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佐伯 盛久*; 松村 大樹; 中西 隆造*; 蓬田 匠; 辻 卓也; 齋藤 寛之*; 大場 弘則*
Journal of Physical Chemistry C, 126(12), p.5607 - 5616, 2022/03
被引用回数:1 パーセンタイル:14.66(Chemistry, Physical)パルス紫外線レーザー照射によって引き起こされるRhイオン錯体のRh種への直接光還元反応機構を、分散型X線吸収微細構造(DXAFS)分光法によって調べた。時間分解X線吸収端近傍構造(XANES)には等吸収点がなく、Rhの直接光還元に2種類以上のRhが寄与することを示した。時間分解XANESデータの特異値解析から、直接光還元には3つのRh種が関与することが示唆された。時間分解XANESデータを、交互最小二乗法による多変量解析(MCR-ALS)により解析したところ、3つのRh種の純粋なスペクトルと濃度プロファイルが得られた。Rh種は、3つのXANESスペクトルの特徴から、Rh, Rh, Rh種に分類できた。得られた濃度プロファイルから、Rhの直接光還元はRh Rh Rhの順で進行することが示唆され、RhとRhの光還元、RhとRhの光による自己触媒的還元、Rhの光酸化による反応機構により、3種のRhの濃度プロファイルがよく再現できることが示された。
佐伯 盛久*; 蓬田 匠; 松村 大樹; 斉藤 拓巳*; 中西 隆造*; 辻 卓也; 大場 弘則*
Analytical Sciences, 36(11), p.1371 - 1378, 2020/11
被引用回数:2 パーセンタイル:10(Chemistry, Analytical)モリブデンイオンMoO水溶液に酸を加えると、複数のモリブデン原子が酸素を介して結合したポリモリブデン酸が形成され、さらに酸濃度に応じてポリモリブデン酸の化学形態は大きく変化する。我々は、これまで研究例の少なかった高酸性水溶液中(0.15-4.0M)でのポリモリブデン酸の化学形態を、ラマン分光法およびX線吸収微細構造(XAFS)分光法により調べ、測定したスペクトルを多変量スペクトル分解法(MCR-ALS)により解析した。MCR-ALS解析では実験データ解析により得られるスペクトルの任意性が問題になり、XAFSデータのみの解析ではこれが顕著になるが、XAFSデータとラマンデータを同時にMCR-ALS解析することで、信頼性の高い3成分のXAFSスペクトルを得ることに成功した。構造解析の結果から、硝酸濃度が高くなるにつれポリモリブデン酸の化学種が[MoO(HO)][MoO(HO)][HMoO(HO)]へと変化する様子を明らかにした。
長尾 郁弥; 新里 忠史; 佐々木 祥人; 伊藤 聡美; 渡辺 貴善; 土肥 輝美; 中西 貴宏; 佐久間 一幸; 萩原 大樹; 舟木 泰智; et al.
JAEA-Research 2020-007, 249 Pages, 2020/10
2011年3月11日に発生した太平洋三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波により、東京電力(現東京電力ホールディングス)福島第一原子力発電所の事故が発生し、その結果、環境中へ大量の放射性物質が放出された。この事故により放出された放射性核種は、その大部分が森林に沈着している。これに対し、面積が広大であり大量の除去土壌などが生じる、多面的な森林の機能が損なわれる可能性があるなどの問題があり、生活圏近傍を除き、汚染された森林の具体的な除染計画はない。そのため、未除染の森林から放射性セシウムが流出し、既に除染された生活圏に流入することで空間線量率が上がってしまうのではないか(外部被ばくに関する懸念)、森林から河川に流出した放射性セシウムが農林水産物に取り込まれることで被ばくするのではないか、規制基準値を超えて出荷できないのではないか(内部被ばくに関する懸念)などの懸念があり、避難住民の帰還や産業再開の妨げとなる可能性があった。日本原子力研究開発機構では、環境中に放出された放射性物質、特に放射性セシウムの移動挙動に関する「長期環境動態研究」を2012年11月より実施している。この目的は、自治体の施策立案を科学的側面から補助する、住民の環境安全に関する不安を低減し、帰還や産業再開を促進するといった点にある。本報告書は、原子力機構が福島県で実施した環境動態研究におけるこれまでの研究成果について取りまとめたものである。
長尾 郁弥; 新里 忠史; 佐々木 祥人; 伊藤 聡美; 渡辺 貴善; 土肥 輝美; 中西 貴宏; 佐久間 一幸; 萩原 大樹; 舟木 泰智; et al.
JAEA-Research 2019-002, 235 Pages, 2019/08
2011年3月11日に発生した太平洋三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波により、東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生し、その結果、環境中へ大量の放射性物質が放出され、その大部分が森林に沈着している。これに対し、面積が広大であり大量の除去土壌等が生じる、多面的な森林の機能が損なわれる可能性があるなどの問題があり、生活圏近傍を除き、汚染された森林の具体的な除染計画はない。そのため、未除染の森林から放射性セシウムが流出し、既に除染された生活圏に流入することに対する懸念があり、避難住民の帰還や産業再開の妨げとなる可能性があった。原子力機構では、環境中に放出された放射性物質、特に放射性セシウムの移動挙動に関する「長期環境動態研究」を2012年11月より実施している。この目的は、自治体の施策立案を科学的側面から補助する、住民の環境安全に関する不安を低減し、帰還や産業再開を促進するといった点にある。本報告書は、原子力機構が福島県で実施した環境動態研究におけるこれまでの研究成果について取りまとめたものである。
佐伯 盛久*; 松村 大樹; 蓬田 匠; 田口 富嗣*; 辻 卓也; 齋藤 寛之*; 大場 弘則*
Journal of Physical Chemistry C, 123(1), p.817 - 824, 2019/01
被引用回数:14 パーセンタイル:53.94(Chemistry, Physical)PdCl水溶液にパルスレーザーを照射した際の、パラジウム(Pd)微粒子の形成反応メカニズムを透過型電子顕微鏡(TEM)、およびエネルギー分散型X線吸収分光法(DXAFS)を用いて調べた。266 nmの波長のナノ秒レーザー照射により形成されたPd微粒子をTEMにより観測した結果、微粒子径が照射レーザーのフルエンスに依存し、高フルエンスのレーザー照射が微粒子形成を促進することを明らかにした。DXAFSの結果よりPdの濃度を算出し、Finke-Watzkyの二段階反応に基づいた解析を行った。その結果、照射するレーザーのフォトンは、1光子過程のPdClの還元と、多光子過程のPd微粒子の自己触媒的な成長に寄与することを見出した。
市川 健太*; 神田 大徳; 吉岡 直樹*; 荒 邦章; 斉藤 淳一; 永井 桂一
Proceedings of 26th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-26) (Internet), 6 Pages, 2018/07
ナトリウム自身の反応抑制の研究は、液体ナトリウム(ナトリウムナノ流体)中へのナノ粒子分散の概念に基づいてなされた。ナトリウムナノ流体の実験結果から、ナノ流体の水反応の反応速度と反応熱量はナトリウムのそれらより低いことが明らかになった。ナトリウムナノ流体-水反応ジェットのピークの温度の解析モデルは、われわれによって前述の抑制効果を考慮して開発された。本論文では反応ジェットのピークの温度予測に、この解析モデルを適用し蒸気発生器伝熱管断裂(SGTR)事故の隣接した伝熱管損傷の緩和効果の予測方法を準備した。ナトリウムナノ流体がナトリウム高速炉の2次系冷却材のために使われるとして、設計基準事故事象の緩和効果とSGTRの設計拡張状態をこの方法を用いて推定した。その結果、2次系冷却材でナトリウムナノ流体を用いて損傷を受けた伝熱管の数を減らし、SGTR事故によって発生する圧力を抑制する可能性が得られた。
鶴田 忠彦; 新里 忠史; 中西 貴宏; 土肥 輝美; 中間 茂雄; 舟木 泰智; 御園生 敏治; 大山 卓也; 操上 広志; 林 誠二*; et al.
JAEA-Review 2017-018, 86 Pages, 2017/10
2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故以降、福島環境安全センターでは、福島の環境回復に向けた取組みとして、事故により環境中に放出された放射性物質のうち特に放射性セシウムの分布状況を評価し将来予測を行うとともに、森林から河川水系を経て海洋に至る環境や我々の生活圏での放射性セシウムの移動状況に係る調査研究「環境動態研究」に取り組んでいる。この度、最新の成果をとりまとめるとともに他機関の関連する最新の成果も参照しまとめたことから、研究成果報告書類として報告する。なお、本成果は、外部への情報発信の一つである福島部門ウェブサイトにおけるQAページを、根拠情報となる科学的知見を含め「根拠に基づく情報発信」として更新するにあたり、コンテンツとして活用されるものである。
小林 正起*; 丹羽 秀治*; 斎藤 信*; 原田 慈久*; 尾嶋 正治*; 大渕 博宣*; 寺倉 清之*; 池田 隆司; 腰越 悠香*; 尾崎 純一*; et al.
Electrochimica Acta, 74, p.254 - 259, 2012/07
被引用回数:52 パーセンタイル:80.98(Electrochemistry)鉄フタロシアニンとフェノール樹脂の混合物を800Cで焼成して得た炭素触媒における酸素還元活性に対する鉄の役割を明らかにすることを目的に残存鉄の電子構造をXAFS実験により酸洗いの前後で調べた。鉄のK端X線発光強度から酸洗いにより炭素触媒の残存鉄が36%減少することがわかった。XAFSスペクトルから鉄の成分が酸洗いにより変化しないことが明らかになった。これは鉄の化学状態によらず酸洗いにより残存鉄が取り除かれることを示唆する。酸洗いにより酸素還元能がほぼ不変であることから残存鉄は炭素触媒の酸素還元活性に直接寄与しておらず、おもに熱分解時にsp炭素のネットワーク構造を成長させる触媒として働くと考えられる。本研究の結果は鉄フタロシアニン由来の炭素触媒における酸素還元活点は炭素や窒素といった軽元素であることを示唆している。
徳永 陽; 齋藤 庸*; 酒井 宏典; 神戸 振作; 眞田 直幸*; 綿貫 竜太*; 鈴木 和也*; 川崎 裕*; 岸本 豊*
Physical Review B, 84(21), p.214403_1 - 214403_7, 2011/12
被引用回数:8 パーセンタイル:36.17(Materials Science, Multidisciplinary)本論文はTbCoGaにおいて特異な磁気構造が実現していることをGa核のNMR研究により明らかにしたものである。TbCoGaは単純な結晶構造にもかかわらず低温で非常に複雑な磁性を持ち、その起源として磁気双極子と電気四極子相互作用の競合という新規なメカニズムが提唱されていた。本研究によりこの物質の基底状態における磁気秩序構造が初めて明らかになった。同定された磁気構造は2つの波数ベクトルを持ったノンコリニアー型の構造であり、この特異な磁気構造はこの物質における複雑な電子間相互作用の存在を示している。本論文ではその起源の一つとして、上記の磁気双極子と電気四極子相互作用の競合に加え、TbGa正方格子内に内在する磁気的なフラストレーションの可能性を新たに指摘した。
齋藤 宏則*; 武田 聖司; 木村 英雄
JAEA-Research 2011-032, 92 Pages, 2011/11
高レベル放射性廃棄物やTRU廃棄物の地層処分の安全評価において、放射性核種により汚染した河川水や土壌を利用して農作物を栽培し、その農作物を摂取することを想定した人間への被ばくに関するシナリオ(農作物摂取被ばく経路)は、多くの核種において支配的な被ばくの経路と試算されており、その評価に用いられる農作物への移行係数は重要なパラメータの1つである。本報告では、農作物への移行係数の不確実性の要因分析に必要なデータベースの改良を行うとともに、移行係数の不確実性に影響を与える可能性のある要因に対し、データベースに格納されたデータから移行係数の各要因の依存性について確認を行った。さらに、その要因分析の結果を踏まえ、一般的な生活習慣と条件をもとに様式化された場合に対する農作物への移行係数の不確実性の推定方法を検討し、その推定方法に基づいてHLW及びTRU廃棄物の評価対象の放射性核種に対し移行係数の選定値(代表値)と変動範囲の推定を試行した。
米田 安宏; 齋藤 寛之; 吉井 賢資; 西田 貴司*; 早川 弘毅*; 池田 直*
Key Engineering Materials, 421-422, p.30 - 33, 2010/00
高温高圧合成によってBi(MgTi)Oを作製した。常圧合成ではBiO, TiOとMgOの混合粉体を固相反応法によって焼結してもペロブスカイト構造のサンプルは得られない。常圧合成では層状ビスマス化合物の方が安定だからである。高圧合成によって得られたBi(MgTi)Oは若干の不純物が存在するもののrhombohedral構造を示していた。不純物の影響でleakyなD-Eループしか得ることができなかったが、今後、純度が向上すれば非鉛圧電体の有力なエンドメンバーとなることが期待できる。
竹田 幸治; 岡根 哲夫; 大河内 拓雄; 小林 正起*; 藤森 伸一; 斎藤 祐児; 山上 浩志; 藤森 淳; 池田 修悟; 酒井 宏典; et al.
no journal, ,
今回われわれはUXY(X, Y=S, Se, Te)のうち、UTeSとUSeSに対してU 5f電子状態を調べるために、SPring-8のBL23SUのSXPES, XMCD実験ステーションにおいて、軟X線光電子分光(SXPES),内殻吸収磁気円二色性(XMCD)の測定を行った。UTeSのPES実験から、U 5f電子状態がフェルミ準位から約750meV深い価電子帯にあることがわかった。これはこれまでに報告されているほかの金属ウラン化合物の状態密度と異なり、フェルミ準位から大きく隔てたところに位置し、フェルミ準位上に状態密度がほとんどない少数キャリア系であることがわかった。またU N4,5吸収端における吸収(XAS)スペクトルとXMCDスペクトルの形状はウランモノカルコゲナイドと非常に似ている。XASスペクトルのカルコゲン依存性の傾向もウランモノカルコゲナイド化合物の傾向と類似しており、SeからTeに変わるとU5f電子数がわずかに増加していることを表している。
竹田 幸治; 岡根 哲夫; 大河内 拓雄; 小林 正起*; 藤森 伸一; 斎藤 祐児; 山上 浩志; 藤森 淳; 池田 修悟*; 酒井 宏典; et al.
no journal, ,
ウランミックスドカルコゲナイドUXcYc(Xc, Yc=S, Se, Te)は少数キャリア系でありながら強磁性を示す珍しい物質群である。今回、われわれはUS2(常磁性), USeS(強磁性TC=24K), UTeS(強磁性TC=87K)について、軟X線光電子分光(SXPES),軟X線磁気円二色性(XMCD)を用いて、これらの電子状態を調べた。SXPESの結果からはウラン5f電子状態がフェルミ準位に近いほうが強磁性状態が安定化する傾向がわかった。XMCDの結果からはウラン化合物に共通して見られるスペクトル形状が見られたこと、非磁性のリガンドサイトにもXMCDシグナルが観測され、強磁性発現機構解明への重要な知見が得られた。
山口 耕平; 本田 明; 稲垣 学; 油井 三和; 齋藤 宏則*
no journal, ,
国際共同研究LCS(Long-term Cement Study)の一環として、花崗岩中の天然亀裂コアへの高pH溶液の通水実験結果(Mader et al., 2006)を用いて、化学反応とこれに伴う物質輸送特性の変化に関するベンチマーク解析を行った。その結果、実験的に観察された閉塞傾向を、物質輸送・化学反応連成モデルにより再現することができた。
下田 紗音子*; 齋藤 宏則*; 高瀬 敏郎*; 山口 耕平; 小田 治恵; 本田 明
no journal, ,
放射性廃棄物地層処分施設からセメント系材料由来の高アルカリ性地下水が周辺の岩盤へ浸入した場合、熱力学的に不安定な初生鉱物の溶解・熱力学的により安定な二次的な鉱物の沈殿が起こる。そのため、溶解沈殿に伴い岩盤中の間隙構造が変化し、岩盤の物質輸送特性が変化する。性能評価のため、上記変化を化学反応/物質輸送連成解析で評価する必要がある。その解析のために化学反応スキームを決定することが必要である。しかし化学組成の点では二次鉱物の組合せは無数に存在する。そのため、既往の知見(室内実験や自然の類似現象)に基づき化学反応スキームを、鉱物変遷シナリオにまとめ、解析ケース設定に反映することで、花崗岩を例として、高アルカリ性地下水との反応に関する鉱物変遷シナリオを提示した。変遷経路の異なる複数のシナリオを準備することにより、鉱物変遷に関する不確実性に対処した。
竹田 幸治; 岡根 哲夫; 大河内 拓雄*; 藤森 伸一; 斎藤 祐児; 山上 浩志; 藤森 淳*; 池田 修悟*; 酒井 宏典; 芳賀 芳範; et al.
no journal, ,
ウラン化合物強磁性体はほとんどが金属であるが、USX(X=S, Se, Te)は少数キャリア系でかつ強磁性を示す珍しい物質であることから、ウラン化合物の強磁性起源を知るうえでも重要な物質である。本研究では、この物質の電子状態を軟X線光電子分光と磁気円二色性を用いて調べた。光電子分光実験からは、少数キャリアを反映して、フェルミ準位にほとんど状態密度のない価電子帯スペクトルが得られ、かつキャリア濃度とウラン5f電子状態の価電子帯における束縛エネルギーに明瞭な相関が観測された。さらに、強磁性転移に伴うフェルミ準位近傍における電子状態の変化も観測された。磁気円二色性実験からは、金属強磁性体であるウランモノカルコゲナイドに対する以前の結果と酷似したスペクトルが得られた。これらの結果は価電子帯における5f電子状態は金属強磁性体と少数キャリア系強磁性体で異なるにもかかわらずスピン電子状態はよく似ているというウラン化合物強磁性体に対する新しい知見が得られた。
遠藤 聖*; 中井 啓*; 吉田 文代*; 白川 真*; 山本 哲哉*; 松村 明*; 澤幡 浩之*; 川手 稔*; 斎藤 公明; 熊田 博明; et al.
no journal, ,
原子炉JRR-4施設における小動物照射は、動物実験における倫理的側面,設備,人員などの諸課題について検討、解決しながら実施する必要がある。従来の放射線管理のみの物質照射と比較し、管理運営上の課題が多い。しかしながら、BNCTの新規薬剤合成、あるいは照射技術の改良などには、腫瘍増殖抑制試験といった少なくとも小動物を用いた実験が必須であると考えられる。原子力機構、小動物照射にかかわる国内研究グループ及び東京大学大学開放研究室が協力連携し、中性子ビーム設備を利用した新しい小動物照射装置の開発に取り組んでいる。この装置は、既存の配管や孔などを利用したレール方式で、他の照射を行いながら一度に46匹程度を照射できるものである。これまでは、限られた利用日に小動物実験を実施してきたが、利用日の制限が緩和されることが予想される。本報告は、JRR-4における小動物照射の現状と課題を検討したものである。
齋藤 宏則; 武田 聖司; 木村 英雄
no journal, ,
高レベル放射性廃棄物及びTRU廃棄物の地層処分の長期的な安全評価では、人間の生活環境における動植物等の関与も含む放射性核種の移行と、人間が被ばくするまでの経路や被ばくの形態を考慮した放射線影響評価(生物圏評価)が必要である。本報告では、地層処分の安全審査時に事業者の行う安全評価結果の妥当性を判断するための手法整備の一環として、生物圏評価において重要なパラメータの1つである核種の農作物への移行係数の不確実性を評価する方法について検討した。検討の結果、移行係数に対して影響の大きい主な変動要因を把握し、その要因による不確実性を考慮したパラメータの設定方法を提案するとともに、地層処分の評価対象元素に対する評価パラメータの代表値とその変動幅を設定した。
徳永 陽; 酒井 宏典; 齋藤 庸; 神戸 振作; 酒井 明人*; 中辻 知*
no journal, ,
PrTiAlは立方晶の結晶構造を持ち、2K付近で相転移を示す。帯磁率及び比熱の温度依存性から、Prの結晶場基底は非磁性の二重項と考えられ、このことは低温相転移の起源が通常の磁気秩序ではなく、多極子秩序であることを示唆している。現在、われわれはこの相転移の起源を明らかにするため、PrTiAlにおいてNMR及びNQRによる微視的研究を進めている。これまで単結晶でのAl-NMR測定とゼロ磁場でのAl-NQR測定を行った。講演では各サイトでのNMR/NQRスペクトル及びスピン-格子緩和時間の温度依存性から、この系の低温での電子状態について議論する。
齋藤 庸; 酒井 宏典; 徳永 陽; 神戸 振作
no journal, ,
HoCoGa型(P4/mmm)の構造を持つ化合物であるTbCoGaは、転移温度T=35.5K, T=5.2Kを持ち、それらの各温度において結晶中のc方向成分とab面内成分がそれぞれ秩序化するという、いわゆる部分成分磁気秩序状態の可能性が報告されている。これまで部分成分磁気秩序を実現する系としては三角格子反強磁性体CsNiClなどといった幾何学的フラストレーションを持つ系で提唱されたが、TbCoGaのような比較的単純な構造を持つ系が部分成分磁気秩序を実現するためには幾何学的フラストレーション系とは異なる発現メカニズムが存在するものと考えられる。現在局在f電子が持つ磁気相互作用と電気四極子相互作用の競合がそのメカニズムとして提唱されている。本研究はTbCoGaが高温から低温に至るまでどのような磁気状態を示すのか、特に2つの転移温度に挟まれた中間層においてはどのようなメカニズムで部分成分磁気秩序状態が形成されているのかをNMR/NQRを用いて微視的観点から明らかにしようとするものである。当日はおもに最近行った零磁場Ga核NQR測定の結果について報告する。