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小泉 智; Monkenbusch, M.*; Richter, D.*; Schwahn, D.*; Farago, B.*
Journal of Chemical Physics, 121(24), p.12721 - 12731, 2004/12
被引用回数:57 パーセンタイル:85.92(Chemistry, Physical)膨潤した高分子ゲル(ポリイソプロピルアクリルアミドゲル)の内部のナノスケールの濃度揺らぎを中性子小角散乱,中性子スピンエコー法による実験結果に基づいて定量的に解析した。中性子スピンエコー法では濃度揺らぎの時間緩和を数百ナノ秒まで追跡することで、架橋によって凍結された濃度揺らぎ(静的不均一性)を決定することに成功した。またゲルを変形したとき中性子小角散乱では流動誘起相分離に特徴的なバタフライ状小角散乱を観察できた。これらの結果より変形に伴い静的不均一性が「応力と濃度揺らぎの動的カップリング」の機構に従って応答し、その結果流動誘起相分離(バタフライ状小角散乱)が出現したことを明らかにした。
小泉 智; Monkenbusch, M.*; Richter, D.*; Schwahn, D.*; 安中 雅彦*
Journal of the Physical Society of Japan, Vol.70, Supplement A, p.320 - 322, 2001/05
高分子ゲルは、高分子準濃厚溶液に化学架橋を導入した物質であり、このため一般の溶液と異なり流動性を失う。言い換えれば、ずり弾性率などの力学量が固体と同様に検出できる。このことは微視的には、濃度揺らぎの一部が架橋構造によって凍結され、個々の高分子鎖の相互位置関係が時間変化しないということに相当する。しかしながらゲルは大量の低分子溶媒(水など)を含むため、自由に変形でき液体的な側面も十分に残しており、微視的には時間とともに緩和できる濃度揺らぎが部分的に存在していることになる。本研究は、中性子スピンエコーと中性子小角散乱の併用で、凍結された濃度揺らぎの構造因子を小角散乱の領域で定量的に観察した。その結果、ポリイミドプロピルアクリルアミドゲルでは摂氏28度において、前方散乱強度の約35%が凍結されていることがわかった。またこの凍結成分は温度とともに増大し、体積相転移点(摂氏34度)付近では、約55%に増大することがわかった。またその構造因子は波数qについて、qで急激に減衰し、固体から液体へのクロスオーバーが、ゲルの編み目構造との相対的な長さ関係で決定されることが確認された。
小泉 智; 安中 雅彦*; Borbely, S.*; Schwahn, D.*
Physica B; Condensed Matter, 276-278, p.367 - 368, 2000/03
被引用回数:14 パーセンタイル:59.36(Physics, Condensed Matter)中性子小角散乱法を用いて高分子ゲルの微視的構造を観察した。ピンホール型中性子小角散乱(SANS)と2結晶型中性子小角散乱(DSANS)の2種類の小角散乱装置を用いることで波数q(A)で10q0.2の広い空間スケールをカバーすることを試みた。実験に用いた高分子ゲルは、ポリイソプロピルアクリルアミド/水である。転移温度T(=34.5)以下では、高分子鎖は水で膨潤しているが、T以下では、高分子鎖がコイル-グロビュール転移をおこしゲルが収縮する。実験では膨潤相から収縮相の広い温度領域でゲル中の熱的濃度揺らぎ、または収縮構造を観察し、基礎的な知見を整理することができた。結果は次の通りである。(1)膨潤相は通常の高分子溶液を記述するオルンシュタイン-ゼルニケ(OZ)型の散乱関数とゲルの架橋点構造に由来する散乱の和で記述できた。(2)濃度揺らぎの相関長は、Tに向かって平均場的に増大するが、Tでは一次転移的に発散する。平均場的な温度依存性を外挿することでスピノーダル点は39.7と決定された。(3)収縮相のT近傍では、グロビュールとコイルが共存し、グロビュールの空間分布はマスフラクタル的である(次元:D=1.7)。(4)収縮相でクエンチが深くなるとグロビュールの合体によりマスフラクタル次元でD=1.0に近い凝集構造(例えばシリンダー状)が形成された。