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岡村 正愛*; 田中 淳; 百瀬 眞幸*; 梅本 直行*; Silva, J.*; 戸栗 敏博*
Floriculture, Ornamental and Plant Biotechnology; Advances and Topical Issues, Vol.1, p.619 - 628, 2006/00
初のバイオ・材料専用施設であるイオン照射研究施設(TIARA)が原子力機構(旧日本原子力研究所)に設置されたのに伴い、世界に先駆けて植物へのイオンビーム照射による突然変異誘発の特徴解析が進められた。その結果、モデル材料であるシロイヌナズナに炭素イオンビームを照射した場合、誘発突然変異率は線などに比べて平均17倍誘発率が高く、誘発される変異は逆位や転座などの大きな構造変化が生じやすいという特徴を見いだした。また、キクやカーネーションなどへの照射では、線などでは得られなかったような新しい花色や花型の変異が高頻度で誘発され、イオンビームは誘発する変異スペクトルも広いことがわかった。特に、キリンビール植物開発研究所の岡村らは、「ビタル」の葉片培養系に炭素イオンビームを照射したのち、その再分化したカーネーションの花色を調査した。対照実験として、変異原として最もよく用いられるエチルメタンスルフォン酸(EMS)や線などが用いられた。チェリー色から異なった単一色への変異では、EMSや線では、薄桃, 桃や赤色への変異を誘発するのに対して、炭素イオンではサーモンや黄, クリームなど、さまざまの花色変異が誘発された。一方、花形については、線で花弁が剣弁から丸弁状になったものがわずかに得られたが、多くは炭素イオンで丸弁やナデシコ形花弁などの変異が誘発された。またその変異も、例えば、剣弁, やや剣弁, やや丸弁, 丸弁、などと連続した変異が得られた。さらに、非常に珍しい「バラ咲き」様の花形などの作出にも成功し、文字通り、色とりどり、形とりどりのカーネーション品種が育成された。その他、トランスポゾンによる花の育種に関する研究事例も紹介する。
岡村 正愛*; 百瀬 眞幸*; 梅基 直行*; 戸栗 敏博*; 田中 淳; 長谷 純宏; 山口 博康*; 森下 敏和*
no journal, ,
本発表では、量子ビーム技術を利用した花卉園芸品種の作出について紹介する。われわれはこれまで、イオンビームをカーネーション等の花卉育種へ利用し、イオンビーム照射が線に比べて変異スペクトルが広く、新しい花色や花形のカーネーションを作出できることを明らかにした。また、ガクの形状,茎表面のワックス並びに脇芽の数といった栽培上有用な形質を付与できることも明らかになった。この技術を利用して世界的競争力のある新品種を作り出すことに成功し、ヨーロッパを中心に既に販売が開始されている。加えて、これまで明確なデータがなかった線の緩照射について調査した結果、線の急照射に比べて変異スペクトルが広がることがわかった。緩照射は照射に時間がかかるものの新しい変異を得る有効な方法の1つであると言える。さらに、花色がオレンジ色から黄色に変化した変異体では、DFR(dihydroflavanol 4-reductase)遺伝子へのトランスポゾンの挿入が関与していることが明らかになり、放射線によってトランスポゾンが活性化され変異を生み出す可能性が示唆された。