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上澤 伸一郎; 山下 晋; 佐野 吉彦*; 吉田 啓之
Journal of Nuclear Science and Technology, 62(6), p.523 - 541, 2025/06
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Nuclear Science & Technology)東京電力福島第一原子力発電所(1F)の廃炉における汚染水対策として、日本原子力研究開発機構(JAEA)では、燃料デブリの位置や発熱、空隙率の影響を含む、空冷時の熱挙動を計算するため、ポーラスモデルを用いたJUPITERコードによる数値解析手法の開発を進めている。本研究では、ポーラスモデルを用いたJUPITERの妥当性確認を行うため、多孔質体を用いた自然対流熱伝達実験とその数値シミュレーションを実施した。実験とシミュレーションの温度と速度の分布を比較すると、多孔質体の上面付近の温度を除き、シミュレーションの温度分布は実験の温度分布と良く一致した。また、速度分布も実験結果と定性的に一致した。妥当性確認に加えて、本研究では、多孔質体の内部構造に基づく有効熱伝導率が自然対流熱伝達に及ぼす影響について検討するために、様々な有効熱伝導率モデルを用いた数値シミュレーションも実施した。その結果、多孔質媒体内の温度分布や自然対流の速度分布はモデルごとに大きく異なることがわかり、燃料デブリの有効熱伝導率は1Fの熱挙動解析における重要なパラメータの一つであることがわかった。
上澤 伸一郎; 小野 綾子; 永武 拓; 山下 晋; 吉田 啓之
Journal of Nuclear Science and Technology, 62(5), p.432 - 456, 2025/05
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Nuclear Science & Technology)ワイヤメッシュセンサ(WMS)の精度を明らかにするため、単一の球形気泡と気泡流に対してWMSの静電場シミュレーションを実施した。単一気泡の静電場シミュレーションでは、様々な気泡位置における電流密度分布と、送信ワイヤから受信ワイヤまでの電流経路を示した。その結果、WMS周囲の不均一な電流密度分布に基づく系統的誤差があることを明らかにした。また、数値流体解析コードJAEA Utility Program for Interdisciplinary Thermal-hydraulics Engineering and Research (JUPITER)で得られた気泡流結果に対して静電場シミュレーションを実施したところ、線形近似やMaxwellの式などの、WMS信号からボイド率への既存の変換方法では0と1の間の瞬間ボイド率の中間値を定量的に推定できなかった。また、WMS信号に対してボイド率0.2という大きなばらつきがあり、瞬間ボイド率を定量的に計測することが困難であることがわかった。一方で、時間平均ボイド率においては、流路の中心付近のボイド率は線形近似を使用して推定でき、流路壁面近くのボイド率はMaxwellの式を使用して推定できることがわかった。
上澤 伸一郎; 小野 綾子; 吉田 啓之
混相流, 39(1), p.61 - 71, 2025/03
高速度ビデオカメラを用いた気泡可視化は、気泡径や気泡速度の計測技術として用いられてきた。しかし、ボイド率が高い条件下では、ボイド率の増加とともにカメラの視線方向に対する気泡の重なりが増加するため、気泡の検出が困難であった。また、ロッドバンドル流路のような障害物がある体系では可視化がさらに困難になる。本研究では、Shifted Window Transformerを用いたディープラーニングに基づく気泡検出技術を2方向から撮影した気泡画像に適用し、ロッドバンドル流路内の気泡サイズ、気泡の3次元位置、3次元軌跡を求めた。さらに、水とほぼ同じ反射率のパーフルオロアルコキシアルカンチューブを流路に用い、流路全体の気泡流を可視化した。その結果、気泡の重なりやロッド後方の気泡など、個々の気泡を識別して検出できることを確認した。さらに検出結果を用いて、各気泡の直径と流速ならびに断面ボイド率を求めた。
岩元 洋介; 松田 洋樹*; 明午 伸一郎; 米原 克也*; Pellemoine, F.*; Liu, Z.*; Lynch, K.*; 吉田 誠*; 藪内 敦*; 義家 敏正*; et al.
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 557, p.165543_1 - 165543_8, 2024/12
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Instruments & Instrumentation)陽子加速器施設における材料の照射損傷の指標として、原子1個当たりの変位数(dpa)が広く用いられている。金属材料のdpaを検証するために、3GeV以下の陽子に対する実験が行われてきた。しかし、3GeV以上の高エネルギー陽子に対する弾き出し断面積の測定は行われておらず、計算による検証も行われていない。そこで、高エネルギー領域における金属の弾き出し断面積を検証するため、温度8Kにおけるアルミニウム、銅、タングステンのワイヤーの電気抵抗率変化を、エネルギー120GeVの陽子を用いて測定した。その結果、粒子・重イオン輸送計算コードPHITSの従来の照射損傷モデルは実験データを過大評価することがわかった。一方、熱再結合補正モデルを用いた新たな計算結果は、測定された弾き出し断面積と一致した。この結果は、1GeV以上の陽子エネルギー領域では、弾き出し断面積はほぼ一定であり、1GeV陽子照射下での材料の損傷エネルギーは120GeV陽子照射下とほぼ同じであることに起因すると推定される。
上澤 伸一郎; 吉田 啓之
Journal of Nuclear Science and Technology, 61(11), p.1438 - 1452, 2024/11
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Nuclear Science & Technology)本研究では、重なり合う気泡の中から個々の気泡を検出・分割するために、Shifted window Transformer (Swin Transformer)を用いた深層学習ベースの気泡検出器を開発した。検出器の性能を検証するため、学習画像数を変えて平均適合率(AP)を計算した。APは、訓練画像の数が50枚以下の場合は、トレーニング画像の数の増加とともに増加したが、50枚を超える場合は一定であった。50枚以上ではSwin Transformerと一般的なCNNであるResNetのAPはほぼ同じであったが、学習画像が少ない場合はSwin TransformerのAPがResNetのAPを上回った。また、ボイド率が増加すると、Swin TransformerのAPはResNetの場合と同様の減少を示したものの、学習画像が少ない場合はSwin TransformerのAPが全てのボイド率においてResNetのAPを上回った。さらに、合成気泡画像で学習した検出器で、気泡流可視化実験の重なった気泡や変形気泡の検出が可能であることを確認した。このように、Swin Transformerを用いた新しい気泡検出器は、ResNetを用いた検出器よりも少ない学習画像で高いAPを得られることが確認された。
上澤 伸一郎; 小野 綾子; 山下 晋; 吉田 啓之
Proceedings of 13th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS13) (Internet), 7 Pages, 2024/11
電極間の気相と液相の導電率の違いを利用したコンダクタンス型ワイヤメッシュセンサ(WMS)は、流路断面ボイド率分布を測定する有効な手法の一つである。本研究では、WMSの計測誤差を明らかにするために、単一球形気泡と気泡流についてWMS周りにおける数値流体力学(CFD)解析と静電場解析を実施した。単一気泡における解析結果より、WMS周囲の不均一な電流密度分布に基づく計測誤差があることが明らかにされた。ボイド率の瞬時値とWMS信号の関係は、同じ気泡であっても、WMSを通過する気泡の位置に対して一意に決まらず、従来用いられてきたWMS信号からボイド率への変換方法である線形近似やマクスウェルの式とも一致しないことが確認された。気泡流における解析結果より、瞬時ボイド率の定量的な計測は、ボイド率の偏差が0.2程度と大きく、難しいことがわかった。一方、WMS信号を時間平均するとその偏差は減少することが確認された。このように、既存の変換方法を使用したWMSでは時間平均ボイド率を計測できるものの、瞬時ボイド率を定量的に計測することは困難であることがわかった。
上澤 伸一郎; 小野 綾子; 吉田 啓之
混相流シンポジウム2024講演論文集(インターネット), 2 Pages, 2024/09
分散気泡流における気泡径や界面積濃度、ボイド率の計測技術として、ハイスピードビデオカメラによる気泡可視化計測手法が用いられてきた。しかしながら、ボイド率の増加と共にカメラの視線方向に対して重なり合う気泡が増加することから、高ボイド率での気泡検出は困難であった。本研究では、その課題を克服するために、Shifted window Transformer (Swin Transformer)を用いた深層学習ベースの気泡検出技術を開発した。その性能を検証するため、Generative Adversarial Networks (GAN)で取得した気泡の画像を用いて、教師画像数に対する平均適合率(AP)を計算したところ、教師画像の数が50枚で十分なAPとなった。このことから少ない画像数でも気泡検出が可能であることがわかった。また、配管やバンドル流路体系における気泡可視化実験で取得した画像に対しても、重なり合う気泡の中から個々の気泡を検出できることを確認した。その結果を用いて、界面積濃度とボイド率を算出し、既存の関係式と比較したところ、良く一致することが確認された。このことから、本検出技術が気泡径だけでなく、界面積濃度やボイド率の計測も可能であることが示された。
吉田 圭佑; 加藤 慎吾; 奥山 慎一; 石森 有; 井上 睦夫*
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences (Internet), 24, p.1 - 12, 2024/08
The factors causing the temporal variation of Be deposition in the Hokuriku region (the Sea of Japan side of central Honshu, the main island of Japan) during winter (November to February) were examined using monthly samples of
Be deposition conducted over 30 years, spanning from 1991 to 2021. The predominant factors on
Be deposition at a Hokuriku region site were as follows: 1) the amount of
Be generated by cosmic rays, 2) the volume of air transported from the Arctic, and 3) the amount of precipitation at the observation site. The contribution of each of these factors fluctuated depending on the sampling period. The temporal variations in
Be deposition during the first half of the sampling period (1991-2005) were primarily driven by cosmic rays. In contrast, during the latter half of the period (2006-2021), meteorological factors, particularly snowfall, emerged as significant contributors. This shift in influence was attributed to the effects of climate change in the Hokuriku region.
上澤 伸一郎; 小野 綾子; 吉田 啓之
第52回可視化情報シンポジウム講演論文集(インターネット), 2 Pages, 2024/07
気泡の3次元挙動を得るため、複数台のハイスピードビデオカメラにより気泡の3次元位置を同定する可視化計測技術が用いられている。しかしながら、ボイド率の増加と共にカメラの視線方向に対して重なり合う気泡が増加することから、高ボイド率条件への適用が困難であった。原子力機構では、気泡の重なりに対する課題を克服するため、Shifted window Transformer (Swin Transformer)を用いた深層学習ベースの気泡検出技術の開発を進めている。本報では、その気泡検出技術を主流方向以外の二方向から撮影した分散気泡群の画像に適用し、分散気泡の3次元挙動可視化計測を実施した。その結果、各画像に対して、視線方向に対して重なり合う気泡群から個々の気泡を検出でき、気泡径やアスペクト比を取得できることを確認した。また、両画像の主流方向に対する気泡位置を紐付けることにより、個々の気泡の3次元位置ならびに3次元の気泡速度計測が可能であることを確認した。
小野 綾子; 永武 拓; 上澤 伸一郎; 柴田 光彦; 吉田 啓之
Proceedings of Specialist Workshop on Advanced Instrumentation and Measurement Techniques for Nuclear Reactor Thermal-Hydraulics and Severe Accidents (SWINTH-2024) (USB Flash Drive), 7 Pages, 2024/06
日本原子力研究開発機構(JAEA)では、軽水炉における核熱連成解析コードの開発を行っている。核熱連成コードに適用される熱流動解析コードには、中性子輸送計算に必要なボイド率分布を運転条件下で計算することが期待されているため、計算結果については高温高圧条件下でのボイド率分布データを用いて妥当性確認をする必要がある。そこで、原子力機構の高圧二相流実験ループに設置した44模擬燃料集合体内のボイド率分布について開発したワイヤメッシュセンサを用いて計測し、コード検証のためのデータを取得した。
横村 亮太*; 後藤 雅貴*; 吉田 健人*; 割澤 伸一*; 羽成 敏秀; 川端 邦明; 福井 類*
IEEE Robotics and Automation Letters (Internet), 9(4), p.3275 - 3282, 2024/04
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Robotics)廃炉作業におけるロボットの遠隔操作のエラーを低減するため、作業環境を常時観察できるRail DRAGONを開発した。Rail DRAGONは、原子炉格納容器(PCV)内に長尺の軌道構造体(レールモジュール)を組み立てて押し込み、そのレール上に複数台のモニタリングロボットを繰り返し配置することで構築され、高放射線環境下での常時監視を可能にしたものである。特に、Rail DRAGONの構成要素である屈曲可能なレールモジュール、直線状のレールモジュール、基部ユニット、モニタリングロボットを開発した。具体的には、可搬性・作業性に優れた超長尺多関節構造物の実現手法を提案・実証している。また、処分を考慮しつつ、容易に展開・交換が可能な観測機器の展開手法を提案し、その実現可能性を検証する。
大槻 太毅*; Ishida, Tatsuhiro*; Tsutsumi, Naoya*; 小林 正起*; Inagaki, Kodai*; 吉田 鉄平*; 竹田 幸治; 藤森 伸一; 保井 晃*; 北川 彩貴*; et al.
Physical Review Materials (Internet), 7(12), p.124601_1 - 124601_6, 2023/12
被引用回数:2 パーセンタイル:20.33(Materials Science, Multidisciplinary)InMn
Sn
O
is a diluted magnetic semiconductor combining transparent, ferromagnetism, and semiconducting properties. We report the electronic structure of In
Mn
Sn
O
(x = 0.0, 0.2, and 0.3) by means of hard X-ray photoemission spectroscopy (HAXPES), soft X-ray resonant photoemission spectroscopy (RPES), and X-ray absorption spectroscopy (XAS). The spectral shape of the Mn
-
XAS spectra indicates that the valence of the substitutional Mn ions is divalent. The In 3
and O
core-level shifts with Mn substitution suggest the hole doping due to the Mn
ions. The valence-band spectra exhibit the well-defined features associated with the donor states across the Fermi level (EF) and the valence-band edge. The valence-band maximum (VBM) shifts to higher binding energy and the spectral weight near EF decreases with increasing Mn concentration, which is consistent with the hole doping nature observed in the core-level shift. The Mn
-3
RPES reveals that the hump structure around 1.9 eV above the VBM is originating from the Mn 3
impurity band and the valence-band state consists of the O 2
band strongly hybridized with the Mn 3
orbital. Furthermore, there is no contribution of the Mn 3
orbital to the spectral weight close to
. Based on our results, we argue the possible mechanism of the ferromagnetism for In
Mn
Sn
O
.
勝田 長貴*; 梅村 綾子*; 内藤 さゆり*; 益木 悠馬*; 板山 由依*; 丹羽 正和; 城野 信一*; 吉田 英一*; 川上 紳一*
Spectrochimica Acta, Part B, 210, p.106817_1 - 106817_11, 2023/12
被引用回数:1 パーセンタイル:19.24(Spectroscopy)湖成堆積物から過去の気候変動を読み取る上で、蛍光X線分析による化学組成マッピングは非常に有効な分析手法の一つとなっている。ただしその際、粒子径や鉱物組成がX線強度に及ぼす影響、すなわち「不均一効果」の評価が課題となっていた。本研究では、組成既知のいくつかの2種混合粉末試料、およびバイカル湖の湖成堆積物を対象とした走査型X線顕微鏡による分析を行い、X線強度や粒子径などとの関係を検証した。その結果、粒子径が小さい場合において、不均一効果の影響が大きくなることが分かった。
小山 真一; 池内 宏知; 三次 岳志; 前田 宏治; 佐々木 新治; 大西 貴士; Tsai, T.-H.; 高野 公秀; 深谷 洋行; 中村 聡志; et al.
廃炉・汚染水・処理水対策事業事務局ホームページ(インターネット), 216 Pages, 2023/11
令和3年度及び4年度に原子力機構が補助事業者となって実施した令和3年度開始「廃炉・汚染水対策事業費補助金に係る補助事業(燃料デブリの性状把握のための分析・推定技術の開発(燃料デブリの分析精度向上、熱挙動の推定及び簡易分析のための技術開発))」の成果概要を最終報告として取りまとめた。本報告資料は、廃炉・汚染水・処理水対策事業事務局ウェブサイトにて公開される。
永武 拓; 柴田 光彦; 上澤 伸一郎; 小野 綾子; 吉田 啓之
第27回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集(インターネット), 5 Pages, 2023/09
原子力機構で開発している核熱カップリングコードに適用する熱流動解析コードには、核計算に必要な実機条件での集合体内ボイド率分布評価が要求されているため、高温・高圧下で実験データを用いた妥当性確認が必要となる。そこで、コード妥当性確認のためのデータ取得を目的とし、ワイヤメッシュセンサを用い、44模擬燃料集合体バンドル内の瞬時ボイド率分布の計測を実施している。本報では、大気圧から2.6MPaまでの範囲において、圧力・流量をパラメータとした二相流実験を実施した結果について報告する。
山口 敏男*; 福山 菜美*; 吉田 亨次*; 片山 芳則*; 町田 真一*; 服部 高典
Liquids (Internet), 3(3), p.288 - 302, 2023/09
圧力0.1MPaから4GPa、温度300Kから500Kにおける2mol/kg MgCl水溶液の構造をX線と中性子散乱測定によって明らかにした。この散乱データを経験的ポテンシャル構造精密化(EPSR)モデリングにより解析し、圧力と温度の関数としてペア分布関数、配位数分布、角度分布、空間密度関数を導出した。Mg
は第3殻まで広がったリジッドな溶媒和殻を形成している。つまり、0GPaで約6個の水分子を含む6配位八面体の第1溶媒和殻は、ギガパスカルの圧力領域では、近接イオン対を形成し、約5個の水分子と1個のCl
となる。また、Cl
の溶媒和も、圧力によって大きく変わる。つまり、Cl
イオンまわりの水分子の配位数は、0.1MPa/300Kでの8から、4GPa/500Kでの10に増加する。また溶媒(水)も、0.1MPa/300Kでの四面体ネットワーク構造から、ギガパスカルの圧力領域では、密に詰まった構造へと変化する。このとき、中心水分子1個まわりの隣接酸素原子数は、0.1MPa/298Kでの4.6個から4GPa/500Kでの8.4個へと徐々に増加する。
山下 晋; 上澤 伸一郎; 小野 綾子; 吉田 啓之
Mechanical Engineering Journal (Internet), 10(4), p.22-00485_1 - 22-00485_25, 2023/08
乾式での燃料デブリ取り出しにおいて、実機での燃料デブリの詳細な空冷評価が重要である。多孔質体として仮定されるPCV内部の燃料デブリ周囲の熱伝達を機構論的に理解するために、多相多成分CFDコードであるJUPITERに多孔質体モデルを新たに導入した。多孔質体モデルに関して、JUPITERと親和性の高いDarcy-Brinkmanモデルを採用した。このモデルはJUPITERに採用されている多相流解析手法の一つである1流体モデルと同様に、流体相と多孔質体相を一つの方程式で同時に解くことができる。また、非線形性が卓越する高速度の自然対流場については、非線形効果として速度の2乗の項を支配方程式に加えることで対応した。導入したモデルの妥当性を確認するために、例えば、矩形多孔質体領域内の自然体流解析や多孔質体を含む自然体流熱伝達試験といった単純な妥当性確認解析と実験解析を行った。検証解析の結果、先行研究の結果と実験解析の結果と良い一致を示した。また、改良されたJUPITERの応用として、1F2号機の条件を考慮したPCV内部の燃料デブリの空冷予備解析を行った。その結果、燃料デブリ周囲の温度場や速度場は、非物理的挙動を示すことなく安定に計算できることが分かった。故に、JUPITERは詳細且つ精度良く燃料デブリの熱流動挙動を予測できる可能性を有していることが分かった。
渡辺 奈央; 山下 晋; 上澤 伸一郎; 西原 健司; 吉田 啓之
Proceedings of 20th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-20) (Internet), p.3522 - 3534, 2023/08
JAEAでは、鉛ビスマス共晶合金(LBE)を冷却材とする加速器駆動型核変換システム(ADS)を設計している。LBE流路壁の腐食速度の推定は、安全性や構造物全体の寿命を検討する上で重要な課題である。腐食速度は材料表面に形成される酸化層の状態に依存する。そこで、本研究では数値解析により酸化層の成長および溶解(OLGD)速度を推定することで、ADSにおける腐食速度を評価し設計に反映できる手法の構築を目的とする。OLGD速度は材料とLBE間の酸素と鉄の質量移動速度およびLBE中におけるこれらの移流拡散速度と相互に依存している。したがって、OLGD速度を推定するには、3つの数値解析モデルを連成させて解を得る必要がある。このうち、移流拡散の計算には、ADS中の複雑な流れへの適用性からCFDコードの使用が合理的である。一方、移流拡散に比べてはるかにスケールの小さい現象である材料とLBE間の質量移動およびOLGDについては、何らかの相関式を用いることが合理的である。本報告では、JAEAが開発しているCFDコードJUPITERを用いたOLGD速度の解析手法の構築について述べる。なお、材料とLBE間の質量移動速度およびOLGD速度の相関式については、実験式から導出され先行研究で用いられた既存のモデルを修正して用いた。
明午 伸一郎; 中野 敬太*; 松田 洋樹; 岩元 洋介; 吉田 誠*
EPJ Web of Conferences, 284, p.05001_1 - 05001_4, 2023/05
被引用回数:1 パーセンタイル:68.83(Nuclear Science & Technology)加速器駆動未臨界システム(ADS)や核破砕中性子源などの大強度陽子加速器施設では、電磁石コイルなどの加速器構成機器の放射線損傷を評価することが重要である。損傷指標としては、NRT(Norgertt-Robinson-Torrens)モデルに基づき、粒子束と弾き出し断面積を積分して得られるdpaが用いられてきた。20MeV以上のエネルギー領域の陽子に対する弾き出し断面積の実験データは乏しいため、J-PARCにおいてNbの弾き出し断面積の測定を行った。Nb試料を極低温(8K)で冷却し、熱運動によるフレンケル対の再結合を抑制するとともに、マッティセン則を維持するために常伝導度を維持した。PHITSコードを用いてNbの弾き出し断面積の計算を行い、今回の実験結果と比較した。その結果、広く用いられるNRTモデルは、これまでの研究で示唆されているように、断面積を2倍程度過大評価することが明らかになった。また、最近提案された分子動力学(MD)に基づく熱中性子再結合補正モデル(arc)を用いた計算が、今回のデータと良い一致を示すことも明らかにした。
上澤 伸一郎; 山下 晋; 柴田 光彦; 吉田 啓之
Proceedings of 30th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE30) (Internet), 9 Pages, 2023/05
福島第一原子力発電所の廃炉における汚染水対策として、注水低減,間欠注水,空冷が検討されている。しかし、格納容器内には燃料デブリの不確実性があるため、燃料デブリの分布状態や燃料デブリ取り出し作業の進捗状況に応じて、最適な冷却方法を事前に検討する必要がある。そのため我々は、燃料デブリの位置,発熱,気孔率の影響を含む空冷中の熱挙動を推定する方法の開発を進めている。多孔体と考えられる燃料デブリの内部構造をモデル化した上で大規模な熱流動解析を行うことは困難であることから、JUPITERに多孔体モデルを追加することにより多孔体の熱流動の解析を可能にした。本研究では、多孔体モデルを導入したJUPITERの妥当性検証結果について報告するとともに、多孔体の伝熱モデルについて直列,平行,幾何平均モデルのどのモデルが最も有効かについて議論する。多孔体周辺の自然対流の検証データについては、多孔体を含む系における自然対流の伝熱流動実験を独自に行った。実験と各モデルでの数値解析と比較を行ったところ、幾何平均モデルを用いた数値結果が実験結果に最も近い結果を得られた。しかしながら、定量的には温度と速度ともに実験結果よりも過大評価しており、特に、多孔体と空気との境界付近の温度は、より過大評価していることを確認した。