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堅田 元喜*; 山口 高志*; 渡辺 誠*; 福島 慶太郎*; 中山 理智*; 永野 博彦*; 小嵐 淳; 舘野 隆之輔*; 久保田 智大
Atmospheric Environment, 298, p.119640_1 - 119640_12, 2023/04
Moderately elevated reactive nitrogen (Nr) deposition due to anthropogenic activities can have an impact on forest production via throughfall and canopy retention processes. Forest fragmentation can increase dry deposition of atmospheric ammonia volatilized from agricultural areas, and consequently increase spatial variability of Nr deposition even within the same forest (edge effect). However, little is known about the edge effect and its impact on forest production in a deciduous broad-leaved forest in Asian countries. Here, we performed the field observations of atmospheric concentration and deposition of inorganic Nr gases and particles in a Japanese fragmented forest from May 2018 to April 2019. The results demonstrated that annual dry deposition of ammonia was dominant in the annual total dissolved inorganic Nr deposition at the forest edge, including the edge effect. Additionally, agricultural activities such as fertilization in the area surrounding the forest likely enhanced the potential of canopy retention of NH, known as Nr species readily absorbed by tree canopy.
太田 雅和; 小嵐 淳
Isotope News, (784), p.28 - 31, 2022/12
福島第一原子力発電所事故の影響を受けた森林では、沈着した放射性セシウム(Cs)による樹木汚染が問題となっている。しかしながら、森林内の各
Cs移行過程が樹木(特に、福島の林業で重要な資源である幹の木部)の汚染に及ぼす影響については、十分な理解が得られていない。本研究では、森林樹木-リター層-土壌系における
Csの動態を計算するモデル「SOLVEG-R」を提案し、これを福島県内のスギ植林地および天然のブナ林に適用した事例を紹介する。モデル計算の結果および計算と現地観測の結果の比較から、森林に沈着した
Csの樹木への移行においては、事故時に葉あるいは樹皮に補足された
Csの表面からの取り込みがそのほとんど(
99%)を占めることが示された。一方で、根による土壌中
Csの取り込みは少なく、事故後の50年間にわたり、表面からの取り込みよりも数桁小さい値を保つことが示された。これらの結果、樹木の内部汚染が、事故直後に樹木表面から取り込まれた
Csの内部再循環(転流)によって引き起こされることが分かった。樹皮を介した表面からの取り込みの重要性も明らかとなり、樹木による
Cs取り込みの100%(事故時に葉が無かったブナ)あるいは30%(事故時に展葉していたスギ、残りの70%は葉の表面からの取り込み)を占めた。試験地の樹木について、2021年時点では、
Csの放射壊変と樹木成長に起因する希釈効果の影響によって樹幹木部の
Cs放射能濃度が年あたり3%で低下していることが示された。
阿部 有希子*; Liang, N.*; 寺本 宗正*; 小嵐 淳; 安藤 麻里子; 橋本 昌司*; 丹下 健*
Geoderma Regional (Internet), 29, p.e00529_1 - e00529_11, 2022/06
被引用回数:1 パーセンタイル:57.56(Soil Science)本研究では、火山灰土壌における土壌呼吸速度の空間変動の要因を明らかにするために、火山灰母材の35年生のスギ人工林において調査区を設置した。2013年1月から2019年8月の期間に土壌呼吸速度を定期的に測定し、空間変動の経年変化を調べた。さらに、2019年8月に全ての測点内からリターと土壌を採取し、Ao層の炭素量、土壌炭素量(SOC)、比重の軽い画分(1.6g cm
)の炭素量(LF-C),細根量,容積重を測定した。土壌呼吸速度の測点間の空間的なばらつきの傾向は7年間維持されていた。重回帰分析の結果、LF-Cのみを説明変数とするモデルが土壌呼吸速度を最も精度高く予測しており、他の要因を加えても精度は向上しなかった。また、SOCは土壌呼吸速度との関係が認められなかった。火山灰土壌では土壌呼吸速度の説明変数としてSOCよりもLF-Cの方が適していることが示唆された。
太田 雅和; 小嵐 淳
Science of the Total Environment, 816, p.151587_1 - 151587_21, 2022/04
被引用回数:1 パーセンタイル:55.46(Environmental Sciences)福島第一原子力発電所事故の影響を受けた森林では、沈着したCsによる樹木汚染が問題となっている。しかしながら、森林内の各
Cs移行過程が樹木(特に、福島の林業で重要な資源である幹木部)の汚染に及ぼす影響については、十分な理解が得られていない。本研究では、森林樹木-リター層-土壌系における
Csの動態を計算するモデルを提案し、これを福島県内のスギ植林地および天然のブナ林に適用した。モデル計算の結果および計算と現地観測の結果の比較から、森林内の各
Cs移行過程が樹木の汚染に及ぼす影響が明示された。森林に沈着した
Csの樹木への移行においては、事故時に葉あるいは樹皮に補足された
Csの表面からの取り込みがそのほとんど(
99%)を占めることが示された。一方で、根による土壌中
Csの取り込みは少なく、事故後の50年間にわたり、表面からの取り込みよりも数桁小さい値を保つことが示された。これらの結果、樹木の内部汚染が、事故直後に樹木表面から取り込まれた
Csの内部再循環(転流)によって引き起こされることが分かった。樹皮を介した表面からの取り込みの重要性も明らかとなり、樹木による
Cs取り込みの100%(事故時に葉が無かったブナ)あるいは30%(事故時に展葉していたスギ、残りの70%は葉の表面からの取り込み)を占めた。試験地の樹木について、2021年現在では、
Csの放射壊変と樹木成長に起因する希釈効果の影響によって樹幹木部の
Cs放射能濃度が年あたり3%で低下していることが示された。
安藤 麻里子; 小嵐 淳; 都築 克紀; 竹内 絵里奈; 西村 周作; 武藤 琴美*; 松永 武*
Journal of Environmental Radioactivity, 238-239, p.106725_1 - 106725_8, 2021/11
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Environmental Sciences)福島第一原子力発電所事故により周辺の森林域はCsで汚染された。複雑な山地地形における
Cs沈着量の空間分布を明らかにするために、小河川集水域全域において一定間隔で土壌試料を採取した。土壌試料は2013年夏に42地点、2015年春に6地点において、有機物層と鉱物土壌層に分けて採取した。2013年の
Cs蓄積量は高度と斜面方位に関連した大きな空間変動を示した。有機物層の
Cs残留率は6%から82%と場所により大きく変動し、有機物層の量及び高度と正の相関を示した。しかし、有機物層の
Cs残留率が55%以上であった地点においても、2015年には20%以下に低下しており、沈着から4年後までに多くが鉱物土壌層に移行し、粘土鉱物と結合することで移動性が低下していることが明らかになった。本研究ではまた、
Cs蓄積量と同じ地点で測定した空間線量率を比較し、正の直線関係を得た。この関係式と前報において同じ集水域で測定した3,797点の空間線量率のデータを用いて、全集水域の
Cs沈着量を推定した。
橋本 昌司*; 田中 拓*; 小松 雅史*; Gonze, M.-A.*; 坂下 渉*; 操上 広志; 仁科 一哉*; 太田 雅和; 大橋 伸太*; Calmon, P.*; et al.
Journal of Environmental Radioactivity, 238-239, p.106721_1 - 106721_10, 2021/11
被引用回数:3 パーセンタイル:40.73(Environmental Sciences)本研究は、福島の主に常緑針葉樹林内における放射性セシウムの移行について、複数の研究チームによるモデルを用いた解析を行い、比較を行うことで、モデルのパフォーマンスを分析したものである。また、落葉層の除去と樹木更新の2つの管理シナリオ、および落葉広葉樹林を対象とした補助シナリオについても比較、分析した。いずれのモデルも実測の放射性セシウム濃度の変化傾向などを再現できたが、事故から50年後の予測についてはばらつきが大きく、継続した調査、解析による評価が必要である。
永野 博彦; 中山 理智*; 堅田 元喜*; 福島 慶太郎*; 山口 高志*; 渡辺 誠*; 近藤 俊明*; 安藤 麻里子; 久保田 智大*; 舘野 隆之輔*; et al.
Soil Science and Plant Nutrition, 67(5), p.606 - 616, 2021/10
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Plant Sciences)北海道の牧草地に囲まれた冷温帯林において、大気からの窒素沈着量と土壌の微生物群集特性との関係を調査した。窒素沈着量の緩やかな増大(年間10kg N/ha未満)が土壌微生物群集に及ぼす影響について明らかにすることを本研究の目的とした。調査対象の森林において6つの実験区画を設置し、そのうち3つを草地に隣接した林縁、他の3つを草地から少なくとも700m離れた林内に設置した。2018年5月から11月まで、各プロットでの窒素沈着を測定した。2018年8月には、すべての実験区画からリター層と表層土壌(深さ0-5cm)を収集し、微生物活性の指標として正味の窒素無機化と硝化速度、また微生物量の指標として微生物バイオマス炭素・窒素およびさまざまな微生物の遺伝子量(すなわち、細菌16S rRNA,真菌のITS,細菌のamoA、および古細菌のamoA遺伝子)を測定した。森縁の窒素沈着量は、林内の窒素沈着の1.4倍多かった一方、最も沈着量が多い場合でも3.7kg N/haであった。窒素沈着は、正味の窒素無機化および硝化速度、16S rRNAおよび細菌のamoA遺伝子の存在量と有意に相関していた。環境DNA解析に基づく土壌微生物群集構造は、リター層と表層土壌で異なっていたが、林縁と林内では類似していた。土壌の炭素/窒素比、および硝酸とアンモニウムの含有量に対する窒素沈着の有意な相関も観察された。以上より、窒素可給性の低い森林では、林縁における緩やかな窒素沈着の増大が土壌微生物の活性と存在量を増大させることが示された。
田中 草太; 柿沼 穂垂*; 足達 太郎*; 安藤 麻里子; 小嵐 淳
Journal of Nuclear Science and Technology, 58(4), p.507 - 514, 2021/04
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Nuclear Science & Technology)捕食性のクモは、陸域と水域が繋がる森林生態系において、生食連鎖と腐食連鎖の双方から餌資源を得るため、彼らへのCsの移行経路を理解することは、環境中の
Csの長期的挙動を評価するために役立つ。本研究では、福島第一原子力発電所事故後、約6.5年の森林内と河川沿いでクモを採集し、
Csのクモへの移行を移行係数(T
)として定量した。また、
Csのクモへの移行経路を推定するために、安定炭素・窒素同位体(
C,
N)分析を実施した。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 永野 博彦*; Sugiharto, U.*; Saengkorakot, C.*; 鈴木 崇史; 國分 陽子; 藤田 奈津子; 木下 尚喜; 永井 晴康; et al.
JAEA-Technology 2020-012, 53 Pages, 2020/10
近年急速に進行する温暖化をはじめとした地球環境の変化は、陸域生態系(とりわけ森林生態系)における炭素循環に変化をもたらし、その結果、温暖化や環境変化の進行に拍車をかける悪循環が懸念されている。しかしながら、その影響の予測には大きな不確実性が伴っており、その主たる要因は、土壌に貯留する有機炭素の動態とその環境変化に対する応答についての定量的な理解の不足にある。放射性炭素(C)や安定炭素(
C)同位体の陸域生態系における動きを追跡することは、土壌有機炭素の動態を解明するうえで有力な研究手段となりうる。本ガイドは、同位体を利用した土壌炭素循環に関する研究を、特にアジア地域において促進させることを目的としたものである。本ガイドは、土壌の採取、土壌試料の処理、土壌有機炭素の分画、
Cの同位体比質量分析法による測定及びその試料調製、ならびに
Cの加速器質量分析法による測定及びその試料調製に関する実践的手法を網羅している。本ガイドでは、炭素循環研究において広く用いられる
C分析結果の報告方法についても簡単に紹介する。さらに、同位体を利用した研究手法の実際的応用として、日本の森林生態系において実施した事例研究の結果についても報告する。本ガイドによって、同位体を利用した炭素循環研究に興味を持って参画する研究者が増加し、地球環境の変化の仕組みについての理解が大きく進展することを期待する。
Wijesinghe, J. N.*; 小嵐 淳; 安藤 麻里子; 國分 陽子; 山口 紀子*; 佐瀬 隆*; 細野 衛*; 井上 弦*; 森 裕樹*; 平舘 俊太郎*
Geoderma, 374, p.114417_1 - 114417_10, 2020/09
被引用回数:6 パーセンタイル:47.76(Soil Science)Volcanic ash soils store a large amount of carbon as soil organic carbon (SOC) for a long term. However, the mechanisms of SOC accumulation in such soils remain unexplained. In the present study, we focused on SOC in a buried humic horizon of a volcanic ash soil, which formed between 5400 and 6800 yr BP. SOC was fractionated using a chemical fractionation method and the separated SOC fractions were characterized by C age, stable isotopic ratios of carbon and nitrogen, and chemical structure. Results showed that the SOC fractions differ in the degrees of biological transformation and mobility. However, generally the low mobility of all of the SOC fractions suggests that successive up-building accumulation of SOC contributes to the formation of thick humic horizon in the soil.
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 西村 周作; 武藤 琴美*
Scientific Reports (Internet), 10(1), p.6614_1 - 6614_11, 2020/04
被引用回数:6 パーセンタイル:42.91(Multidisciplinary Sciences)リターの除去は、森林除染において効果的な方法であると考えられているが、福島原発の影響を受けた日本の森林生態系における有効性は不明である。本研究では、福島の広葉樹林の一部に非除染区を設定し、事故後約3.3年後に非除染区を除く森林全域に対してリター除去による除染を行った。除染後3年間にわたり、除染区と非除染区における森林生態系内のCsレベルの推移を調査した。その結果、森林生態系内における
Csの保持及び循環に対する除染効果は極めて限定的であった。日本の森林では、ヨーロッパの森林とは異なり、リター層の
Cs保持能が低いことがその主要因であることが示され、日本の森林生態系に対してはより速いタイミングでのリター除去の実施が必要であったことが示唆された。
武藤 琴美; 安藤 麻里子; 松永 武*; 小嵐 淳
Journal of Environmental Radioactivity, 208-209, p.106040_1 - 106040_10, 2019/11
被引用回数:10 パーセンタイル:49.77(Environmental Sciences)福島第一原子力発電所事故により森林に沈着した放射性Csによる長期的な放射線のリスクを評価するためには、森林の表層土壌における放射性Csの挙動を明らかにすることが重要である。本研究では、事故後4.4年間で5回、福島県内の植生の異なる森林5地点において放射性Csの鉛直分布の調査を行い、モデル計算の結果との比較を行った。また、欧州の森林における文献値と比較を行い、日本の森林における有機物層と表層土壌における放射性Csの移行特性を考察した。調査の結果、有機物層から鉱物土壌へのCs移行は欧州よりも早く、日本の森林では
Csの移動度や生物利用性が急速に抑制されることが示唆された。鉱物土壌中の
Cs拡散係数は0.042-0.55cm
y
と推定され、日本と欧州で同程度であった。これらのパラメータを用いた予測計算では事故から10年後では
Csは主に表層鉱物土壌に分布していることが示され、森林に沈着した放射性Csは表層土壌に長期的に保持されることが示唆された。
永野 博彦; 安藤 麻里子; 小嵐 淳
Soil Science and Plant Nutrition, 65(5), p.525 - 533, 2019/10
被引用回数:2 パーセンタイル:15.64(Plant Sciences)温暖化によって増大すると予測されている土壌水分の変動が火山灰土壌の二酸化炭素(CO)放出に及ぼす影響を評価することを目的に本研究を行った。茨城県内の温帯林で採取した理化学性の異なる2種類の火山灰土壌(土壌AおよびB)を乾燥-湿潤サイクル条件および一定水分条件それぞれで培養し、CO
放出速度を比較した。乾燥-湿潤サイクルにおけるCO
放出速度は水分一定条件での放出速度よりも最大49%大きかった。また乾燥-湿潤サイクルによるCO
放出の増大は、典型的な火山灰土壌である黒ボク土により近い土壌Bでより大きかった。放出されたCO
の炭素安定同位体比を測定したところ、乾燥-湿潤サイクルによって年代の古いもしくは微生物代謝の進んだ土壌有機物の分解が促進されたことが示唆された。以上より、国内に広く分布する火山灰土壌の中でも土壌有機物安定化の能力が特に高いとされてきた黒ボク土であっても、他の土壌と同様に乾燥-湿潤サイクルに対しては脆弱であることが示唆された。また、将来起こりうる土壌水分の変動増大は、土壌のCO
放出を促進する重大なポテンシャルを有することも示された。
小嵐 淳; 西村 周作; 安藤 麻里子; 武藤 琴美; 松永 武*
Scientific Reports (Internet), 9, p.7034_1 - 7034_10, 2019/05
被引用回数:26 パーセンタイル:82.59(Multidisciplinary Sciences)本研究では、福島原子力発電所(福島原発)事故によって陸域生態系にもたらされたCsの表層土壌における保持メカニズムを解明することを目的として、異なる陸域生態系における表層土壌中の
Csの保持状態を、土壌鉱物及び土壌有機物との相互作用に着目して調べた。その結果、森林や果樹園の土壌では、事故から3.5カ月の時点で多くの
Csが土壌鉱物を主体とする土壌フラクションではなく粒子状有機物を主体とする土壌フラクションに存在していること、4年後においてもその存在割合は維持されていることが明らかになった。
小嵐 淳; 安藤 麻里子
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 320(1), p.179 - 191, 2019/04
被引用回数:15 パーセンタイル:91.15(Chemistry, Analytical)森林表面の有機層による放射性セシウムの保持が森林生態系内の放射性セシウムの長期的循環挙動において重要な役割を果たすが、日本の森林生態系における有機層による放射性セシウムの保持挙動やリターダイナミクスとの関連性は未解明である。本研究では、福島原子力発電所事故の影響を受けた森林の有機層を構成するリターを起源樹種別及び分解度別に分画し、それぞれのリター画分に対してCsの生態学的半減期を評価した。その結果、生態学的半減期は0.7年から4.4年の範囲であり、広葉樹やマツ起源のリターで短く、スギ起源のリターで長いことを明らかにした。日本の森林における有機層の
Cs保持能力は、ヨーロッパの森林のそれに比べて低いことを示した。
小嵐 淳; 西村 周作; 安藤 麻里子; 松永 武*; 佐藤 努*; 長尾 誠也*
Chemosphere, 205, p.147 - 155, 2018/08
被引用回数:15 パーセンタイル:56.08(Environmental Sciences)福島原子力発電所事故の長期的な影響を評価するためには、土壌に沈着した放射性セシウムの挙動の理解が重要であるが、土壌の団粒構造が放射性セシウムの移動性や生物利用性に及ぼす影響は未解明である。本研究では、福島原子力発電所事故の影響を受けた農耕地及び森林の表層土壌を対象に、土壌の団粒化と放射性セシウムの団粒サイズ間における分布や抽出性を調べた。その結果、農耕地土壌では団粒の発達が乏しく、セシウムの多くは粘土サイズの土壌粒子に強く固定されているが、森林土壌では団粒が発達し、大きな団粒に比較的抽出されやすい状態で保持されているセシウムの割合が多いことが明らかになった。
藤田 博喜; 前原 勇志; 永岡 美佳; 小嵐 淳
KEK Proceedings 2017-6, p.35 - 39, 2017/11
東京電力福島第一原子力発電所事故以降、東海再処理施設周辺においてもセシウム-137(Cs-137)に加えてセシウム-134が検出されており、それらの濃度の変動は単純な物理的半減期あるいは環境半減期によって特徴づけられる経時的な減少傾向を示すのではなく、増加傾向を示す地点もある。このため、その増加傾向を引き起こしうる環境要因を調査するとともに、表土の採取方法によるセシウム濃度の変動幅を把握することを目的に本調査を行った。この調査の結果、表土中Cs-137濃度は同一地点の狭域内においても空間的に不均一に分布しており、この空間的不均一性によって観測されたCs-137濃度の増減傾向を説明できることが示された。また、森林ではリターのCs-137濃度が表土のそれと比較して高いことから、表土中の濃度をモニタリング対象とする場合には、リター層と土壌を明確に弁別する必要があることが示唆された。
武藤 琴美; 安藤 麻里子; 小嵐 淳; 竹内 絵里奈; 西村 周作; 都築 克紀; 松永 武*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 314(1), p.403 - 411, 2017/10
被引用回数:15 パーセンタイル:85.97(Chemistry, Analytical)福島第一原子力発電所事故により森林に沈着した放射性Csが河川を通して流出することで、下流の市街地や農地への汚染が長期間続くことが懸念されている。本研究では、森林から河川への放射性Cs流出挙動を評価するために、落葉広葉樹林を集水域とする小河川に放射性Csの連続捕集装置を設置し、事故の半年後から4年間調査を行った。河川中の放射性Csを懸濁態と溶存態に分けて採取し、懸濁態は粒径ごとに分画した。また、河川中の懸濁物と土壌について、炭素及び窒素の量と同位体比を分析し比較した。その結果、放射性Csの主要な流出形態は粒径75m以下の懸濁態であり、分解の進んだリターと鉱物土壌を起源としていることが明らかになった。また、リター分解を起源とする溶存態Csの流出量も無視できないことが分かった。リターから土壌への放射性Csの移行が進んでいることから、今後、溶存態による河川流出は数年で減少する一方、懸濁態による河川流出は長期間継続することが示唆された。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 天野 光*; 松永 武
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 311(1), p.473 - 481, 2017/01
被引用回数:16 パーセンタイル:87.34(Chemistry, Analytical)核実験由来のCsと
Cの、2001年における日本の森林土壌中の深さ分布を調査した。その結果、
Csの多くは沈着から38年後もなお鉱物土壌層表層に存在していた。一方で、土壌特性の変化するA層とB層の境界層における
Csの特異的な蓄積を発見した。この蓄積から、
Csが年間0.20%の割合で有機物が豊富なA層を経由して下方へ移行したこと、及び層位境界層が
Csの移行を妨げるバリアとして働くことを見出した。炭素14は
Csと同様の深さ分布を示したことから、両核種が数十年の時間スケールで、同様の物理的経路を経て土壌中を移行したことが示唆された。
小嵐 淳; 西村 周作; 中西 貴宏; 安藤 麻里子; 竹内 絵里奈; 武藤 琴美
Chemosphere, 165, p.335 - 341, 2016/12
被引用回数:34 パーセンタイル:77.58(Environmental Sciences)福島原子力発電所事故の環境・公衆影響を評価するためには、地表面に沈着したセシウムのリター-土壌系における挙動を把握することが重要であるが、特に沈着後初期段階におけるこの挙動に関する知見は少ない。本研究では、事故後すぐに落葉広葉樹林においてライシメーターを設置し、4年間にわたってリター-土壌境界層及び土壌層内におけるセシウムの下方移行量を直接測定した。その結果、セシウムの下方移行量はすべての深さにおいて年々減少し、リター層に沈着したセシウムが速やかに土壌へ移行するとともに、土壌表層5cm以内で急速に移動性を失う様子を捉えることに成功した。この結果により、日本の落葉広葉樹林では、土壌-植生間におけるセシウムの循環は長期にわたって継続しないことが示唆された。