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論文

(U-Th)/He熱年代学を用いた中国山地の隆起・削剥史の推定

旭 祐輔*; 福田 将眞; 末岡 茂; Kohn, B.*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (38), p.13 - 16, 2025/12

中国山地の隆起はフィリピン海プレートの沈み込みなどの要因が考えられるものの、その詳細なメカニズムについては未解明な部分が残る。そこで、地質時間スケールの隆起・削剥史を推定可能である熱年代学を中国山地に適用する。本研究では、山地スケールでの熱年代学的アプローチを採用し、中国山地東部(広島$$sim$$岡山)の岩石サンプルから分離したアパタイトおよびジルコンに対して(U-Th)/He法(以降、それぞれAHe法、ZHe法)を適用した。結果として、AHe年代では41.0$$sim$$12.7Ma、ZHe年代では74.3$$sim$$15.1Maの年代値が得られ、南から北に向かって若返る傾向が得られた。ただし最北の約13MaのAHe年代は後期新生代の火山岩クラスターの位置に含まれることから、再加熱の可能性が疑われる。今後は18$$sim$$16Maの時計回り回転以降の隆起・削剥が検出される可能性を期待し、更に西側で新たな測線における熱年代法の適用を予定している。

論文

(U-Th)/He熱年代に基づいた佐渡島の花崗岩類の冷却・削剥史

末岡 茂; 福田 将眞; Kohn, B. P.*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (38), p.36 - 40, 2025/12

佐渡島は東北日本弧の背弧側に位置する離島で、鮮新世-第四紀にインバージョンテクトニクスによって形成されたと考えられている。また、日本海東縁変動帯の数少ない陸上露出部でもあり、東北日本弧のネオテクトニクスの研究には好適な地域である。佐渡島の沿岸部には、多段の更新世海成段丘が発達しているが、これらの離水年代と分布高度に基づくと、大佐渡と小佐渡は約30-40万年前以降、南東方向に傾動しながら隆起してきたと推測される。一方、山地の分水嶺は南東側に偏って分布しており、100万年スケールでは逆に北西方向に傾動していた可能性が示唆されている。本研究では、100万年スケールでの北西傾動の有無と、北西から南東に傾動方向が変化した原因を検討するために、佐渡島の花崗岩類を対象に、(U-Th)/He年代法を適用して冷却・削剥史を復元した。大佐渡の1地点(北鵜島)と小佐渡の2地点(川茂、岩首)では後期白亜紀の花崗岩類を採取し、大佐渡の1地点(片辺)では前期中新世の凝灰角礫岩(片辺礫岩)に含まれる花崗岩礫を採取した。(U-Th)/He年代の測定は、アパタイトとジルコンを対象とし、メルボルン大学で実施した。得られた単粒子年代を基に熱史逆解析ソフトを用いて熱史を推定したところ、小佐渡の2地点では約10Ma以前に漸進的な加熱を被った後、数Ma以降に急冷されるという温度変化が共通して得られた。これらはそれぞれ、中新世のリフティングに伴う沈降・堆積と、鮮新世以降の東西圧縮による隆起・削剥を反映していると考えられる。数Ma以降の冷却は、南東側の岩首でより顕著に観られたが、これは100万年スケールでは小佐渡が北西傾動していたというモデルと整合的である。一方、大佐渡の2地点では、最近数Maの急冷は不明瞭であった。この原因として、試料を採取した2地点がいずれも北西側の沿岸部であったため、北西傾動に伴う隆起・削剥量が少ないことに加えて、最近の南東傾動をもたらしている逆断層から見ても下盤側に当たるため、総じて鮮新世以降の隆起・削剥が顕著ではなかったことが考えられる。

論文

地殻の高温領域と山地の隆起形態の関連性; 飯豊山地における事例

福田 将眞; 末岡 茂; 中嶋 徹; Kohn, B.*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (38), p.17 - 21, 2025/12

飯豊山地は非火山性山地でありながら、電磁探査や地震波トモグラフィーの結果探査および、高$$^{3}$$He/$$^{4}$$He比の温泉の湧出から、地下にマグマだまり等の深部起源の高温流体の存在が推定されている。近年、東北日本弧の温度構造とレオロジーを仮定した地球物理学的モデリングの結果が報告され、火山フロントに沿った高温領域における応力集中により、奥羽脊梁山地の現地系の分布や形成過程が説明されることが示された。本研究では、飯豊山地を対象として、山地横断方向に低温領域の熱年代法を適用し、その空間的傾向と高温領域の分布との対応関係を検証することを試みた。熱年代法としては、アパタイト(U-Th-Sm)/He法、アパタイトフィッション・トラック法、ジルコン(U-Th)/He法(以下、順に、AHe法、AFT法、ZHe法)を適用した。先行研究および本研究で新たに得られた年代値を統合すると、17.0$$sim$$2.7MaのAHe年代(n=9)、39.2$$sim$$3.6MaのAFT年代(n=3)、41.2$$sim$$4.4MaのZHe年代(n=7)となった。これらの熱年代データの空間的傾向に着目すると、標高が高い山地中央に向かって若返る傾向を示した。この傾向は断層地塊のブロック状隆起による年代の若返りでは説明できず、先行研究で提案された奥羽脊梁山地の南部や南部フォッサマグナ・関東山地のドーム状隆起による年代の若返りと類似する結果である。また、飯豊山地における熱年代値の分布は高温領域と概ね整合的であり、高温領域の隆起要因としての関連性や隆起形態への寄与が示唆される。

論文

四国山地における低温領域の熱年代データの空間分布とその解釈

福田 将眞; 岡本 晃*; Kohn, B.*; 新正 裕尚*; 末岡 茂; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (37), p.8 - 10, 2024/12

四国山地はフィリピン海プレートの沈み込み帯に平行に分布する非火山性の隆起帯であり、その山地形成過程の解明は南海トラフにおける長期の歪の蓄積・解放メカニズムの制約に資すると期待される。本研究では、地殻浅部(2-6km深度)の熱史・削剥史を推定可能な熱年代法であるアパタイト・ジルコン(U-Th)/He(それぞれ、AHe, ZHe)法およびアパタイトフィッション・トラック(AFT)法を用い、四国山地に分布するペルム紀から中新世の花崗岩類計9点について熱年代分析を試みた。AHeおよびZHe年代測定はメルボルン大学で、AFT年代測定は東濃地科学センターで実施した。年代測定の結果として、8点のAHe年代は約55-7Ma、5点のAFT年代は約90-70Ma、9点のZHe年代は約200-70Maの範囲を示した。これらの値は各手法の閉鎖温度を考えると整合的な関係を示した。また、既往研究で報告されているZFT年代、黒雲母K-Ar年代、およびAHe年代・AFT年代・ZHe年代とも概ね整合的である。

論文

First report of geo- and thermochronological results from the Cordillera Central, Luzon, Philippines

中嶋 徹; 末岡 茂; 長田 充弘; Kohn, B. P.*; Ramos, N. T.*; 堤 浩之*; 田上 高広*

Earth, Planets and Space (Internet), 75(1), p.176_1 - 176_11, 2023/12

 被引用回数:6 パーセンタイル:48.05(Geosciences, Multidisciplinary)

本研究では島弧山地における中間質マグマの貫入と隆起・侵食過程を理解する目的で、フィリピン、ルソン島の中央コルディエラ山地に地質・熱年代測定を適用した。ジルコンU-Pb年代は32.54$$pm$$0.70から6.11$$pm$$0.15(2SE)Maであり、これは第三紀火成活動に伴う中・上部地殻における中間質マグマの断続的な貫入イベントを反映している。ジルコンのフィッション・トラック(ZFT)年代は35.63$$pm$$2.17から6.91$$pm$$0.36(2SE)Maであり、それぞれの試料採取地点におけるジルコンU-Pb年代と対比される。これは中間質マグマが貫入後、即座に250$$sim$$350$$^{circ}$$Cまで冷却したことを反映している。一方、ジルコンとアパタイトの(U-Th-Sm)/He(ZHe, AHe)年代はそれぞれ11.71$$pm$$0.36から8.82$$pm$$0.26Maと9.21$$pm$$0.52から0.98$$pm$$0.088(2SE)Maであり、ジルコンのU-Pb年代やZFT年代よりも若い傾向にある。これは各地点における岩石の冷却速度が低温領域において減少したことを示唆する。そのため、ZFT年代は中間質マグマの初期冷却を、AHe年代は隆起・侵食に伴う冷却をそれぞれ反映していると考えられる。AHe年代の地理的分布は、第四紀に中央コルディエラ山地全体がブロック状に隆起したことを示唆している。

論文

Thermochronology of hydrothermal alteration zones in the Kii Peninsula, southwest Japan; An Attempt for detecting the thermal anomalies and implications to the regional exhumation history

末岡 茂; 岩野 英樹*; 檀原 徹*; 丹羽 正和; 菅野 瑞穂; Kohn, B. P.*; 川村 淳; 横山 立憲; 鏡味 沙耶; 小北 康弘; et al.

Earth, Planets and Space (Internet), 75(1), p.177_1 - 177_24, 2023/12

 被引用回数:4 パーセンタイル:25.83(Geosciences, Multidisciplinary)

紀伊半島本宮地域の熱水変質帯を対象に、熱水活動による母岩への熱影響を評価するため、熱年代解析と流体包有物解析を実施した。流体包有物解析の結果、約150$$^{circ}$$Cと約200$$^{circ}$$Cの熱水活動が認定された。一方、熱年代解析の結果では、いずれの熱年代計でも、熱水脈からの距離に応じた年代の系統的な変化は観察されなかった。すなわち、熱水活動に伴う熱以上は検出できなかった。これらの熱年代は、中期中新世以降の山地隆起に伴う広域的な削剥史を反映していると解釈された。

論文

熱年代学的手法に基づく谷川岳地域の熱史・削剥史の推定

南 沙樹*; 末岡 茂; 福田 将眞; 長田 充弘; Kohn, B. P.*; 横山 立憲; 鏡味 沙耶; 梶田 侑弥*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (35), p.22 - 26, 2022/12

一般的に花崗岩は、地下数kmから数十kmの深部で形成される。したがって、最近形成された若い花崗岩が、現在地表に露出する地域では、極めて急速な隆起・削剥が起きている可能性がある。世界的に見ると、約5Maより若い花崗岩の分布は、変動帯に集中している。変動帯にある日本列島でも、飛騨山脈の黒部川花崗岩や、南部フォッサマグナ地域の丹沢トーナル複合岩体などで、ジルコンU-Pb年代測定(閉鎖温度900$$^{circ}$$C以上)により数Ma以内の若い形成年代が報告されている。本研究の対象地域である谷川岳地域は、東北日本弧南部の背弧側に位置し、その地質は主に、後期白亜紀-古第三紀の花崗岩類と、これらに貫入する鮮新世の谷川岳花崗岩類(赤湯岩体・谷川岩体・巻機岩体)から成る。先行研究では、谷川岳花崗岩類について、形成年代を表すジルコンU-Pb年代(約4.0-3.2Ma)と、約280$$^{circ}$$C付近の冷却年代を表す、ジルコンのフィッション・トラック(ZFT)年代(約3.3-2.9Ma)及び、350-400$$^{circ}$$C付近の黒雲母K-Ar年代(約3.9-3.1Ma)などが報告されている。しかし、約280$$^{circ}$$Cより低温域における熱史は不明である。本研究では、後期白亜紀水上石英閃緑岩と谷川岳花崗岩類について、未測定の地点にU-Pb年代測定を実施し、約200$$^{circ}$$C以下の低温側の熱史・削剥史を推定するためにジルコンとアパタイトの(U-Th)/He年代測定(ZHe年代: 閉鎖温度160-200$$^{circ}$$C、AHe年代: 閉鎖温度55-80$$^{circ}$$C)を実施した。その結果、谷川岳花崗岩類は、ジルコンU-Pb年代測定により、約6.0-3.2Maの間に少なくとも3回の異なる時代の貫入によって形成されたことが明らかとなった。また、最近の山地形成に関連した削剥を最も反映していると期待される、AHe年代の閉鎖温度から地表温度(10$$^{circ}$$C)の平均冷却速度は、山頂稜線の東側に位置する巻機岩体と水上石英閃緑岩で13-36$$^{circ}$$C/Ma、稜線西側の谷川岩体の1地点(AHe年代: 約1.2Ma)で36-60$$^{circ}$$C/Maと推定された。稜線東側では、AHe年代が約3.0-2.0Ma頃に集中しており、この時期の急速な削剥が示唆される。AHe年代から得られた削剥速度について、丹沢山地や東北日本弧と比較すると、谷川岳地域の削剥速度は、島弧-島弧衝突帯の丹沢山地や、歪の集中で知られる奥羽脊梁山地のような地殻変動が活発な地域に匹敵することが示唆された。

論文

ジルコン(U-Th)/He法の年代標準試料の探求(続報); 複数のジルコン試料における年代学的検討

福田 将眞; Kohn, B. P.*; 末岡 茂; 檀原 徹*; 岩野 英樹*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (35), p.7 - 10, 2022/12

ジルコン(U-Th)/He法の年代標準試料を確立する目的で、4つのジルコン試料について(U-Th)/He年代分析を実施した。令和2年度に報告した仁左平ジルコンに引き続いて、3年度は国内の地質試料として、濃飛流紋岩,鷲走ヶ岳月長石流紋岩およびフィッション・トラック法およびU-Pb法の年代標準試料であるMt. Dromedary, OD-3を採用した。結果として、濃飛流紋岩については二次加熱を示唆する年代の若返りが観察されたが、残り3試料については先行研究の既往年代と整合的なデータが得られた。これまで得られている7つのZHeデータを総評すると、先行研究で測定した歌長流紋岩のジルコンが最も単粒子年代のばらつきが小さく、標準試料として適切であると考えられる。今後は、年代のばらつきの原因の探求のため、ジルコン粒子の化学分析や組織観察を行う予定である。

論文

Low-temperature thermochronology of active arc-arc collision zone, South Fossa Magna region, central Japan

末岡 茂; 小林 侑生*; 福田 将眞; Kohn, B. P.*; 横山 立憲; 佐野 直美*; 長谷部 徳子*; 田村 明弘*; 森下 知晃*; 田上 高広*

Tectonophysics, 828, p.229231_1 - 229231_17, 2022/04

 被引用回数:5 パーセンタイル:31.42(Geochemistry & Geophysics)

島弧衝突帯における山地形成史の解明を目的に、中部日本の南部フォッサマグナ地域に低温領域の熱年代学を適用し、冷却・削剥史を推定した。

論文

ジルコン(U-Th)/He法の年代標準試料の探求; 仁左平デイサイトにおける年代学的検討

福田 将眞; 末岡 茂; 菅野 瑞穂; Kohn, B. P.*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (34), p.9 - 13, 2021/12

ジルコン(U-Th)/He(以下、ZHe)法における年代標準試料の確立を目指し、岩手県二戸市周辺から採取した地質試料である仁左平デイサイトについてZHe年代測定を実施した。本試料は、年代学的手法に基づく既往研究が豊富な試料であり、既報年代は22Maから21Ma程度に集中する急冷試料であることが明らかとなっているため、ZHe法についても年代標準試料としての潜在性が期待される。結果として、ZHe年代は21.5$$pm$$0.2Maが得られたが、単粒子年代は40Maから15Ma程度までランダム誤差に起因するとみられる広いばらつきを示した。その原因として、ジルコン中の親核種濃度の不均質や、岩石試料の薄片観察により明らかとなった異質岩片が考えられる。したがって、ZHe法の年代標準試料の適性は低いと判断されたが、既往研究で示されているようにジルコンフィッション・トラック年代やU-Pb年代は年代のまとまりが良いため、これらの分析の標準試料としては適性があると判断できる可能性がある。今後は、U-Pb法などの他の手法で用いられている年代標準試料などを対象にZHe年代標準試料の候補の探求を継続する。

論文

(U-Th)/He thermochronometric mapping across the northeast Japan Arc; Towards understanding mountain building in an island-arc setting

福田 将眞*; 末岡 茂; Kohn, B. P.*; 田上 高広*

Earth, Planets and Space (Internet), 72(1), p.24_1 - 24_19, 2020/12

 被引用回数:8 パーセンタイル:29.98(Geosciences, Multidisciplinary)

島弧の山地形成の解明を目的として、東北日本弧北部において(U-Th)/He熱年代を用いて冷却・削剥史を推定した。10地点の試料から88.6-0.9Maのアパタイト年代、83.9-7.4Maのジルコン年代が得られた。アパタイト年代から推定した削剥速度は、前弧側で$$<$$0.05mm/yrと低い値を示し、古第三紀以降の緩慢な削剥が推測された。一方、奥羽脊梁山地と背弧側では0.1-1.0mm/yr以上の削剥速度が得られ、3-2Ma以降の隆起イベントを反映していると考えられる。このような削剥史の対照性は、東北日本弧南部における先行研究の結果と整合的で、主にプレート沈み込みに起因した東北日本弧全体に共通の性質だと考えられる。一方で、特に背弧側では削剥速度の南北差が大きく、hot fingersのような島弧直交方向の構造の影響が示唆された。

論文

熱年代学を用いた北上山地の隆起・削剥史の推定

梶田 侑弥*; 福田 将眞; 末岡 茂; 長谷部 徳子*; 田村 明弘*; 森下 知晃*; Kohn, B. P.*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (33), p.28 - 30, 2020/10

東北日本弧前弧域に分布する北上山地を対象に、熱年代学的手法を用いて山地の熱史・削剥史を検討した。北上山地を東西に横断する方向にアパタイトのFT法および(U-Th-Sm)/He法を実施した結果、既報年代と併せると、FT年代では東側から西側にかけて系統的に若い年代の傾向を示すのに対し、(U-Th-Sm)/He法では西縁で最も古い年代が検出され、以東ではほぼ一様な年代を示した。今後はより詳細に北上山地の熱史の傾向を議論するため、火山フロントの位置がほぼ現在の位置にあったとされる、1千万年以降の年代が期待できる熱年代学的手法の適用を予定している。

論文

First report of (U-Th)/He thermochronometric data across Northeast Japan Arc; Implications for the long-term inelastic deformation

末岡 茂; 田上 高広*; Kohn, B.*

Earth, Planets and Space (Internet), 69(1), p.79_1 - 79_18, 2017/12

 被引用回数:11 パーセンタイル:29.88(Geosciences, Multidisciplinary)

東北日本弧の地質時間スケールにおける変形像解明のため、島弧横断方向に(U-Th)/He年代測定を実施した。アパタイト(U-Th)/He年代では52-1.5Ma、ジルコン(U-Th)/He年代では39.6-11.0Maの加重平均年代が得られた。前弧側の阿武隈山地は52-49.6Maの比較的古い年代を示し、新生代ほぼ全体を通じて安定な地質環境(削剥速度:約0.01-0.1mm/yr)だったと推定された。対照的に、奥羽脊梁山地や背弧側の朝日山地は11.2-1.5Maの若い年代を示し、日本海拡大以降の山地形成による急冷(削剥速度:約0.1-1mm/yr)を反映していると解釈できる。奥羽脊梁山地(あるいは朝日山地も)では山頂側でより大きな削剥速度が推定され、西南日本弧の断層地塊山地とは異なる隆起・削剥様式を有している可能性が指摘された。以上の成果は、典型的な島弧である東北日本弧でも、熱年代に基づいた山地の隆起・削剥史解析が有効であることを示している。

論文

Uplift and denudation history of the Akaishi Range, a thrust block formed by arc-arc collision in central Japan; Insights from low-temperature thermochronometry and thermokinematic modeling

末岡 茂; 池田 安隆*; 狩野 謙一*; 堤 浩之*; 田上 高広*; Kohn, B. P.*; 長谷部 徳子*; 田村 明弘*; 荒井 章司*; 柴田 健二*

Journal of Geophysical Research; Solid Earth, 122(8), p.6787 - 6810, 2017/08

複数の熱年代学的手法とthermo-kinematicモデリングを用いて赤石山脈の削剥史を検討した。熱年代は東に向かって系統的に若返り、赤石山脈北部は東縁に分布する糸魚川-静岡構造線の活動によって隆起した可能性が示唆された。Thermo-kinematicモデリングによって詳細な検討を加えた結果、糸魚川-静岡構造線の変位速度が5-10mm/yr、傾斜が27-45度、デコルマ深度が20-25kmのとき、熱年代測定結果と既存の地形・地球物理データを矛盾なく説明できることが確認できた。隆起速度と削剥速度は約4mm/yrと推定された。一方、赤石山脈南部は、先行研究による少数の熱年代データは北部と異なる値を示しているほか、地形・地質構造等の違いを考慮すると、北部とは別の時期・メカニズムによって隆起している可能性がある。

論文

新学術「地殻ダイナミクス」の概要と熱年代学による貢献

田上 高広*; 末岡 茂; Kohn, B. P.*; 福田 将眞*

フィッション・トラックニュースレター, (29), p.1 - 2, 2016/12

新学術研究「地殻ダイナミクス」は2014年度から開始された分野横断型の学術研究プロジェクトで、東北地方太平洋沖地震が起こったテクトニックな背景の解明のために、島弧地殻の基本的な特性や状態の理解を目指している。そのうち、「A02異なる時空間スケールにおける日本列島の変形場の解明」班では、様々な時空間スケールにおける歪・歪速度場の推定と統一的な理解を目指している。われわれは、近年進展の著しい低温領域の熱年代学手法を用いて、地質学的時間スケール(10$$^{5}$$$$sim$$10$$^{7}$$年)の鉛直歪速度の復元を行っている。日本列島における既存の熱年代データのコンパイル、奥羽脊梁山脈の解析、飛騨山脈の解析の3つについて、概要と最新の成果を報告する。

口頭

奥羽脊梁山地はドーム状に隆起してきた?; 低温領域の熱年代マッピングに基づく知見

福田 将眞*; 末岡 茂; Kohn, B.*; 田上 高広*

no journal, , 

奥羽脊梁山地の隆起様式の制約のため、低温領域の熱年代学的手法による検討を実施した。アパタイト(U-Th)/He年代およびアパタイトフィッション・トラック年代に基づくと、山麓から山地中央に向かって削剥速度が増加する傾向が認められた。斜面発達の式を用いた数値計算結果と比較すると、このような削剥速度分布は、傾動pop-upモデルよりも、ドーム状隆起モデルと整合的である。

口頭

東北日本弧前弧域における熱年代学的研究

梶田 侑弥*; 末岡 茂; 福田 将眞*; 長谷部 徳子*; 田村 明弘*; 森下 知晃*; Kohn, B. P.*; 横山 立憲; 田上 高広*

no journal, , 

東北日本弧前弧域の北上山地と阿武隈山地における隆起・削剥史の定量的解明を目的として、熱年代学(アパタイトフィッション・トラック法, アパタイト(U-Th)/He法, ジルコンU-Pb法)による検討を実施した。北上山地においては、アパタイトフィッション・トラック年代は東に向かって古くなる傾向を示した一方で、アパタイト(U-Th)/He年代は最も西側の一点を除いて約40Maで一定の値を取っており、隆起様式が時間変化した可能性が示唆された。阿武隈山地では、畑川構造線より西側で若い冷却年代が得られ、畑川構造線に沿った上下変位の影響が考えられる。

口頭

Uplift and denudation history of the South Fossa Magna region using low-temperature thermochronometric methods

小林 侑生*; 末岡 茂; 福田 将眞*; Kohn, B. P.*; 横山 立憲; 長谷部 徳子*; 田村 明弘*; 森下 知晃*; 田上 高広*

no journal, , 

南部フォッサマグナ地域は、本州弧と伊豆弧の衝突帯である。中期中新世以降、伊豆弧の地殻ブロックによる最大4回の衝突イベントにより、本地域の地質構造は改変されてきたと考えられているが、各衝突イベントの時期や影響については議論の余地がある。本研究では、本地域の山地の隆起・削剥史の解明を目的として、熱年代学的手法(アパタイトフィッション・トラック法, アパタイト(U-Th)/He法, ジルコンU-Pb法)による検討を行った。アパタイトフィッション・トラックデータを基にした熱史逆解析や、アパタイト(U-Th)/He年代測定の結果によれば、関東山地南部と奥秩父地域では約3Ma、関東山地北部と身延地域では約1Maの急冷イベントが認められた。これらの急冷イベントは、丹沢ブロックと伊豆ブロックの衝突時期に対応しており、これらの衝突イベントに関連している可能性がある。

口頭

熱年代学を用いた北上山地の隆起・削剥史の推定

梶田 侑弥*; 末岡 茂; 福田 将眞*; 長谷部 徳子*; 田村 明弘*; 森下 知晃*; Kohn, B.*; 田上 高広*

no journal, , 

島弧地域のテクトニクス解明のため、東北日本弧前弧域の北上山地を対象に、熱年代学の手法で隆起・削剥史の推定を行った。アパタイトFT年代は89.1-79.6Ma、アパタイト(U-Th)/He年代は51.2-36.1Maの値が得られた。先行研究のデータも含めると、アパタイトFT年代は西から東に古くなるのに対して、アパタイト(U-Th)/He年代は約40Maでほぼ一定の値を示した。山地内で地温構造が一様だと仮定すると、北上山地の隆起形態は時代によって変化している可能性が考えられる。

口頭

糸静線南部の活動と赤石山脈北部の隆起・削剥史; 低温領域の熱年代とthermo-kinematicモデルによる検討

末岡 茂; 池田 安隆*; 狩野 謙一*; 堤 浩之*; 田上 高広*; Kohn, B.*; 長谷部 徳子*; 田村 明弘*; 荒井 章司*; 柴田 健二*

no journal, , 

フィッション・トラック法、(U-Th)/He法、U-Pb法などの熱年代学的手法と、thermo-kinematicモデルを用いて、赤石山脈北部の隆起・削剥史と、糸静線南部の断層活動との関係について検討した。各年代値は、おおむね白州$$sim$$鳳凰山断層に向かって東方に若返る傾向を示し、これらの断層活動が山地の隆起に最も寄与していると考えられる。Thermo-kinematicモデルによるより詳細な検討結果によれば、変位速度が5$$sim$$10mm/yr、rampの傾斜が27$$sim$$45$$^{circ}$$、デコルマの深度が20$$sim$$25kmのflat-ramp構造を仮定すると、今回得られた年代値および既報の断層パラメータ等を齟齬なく説明できる。

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