-1とORNL9Crでは、析出物は細長い形状であった。MX析出物に関しては、F82Hではほとんど見られないが、非常に大きく、Tiを含んでいた。対照的にJLF-1とORNL9Crでは多くの微小なMX析出物が観察された。JLF-1やORNL9Crの靭性特性は、F82Hに比べて照射後の延性脆性遷移温度変化が小さく優れているが、これらの違いの一因に、Taリッチの析出物(MX系析出物)の存在形態がかかわっている可能性を指摘した。
實川 資朗; 田村 学*; Van der Schaaf, B.*; Klueh, R. L.*; Alamo, A.*; Petersen, C.*; Schirra, M.*; Spaetig, P.*; Odette, G. R.*; Tavassoli, A. A.*; et al.
Journal of Nuclear Materials, 307-311(Part1), p.179 - 186, 2002/12
被引用回数:170 パーセンタイル:99.28(Materials Science, Multidisciplinary)低放射化フェライト/マルテンサイト鋼は照射下寸法安定性に優れ、また大きな投資無しで低放射化したコンポーネントを製造するに適する。このため、材料の開発及びこれを用いた炉設計研究が進められている。これまでIEAの低放射化フェライト/マルテンサイト鋼開発国際協力で、原研とNKKが開発した低放射化マルテンサイト鋼F82Hを標準材料としたラウンドロビン試験等が、EU,米国等の協力を受けて進めてきた。ここではF82Hについて、合金設計の考え方,熱物理的特性等の物性,照射前後の強度特性及びミクロ組織の評価結果,さらにこれらのデータベース化について報告する。ラウンドロビン試験等では、評価項目として、例えば強度特性について、引張,破壊靭性,衝撃,クリープ,疲労等といった、合金挙動を包括的に評価できる項目を選び、F82Hを代表とする低放射化マルテンサイト鋼の利用可能性について検討を加えた。その結果、F82Hのクリープ強度は、高温機器用材料として評価が高い9Cr-1Mo鋼と同等か優れること、また最も重要な照射挙動の一つである照射損傷による延性脆性遷移温度の上昇も他の合金と比較して小さい結果を得た。
若井 栄一; 三輪 幸夫; 橋本 直幸*; Robertson, J. P.*; Klueh, R. L.*; 芝 清之; 安彦 兼次*; 古野 茂実*; 實川 資朗
Journal of Nuclear Materials, 307-311(Part.1), p.203 - 211, 2002/12
被引用回数:27 パーセンタイル:82.65(Materials Science, Multidisciplinary)核融合炉構造材や核破砕ターゲット材は高エネルギー粒子との衝突によって弾き出し損傷が生じるだけでなくHやHeなどが生成する。このため本研究ではBを添加したF82H鋼や
Feを用いて作製したF82H鋼を用い、中性子照射中にHeやHを生成させてこれらが組織に及ぼす影響を検討した。照射はHFIR炉で2.8から51dpaまで250
Cから400
Cで行った。250
C照射で水素が生成した材料では転位ループの数密度がわずかに増加するとともに、転位ループのバーガースベクトルの3割程度を(1/2)
111
タイプから
100
タイプのループに変化した。また、キャビティ形成を助長した。300
Cや400
C照射でHeが生成した場合、転位ループの数密度はわずかに増加し、キャビティの数密度も増加した。照射温度に依存する微細組織変化の解析から、微細組織と照射硬化または延性脆性遷移温度シフトの間の関係を考察し、照射による延性脆性遷移温度シフトの増加の原因は転位ループ形成による硬化だけに起因しているものではなく、転位ループ上に形成した
'析出物にも関係していることを指摘した。
芝 清之; Klueh, R. L.*; 三輪 幸夫; 井川 直樹; Robertson, J. P.*
Fusion Materials Semiannual Progress Report (DOE/ER-0313/28), p.131 - 135, 2000/06
低放射化マルテンサイト鋼F82H及びF82H鋼TIG溶接材を、米国HFIR炉で、300及び500
で5dpaまでスペクトル調整照射した試験片の引張試験結果について報告する。300
照射では母材、溶接材ともに照射硬化が著しかったが、500
照射では照射硬化は起こらなかった。溶接材の中では、溶接金属部は母材と同程度の照射硬化を起こしたが、熱影響部を含む継手材では照射硬化量は母材や溶接金属部の半分程度であり、熱影響部が照射による変化を受けにくいことがわかった。また、母材について、歪速度を10倍及び1/10倍に変えて引張試験を行った結果、早い歪速度では強度が高く現れる傾向があり、遅い歪み速度では伸びが小さく現れる傾向が見られた。