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佃 諭志*; 高橋 亮太*; 関 修平*; 杉本 雅樹; 出崎 亮; 吉川 正人; 田中 俊一郎*
Radiation Physics and Chemistry, 118, p.16 - 20, 2016/01
被引用回数:1 パーセンタイル:10.51(Chemistry, Physical)ヘキサクロロ白金(IV)酸を添加したポリビニルピロリドン(PVP)薄膜に高エネルギーイオンビームを照射することによってPVP-Ptナノ粒子ハイブリッドナノワイヤを作製した。一個のイオンを照射するとその飛跡に沿って、PVPの架橋反応とPt の還元反応によるPt粒子の析出が同時に起こるため、現像処理後、基板にPtナノ粒子を包含するPVPナノワイヤを得ることができた。ヘキサクロロ白金(IV)酸の添加量を増加するとナノワイヤの直径が減少し、ナノワイヤの単離が困難となることが明らかになったが、イオン照射後、電子線を照射することによってナノワイヤの直径の制御およびナノワイヤの単離が可能であることを見出した。
瀬口 忠男*; 田村 清俊*; 工藤 久明*; 島田 明彦; 杉本 雅樹
IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation, 22(6), p.3197 - 3206, 2015/12
被引用回数:28 パーセンタイル:76.36(Engineering, Electrical & Electronic)原子力発電所のケーブル絶縁材料であるエチレンプロピレンゴム(EPR)の熱劣化,放射線劣化,熱放射線複合劣化による分解過程を詳細に調べた。熱劣化は空気中で100あるいは175Cの加熱、放射線劣化は空気中で0.25あるいは1.0kGy/hの線を最大400kGyまで照射することで評価した。また、熱放射線複合劣化として、熱劣化後に放射線劣化を行う逐次劣化,放射線劣化後に熱劣化を行う逆逐次劣化を調べ、熱放射線同時劣化を模擬可能な試験方法を検討した。EPRに添加された酸化防止剤は熱酸化を抑制するが、その消費、減少によって酸化生成物の量が増大し、力学特性が低下することを明らかにした。また、逐次劣化は熱放射線同時劣化と異なる挙動を示したのに対し、逆逐次劣化では類似の結果が得られた。したがって、EPRを絶縁材に用いたケーブルの寿命評価には、逆逐次劣化試験が適していることを明らかにした。
武山 昭憲; 出崎 亮; 杉本 雅樹; 吉川 正人
Journal of Asian Ceramic Societies (Internet), 3(4), p.402 - 406, 2015/12
Ceramic yield, density, volume change and pore size distribution were measured for radiation- and thermally cured (poly carbo silan) PCS powder when they were pyrolyzed in the temperature ranges between 673 and 973 K. Higher ceramic yield was obtained for radiation-cured powder due to smaller amount of evolved gas. Temperature dependence of volume change and the total pore volume show the formation and disappearance of pores in the powders were determined by the volume shrinkage and evolution of decomposed gases. Volume shrinkage narrowed the pore size distribution for radiation-cured powder. For thermally cured powder, the narrowing of size distribution was disturbed by aggregated pores. Smaller amount of evolved gas from radiation-cured powder relative to thermally cured powder prevented the aggregation of pores and provided the narrow size distribution.
成澤 雅紀*; 江夏 昌志; 武山 昭憲; 杉本 雅樹; 出崎 亮; 佐藤 隆博; 外薗 洋樹*; 河相 武利*; 岩瀬 彰宏*
Journal of the Ceramic Society of Japan, 123(9), p.805 - 808, 2015/09
Two kinds of Si-O-C(-H) ceramics particles having intrinsic photoluminescence (PL) spectra were prepared from silicone resin microspheres by heat treatment in a hydrogen atmosphere at 800 or 1100C. The obtained particles were painted on a Si substrate using a binder, and ion-beam-luminescence spectra were observed under proton beam irradiation with an acceleration energy in the ranges of 1-3 MeV. Observed spectra had peaks at wavelength of 520-540 nm. These peak wavelengths were larger than those observed under UV light irradiation. The luminescence of H 1100 (sample decarbonized at 1100C) was bright, and that of H 800 (sample decarbonized at 800C) was faint. However, the intensity of luminescence decreased rapidly at an early stage of the beam irradiation. In air, a sharp luminescence band with a peak at 300 nm appeared together with the main emission with a peak in the range of 520-540 nm. The existence of the sharp band at 300 nm was apparent in the H 800 spectra, whereas it appeared as a minor peak in the H 1100 spectra in air.
島田 明彦; 杉本 雅樹; 吉川 正人
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 30, 2015/03
原子力関連施設で用いられるケーブル絶縁材(高分子)の加速劣化試験を行うにあたって、高分子は酸素が行き届いた状態で放射線照射されたか、そうでないのかを把握しておくことは重要である。これを確かめる手法として、エチレンプロピレンゴム(EPR)については、70CのKOH水溶液に5分間浸漬した後乾燥させて、SEM-EDSで観察することにより酸化領域(どの部分が酸化しているか)を調べる手法がある。本報告は、この手法をポリエチレン(PE)に適用するための技術改良について述べたものである。室温、2kGy/hの線量率で400時間線照射した厚さ2mmのPEシートについて、照射後のPEの断面を切り出した。予備試験の結果から浸漬時間を長くする必要があると考えられたので、浸漬時間を24時間とし、乾燥後断面をSEM-EDSで観察した。表面から約70mの範囲では、その内側に比べてK原子の強度が高かった。これはPEの酸化により生じたカルボン酸のH原子がK原子に置換されたことによってこの範囲のK原子の強度が高くなったためである。浸漬時間を24時間にすることにより、酸化したPEに対してKによる着色を行わせることができるとわかった。今後、酸化領域を完全に着色させるのに必要な時間を決定する必要がある。
Kim, J.*; 藤原 明比古*; 澤田 智弘*; Kim, Y.*; 杉本 邦久*; 加藤 健一*; 田中 宏志*; 石角 元志*; 社本 真一; 高田 昌樹*
IUCrJ, 1(3), p.155 - 159, 2014/05
被引用回数:2 パーセンタイル:21.39(Chemistry, Multidisciplinary)放射光X線粉末回折データをもとに、電子密度解析を行い、低温でLaFeAsOFの超伝導相の鉄層にのみ電子が集まっていることが見つかった。静電ポテンシャル分布解析の結果、ヒ素イオンの電子分極が協調的に増強され、電荷の再配列が起こっていた。
大道 正明*; 麻野 敦資*; 佃 諭志*; 高野 勝昌*; 杉本 雅樹; 佐伯 昭紀*; 酒巻 大輔*; 小野田 晃*; 林 高史*; 関 修平*
Nature Communications (Internet), 5, p.3718_1 - 3718_8, 2014/04
被引用回数:35 パーセンタイル:77.73(Multidisciplinary Sciences)高分子薄膜に入射するイオンの飛跡に沿って直径ナノオーダーの架橋体を形成し溶媒抽出する方法(SPNT)を、人由来血清アルブミン(HSA)やアビジン等のタンパクに適用した結果、タンパクナノワイヤーの形成が確認できた。得られたタンパクナノワイヤーに、リジン・アルギニン残基のペプチド結合を選択的に切断するトリプシンを用いた加水分解反応を適用したところ、反応時間の経過とともにナノワイヤーの断片化が進行し、反応開始20分で完全に消失した。また、HSAとアビジンの混合物から作製したハイブリッドのナノワイヤーでは、ペルオキシダーゼ活性等の生物学的な性質を示すとが確認できた。これらの結果は、SPNTで作製されたタンパクナノワイヤーはタンパク質の基本構造であるペプチド結合を保持していることを示唆している。このSPNTによる作製技術は、任意のタンパク質分子を大きな比表面積のナノワイヤーに成形し、その表面に機能性を付与する基礎技術として幅広い活用が期待できる。
島田 明彦; 杉本 雅樹; 宮下 敦巳; 吉川 正人
JAEA-Review 2013-059, JAEA Takasaki Annual Report 2012, P. 29, 2014/03
高い放射線環境下で進められる東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた作業を支援するため、機能性セラミック材料研究グループでは、これまで原子力機構等が実施した高分子系材料・機器の耐放射線性試験等の結果878件を収録した「高分子系材料・機器の耐放射線性データベース(Database of Radiation Resistance on Polymer Materials and Equipments: DRRPME)」を整備、公開した。本データベースには、高分子材料423件、機器・部品223件、油脂・塗料103件、有機複合材料129件が収録されており、高分子系材料や機器の名称, 分類, 放射線の種類等による検索ができるよう設計されており、放射線環境下で試験された高分子系材料や機器にはどのような種類があるのか、あるいはそれらがどの程度の放射線量に耐えるのか、といった情報を簡単な操作で取り出すことができる。このようなデータベースでこれまでに公開されていたものはなく、本データベースは、東京電力福島第一原子力発電所事故の対応に限らず、原子力施設等の放射線環境下で使用する材料・機器の検討作業への活用も期待される。
出崎 亮; 杉本 雅樹; 吉川 正人
JAEA-Review 2013-059, JAEA Takasaki Annual Report 2012, P. 42, 2014/03
近年のエネルギー問題に鑑み、工業分野における省エネ化・高効率化は改善に取り組むべき最重要課題である。例えば、世界で最も利用される金属である鉄の精錬には、80%以上の気孔率を有する炭化ケイ素(SiC)フィルターが用いられている。従来のフィルターは、発泡プラスティックにセラミック粉末スラリーを流し込んだ後、発泡プラスティックを焼失させると同時に粉末を焼結する方法によって製造されてきた。しかしながら、この方法で得られるフィルターの圧縮強度は1MPa程度と低く、ろ過処理能力向上のために強度の改善が求められている。そこで本研究では現在実用化されているSiCフィルターの性能を超える、高気孔率と高圧縮強度を両立したSiCフィルターを開発することを目的とし、ケイ素系高分子と発泡剤の混合物を出発原料とした、ダイレクト・フォーミング、放射線架橋、焼成の工程からなる多孔質SiC材料の製造プロセスを検討した。その結果、数十数百mの気孔径分布、80%の気孔率、従来の3倍となる3MPaの圧縮強度を有する多孔質SiC材料を得ることに成功し、本製造プロセスが高性能SiCフィルターの開発に有望であることを明らかにした。
島田 明彦; 杉本 雅樹; 工藤 久明*; 田村 清俊*; 瀬口 忠男*
IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation, 21(1), p.16 - 23, 2014/02
シリコーンゴム(SiR)は、原子力発電所用ケーブルの絶縁材として用いられている。本研究では、原子力発電所用ケーブル絶縁材と同じ組成のシート状SiRを試料として選定し、最大235C、及び最大1kGy/h、195Cの環境下、空気中で熱劣化,放射線劣化をさせた。熱劣化に関しては、併せて、真空中での劣化も行った。劣化済みのSiRの特性を引張試験,ゲル分率測定,重量測定により調べた。空気中で劣化させたSiRは、熱劣化,放射線劣化のいずれにおいても、劣化と共に、破断時伸び、破断時強度が低下し、弾性率が上昇することが分かった。真空中でも劣化と共に特性が変化するが、空気中に比べて破断時強度の低下が著しく、また、弾性率の上昇が緩やかであることが分かった。これらの結果や文献調査などから、空気中及び真空中のSiRの放射線劣化は、放射線によってSiRの架橋部分が切断された後、酸素が存在する(空気中の)場合は酸素原子による架橋が生じるが、酸素が存在しない(真空中の)場合は架橋部分が切断されたままになるという劣化メカニズムで説明できることがわかった。
出崎 亮; 杉本 雅樹; 吉川 正人
Innovative Processing and Manufacturing of Advanced Ceramics and Composites II; Ceramic Transactions, Vol.243, p.61 - 69, 2014/01
近年のエネルギー問題に鑑み、工業分野における省エネ化・高効率化は改善に取り組むべき最重要課題である。例えば、世界で最も利用される金属である鉄の製錬には、80%以上の気孔率を有する炭化ケイ素(SiC)フィルターが用いられている。従来のフィルターは、発泡プラスティックにセラミック粉末スラリーを流し込んだ後、発泡プラスティックを焼失されると同時に粉末を焼結する方法によって製造されてきた。しかしながら、この方法で得られるフィルターの圧縮強度は1MPaと低く、ろ過処理能力向上のために強度の改善が求められている。そこで本研究では現在実用化されているSiCフィルターの性能を超える、高気孔率と高圧縮強度を両立したSiCフィルターを開発することを目的とし、ケイ素系高分子と発泡剤の混合物を出発原料とした、ダイレクト・フォーミング、放射線架橋、焼成の工程からなる多孔質SiC材料の製造プロセスを検討した。その結果、数十数百mの気孔径分布、80%の気孔率、従来の3倍となる3MPaの圧縮強度を有する多孔質SiC材料を得ることに成功し、本製造プロセスが高性能SiCフィルターの開発に有望であることを明らかにした。
島田 明彦; 杉本 雅樹; 工藤 久明*; 田村 清俊*; 瀬口 忠男*
IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation, 20(6), p.2107 - 2116, 2013/12
被引用回数:40 パーセンタイル:83.14(Engineering, Electrical & Electronic)架橋ポリエチレンに酸化防止剤を0, 0.1, 1.0%加え、厚さ2mmのシート状に成型した試料を熱,放射線劣化させ、劣化後の試料の機械特性と酸化防止剤濃度,酸化生成物濃度、及びこれらの厚さ方向の分布を調べ、相関関係について議論した。劣化とともに酸化防止剤濃度は、揮発や分解により減少していくが、十分な量の酸化防止剤(0.04%程度(限界値)以上)が架橋ポリエチレンに残っている場合には、劣化時間や線量に比例して酸化が進行し、厚さ方向に対する酸化防止剤の不均一な消費や酸化生成物の不均一な生成は見られない。しかし、酸化防止剤の濃度が限界値以下になると、酸化速度が著しく向上するとともに、試料表面の劣化が非常に激しくなるなど不均一な酸化劣化が起こることがわかった。したがって架橋ポリエチレンなどのケーブル絶縁材の加速劣化試験を行う際には、酸化防止剤の消失が引き起こす熱暴走(酸化速度が著しく向上すること)が起こらない条件で行うことが必要不可欠であると考えられる。
瀬口 忠男*; 春山 保幸; 杉本 雅樹
Radiation Physics and Chemistry, 85, p.124 - 129, 2013/04
被引用回数:6 パーセンタイル:43.64(Chemistry, Physical)超高分子量ポリエチレン(UHM-PE)やエチレンプロピレンゴム等のそれぞれ異なる分子構造を有するポリオレフィン系高分子材料について、真空中、-196200Cの温度範囲で線を照射した際の発生ガスを定量分析し、放射線分解反応について調べた。主要な発生ガスは、高分子鎖の架橋が形成される際に生成する水素(H)であり、微量成分としてメタン(CH),エタン(CH)等の炭化水素と二酸化炭素(CO),一酸化炭素(CO)が観察された。いずれの温度においても、吸収線量の増加に伴い発生ガス量は増大する傾向を示した。炭化水素系の発生ガス量は、側鎖のない直線状の分子構造のUHM-PEでは、他に比べて一桁以上少なくなることから、これらの発生ガスは、主鎖末端及び側鎖の切断によって生成するものと考えられる。また、CO, COは、UHM-PEを150Cで真空脱気すると観察されなくなることから、高分子材料中の残存酸素の反応により生成するものと考えられる。発生ガスの種類は分子構造とその分解反応、発生ガス量は吸収線量とよく対応することから、温度と吸収線量をパラメータとした定量評価が、放射線分解反応の解明に有用であることがわかった。
杉本 雅樹; 島田 明彦; 工藤 久明*; 田村 清俊; 瀬口 忠男*
Radiation Physics and Chemistry, 82, p.69 - 73, 2013/01
被引用回数:63 パーセンタイル:97.88(Chemistry, Physical)原子炉用電線ケーブルの絶縁材料に用いられる架橋ポリエチレンシートを、熱劣化あるいは放射線劣化した際に生成する酸化物について、顕微赤外分光計(FTIR)で調べた。その結果、放射線あるいは熱劣化のいずれの場合もカルボン酸,カルボン酸エステル,カルボン酸無水物の生成が認められた。初期生成物はカルボン酸であり、カルボン酸エステルはカルボン酸と架橋助剤として添加された過酸化物の分解生成物との反応により、カルボン酸無水物は酸化反応で切断されたポリエチレン主鎖末端のカルボン酸の再結合により生成したものと考えられた。また、熱劣化温度が上昇するとゲル分離が増大することが知られているが、これは酸化生成物中のカルボン酸無水物の割合が増大して、架橋反応が進行するためと解釈できた。これらは、高分子鎖に熱や放射線で生成したラジカルが、酸素と反応して過酸化ラジカルを生成し、連鎖的に酸化反応が進行すると考える従来の知見では説明できないものであり、カルボン酸を初期生成物としてそのエステル及び酸無水物が生成する熱あるいは放射線劣化の新たな反応機構を明らかにできた。
瀬口 忠男*; 田村 清俊*; 渡士 克己; 鈴木 雅秀; 島田 明彦; 杉本 雅樹; 出崎 亮; 吉川 正人; 大島 武; 工藤 久明*
JAEA-Research 2012-029, 158 Pages, 2012/12
原子力発電所用ケーブルの経年劣化研究として、ケーブル絶縁材料であるエチレンプロピレンゴム(EPR),架橋ポリエチレン(XLPE),ポリ塩化ビニル(PVC),シリコーンゴム(SiR)について、劣化メカニズムの研究を実施した。実用ケーブルと同等の配合試料(実用配合)及び特定の添加剤を配合したモデル配合の試料を用いて、放射線と熱の加速劣化を行い、実用物性の測定、重量の変化、高分子の架橋・切断の分析、酸化防止剤と酸化生成物の濃度分布の測定分析を行い、解析した。
瀬口 忠男*; 田村 清俊; 島田 明彦; 杉本 雅樹; 工藤 久明*
Radiation Physics and Chemistry, 81(11), p.1747 - 1751, 2012/11
被引用回数:46 パーセンタイル:95.35(Chemistry, Physical)放射線環境に敷設されたケーブルの絶縁材(架橋ポリエチレンなどのポリマーでできている。)の熱,放射線による酸化劣化の反応機構を解明するために、ポリマーに添加された酸化防止剤の作用機構を調べた。従来、ポリマーの酸化反応は、ポリマーから生成したラジカルが別のポリマーと反応して酸化生成物を作るとともに、ラジカルが新たに生成して酸化反応を連鎖的に進行させると考えられてきた。酸化防止剤の働きは、このラジカルを失活させることであると考えられてきたが、この考え方が正しければ、酸化防止剤は熱劣化に対してだけでなく放射線劣化に対しても効果を発揮するはずである。しかしながら本研究の結果、酸化防止剤は熱劣化に対してのみ顕著な効果を発揮することがわかった。この事実は、ポリマーの酸化反応が連鎖的に進行するという従来の定説を覆すものである。酸化防止剤の作用は、ラジカルを失活させることではなく、ラジカルのエネルギーの一部を別の分子に移動させ、熱酸化によるラジカル生成を抑制することであると考えられる。
島田 明彦; 杉本 雅樹; 工藤 久明*; 田村 清俊; 瀬口 忠男*
IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation, 19(5), p.1768 - 1773, 2012/10
被引用回数:14 パーセンタイル:58.83(Engineering, Electrical & Electronic)原子力発電所に敷設されているケーブルは事前に劣化試験が行われる。この劣化試験を短期間で精度よく行うため、ケーブルの実環境の低線量率,長時間照射によるケーブル材料の劣化の再現に必要な高線量率,短時間照射の条件を調べた。ケーブル材料として使われている高分子材料(架橋ポリエチレンとエチレンプロピレンゴム)を室温、0.25kGy/h、及び100C、1kGy/hで、400kGyまで照射した。劣化させた試料の酸化物の分布をFTIRで調べて、機械特性の変化と比較した。その結果、(1)劣化試験の際に照射温度を100Cまで上昇させてもその熱劣化は無視できること、(2)100Cで厚さ1mmの架橋ポリエチレンシートを0.8kGy/h、厚さ1mmのエチレンプロピレンゴムを10kGy/hで照射することにより、高分子材料全体を酸化劣化させることができ、室温での劣化試験と比べ、試験期間が1/15に短縮されることがわかった。
大道 正明*; 高野 勝昌*; 佐藤 隆博; 神谷 富裕; 石井 保行; 大久保 猛; 江夏 昌志; 加田 渉; 杉本 雅樹; 西川 宏之*; et al.
Journal of Nanoscience and Nanotechnology, 12, p.7401 - 7404, 2012/09
被引用回数:2 パーセンタイル:11.51(Chemistry, Multidisciplinary)A new visualization method for dose distribution of a focused proton beam in sub-micrometer scale was developed using a formation of a bulky cross-linked structure of polyacrylic acid -, '-methylence bisacrylamide, blend film. The areas irradiated by the focused proton beam were swelled on the film. The height of the swelling was significantly increased according to the beam fluence and the increase of containing ratio of the methylence bisacrylamide. The height was saturated at the fluence of 510 ions/m. The proton beam-sensitive polymer film was used for the analysis of dose distribution on its surface. The irradiated surface was observed by employing an atomic force microscope. This observation result showed that the method could be used to confirm the writing patterns and the beam-spot shape. Nanostructures with a crescent shape are visualized clearly at a misaligned beam-spot shape in the set up of the beam-optics.
瀬口 忠男*; 田村 清俊; 工藤 久明*; 島田 明彦; 杉本 雅樹; 出崎 亮; 大島 武; 吉川 正人
JAEA-Review 2012-027, 46 Pages, 2012/08
平成18年度から22年度までの5か年にわたり、ケーブル劣化のメカニズムに関する研究が、経済産業省原子力安全保安院の原子力発電所高経年化対策事業として、実施された。本研究の終了にあたり、劣化メカニズム研究に焦点を絞りレビューした。1970年以降の研究報告について、実験的な裏付けがなされている報告を選定し、確証されている事象、解釈が合理的なもの、未だ解釈が定まっていない事項等を検討した。本研究を含めて、その後に得られた新たな事実をもとに、過去のデータの解釈を改定し、劣化メカニズムの新たなモデルを提案した。
前吉 雄太*; 佐伯 昭紀*; 諏訪 翔太郎*; 大道 正明*; 丸井 裕美*; 麻野 敦資*; 佃 諭志*; 杉本 雅樹; 岸村 顕広*; 片岡 一則*; et al.
Scientific Reports (Internet), 2, p.600_1 - 600_6, 2012/08
被引用回数:45 パーセンタイル:72.32(Multidisciplinary Sciences)高分子薄膜に入射するイオンの飛跡に沿って生じる高濃度活性種により直径ナノオーダーの架橋体を形成し、これを溶媒抽出する方法を用いて、フラーレン(C)やその誘導体である[6,6]phenyl C butyric acid methyl ester (PCBM)のナノワイヤーの作製を試みた。C及びPCBMを0.14mの厚さに成膜し、Xe 450MeVあるいはOs 490MeVイオンを照射した結果、半径811nmのナノワイヤーの作製に成功した。また、有機半導体の原料であるポリチオフェンに、長さ120mのPCBMナノワイヤーを数密度110cmで混合して試作した有機薄膜太陽電池は、ナノワイヤーを混合しない場合に比べて約7%変換効率が増大することを見いだした。これは、ポリチオフェン中に、PCBM分子が個々に分散しているよりも、ナノワイヤーとして混合する方が電子の移動度が大きくなるためと考えられる。微細加工が困難なフラーレン誘導体から、イオンビームを用いた技術によりナノワイヤーが作製可能で有り、これを有機薄膜太陽電池へ応用することで、変換効率が向上できることを実証できた。