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溝手 範人*; 片貝 秋雄; 玉田 正男; 松岡 広成*
Journal of Applied Polymer Science, 117(5), p.2825 - 2830, 2010/09
自動車用ワイパーゴムの表面改質として塩素処理が行われているが、この処理プロセスは、塩素,酸廃液の発生など環境負荷の問題を抱えている。一方、ゴムの滑り摩擦において、ウェット摩擦状態からドライ摩擦状態へ移行する瞬間に、摩擦極大ピークが起こるセミドライ摩擦は、雨上がりに自動車のワイパー払拭において見られる現象で、駆動モーターに負荷を与える。本研究では、これらの問題を解決する新規な技術として、親水性モノマーである2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA),疎水性モノマーである3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(MPTS)を電子線同時照射グラフト重合により加硫ゴム表面の親水化及び疎水化を行い、組成比と水の接触角及びセミドライ摩擦との相関を調べた。HEMAとMPTSのグラフト重合の結果、モノマー濃度と照射線量が増加するのにしたがって、組成比は増大した。HEMAのグラフト重合で接触角は約70まで減少し、MPTSのグラフト重合で接触角は約108まで増加した。セミドライの瞬間における摩擦挙動は、最大摩擦とドライ摩擦係数の差、で評価した。MPTSのグラフト重合によって疎水化した加硫ゴムの接触角は増加し、は減少した。一方、HEMAのグラフト重合によって親水化した加硫ゴムの接触角は減少し、は増加した。
溝手 範人*; 片貝 秋雄; 玉田 正男; 松岡 広成*
no journal, ,
ゴムの滑り摩擦において、ウェット摩擦状態からドライ摩擦状態へ移行する瞬間に、摩擦極大ピークが起こるセミドライ摩擦は、雨上がりに自動車のワイパー払拭において見られる現象で、駆動モーターに過負荷を与える。本研究では、疎水性モノマーである3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(MPTS)の電子線同時照射グラフト重合により加硫ゴム表面の疎水化を行い、水との接触角とセミドライ摩擦の相関を調べた。MPTSをグラフト重合した加硫ゴム表面の接触角は、グラフト重合の進行に伴って大きくなり、グラフト率0.5%で107度まで増大した。この結果から、MPTSのグラフト重合により加硫ゴム表面の疎水化が可能であることが明らかになった。次にMPTSのグラフトにより疎水化した加硫ゴムの接触角と(セミドライ摩擦係数とドライ摩擦係数との差)との関係を調べた。疎水化により接触角が大きくなるとが小さくなってセミドライ摩擦状態を抑制できることが明らかになり、雨上がりのワイパーシステムの払拭負荷を低減化できる見通しが得られた。
溝手 範人*; 片貝 秋雄; 玉田 正男; 松岡 広成*
no journal, ,
ゴムの滑り摩擦において、ウェット摩擦から乾燥摩擦へ移行した直後から摩擦極大ピークが発生し、雨上がりの自動車ワイパー駆動モーターへの過負荷を与える。本研究では電子線同時照射グラフト法により加硫ゴム表面の親水化を行い、親水性とセミドライ摩擦の相関について調べた。2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)のグラフト率は520kGyと照射線量の増加に伴って大きくなり、最大1.8%まで達した。また、10kGy以上ではモノマー濃度が3070wt%と高いほどグラフト率は大きくなり、HEMAのグラフト率は照射線量とモノマー濃度により0.51.8%の範囲で制御できることがわかった。HEMAのグラフト率が1.8%まで増大した時、接触角は70度まで低下する。この結果から、HEMAのグラフトにより加硫ゴム表面の親水化が可能になった。親水化した加硫天然ゴム及び疎水化した加硫天然ゴムの最大摩擦係数と乾燥摩擦係数との差を表すデルタと接触角の関係を比較検討した結果、疎水化では接触角が大きくなるとデルタが小さくなり、逆に親水化で接触角が小さくなるとデルタが大きくなることがわかった。このことから、電子線同時照射グラフト法により、セミドライ摩擦状態を制御できることが確認できた。HEMAのグラフトによる親水化によってセミドライ摩擦は増加するが、一方でワイパーシステムの払拭性が改善された。