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論文

Spontaneous magnetization curve of $$alpha$$-iron at high pressures determined using ${it in situ}$ neutron diffraction

青木 勝敏*; 高野 将大*; 福山 鴻*; 鍵 裕之*; 町田 晃彦*; 齋藤 寛之*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 舟越 賢一*

Physical Review B, 113(18), p.184440_1 - 184440_6, 2026/05

 被引用回数:1 パーセンタイル:78.36(Materials Science, Multidisciplinary)

体心立方(bcc)$$alpha$$-鉄の磁気モーメントの温度依存性をその場中性子粉末回折法を用いて、約2GPaおよび6GPaの圧力下で300$$sim$$950Kの範囲において調べた。磁気散乱の相対寄与を高めるため、中性子散乱長が天然Feの約半分である$$^{54}$$Fe同位体が用いられた。キュリー温度($$T_{rm{C}}$$)は、2.1GPa, 6.0GPa, 6.7GPaでそれぞれ946(30)K、838(50)K、740(40)Kと決定され、$$T_{rm{C}}$$(K) = 1043 - 49(7)$$P$$ + 1.3(1.2)$$P^2$$で表される磁気相境界が決定された。6.7GPaで加熱すると、磁気転移に続いて$$alpha-gamma$$構造転移が観測された。この結果は、磁気相境界が$$alpha-gamma$$相境界の低温側に位置することを示している。したがって、$$alpha-gamma$$転移は、常磁性bcc鉄から常磁性fcc鉄への構造変化に対応する。

論文

Hydrogen in the Earth core inferred from neutron imaging and diffraction

高橋 直生*; 坂巻 竜也*; 服部 高典; 舟越 賢一*; 有馬 寛*; 佐野 亜沙美; 阿部 淳*; 鈴木 昭夫*

Scientific Reports (Internet), 16, p.14162_1 - 14162_13, 2026/05

 被引用回数:1 パーセンタイル:0.00(Multidisciplinary Sciences)

液状鉄中の水素含有量を測定するため、その場での高圧・高温中性子回折およびイメージング実験を行った。その結果、3.4GPa、1400Kの条件下で液状鉄には0.17(3)wt.%のHが含まれていることが確認され、これはコア形成過程において、液状鉄がマグマオーシャン内で水素化されることを示唆している。マグマオーシャンの底部に存在する液体鉄の水素含有量について、外核と内核にはそれぞれ0.60-0.72wt.%および0.30-0.44wt.%の水素が含まれていると推定された。これは、マグマオーシャン中の水素質量のそれぞれ70-85倍および1.9-2.7倍に相当する。このことは、外核の密度不足の半分以上を水素が占めている可能性を示唆している。水素に富んだ初期大気と平衡状態にあるマグマオーシャンについて、本研究の結果は、液状鉄が大量の水素をコアへ輸送する上で極めて重要な役割を果たしていることを示している。

論文

Negligible hydrogen solubility in FeS under high-pressure and high-temperature conditions; Implications for hydrogen storage in planetary cores

高野 将大*; 鍵 裕之*; 森 悠一郎*; 小林 大輝*; 青木 勝敏*; 高橋 嘉夫*; 伊地知 雄太*; 柿澤 翔*; 辻野 典秀*; 肥後 祐司*; et al.

ACS Earth and Space Chemistry (Internet), 10(4), p.1047 - 1061, 2026/04

 被引用回数:2 パーセンタイル:81.81(Chemistry, Multidisciplinary)

鉄一硫化物(FeS)は惑星物質中の主要な硫化物相であり、惑星内部における水素の潜在的な貯蔵相と考えられてきた。しかし、高圧高温条件下でのFeSへの水素溶解度については議論が続いている。本研究では、NiAs型構造のFeS相(FeS V)における水素の取り込み量を、放射光X線吸収分光、X線・中性子その場回折実験、および第一原理計算により再検討した。その結果、水素飽和条件で観測される体積膨張は、Fe$$^{3+}$$からFe$$^{2+}$$への還元およびFe欠損Fe$$_{1-delta}$$Sの$$delta$$値の減少によって説明でき、水素が格子に取り込まれている証拠は見られなかった。中性子回折解析でも、水素を含まない構造モデルが最も良い適合を示し、さらに第一原理計算でもFeS水素化物構造はエネルギー的に不安定であることが示された。これらの結果から、FeS格子中に取り込まれる水素量の上限は30GPaまでで約200ppm程度と推定される。したがって、コア形成初期には水素はFeSではなく金属鉄へ優先的に分配されると考えられる。

論文

Synthesis of high-entropy hydride from the cantor alloy (fcc-CoCrFeNiMn) at extreme conditions

Glazyrin, K.*; Spektor, K.*; Bykov, M.*; Carvalho, P. H. B.*; Dong, W.*; K$"o$rmann, F.*; 佐野 亜沙美; 服部 高典; Beyer, D. C.*; Sahlberg, M.*; et al.

Nature Communications (Internet), 17, p.2622_1 - 2622_10, 2026/03

 被引用回数:3 パーセンタイル:90.02(Multidisciplinary Sciences)

高エントロピー材料の研究は様々な科学分野に貢献し、応用面で興味深い特性を次々と明らかにしている。本研究では、高温高圧下におけるX線・中性子飛行時間法実験および第一原理計算により、カンター合金(CoCrFeNiMn)の水素抵抗性を調査した。我々は、カンター合金組成に基づく面心立方(fcc)型水素化物の形成を報告する。さらに、水素含有量の推定を含むその特性評価を提供する。これらの知見は、高エントロピー合金および高エントロピー水素化物の複雑な化学に関する知見の蓄積に貢献するものである。

論文

Corrigendum to "Neutron diffraction study on the deuterium composition of nickel deuteride at high temperatures and high pressures" [Phys. B Condens. Matter. 587 (2020) 412153]

齊藤 寛之*; 町田 晃彦*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 舟越 賢一*; 佐藤 豊人*; 折茂 慎一*; 青木 勝敏*

Physica B; Condensed Matter, 714, p.417234_1 - 417234_3, 2025/10

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Physics, Condensed Matter)

「高温高圧下における重水素化ニッケルの重水素組成に関する中性子回折研究[Phys. B Condens. Matter. 587 (2020) 412153]」の正誤表を記した。

論文

Neutron diffraction study of the crystal and magnetic structures of antiferromagnetic manganese deuteride at high temperatures and high pressures

町田 晃彦*; 齋藤 寛之*; 青木 勝敏*; 小松 一生*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 舟越 賢一*; 町田 真一*; 佐藤 豊人*; 折茂 慎一*

Physical Review B, 111(22), p.224413_1 - 224413_6, 2025/06

 被引用回数:1 パーセンタイル:24.47(Materials Science, Multidisciplinary)

Mn金属を高温高圧で水素化することにより形成される反強磁性Mn重水素化物、fcc$$gamma$$-MnDxとhcp$$epsilon$$-MnDxの結晶構造と磁気構造をin-situ中性子粉末回折により調べた。重水素原子はfcc及びhcp金属格子の八面体格子間を部分的に占有していた。N$'{e}$el温度は$$gamma$$-MnD$$_{0.34}$$で543(10)Kであった。$$epsilon$$-MnD$$_{0.62}$$では、飽和磁気モーメントは0.82(1)$$mu_B$$、N$'{e}$el温度は347(3)Kであった。$$gamma$$-MnD$$_{0.34}$$$$epsilon$$-MnD$$_{0.62}$$について決定されたN$'{e}$el温度は、以前の研究で提案されたそれぞれのSlater-Pauling曲線によって予測されたものと一致した。更新されたN$'{e}$el温度は、電子バンド構造計算に基づくより正確なSlater-Pauling曲線の開発に示唆を与える。

論文

Synthesis of BaSiH$$_6$$ hydridosilicate at high pressures; A Bridge to BaSiH$$_8$$ polyhydride

Beyer, D. C.*; Spektor, K.*; Vekilova, O. Y.*; Grins, J.*; Barros Brant Carvalho, P. H.*; Leinbach, L. J.*; Sannemo-Targama, M.*; Bhat, S.*; Baran, V.*; Etter, M.*; et al.

ACS Omega (Internet), 10(15), p.15029 - 15035, 2025/04

 被引用回数:4 パーセンタイル:52.00(Chemistry, Multidisciplinary)

SiH$$_6$$八面体部位を特徴とするヒドリドケイ酸塩は、水素貯蔵と水素化物イオン伝導に関連する潜在的な性質を持つかなり新しい化合物のクラスである。ここでは、Zintl相水素化物BaSiH$$_{sim 1.8}$$を4GPa以上の圧力でH$$_2$$流体と反応させ、その後常圧まで減圧して得られた新しい代表的なBaSiH$$_6$$について報告する。SiH$$_{6}^{2-}$$イオンはBa$$^{2+}$$対イオンによって八面体に配位している。Ba原子とSi原子の配置は理想的なfcc NaCl構造からわずかにずれている。IRとラマンスペクトルからSiH$$_{6}^{2-}$$の屈曲と伸縮モードがそれぞれ800-1200と1400-1800cm$$^{-1}$$の範囲で観測された。BaSiH$$_6$$は95$$^circ$$Cまで熱的に安定であり、それ以上ではBaH$$_2$$とSiに分解する。DFT計算により、直接バンドギャップは2.5eVであることが示された。BaSiH$$_6$$の発見により、ギガパスカル圧力(10GPa以下)のシリサイドの水素化反応からアクセス可能なヒドリドケイ酸塩の化合物クラスが固まった。BaSiH$$_6$$の構造的性質は、超伝導ポリハイドライドBaSiH$$_8$$を予測されるより高い圧力で水素化するための中間体(あるいは前駆体)であることを示唆している。

論文

High-pressure neutron diffraction study on $$varepsilon$$-FeOOH; The Spin-reorientation transition and hydrogen-bond symmetrization

池田 理*; 山本 孟*; 佐野 亜沙美; 坂巻 竜也*; 栗林 貴弘*; 野田 幸男*; 鈴木 昭夫*

Journal of the American Chemical Society, 147(5), p.4005 - 4016, 2025/02

 被引用回数:4 パーセンタイル:61.38(Chemistry, Multidisciplinary)

鉄オキシ水酸化物$$varepsilon$$-FeOOHの圧縮挙動は複雑であり、磁性特性と結合特性に変化が見られる。本研究では、20GPa超える圧力下で、$$varepsilon$$-FeOOHと$$varepsilon$$-FeOODのin situ粉末中性子回折実験を行い、スピン再配列転移、水素結合対称化、およびそれらの相関を調査した。磁気転移は、$$varepsilon$$-FeOOHと$$varepsilon$$-FeOODの両方で8GPaで観測された。$$varepsilon$$-FeOOHの結晶対称性と水素結合は、17.90GPaで非対称水素結合を持つP21nmから水素結合が不規則なPnnmへと変化したが、$$varepsilon$$-FeOODは非対称のままであった。原子間角度と距離の圧力変化から、Feの座標幾何学は水素結合の対称化に向かって変化し、磁気異方性に影響を与えたことが示唆される。

論文

High-pressure behaviors of hydrogen bonds in fluorine-doped brucite

He, X.*; 鍵 裕之*; 小松 一生*; 佐野 亜沙美; 阿部 淳*; 福山 鴻*; 新名 亨*; 中野 智志*

Inorganic Chemistry, 63(47), p.22349 - 22360, 2024/11

 被引用回数:4 パーセンタイル:46.33(Chemistry, Inorganic & Nuclear)

ブルーサイトは水酸化物における水素結合を研究する上でモデルとなる重要な物質である。本研究では、中性子粉末回折法、ラマン分光法、赤外分光法を用いて、Mg(OH)$$_{2}$$,gおよび重水素化したMg(OD)$$_{2}$$,において、フッ素(F)置換が水素結合にどのような影響を及ぼすかを常圧および高圧条件下で調べた。常圧条件下では、F置換によりドナ-アクセプター間距離が短縮し、水酸基結合が伸長し、水素結合が強化されることが見出された。高圧実験においては、フッ素の置換は圧力による水素結合の強化を抑制し、水酸基結合の長さ、結合角、O-H角度の変化を減少させた。分光学的測定から、F置換は圧力誘起の水酸基の伸長を制限することが確認された。

論文

Addendum: Site occupancy of interstitial deuterium atoms in face-centred cubic iron

町田 晃彦*; 齋藤 寛之*; 杉本 秀彦*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 遠藤 成輝*; 片山 芳則*; 飯塚 理子*; 佐藤 豊人*; 松尾 元彰*; et al.

Nature Communications (Internet), 15, p.8861_1 - 8861_2, 2024/10

 被引用回数:3 パーセンタイル:95.26(Multidisciplinary Sciences)

前回の論文(Nature Commun. 5, 5063 (2014))では、988Kと6.3GPaで収集した中性子粉末回折パターンのリートベルト精密化によって、fcc Fe金属格子に溶解したD原子のサイト占有率を調べた。fcc金属格子には、八面体サイトと四面体サイトの2つのD原子収容可能な格子間サイトがある。リートベルト精密化により、D原子は主に八面体サイトを0.532占有し、わずかに四面体サイトを0.056占有することがわかった。その後、Antonov (Phys. Rev. Mater. 2019))による密度汎関数理論(DFT)計算の結果、四面体サイトの占有エネルギーは八面体サイトの占有エネルギーよりも著しく高く、988Kの高温でも四面体サイトの占有は起こりにくいことがわかった。消衰補正は粉末回折パターンに適用されることはまれであり、前回の精密化には含まれていなかった。その結果、八面体の占有率は0.60に増加し、四面体の占有率はゼロに減少した。D原子の八面体サイトのみの占有は、以前の結果とは対照的ではあるが、DFT計算と一致している。

論文

高圧中性子回折実験のためのダイヤモンドアンビルセルの開発

町田 真一*; 服部 高典; 中野 智志*; 佐野 亜沙美; 舟越 賢一*; 阿部 淳*

高圧力の科学と技術, 34(3), p.134 - 142, 2024/09

J-PARC物質・生命科学実験施設PLANETビームラインにおいて、高圧中性子回折実験用ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を開発した。高圧発生には円錐形状で支持されたダイヤモンドアンビルを用いた。その結果、69.4GPaまでのD$$_2$$O氷の中性子データを得ることに成功した。また、中性子回折測定に適したガスケット材料を検討した。11種類の合金を試験し、SUS304, Inconel718, M2052 (73Mn-20Cu-5Ni-2Fe, at%)合金が優れた性能を示した。特にM2052ヌルマトリクス合金は、入射ビームがガスケットに当たることが避けられない中性子回折実験に有用であることが実証された。われわれは、D$$_2$$O氷に対して少なくとも43.3GPaまでリートベルト解析が可能な中性子回折プロファイルを得ることができた。

論文

Hydroxyl group/fluorine disorder in deuterated magnesium hydroxyfluoride and behaviors of hydrogen bonds under high pressure

He, X.*; 鍵 裕之*; 小松 一生*; 飯塚 理子*; 岡島 元*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 町田 真一*; 阿部 淳*; 後藤 弘匡*; et al.

Journal of Molecular Structure, 1310, p.138271_1 - 138271_8, 2024/08

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Chemistry, Physical)

重水素化ヒドロキシフルオロマグネシウム[理想組成はMg(OD)F]のO-D$$cdotcdotcdot$$F水素結合の高圧応答を中性子粉末回折とラマン分光法を用いて調べた。常温でのリートベルト解析の結果、化学組成はMg(OD)$$_{0.920(12)}$$F$$_{1.080(12)}$$であり、結晶構造中で水酸基/フッ素(OD/F)が無秩序化して、2つの水素結合配置が生じていることが分かった。構造解析の結果、水素結合配置は9.8GPaまで維持され、圧力による水素結合の強化は見られなかった。常圧でのラマンスペクトルでは、2613, 2694, 2718cm$$^{-1}$$に3つの水酸基伸縮バンドが観測された。O-D伸縮モードの周波数が高いことから、ヒドロキシル基は弱い水素結合相互作用、あるいは水素結合を持たないことが示唆された。20.2GPaまでは、2694cm$$^{-1}$$を中心とするモードは圧力によってブルーシフトを示し、水素結合は圧縮されても強化されないことが明らかになった。これは、中性子回折の結果と一致した。水素結合の存否と、常圧および高圧での水酸基のブルーシフトの原因について議論した。

論文

Hydrogen bond symmetrisation in D$$_2$$O ice observed by neutron diffraction

小松 一生*; 服部 高典; Klotz, S.*; 町田 真一*; 山下 恵史朗*; 伊藤 颯*; 小林 大輝*; 入舩 徹男*; 新名 亨*; 佐野 亜沙美; et al.

Nature Communications (Internet), 15, p.5100_1 - 5100_7, 2024/06

 被引用回数:27 パーセンタイル:86.23(Multidisciplinary Sciences)

水素結合の対称化とは、水素原子が水素結合の中心に位置する現象である。理論的研究により、氷VIIの水素結合は、圧力が増加するにつれて、水素の分布を変化させながら、いくつかの中間状態を経て、最終的に対称化すると予測されている。これまで、多くの実験的研究が行われてきたにもかかわらず、その水素の位置や転移圧力は一貫していない。われわれは、100GPa以上の圧力で中性子回折実験を行い、氷中の水素分布を決定し、隣接酸素間での分布が80GPa付近で2つから1つになり水素結合が対称化することを世界で初めて観測した。

論文

Neutron diffraction; A Primer

Dronskowski, R.*; Br$"u$ckel, T.*; Kohlmann, H.*; Avdeev, M.*; Houben, A.*; Meven, M.*; Hofmann, M.*; 神山 崇*; Zobel, M.*; Schweika, W.*; et al.

Zeitschrift f$"u$r Kristallographie; Crystalline Materials, 239(5-6), p.139 - 166, 2024/06

 被引用回数:18 パーセンタイル:96.57(Crystallography)

中性子回折は結晶線や関連物質の構造を決定するための最も強力な技術のひとつと考えられる。中性子は核分裂、核破砕、低エネルギー核反応から放出され、粉末回折法、飛行時間法、単結晶法、その他、結晶や磁性体の構造を明らかにするのに最適な技術として利用することができる。高い中性子束と十分な輝度を利用した中性子回折では、散漫散乱にも活用でき、オペランド実験や、新物質の高圧実験にも適している。また中性子の同位体を区別、磁性を決定できるという利点は、例えばエネルギー変換・貯蔵材料、磁性体、タンパク質構造における軽元素の構造とダイナミクスに関する重要な科学的疑問に答える上でも極めて重要である。この論文では、中性子回折の現状を要約するとともに、最近の進歩や新しいアイデア、例えば新しい装置の設計、そしてそこから派生するものについてもレビューする。

論文

Hydrogenation of silicon-bearing hexagonal close-packed iron and its implications for density deficits in the inner core

森 悠一郎*; 鍵 裕之*; 青木 勝敏*; 高野 将大*; 柿澤 翔*; 佐野 亜沙美; 舟越 賢一*

Earth and Planetary Science Letters, 634, p.118673_1 - 118673_8, 2024/05

 被引用回数:3 パーセンタイル:36.19(Geochemistry & Geophysics)

水素による鉄の体積膨張に対するケイ素の効果を調べるため、高圧高温下でのhcp-Fe$$_{0.95}$$Si$$_{0.05}$$の中性子回折実験とX線回折実験を行った。中性子回折実験は重水素化hcp-Fe$$_{0.95}$$Si$$_{0.05}$$に対して13.5GPa, 900K及び12.1GPa, 300Kで行い、得られたプロファイルからリートベルト解析を用いて水素占有率を決定した。hcp-Fe-SiのP-V-T状態方程式を組み合わせることにより、hcp-Fe$$_{0.95}$$Si$$_{0.05}$$の水素による体積膨張が純粋なhcp鉄の体積膨張よりも10%大きいことを示した。得られた値を用いて、内核の密度欠損を再現できる水素量を見積もったところ、シリコンの影響がない場合に比べて50%減少した。hcp-Fe$$_{0.95}$$Si$$_{0.05}$$で内核の密度欠損を再現した場合、内核と外核で可能な水素量xはそれぞれ0.07と0.12-0.15と計算された。

論文

Low reactivity of stoichiometric FeS with hydrogen at high-pressure and high-temperature conditions

高野 将大*; 鍵 裕之*; 森 悠一郎*; 青木 勝敏*; 柿澤 翔*; 佐野 亜沙美; 飯塚 理子*; 土屋 卓*

Journal of Mineralogical and Petrological Sciences (Internet), 119(1), p.240122_1 - 240122_9, 2024/00

 被引用回数:4 パーセンタイル:50.55(Mineralogy)

硫化鉄(FeS)の高圧高温下での水素化は、水素と硫黄が地球や他の地球型惑星のコアの軽元素として有望な候補であることから注目されている。これまでのFeSの水素化反応に関する報告では、出発物質の化学組成は十分に明らかにされていなかった。本研究では、Fe1.000S(トロイライト)を出発物質としたFe-S-H系の高温高圧条件下での中性子回折とX線回折のその場測定を報告する。決定された占有率は、以前の研究で報告されたものより著しく低く、FeSの水素化は硫化鉄の化学組成に強く影響されることを示している。

論文

The Hydrogen-bond network in sodium chloride tridecahydrate; Analogy with ice VI

山下 恵史朗*; 中山 和也*; 小松 一生*; 大原 高志; 宗像 孝司*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 鍵 裕之*

Acta Crystallographica Section B; Structural Science, Crystal Engineering and Materials (Internet), 79(5), p.414 - 426, 2023/10

 被引用回数:3 パーセンタイル:37.99(Chemistry, Multidisciplinary)

最近発見された塩化ナトリウムの超水和物(NaCl$$cdot$$ 13H(D)$$_{2}$$O)の構造を1.7GPa, 298Kでのその場単結晶中性子回折によって決定した。この物質は大きな水素結合ネットワークを持ち、いくつかの水分子は分岐水素結合や5配位水分子のような歪んだ結合の特徴を持つ。水素結合ネットワークは、ネットワークトポロジーと水素結合の無秩序性という点で、氷VIと類似している。擬似対称性によって接続されたネットワークの構成要素を区別しなければ、このハイドレートの全体的なネットワーク構造は、氷VIのネットワーク構造に対応する小さな構造単位に分解することで表現できる。この水素結合ネットワークは、既知の塩水和物とは対照的に、水分子の配向の乱れを含んでいる。ここでは、イオン種を含む水素結合ネットワークに関するさらなる洞察のための例を示す。

論文

Deuterium content and site occupancy in iron sulfide at high pressure and temperature determined using in situ neutron diffraction measurements

Abeykoon, S.*; Howard, C.*; Dominijanni, S.*; Eberhard, L.*; Kurnosov, A.*; Frost, D. J.*; Boffa Ballaran, T.*; 寺崎 英紀*; 坂巻 竜也*; 鈴木 昭夫*; et al.

Journal of Geophysical Research; Solid Earth, 128(9), p.e2023JB026710_1 - e2023JB026710_17, 2023/09

 被引用回数:6 パーセンタイル:39.32(Geochemistry & Geophysics)

少量の硫化鉄鉱物は、地球のマントルから産出するほとんどの岩石や、天然のダイヤモンドに内包物として含まれている。水素は高温高圧下で硫化鉄鉱物に溶解している可能性があるが、地表の温度と圧力では失われている。本研究では、高温高圧下における硫化鉄中の重水素量を、11.4GPa, 1300Kまでの条件でJ-PARCのPLANETでの6軸型マルチアンビルプレスを用いたその場観察中性子回折実験により決定した。硫化鉄水素化物中の全重水素含有量は高温高圧下で増加することが明らかになった。この結果を用いて、大陸深部のリソスフェアマントル中の硫化鉄鉱物の水素含有量を見積もったところ、1700-2700ppmの範囲にあることがわかった。これはバルクマントル中の約2-3ppmの水素に相当する。

論文

Hydrogen occupation and hydrogen-induced volume expansion in Fe$$_{0.9}$$Ni$$_{0.1}$$D$$_x$$ at high $$P-T$$ conditions

市東 力*; 鍵 裕之*; 柿澤 翔*; 青木 勝敏*; 小松 一生*; 飯塚 理子*; 阿部 淳*; 齋藤 寛之*; 佐野 亜沙美; 服部 高典

American Mineralogist, 108(4), p.659 - 666, 2023/04

 被引用回数:7 パーセンタイル:56.55(Geochemistry & Geophysics)

Fe$$_{0.9}$$Ni$$_{0.1}$$H$$_x$$(D$$_x$$)の12GPa, 1000Kまでの高温高圧下における相関係と結晶構造をその場X線及び中性子回折測定により明らかにした。今回実験した温度圧力下において、Fe$$_{0.9}$$Ni$$_{0.1}$$H$$_x$$(D$$_x$$)ではFeH$$_x$$(D$$_x$$)とは異なり、重水素原子は面心立方構造(fcc)中の四面体サイトを占有しないことが明らかになった。単位重水素あたりの水素誘起膨張体積$$v_mathrm{D}$$は、fcc相で2.45(4) $AA$^3$$、hcp相で3.31(6) $AA$^3$$であり、FeD$$_x$$におけるそれぞれの値より著しく大きいことが明らかになった。また、$$v_mathrm{D}$$は温度の上昇に伴いわずかに増加した。この結果は、鉄に10%ニッケルを添加するだけで、金属中の水素の挙動が劇的に変化することを示唆している。$$v_mathrm{D}$$が圧力に関係なく一定であると仮定すると、地球内核の最大水素含有量は海洋の水素量の1-2倍であると推定される。

論文

Hydrogen vibration excitations of ZrH$$_{1.8}$$ and TiH$$_{1.84}$$ up to 21 GPa by incoherent inelastic neutron scattering

服部 高典; 中村 充孝; 飯田 一樹*; 町田 晃彦*; 佐野 亜沙美; 町田 真一*; 有馬 寛*; 大下 英敏*; 本田 孝志*; 池田 一貴*; et al.

Physical Review B, 106(13), p.134309_1 - 134309_9, 2022/10

 被引用回数:3 パーセンタイル:16.20(Materials Science, Multidisciplinary)

量子調和振動子(QHO)で近似できる蛍石型のZrH$$_{1.8}$$とTiH$$_{1.84}$$の水素の振動励起を非弾性非干渉性中性子散乱によって21GPaおよび4GPaまで調べた。第一励起の振動エネルギー$$E_1$$はそれぞれ$$E_1$$(meV) = 141.4(2) + 1.02(2)$$P$$(GPa)および$$E_1$$(meV) = 149.4(1) + 1.21(8)$$P$$(GPa)で表され、圧力とともに上昇した。格子定数の圧力変化と組み合わせて得られた金属水素原子間距離($$d_{M-H}$$)と$$E_1$$の関係は、$$E_1$$(meV) = 1.62(9)$$times$$ 10$$^3$$ $$d_{M-H}^{-3.31(8)}$$($AA)$および$$E_1$$(meV) = 1.47(21)$$times$$ 10$$^3$$ $$d_{M-H}^{-3.5(2)}$$($AA)$であった。これらのカーブの傾きは、様々な蛍石型の金属水素化物の常圧下のトレンドに比べ、急峻であった。$$E_1$$から得られた水素波動関数の広がりは、格子間サイトよりも縮み易いことが分かった。高圧下における水素の波動関数の優先的な収縮や小さな$$d_{M-H}$$における$$E_1$$の急峻な立ち上がりは金属原子のイオンコアが水素原子よりも堅いために水素原子が高圧下でより狭い領域に閉じ込められるために起こると考えられる。

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