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長田 充弘; 福田 将眞; 末岡 茂; 中嶋 徹; 横山 立憲; Wall, C. J.*; 檀原 徹*; 岩野 英樹*; 田上 高広*
フィッション・トラックニュースレター, (37), p.11 - 13, 2024/12
近年、分析技術の発達により100万年以降の若い地質単元でもジルコンによるU-Th-Pb年代測定が可能となりつつある。しかしながら、その分析を評価しうる若い標準試料はほとんどない。本研究では、著者らが研究をすすめている100万年オーダーのジルコン試料(TRG04とOGPK)を対象に、同位体希釈表面電離質量分析(ID-TIMS)法によるU-Pb年代測定を試みた。その結果、それぞれ予察的に2.66540.0016Maおよび1.1266
0.0014MaのU-Pb年代を得た。
末岡 茂
フィッション・トラックニュースレター, (37), p.1 - 5, 2024/12
日本列島の山地の大半は、鮮新世から第四紀に隆起を開始した若い山地だと考えられている。そのため、概して隆起開始以降の総削剥量が小さく、フィッション・トラック法や(U-Th)/He法などの低温熱年代法では、現在の山地形成に関連した若い時代の冷却・削剥を検出することは必ずしも容易ではない。本研究では、日本列島のような若い山地における低温熱年代法の適用性を確認するために、熱史のモデル計算に基づいて、年代の若返りが検出できる可能性がある山地の条件を抽出した。すなわち、隆起開始年代、隆起速度、モデルの開始年代を変化させたときの地温構造の時間変化を計算し、現在地表に露出している岩石が経験した温度履歴を求めた。これをHeFTy ver.1.9.3のフォワード機能によって、アパタイトおよびジルコンのFTおよび(U-Th)/He年代に変換した。入力したパラメータの値は、隆起開始年代が0.5-5Ma、隆起速度が0.01-10mm/yr、モデルの開始年代が15Ma、60Ma、120Maの3ケースである。また、地表の標高は変化しない場合(標高は常にゼロ、隆起速度=削剥速度)と、標高および削剥速度が大森モデルに従って時間変化する場合の2通りの計算を行った。得られたモデル年代は、隆起速度および隆起開始年代が既知のいくつかの山地における既報年代と整合的な値を示した。モデル年代の結果をまとめると、ジルコンのFTおよび(U-Th)/He年代が部分的にでも若返るためには、約3mm/yrを超える隆起速度が必要となる。アパタイトのFTおよび(U-Th)/He年代は、標高変化の有無や隆起開始年代にもよるが、隆起速度が0.3mm/yrを超えたあたりから部分的に若返る可能性があり、1mm/yrを超えると山地の隆起開始より新しい若い年代が出る可能性がある。なお、モデルの開始年代(岩体の形成年代に相当)は、今回試した3ケースでは結果にはほぼ影響しなかった。低温熱年代データベースを用いて、本結果を日本全国の既報FTデータに適用したところ、現在の山地形成に関連した年代の若返りが期待できるのは日本アルプス、関東山地、谷川岳、飯豊山地など、部分的な若返りが期待できるのは飛騨高原、美濃高原、四国山地など、若返りが期待できないのが北上山地、阿武隈山地、六甲山地、淡路島などとなった。
福田 将眞; 岡本 晃*; Kohn, B.*; 新正 裕尚*; 末岡 茂; 田上 高広*
フィッション・トラックニュースレター, (37), p.8 - 10, 2024/12
四国山地はフィリピン海プレートの沈み込み帯に平行に分布する非火山性の隆起帯であり、その山地形成過程の解明は南海トラフにおける長期の歪の蓄積・解放メカニズムの制約に資すると期待される。本研究では、地殻浅部(2-6km深度)の熱史・削剥史を推定可能な熱年代法であるアパタイト・ジルコン(U-Th)/He(それぞれ、AHe, ZHe)法およびアパタイトフィッション・トラック(AFT)法を用い、四国山地に分布するペルム紀から中新世の花崗岩類計9点について熱年代分析を試みた。AHeおよびZHe年代測定はメルボルン大学で、AFT年代測定は東濃地科学センターで実施した。年代測定の結果として、8点のAHe年代は約55-7Ma、5点のAFT年代は約90-70Ma、9点のZHe年代は約200-70Maの範囲を示した。これらの値は各手法の閉鎖温度を考えると整合的な関係を示した。また、既往研究で報告されているZFT年代、黒雲母K-Ar年代、およびAHe年代・AFT年代・ZHe年代とも概ね整合的である。
丹羽 正和; 島田 耕史; 末岡 茂; 石原 隆仙; 箱岩 寛晶; 浅森 浩一; 村上 理; 福田 将眞; 小北 康弘; 鏡味 沙耶; et al.
JAEA-Research 2024-013, 65 Pages, 2024/11
本報告書では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発のうち、深地層の科学的研究の一環として実施している地質環境の長期安定性に関する研究について、第4期中長期目標期間(令和4年度令和10年度)における令和5年度に実施した研究開発に係る成果を取りまとめたものである。第4期中長期目標期間における研究の実施にあたっては、地層処分事業における概要・精密調査や国の安全規制に対し研究成果を適時反映できるよう、(1)調査技術の開発・体系化、(2)長期予測・影響評価モデルの開発、(3)年代測定技術の開発の三つの枠組みで研究開発を進めている。本報告書では、それぞれの研究分野に係る科学的・技術的背景を解説するとともに、主な研究成果等について取りまとめた。
Bartz, M.*; King, G. E.*; Bernard, M.*; Herman, F.*; Wen, X.*; 末岡 茂; 塚本 すみ子*; Braun, J.*; 田上 高広*
Earth and Planetary Science Letters, 644, p.118830_1 - 118830_11, 2024/10
被引用回数:1 パーセンタイル:0.00(Geochemistry & Geophysics)The impact of climate on mountain relief is unknown, mainly due to the difficulties of measuring surface processes at the timescale of glacial-interglacial cycles. An appropriate setting for studying mountain erosion in response to Quaternary climate change is found in the Tateyama mountains in the Hida mountain range (northern Japanese Alps) due to distinct geomorphological features of glacial, periglacial, and fluvial processes. The Japanese Alps uplifted within the past ca 1-3 Myr and experienced multiple glaciations during the late Quaternary. We use ultra-low temperature thermochronometers based on the luminescence of feldspar minerals and the electron spin resonance (ESR) of quartz minerals, in combination with inverse modelling to derive rock cooling rates and exhumation rate histories at 10-10
year timescales from 19 rock samples from three transects in the Tateyama region. While luminescence signals have already reached their upper dating limit, ESR signals (Al and Ti centres) yielded ESR ages of ca 0.3-1.1 Ma, implying surface processes active in the Pleistocene. Based on a negative age-elevation relationship, local relief reduction at a cirque-basin scale is identified over the past 1 Myr, whereas a positive age distribution with elevation for samples close to the mountain top does not follow this trend. Inverse modelling reveals rock cooling rates on the order of 30-80 deg. C/Ma, with slightly faster cooling for cirque-floor samples, which equate with erosion rates of 0.5-1 mm/yr that exceed rates from periglacial and fluvial processes in the same locality. Thus, our data suggest that Quaternary climate change coupled with distinct surface processes modified the slopes of the Tateyama mountains leading to a localised decrease in relief over the second half of the Quaternary, whilst the mountain peaks were unaffected by the relief reduction.
丹羽 正和; 島田 顕臣; 浅森 浩一; 末岡 茂; 小松 哲也; 中嶋 徹; 小形 学; 内田 真緒; 西山 成哲; 田中 桐葉; et al.
JAEA-Review 2024-035, 29 Pages, 2024/09
本計画書では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発のうち、深地層の科学的研究の一環として実施している地質環境の長期安定性に関する研究について、第4期中長期目標期間(令和4年度令和10年度)における令和6年度の研究開発計画を取りまとめた。本計画の策定にあたっては、これまでの研究開発成果や大学等で行われている最新の研究成果に加え、地層処分事業実施主体や規制機関等の動向を考慮した。研究の実施にあたっては、地層処分事業における概要・精密調査や国の安全規制に対し研究成果を適時反映できるよう、(1)調査技術の開発・体系化、(2)長期予測・影響評価モデルの開発、(3)年代測定技術の開発の三つの枠組みで研究開発を推進する。
中嶋 徹; 福田 将眞; 末岡 茂; 仁木 創太*; 河上 哲生*; 檀原 徹*; 田上 高広*
Geochronology (Internet), 6(3), p.313 - 323, 2024/07
本研究ではモナズ石の化学組成と放射線損傷がフィッション・トラックのエッチング時間に与える影響を調べた。モナズ石のフィッション・トラック年代測定法は超低温熱年代としての応用が期待されているが、モナズ石の化学組成や放射線損傷がフィッション・トラックのエッチング時間に与える影響は明らかになっておらず、分析方法が確立していない。私たちはモナズ石のラマン分光分析と化学組成の定量分析から、日本国内のモナズ石試料について放射線損傷の蓄積レベルを見積もった。またフィッション・トラックのエッチング実験を行い、これらの変数がエッチングの時間に与える影響を調べた。
中嶋 徹; 末岡 茂; 長田 充弘; Kohn, B. P.*; Ramos, N. T.*; 堤 浩之*; 田上 高広*
Earth, Planets and Space (Internet), 75(1), p.176_1 - 176_11, 2023/12
被引用回数:1 パーセンタイル:24.68(Geosciences, Multidisciplinary)本研究では島弧山地における中間質マグマの貫入と隆起・侵食過程を理解する目的で、フィリピン、ルソン島の中央コルディエラ山地に地質・熱年代測定を適用した。ジルコンU-Pb年代は32.540.70から6.11
0.15(2SE)Maであり、これは第三紀火成活動に伴う中・上部地殻における中間質マグマの断続的な貫入イベントを反映している。ジルコンのフィッション・トラック(ZFT)年代は35.63
2.17から6.91
0.36(2SE)Maであり、それぞれの試料採取地点におけるジルコンU-Pb年代と対比される。これは中間質マグマが貫入後、即座に250
350
Cまで冷却したことを反映している。一方、ジルコンとアパタイトの(U-Th-Sm)/He(ZHe, AHe)年代はそれぞれ11.71
0.36から8.82
0.26Maと9.21
0.52から0.98
0.088(2SE)Maであり、ジルコンのU-Pb年代やZFT年代よりも若い傾向にある。これは各地点における岩石の冷却速度が低温領域において減少したことを示唆する。そのため、ZFT年代は中間質マグマの初期冷却を、AHe年代は隆起・侵食に伴う冷却をそれぞれ反映していると考えられる。AHe年代の地理的分布は、第四紀に中央コルディエラ山地全体がブロック状に隆起したことを示唆している。
末岡 茂; 岩野 英樹*; 檀原 徹*; 丹羽 正和; 菅野 瑞穂; Kohn, B. P.*; 川村 淳; 横山 立憲; 鏡味 沙耶; 小北 康弘; et al.
Earth, Planets and Space (Internet), 75(1), p.177_1 - 177_24, 2023/12
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Geosciences, Multidisciplinary)紀伊半島本宮地域の熱水変質帯を対象に、熱水活動による母岩への熱影響を評価するため、熱年代解析と流体包有物解析を実施した。流体包有物解析の結果、約150Cと約200
Cの熱水活動が認定された。一方、熱年代解析の結果では、いずれの熱年代計でも、熱水脈からの距離に応じた年代の系統的な変化は観察されなかった。すなわち、熱水活動に伴う熱以上は検出できなかった。これらの熱年代は、中期中新世以降の山地隆起に伴う広域的な削剥史を反映していると解釈された。
梶田 侑弥*; 末岡 茂; 谷 篤史*; 磯谷 舟佑*; 田上 高広*
フィッション・トラックニュースレター, (36), p.6 - 8, 2023/12
近年、低温熱年代学の手法を用いて、若い島弧である日本列島の山地の隆起・削剥史の推定が可能になってきた。電子スピン共鳴(ESR)法は、超低温熱年代計として期待される手法の1つであるが、応用研究は未だに少数であり、熱年代計としてのESR法の妥当性の検証を含め、研究事例の蓄積が求められる。本研究では、ESR熱年代学の日本の山岳地域への適用の前段階として、試料の前処理が年代値に及ぼす影響について検討するため、天然試料および人工石英を用いた露光・粉砕実験を実施した。実験室内における3日間の光曝露実験では、ESRシグナル強度に変化は観察されなかった。一方、試料の粉砕実験では、粉砕過程及び粉砕器具の違いがシグナル強度に影響する可能性が示唆された。今後の検討手段として、プレヒートの実施、天然試料を用いた粉砕の影響評価、Selfragを利用した粒子破壊を伴わない岩石粉砕手法との比較などが挙げられる。
長田 充弘; 中嶋 徹; 福田 将眞; 末岡 茂; 八木 公史*; 横山 立憲
フィッション・トラックニュースレター, (36), p.9 - 13, 2023/12
ジルコンを用いた年代測定における標準試料の探求の一環として、石川県白山市南部の下部中新統鷲走ヶ岳月長石流紋岩質溶結凝灰岩に注目し、ジルコンのU-Pb年代・FT年代と月長石(サニディン)のK-Ar年代の観点から検討した。本論では、鷲走ヶ岳月長石流紋岩質溶結凝灰岩を鷲走ヶ岳層と呼ぶ。3試料より得られたU-Pb年代の加重平均値は約21.9-21.7 Maを示し、誤差範囲で重なる。ジルコンFT年代やK-Ar年代は一部試料が誤差範囲で重なるものの、若い傾向にある。また、ジルコンのトラック長は3試料とも初期長より有意に短いトラック長が確認された。これらの結果から鷲走ヶ岳層のジルコンはU-Pb年代のような閉鎖温度の高い手法に関しては標準試料として有効であるが、FT年代などの閉鎖温度の低い手法には不向きである蓋然性が高い。
末岡 茂; 河上 哲生*; 鈴木 康太*; 鏡味 沙耶; 横山 立憲; 芝崎 文一郎*; 長田 充弘; 山崎 あゆ*; 東野 文子*; King, G. E.*; et al.
フィッション・トラックニュースレター, (36), p.1 - 3, 2023/12
飛騨山脈黒部地域には、世界一若い露出プルトンである黒部川花崗岩体を含め、10-0.8Maの若い深成岩体が複数露出する。深成岩体が一般に地下数km以深で形成されることを考えると、削剥速度は数mm/yrないしそれ以上に達する可能性がある。しかし、これらの若い岩体の貫入やこれに伴う熱水活動等の熱擾乱のため、熱年代法による、冷却史に基づく削剥史の復元は簡単ではない。本研究では、地熱条件に依らない削剥評価のため、主に鮮新世から第四紀の深成岩体の固結年代と固結深度から、黒部地域の削剥史の復元を試みた。固結年代はジルコンU-Pb年代測定法、固結深度はAl-in-Hbl地質圧力計により推定した。計14試料から固結年代と固結深度のペアを得た結果、固結深度は約6-10kmでほぼ均一で、東西及び南北のいずれにも系統的な変化を示さなかった。この結果は、黒部-高瀬川破砕帯の東側の断層ブロックが、東に傾動したと考える従来のモデルとは不調和である。固結深度と固結年代のプロットから復元された削剥史は、約5.5-0.8Maにはほとんど削剥が起こらず、それ以降の時代に平均で約7-14mm/yrの急速な削剥が起こったことを示した。この結果は、ダム堆砂量や宇宙線生成核種法から推定された数十から数千年程度の侵食速度や、約1Ma以降に信濃大町方面で黒部地域からの花崗岩礫の供給が急増したことと矛盾しない。0.8Ma以降の黒部地域の急速な隆起・削剥の原因としては、東西圧縮応力の発現以降、黒部地域の地温が高い領域に沿って変位・変形が局在化した可能性が考えられ、現在、レオロジーと地温構造を考慮した変形シミュレーションによる検証を進めている。
中嶋 徹; 長田 充弘; 福田 将眞; 末岡 茂
地質学雑誌(インターネット), 129(1), p.503 - 507, 2023/11
本研究では秋田県太平山複合プルトンの花崗岩類についてジルコンのU-Pb年代測定を行った。主併入岩類より採取された2つの花崗閃緑岩のU-Pb年代(206Pb/238U加重平均年代)はそれぞれ103.41.0Maと115.6
1.1Ma(1SE)であった。新期併入岩類より採取された斑状花崗岩のU-Pb年代はそれぞれ11.4
0.1Ma、4.7
0.1Ma、4.8
0.1Ma(1SE)であった。これらのU-Pb年代はそれぞれの試料が採取された地点における花崗岩質マグマの貫入年代と解釈される。本研究で得られた鮮新世のU-Pb年代から、新期併入岩類の仁別岩体が現在地表に露出する深成岩体としては世界的に見ても最も若い岩体の一つであることが示唆された。
丹羽 正和; 島田 耕史; 末岡 茂; 藤田 奈津子; 横山 立憲; 小北 康弘; 福田 将眞; 中嶋 徹; 鏡味 沙耶; 小形 学; et al.
JAEA-Review 2023-017, 27 Pages, 2023/10
本計画書では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発のうち、深地層の科学的研究の一環として実施している地質環境の長期安定性に関する研究について、第4期中長期目標期間(令和4年度令和10年度)における令和5年度の研究開発計画を取りまとめた。本計画の策定にあたっては、これまでの研究開発成果や大学等で行われている最新の研究成果に加え、地層処分事業実施主体や規制機関等の動向を考慮した。研究の実施にあたっては、地層処分事業における概要・精密調査や国の安全規制に対し研究成果を適時反映できるよう、(1)調査技術の開発・体系化、(2)長期予測・影響評価モデルの開発、(3)年代測定技術の開発の三つの枠組みで研究開発を推進する。
丹羽 正和; 島田 耕史; 末岡 茂; 石原 隆仙; 小川 大輝; 箱岩 寛晶; 渡部 豪; 西山 成哲; 横山 立憲; 小形 学; et al.
JAEA-Research 2023-005, 78 Pages, 2023/10
本報告書では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発のうち、深地層の科学的研究の一環として実施している地質環境の長期安定性に関する研究について、第4期中長期目標期間(令和4年度令和10年度)における令和4年度に実施した研究開発に係る成果を取りまとめたものである。第4期中長期目標期間における研究の実施にあたっては、地層処分事業における概要・精密調査や国の安全規制に対し研究成果を適時反映できるよう、(1)調査技術の開発・体系化、(2)長期予測・影響評価モデルの開発、(3)年代測定技術の開発の三つの枠組みで研究開発を進めている。本報告書では、それぞれの研究分野に係る科学的・技術的背景を解説するとともに、主な研究成果等について取りまとめた。
King, G. E.*; Ahadi, F.*; 末岡 茂; Herman, F.*; Anderson, L.*; Gautheron, C.*; 塚本 すみ子*; Stalder, N.*; Biswas, R.*; Fox, M.*; et al.
Geology, 51(2), p.131 - 135, 2023/02
The exhumation of bedrock is controlled by the interplay between tectonics, surface processes, and climate. The highest exhumation rates of centimeters per year are recorded in zones of highly active tectonic convergence such as the Southern Alps of New Zealand or the Himalayan syntaxes, where high rock uplift rates combine with very active surface processes. Using a combination of different thermochronometric systems including trapped-charge thermochronometry, we show that such rates also occur in the Hida Mountain Range, Japanese Alps. Our results imply that centimeter per year rates of exhumation are more common than previously thought. Our thermochronometry data allow the development of time series of exhumation rate changes at the time scale of glacial-interglacial cycles, which show a fourfold increase in baseline rates to rates of 10 mm/yr within the past
65 k.y. This increase in exhumation rate is likely explained by knickpoint propagation due to a combination of very high precipitation rates, climatic change, sea-level fall, range-front faulting, and moderate rock uplift. Our data resolve centimeter-scale sub-Quaternary exhumation rate changes, which show that in regions with horizontal convergence, coupling between climate, surface processes, and tectonics can exert a significant and rapid effect on rates of exhumation.
中嶋 徹; 福田 将眞; 長田 充弘; 檀原 徹*; 岩野 英樹*; 末岡 茂
フィッション・トラックニュースレター, (35), p.34 - 36, 2022/12
本発表ではバデリアイトのフィッション・トラック(FT)年代測定の実用化に向け行ったFTエッチング実験の結果と、その簡単な考察を行う。本研究では檀原ほか(1999)で用いられたものと同一試料のバデリアイト(第一稀元素化学工業提供試料)を使用し、NaOH-KOH共融混合液を用いて228度の温度条件で50時間まで段階的なエッチングを行った。その結果、檀原ほか(1999)の報告と同様に研磨痕の拡大、表面の粗面化などバデリアイトがエッチングされる様子が観察された一方で、FTと思しき組織は観察されなかった。研磨痕は拡大する一方でFTがエッチングされなかったことから、バデリアイトのFTは何らかの要因によりエッチングされにくいことが予想される。バデリアイトのFTを観察した研究としてO'Connell et al. (2020)がある。この研究ではTEM観察により、Xeイオントラックが単斜晶系から正方晶系への線状相転移領域(約2.5nm幅)として認定されることを報告している。本研究でFTがエッチングされなかったことは、バデリアイトのFTがアモルファス化しておらず、エッチングされにくいことが原因として考えられる。以上を踏まえると、ジルコンと同様の方法でのバデリアイトFTのエッチングは困難であると予想されるが、TEMやAFMによるlatent trackの観察などFT密度を計測することができれば、熱年代計として使用できる可能性がある。今後もバデリアイトFT法の確立へ向けて可能性を探ってゆく。
福田 将眞; Kohn, B. P.*; 末岡 茂; 檀原 徹*; 岩野 英樹*; 田上 高広*
フィッション・トラックニュースレター, (35), p.7 - 10, 2022/12
ジルコン(U-Th)/He法の年代標準試料を確立する目的で、4つのジルコン試料について(U-Th)/He年代分析を実施した。令和2年度に報告した仁左平ジルコンに引き続いて、3年度は国内の地質試料として、濃飛流紋岩,鷲走ヶ岳月長石流紋岩およびフィッション・トラック法およびU-Pb法の年代標準試料であるMt. Dromedary, OD-3を採用した。結果として、濃飛流紋岩については二次加熱を示唆する年代の若返りが観察されたが、残り3試料については先行研究の既往年代と整合的なデータが得られた。これまで得られている7つのZHeデータを総評すると、先行研究で測定した歌長流紋岩のジルコンが最も単粒子年代のばらつきが小さく、標準試料として適切であると考えられる。今後は、年代のばらつきの原因の探求のため、ジルコン粒子の化学分析や組織観察を行う予定である。
梶田 侑弥*; 末岡 茂; 福田 将眞; 田上 高広*
フィッション・トラックニュースレター, (35), p.19 - 21, 2022/12
本講演では、東北日本弧前弧域に分布する北上山地を対象に、白亜紀深成岩類のアパタイトフィッション・トラック(AFT)年代、アパタイトヘリウム(AHe)年代のこれまでの結果に、FT長分布を用いた熱史逆解析結果を加えた熱年代学データの解釈を試みる。AFT年代は東縁部の約130Maから西に向かって70Ma程度まで若くなる。一方AHe年代は西縁部の約80Maを除けば約50-30Maにまとまる。北上山地の白亜紀深成岩類のジルコンU-Pb年代は135-120Maでほぼ均一なので、AFTとAHe年代の傾向は岩体の形成年代が原因ではない。またFT長を用いた熱史逆解析結果はいずれも徐冷を示し、短期的な熱イベントの存在は積極的には支持されない。以上を踏まえると、10年以上のスケールで地殻浅部における熱構造史もしくは隆起・削剥史が東西で異なると考えられる。熱構造史が異なる可能性としては、火山フロントの移動の影響が考えられる。このとき火山フロントはAFT年代の下限である約70MaからAHe年代の上限の約50Maの間に北上山地中央付近にあったと想定されるが、そのような証拠は知られていない。一方で隆起・削剥史が異なる場合、AFT年代からは沿岸部より内陸側を隆起させるような、AHe年代からは東西でほぼ一様な隆起形態が考えられる。10
年以上の前弧域の隆起には底付け付加が支配的な要因の一つとなり得る(underplating model)。このunderplating modelでは、島弧横断方向に隆起量の差が見られ、沿岸部よりやや内陸側に隆起のピークを生じるため、AFT年代の東西傾向は説明可能である。また、沈み込むプレート速度が5cm/yr以下ではunderplating modelの隆起が起きないことも示されている。北上山地ではアダカイト質の浄土ヶ浜流紋岩類の活動時期(44.3Ma)には暖かいプレートが沈み込んでいたと考えられ、この時期の前後には底付け付加の隆起が停止していた可能性が高い。その後、底付け付加による隆起は再開したが、沈み込むプレートが交代したことにより、AHe年代に東西で差をもたらすほどの削剥量の違いを生むに至らなかった可能性が考えられる。
南 沙樹*; 末岡 茂; 福田 将眞; 長田 充弘; Kohn, B. P.*; 横山 立憲; 鏡味 沙耶; 梶田 侑弥*; 田上 高広*
フィッション・トラックニュースレター, (35), p.22 - 26, 2022/12
一般的に花崗岩は、地下数kmから数十kmの深部で形成される。したがって、最近形成された若い花崗岩が、現在地表に露出する地域では、極めて急速な隆起・削剥が起きている可能性がある。世界的に見ると、約5Maより若い花崗岩の分布は、変動帯に集中している。変動帯にある日本列島でも、飛騨山脈の黒部川花崗岩や、南部フォッサマグナ地域の丹沢トーナル複合岩体などで、ジルコンU-Pb年代測定(閉鎖温度900C以上)により数Ma以内の若い形成年代が報告されている。本研究の対象地域である谷川岳地域は、東北日本弧南部の背弧側に位置し、その地質は主に、後期白亜紀-古第三紀の花崗岩類と、これらに貫入する鮮新世の谷川岳花崗岩類(赤湯岩体・谷川岩体・巻機岩体)から成る。先行研究では、谷川岳花崗岩類について、形成年代を表すジルコンU-Pb年代(約4.0-3.2Ma)と、約280
C付近の冷却年代を表す、ジルコンのフィッション・トラック(ZFT)年代(約3.3-2.9Ma)及び、350-400
C付近の黒雲母K-Ar年代(約3.9-3.1Ma)などが報告されている。しかし、約280
Cより低温域における熱史は不明である。本研究では、後期白亜紀水上石英閃緑岩と谷川岳花崗岩類について、未測定の地点にU-Pb年代測定を実施し、約200
C以下の低温側の熱史・削剥史を推定するためにジルコンとアパタイトの(U-Th)/He年代測定(ZHe年代: 閉鎖温度160-200
C、AHe年代: 閉鎖温度55-80
C)を実施した。その結果、谷川岳花崗岩類は、ジルコンU-Pb年代測定により、約6.0-3.2Maの間に少なくとも3回の異なる時代の貫入によって形成されたことが明らかとなった。また、最近の山地形成に関連した削剥を最も反映していると期待される、AHe年代の閉鎖温度から地表温度(10
C)の平均冷却速度は、山頂稜線の東側に位置する巻機岩体と水上石英閃緑岩で13-36
C/Ma、稜線西側の谷川岩体の1地点(AHe年代: 約1.2Ma)で36-60
C/Maと推定された。稜線東側では、AHe年代が約3.0-2.0Ma頃に集中しており、この時期の急速な削剥が示唆される。AHe年代から得られた削剥速度について、丹沢山地や東北日本弧と比較すると、谷川岳地域の削剥速度は、島弧-島弧衝突帯の丹沢山地や、歪の集中で知られる奥羽脊梁山地のような地殻変動が活発な地域に匹敵することが示唆された。