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武地 誠一*; 辻 英樹*; 越川 昌美*; 伊藤 祥子*; 舟木 泰智; 林 誠二*
陸水学雑誌, 82(1), p.1 - 16, 2021/02
2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、同原子力発電所に近いダム湖では放射性Csを含む土壌鉱物や有機物が集水域の山林から湖底へ移動・沈積し、今後ダム湖底質から放射性Csが徐々に湖水に溶出することで、ダム湖やダム下流域における淡水生態系の放射能汚染が長期化することが懸念される。本研究では、森林からダム湖へ流入・沈積する土砂に含まれる生物利用性放射性Cs量の経時変化の把握を目的として、福島県南相馬市の横川ダム湖を対象に、ダム湖流入河川における浮遊性懸濁物質ならびにダム湖心部における不撹乱底質を約4年にわたって採取し、試料中の交換態・酸化物態・有機態の放射性Cs濃度をBCR変法による逐次抽出試験によって評価した。
辻 英樹*; 越川 昌美*; 伊藤 祥子*; 舟木 泰智; 飯島 和毅; 保高 徹生*
no journal, ,
本研究では、ダム湖底質を用いた模擬湖水抽出試験、および逐次抽出試験によって底質における放射性Cs溶出特性の確認を行った。模擬湖水抽出試験の結果、溶出したCs濃度はダム湖水の現場濃度(0.1-0.4Bq/L)よりやや高い1.2-1.5Bq/Lであった。現場では静置条件かつ25度以下の水温で溶出するため、実際の溶出濃度は模擬湖水試験の結果より低くなると考えられる。また、底質と溶存態間のCsの分配係数Kdは中流の方が下流より小さいことから、中流では抽出されやすい形態として放射性Csが堆積していることが示唆された。逐次抽出試験の結果、底質中Csの10-30%が溶出可能な形態として存在するという結果が得られ、模擬湖水の結果と同様に、下流に比べて中流の方が抽出されやすい傾向が見られた。特に有機態+硫化物態の割合が高かったことから、中流から下流にかけての有機物または硫化物の蓄積量の低下が分配係数上昇の結果に寄与していることが示唆された。