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岩元 洋介; 松田 洋樹*; 明午 伸一郎; 米原 克也*; Pellemoine, F.*; Liu, Z.*; Lynch, K.*; 吉田 誠*; 藪内 敦*; 義家 敏正*; et al.
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 557, p.165543_1 - 165543_8, 2024/12
陽子加速器施設における材料の照射損傷の指標として、原子1個当たりの変位数(dpa)が広く用いられている。金属材料のdpaを検証するために、3GeV以下の陽子に対する実験が行われてきた。しかし、3GeV以上の高エネルギー陽子に対する弾き出し断面積の測定は行われておらず、計算による検証も行われていない。そこで、高エネルギー領域における金属の弾き出し断面積を検証するため、温度8Kにおけるアルミニウム、銅、タングステンのワイヤーの電気抵抗率変化を、エネルギー120GeVの陽子を用いて測定した。その結果、粒子・重イオン輸送計算コードPHITSの従来の照射損傷モデルは実験データを過大評価することがわかった。一方、熱再結合補正モデルを用いた新たな計算結果は、測定された弾き出し断面積と一致した。この結果は、1GeV以上の陽子エネルギー領域では、弾き出し断面積はほぼ一定であり、1GeV陽子照射下での材料の損傷エネルギーは120GeV陽子照射下とほぼ同じであることに起因すると推定される。
岩元 洋介; 吉田 誠*; 明午 伸一郎; 米原 克也*; 石田 卓*; 中野 敬太; 安部 晋一郎; 岩元 大樹; Spina, T.*; Ammigan, K.*; et al.
JAEA-Conf 2021-001, p.138 - 143, 2022/03
高エネルギー陽子加速器施設の照射材料の寿命評価において、粒子・重イオン輸送計算コードPHITS等が原子はじき出し数(dpa)の導出に利用されている。しかし、30GeVを超える高エネルギー領域において、コード検証に必要な弾き出し断面積の実験値は存在しない。そこで、超高エネルギー領域のコード検証のため、米国フェルミ国立加速器研究所(FNAL)における120GeV陽子ビームを用いた金属の弾き出し断面積測定を計画した。実験は2021年10月から2022年9月の期間に、FNALのテストビーム施設M03において実施予定である。これまで、直径250m及び長さ4cmのアルミニウム,銅,ニオブ、及びタングステンのワイヤーサンプルに焼鈍処理を施し、これらサンプルを付属したサンプルアセンブリの製作を行った。計画中の実験では、ギフォード・マクマフォン冷凍機によりサンプルを4K程度の極低温に冷却し、弾き出し断面積に関係する照射欠陥に伴うサンプルの電気抵抗増加を測定し、照射後に等温加熱試験を用いて、極低温下で蓄積されたサンプル中の欠陥の回復過程を測定する予定である。
岩元 洋介; 吉田 誠*; 義家 敏正*; 佐藤 大樹; 八島 浩*; 松田 洋樹; 明午 伸一郎; 嶋 達志*
Journal of Nuclear Materials, 508, p.195 - 202, 2018/09
被引用回数:17 パーセンタイル:82.54(Materials Science, Multidisciplinary)加速器施設の材料損傷評価で使用される放射線輸送計算コードのはじき出し損傷モデルを検証するため、大阪大学核物理研究センターのサイクロトロン施設において、極低温下での200MeV陽子照射による、はじき出し断面積の導出に必要な金属試料の照射欠陥に伴う電気抵抗増加を測定した。照射装置は、GM冷凍機を用いて2つの照射試料を同時に熱伝導冷却する構造とし、熱伝導と電気的絶縁性に優れた2枚の窒化アルミ板により、照射試料となる直径250mのアルミニウム及び銅線を挟み込む構造とした。その結果、ビーム強度3nA以下において温度5K以下を保ちつつ、欠陥に伴う金属の電気抵抗率増加の測定に成功した。また、照射前後の電気抵抗率変化、陽子フルエンス及びフレンケル対あたりの抵抗率増加から導出したはじき出し断面積は欠陥生成率を考慮したPHITSの計算値に近いことがわかった。
岩元 洋介; 松田 洋樹; 明午 伸一郎; 佐藤 大樹; 中本 建志*; 吉田 誠*; 石 禎浩*; 栗山 靖敏*; 上杉 智教*; 八島 浩*; et al.
Proceedings of 61st ICFA Advanced Beam Dynamics Workshop on High-Intensity and High-Brightness Hadron Beams (HB 2018) (Internet), p.116 - 121, 2018/07
放射線挙動計算コードPHITSにより放射線照射による材料損傷評価の基礎データを解析するため、入射粒子と核反応から生成する二次粒子によるターゲット1次はじき出し原子(PKA)のエネルギーを考慮した照射損傷モデルを開発した。このモデルを用いた解析により、100MeV以上の高エネルギー陽子による照射損傷において、二次粒子により生成したターゲットPKAの寄与が入射陽子によるPKAの寄与に比べて大きいことがわかった。また、高エネルギー陽子照射に対する照射損傷モデルを検証するため、サンプルを極低温まで冷却するギフォード-マクマフォン冷凍機を用いた陽子照射装置を開発した。本装置を用いて、125及び200MeV陽子を照射した銅とアルミニウムについて、はじき出し断面積に関連する極低温での欠陥に伴う電気抵抗率変化を測定した。実験値と計算値の比較の結果、欠陥生成効率を考慮したはじき出し損傷の計算値が実験値を良く再現することがわかった。
眞弓 蓮*; 千星 聡*; 岡本 芳浩; 斎藤 勇一*; 義家 敏正*; 岩瀬 彰宏*
Transactions of the Materials Research Society of Japan, 42(1), p.9 - 14, 2017/02
アルミ銅2元合金を各種重イオンで照射し、銅の偏析に伴う硬度と銅原子周辺の局所原子配列変化をビッカース硬度計、EXAFS法により評価した。照射による硬度変化は、高温時効による変化よりも早く起こり、硬度上昇も大きい。また、実験で得られたEXAFSスペクトルとFEFFによって計算したスペクトルの比較により、照射によって微細な銅析出物が形成されていることが示唆された。反応方程式による計算機シミュレーションでも、銅析出物の形成と成長が再現され、それは実験結果と定性的に一致する。
岩元 洋介; 義家 敏正*; 吉田 誠*; 中本 建志*; 阪本 雅昭*; 栗山 靖敏*; 上杉 智教*; 石 禎浩*; Xu, Q.*; 八島 浩*; et al.
Journal of Nuclear Materials, 458, p.369 - 375, 2015/03
被引用回数:14 パーセンタイル:71.17(Materials Science, Multidisciplinary)粒子・重イオン輸送計算コードPHITSの100MeV以上の陽子照射による材料損傷の計算手法を検証するため、極低温12Kの環境で125MeV陽子照射による銅の原子のはじき出し断面積に関係する電気抵抗率変化を測定した。実験にあたり、照射した銅サンプルを熱伝導に優れた無酸素銅板により冷却するため、Gifford-McMahon冷凍機を用いた極低温照射システムを開発した。照射サンプルは直径250m及び純度99.999%の銅線として、電気絶縁及び熱伝導に優れた2枚の窒化アルミニウムセラミック板で挟み込んだ。銅線の電気抵抗率変化は、四端子法を用いて測定した。京都大学FFAG施設でビームフルエンス1.4510陽子/cmの125MeVの陽子を温度12Kで照射した結果、照射前の銅線の電気抵抗29.41に対し、照射欠陥に伴う1.53という微小な電気抵抗の増加を測定できた。また、PHITSコードを用いて、欠陥生成効率を考慮して銅のはじき出し断面積を算出し、電気抵抗率変化の測定結果から導出した値と比較した。その結果、PHITSの材料損傷の計算手法により、エネルギー100MeV以上の陽子照射による銅のはじき出し断面積を定量的によく再現することがわかった。
義家 敏正*; 二川 正敏; 直江 崇; 小松 正雄*; 佐藤 紘一*; Xu, Q.*; 川合 將義*
まてりあ, 52(8), p.390 - 394, 2013/08
水銀を標的に用いた核破砕中性子源では、大強度の陽子線入射に伴い水銀中に圧力波が発生する。この圧力波が水銀を包含するステンレス鋼製の容器へと伝播する過程で、水銀と容器の界面では負圧によるキャビテーションが発生する。キャビテーション気泡が崩壊する際に発生するマイクロジェットと衝撃圧により、容器内壁には微小ピット群からなるエロージョンが形成される。本報では、水銀中でのピッティング損傷を系統的に評価するために開発した電子力駆動の衝撃圧負荷試験機MIMTMを用いた材料の損傷構造について高速変形の観点から評価した。金属組織の転位構造を観察した結果、非常に早い変形メカニズムであること、マイクロジェット速度が200300m/sであることを明らかにした。
武内 伴照; 蔵本 明*; 亀田 純*; 外山 健*; 永井 康介*; 長谷川 雅幸*; 大久保 忠勝*; 義家 敏正*; 西山 裕孝; 鬼沢 邦雄
Journal of Nuclear Materials, 402(2-3), p.93 - 101, 2010/07
被引用回数:63 パーセンタイル:96.34(Materials Science, Multidisciplinary)中性子照射した原子炉圧力容器鋼でのミクロ組織変化と硬化との関係を、3次元アトムプローブ,陽電子消滅,ビッカース硬度測定を用いて調べた。試料には不純物濃度を変じた2種のA533B-1鋼を用い、材料試験炉(JMTR)において照射速度はほぼ一定に揃えつつ照射量を大きく変じた(0.329.910n cm(E1MeV))加速照射を行った。その結果、低照射量領域における急激な硬化はおもにマトリックス損傷の形成によるものであり、中照射量高照射量領域における緩やかな硬化は、不純物濃度の高い鋼材中では銅富裕クラスター(CRCs)、低い鋼材ではSi-Mn-Ni富裕クラスター(MNSCs)の形成によるものであることがわかった。ラッセルブラウンモデルにより見積もられた、CRCs及びMNSCsが転位の運動を阻害する強さはほぼ同じであった。また、最も高い照射量において、不純物濃度の高い鋼材においてもMNSCsが形成することが示された。
佐藤 紘一*; 井上 和也*; 義家 敏正*; Xu, Q.*; 若井 栄一; 沓掛 忠三; 落合 謙太郎
Journal of Nuclear Materials, 386-388, p.203 - 205, 2009/04
被引用回数:2 パーセンタイル:17.36(Materials Science, Multidisciplinary)室温又は473Kの高温において、V-4Cr-4Ti合金,F82H鋼,ニッケル及び銅に核分裂中性子と核融合中性子をそれぞれ照射し、陽電子消滅寿命測定法による欠陥構造を解析することで、ミクロ組織構造の変化について調べた。測定結果から以下のことが明らかとなった。残留欠陥の総量を反映するポジトロンの平均寿命は照射量とともに増加した。室温下で照射されたニッケルからはカスケード損傷による効果が観測された。473Kの核分裂中性子照射では欠陥クラスターの大きさとその量は、はじき出し率による影響を受けなかった。10から10dpaの範囲における473Kで照射されたV-4Cr-4Ti合金は欠陥クラスターを形成しなかった。F82Hの場合、欠陥成長が既存の欠陥によって抑制される。核分裂中性子照射によるポジトロンの平均寿命は473Kでの核融合中性子照射よりも寿命が短いことが明らかとなった。多くの密集したサブカスケードが核融合中性子照射によって形成され、大きな欠陥クラスターへ成長しないことが明らかとなった。
義家 敏正*; Xu, Q.*; 佐藤 紘一*; 菊地 賢司; 川合 將義*
Journal of Nuclear Materials, 377(1), p.132 - 135, 2008/06
被引用回数:11 パーセンタイル:58.27(Materials Science, Multidisciplinary)800MW熱出力のADSにおけるビーム窓材料の損傷の予測を反応速度論で実施した。パラメータは、STIP-IとII実験でのEC316LNとF82H陽子照射の結果より適合させた。F82Hではバブルの密度はほぼ一定で、大きさが大きくなった。一方、浸入型の転位ループ密度は増え大きさは0.003から300dpaの間で一定であった。EC316LN材もほぼ同様なバブル密度と転位ループ挙動を示した。スエリングは673Kから773Kの間では3dpa以上で照射量に比例して増加することがわかった。
若井 栄一; 石田 卓*; 叶野 翔*; 柴山 環樹*; 佐藤 紘一*; 能登 裕之*; 牧村 俊助*; 古谷 一幸*; 薮内 敦*; 義家 敏正*; et al.
no journal, ,
チタン系材料は、比重が低く、耐食性が高く、強度特性、等に優れているため、大型加速器システムにおけるビーム窓材料やビームダンプ等への適用がなされている。ビームの高出力化に伴い、更なる耐照射性能等が求められている。このため、我々は、相をベースにしたチタン合金のさらなる特性を進め、Ti-15-3-3-3系合金について、イオン照射を行った所、優れた耐照射特性を持つことが分かった。この原因を調査するため、本素材や関連材料の微細組織や点欠陥等をTEM、陽電子寿命計測法、電気抵抗法、応力による変化等の評価を併せて進めた。さらに、最近、世界的に注目を浴びて、開発が進められているハイエントロピー合金に対して、我々は-チタンベースのチタン系ハイエントロピー合金の試作を行い、緒特性の評価を併せて始めたところである。この材料の諸特性を調べた所、従来の鉄系やチタン系の材料に比べて、かなり高い強度を持つことが分かった。
義家 敏正*; 佐藤 紘一*; Xu, Q.*; 二川 正敏; 直江 崇; 川合 將義*
no journal, ,
水銀を陽子ビームのターゲットに用いた核破砕中性子源では、水銀中のバブル崩壊時に発生する衝撃波による、窓材料の損傷が問題となる。材料の損傷機構を解明するために電磁式衝撃圧負荷試験装置MIMTMで衝撃を負荷したNi, SUS304鋼の単一あるいは幾つかの衝撃が重なった変形組織を表面近傍の陽電子消滅分光法と透過電子顕微鏡法により観察した。生成する欠陥構造は、高速圧縮変形装置により負荷した100m/sの衝撃変形と比較して、非常に早い変形を受けていることが明らかになった。
武内 伴照; 蔵本 明*; 外山 健*; 永井 康介*; 長谷川 雅幸*; 義家 敏正*; 勝山 仁哉; 西山 裕孝; 鬼沢 邦雄
no journal, ,
中性子照射した原子炉圧力容器(RPV)鋼において、ミクロ組織と硬さの相関の照射量依存性を陽電子消滅,3次元アトムプローブ,ビッカース微小硬度を用いて調べた。分析試料には、不純物濃度の異なる2種のA533B鋼を、材料試験炉(JMTR)において照射速度を1.6-1.910n cm sとし、ほぼ揃えつつ、照射量を0.32-9.910n cmの範囲で約30倍に変じたものを用いた。結果から、高不純物濃度鋼の中照射量から高照射量にかけての緩やかな硬化は、Cu, Si, Ni, Mn主体の溶質ナノクラスターが主因であることが明らかとなった。また、低照射量における急激な硬化は両鋼材ともおもにマトリックス損傷によるものであり、特に単空孔や転位といったサイズの小さな欠陥によるものであることが示唆された。
岩元 洋介; 吉田 誠*; 中本 建志*; 荻津 透*; 義家 敏正*; 阪本 雅昭*; 栗山 靖敏*; 上杉 智教*; 石 禎浩*; 森 義治*
no journal, ,
粒子・重イオン輸送計算コードPHITSの照射損傷計算手法を検証するため、京都大学原子炉実験所のFFAG加速器施設において、極低温下での高エネルギー陽子照射による銅のはじき出し断面積に関係する電気抵抗測定を行った。照射試料として、高熱伝導度、絶縁性を持つ窒化アルミ基板の上に、スパッタリングにより純度99.9%、厚さ0.2mの銅薄膜を形成し、試料の抵抗は4端子法を用いて測定した。照射中の試料の温度を測定するため、基板上に抵抗温度計を固定した。試料を7.3Kの極低温まで冷却し、125MeVの陽子を照射したところ、抵抗を常に20程度の揺らぎで測定でき、かつビーム照射野の温度計も正常に動作することがわかった。以上のように、放射線照射による材料損傷を実験的に評価するため、高エネルギー陽子照射環境下で極低温での欠陥に伴う電気抵抗の増加と試料温度を測定する手法を確立した。今後、PHITSを用いて試料以外の生成粒子の損傷への寄与、加熱による点欠陥の回復等を検討する。
岩元 洋介; 義家 敏正*; 吉田 誠*; 中本 建志*; 阪本 雅昭*; 栗山 靖敏*; 上杉 智教*; 石 禎浩*; Xu, Q.*; 八島 浩*; et al.
no journal, ,
粒子・重イオン輸送計算コードPHITSの100MeV以上の陽子照射による材料損傷の計算手法を検証するため、極低温の環境下ではじき出し断面積と相関する陽子照射欠陥に伴う電気抵抗増加を測定する装置を開発した。サンプルは、直径20mmのビーム範囲に収まるように波状にした純度99.999%の銅線(直径250m、長さ152mm)を、2枚の高熱伝導度及び絶縁性を持つ窒化アルミ基板(縦30mm、横25mm、厚さ1.5mm)で挟み込む構造とし、1,000Cで1時間かけて焼鈍した。その後、サンプルは無酸素銅板とGM冷凍機を介した熱伝導により冷却した。試料の抵抗は、四端子法を用いて10mA出力の電流源(Keithley社製6221型)とナノボルトメータ(2182A型)の組み合わせによるデルタモードで計測した。本装置により、サンプルを11Kまで冷却し、その温度における銅の電気抵抗は常温における値の約1/1800となり、照射欠陥に伴う微小な電気抵抗増加の測定が可能であることを確認した。そこで、本装置を用いて、125MeV陽子を11K、電気抵抗29.41 のサンプルに、1.4510(個/cm)照射したところ、1.53 の欠陥に伴う電気抵抗の増加を観測できた。
義家 敏正*; Xu, Q.*; 佐藤 紘一*; 菊地 賢司; 川合 將義*
no journal, ,
高エネルギー陽子の照射下におけるオーステナイト鋼とフェライト鋼の挙動を調べるために、反応速度論に基づく照射損傷の計算を行った。パラメータのフィッテングにはPSIでの陽子照射の結果を取り入れた。反応速度式には格子間原子,原子空孔,ヘリウム,格子間原子型転位ループ,ボイド,バルブの効果を含む。照射温度は673-773Kである。その結果、2.1dpa以上では照射量とボイドスウェリングが比例する領域になっていることを明らかにした。
岩元 洋介; 吉田 誠*; 義家 敏正*; 佐藤 大樹; 八島 浩*; 松田 洋樹; 明午 伸一郎; 嶋 達志*
no journal, ,
加速器施設の材料損傷評価で使用されるPHITSのはじき出し損傷モデルを検証するため、大阪大学核物理研究センターのサイクロトロン施設において、極低温下での200MeV陽子照射による、はじき出し断面積の導出に必要な金属試料の照射欠陥に伴う電気抵抗増加を測定した。照射装置は、GM冷凍機を用いて、2つの照射試料を同時に熱伝導冷却する構造とし、熱伝導と電気的絶縁性に優れた2枚の窒化アルミ板により、照射試料となる直径250mのアルミニウム及び銅線を挟み込む構造とした。その結果、ビーム強度3nA以下において温度5K以下を保ちつつ、欠陥に伴う金属の電気抵抗増加の測定に成功した。また、照射前後の電気抵抗率変化、陽子フルエンス及びフレンケル対あたりの抵抗率増加から導出したはじき出し断面積は、アルミニウムで353(b), 銅で1640(b)であり、欠陥生成率を考慮したPHITSの計算値に近いことがわかった。
若井 栄一; 能登 裕之*; 柴山 環樹*; 岩元 洋介; 石田 卓*; 佐藤 紘一*; 薮内 敦*; 義家 敏正*; 高橋 俊晴*; 小林 康浩*; et al.
no journal, ,
ハイエントロピー合金(HEA)は、強度が高くても、良好な延性を持つ材料系があることが近年、報告されており、様々な応用を目指し、世界の最先端の研究機関によって、その研究開発が進められている。本研究では、高放射線場での使用を目指すため、低放射化性を考慮して、CoとNi元素を除いたHEAについて、Fe系、W系およびTi系のHEAを複数、検討した。これらの材料は、bcc結晶構造を主体とした材料系であり、溶解法で作製してそれらの材料特性を評価した。その結果、Fe系HEAでは、純Wの硬さを超える特性を持ち、かつ耐照射特性が優れていることが分かった。また、Ti系HEAでは、高温鍛造や高温圧延を施すことができる系が見つかり、最適な熱処理温度の評価を進め、W系HEAでは、熱間等方圧加圧法(HIP)処理により硬さが上昇し、HEAの中で世界最高の硬さを有することが分かった。
義家 敏正*; 西山 裕孝
no journal, ,
高経年化時代を迎えつつある我が国の軽水炉の鉄鋼材料の安全性を担保するためには、そこで起こるナノ組織変化を解明し、現在の各材料の状況,将来の変化を予測しなければならない。東北大学金属材料研究所附属量子エネルギー材料科学国際研究センターの共同利用研究においては、Fe-Cu系の析出挙動や照射効果に及ぼす損傷速度の効果などの先駆的な研究がなされてきた。平成16年4月から19年3月まで重点研究に指定された「軽水炉用鉄鋼材料及びそのモデル合金中のナノ組織形成・発展過程とそれらに伴う機械的性質変化の解明」においては、これまでの成果を踏まえて、最新の分析技術や理論計算を駆使して、原子レベルでのナノ組織変化を解明するとともに、それらと硬化や脆化との関係を明らかにすることを目的として、国内8グループが参加した。本発表は、本重点研究の研究代表者である京都大学義家教授が各グループの成果をまとめるものであり、申請者は原子炉圧力容器鋼の粒界脆化に関するミクロ組織分析と機械的性質に関する研究を担当した。
岩元 洋介; 義家 敏正*; 吉田 誠*; 中本 建志*; 阪本 雅昭*; 栗山 靖敏*; 上杉 智教*; 石 禎浩*; Xu, Q.*; 八島 浩*; et al.
no journal, ,
粒子・重イオン輸送計算コードPHITSの材料損傷の計算手法を検証するため、京大炉FFAG施設において極低温12Kの環境下で125MeV陽子照射による銅の原子のはじき出し断面積に関係する照射損傷率(電気抵抗率変化/粒子フルエンス)を測定した。照射サンプルは直径250m及び純度99.999%の銅線とし、これを熱伝導により冷却した。ビームフルエンス1.4510 protons/mの125MeV陽子を温度12Kで照射した結果、照射前の銅線の電気抵抗29.41に対し、照射欠陥に伴う1.53という微小な電気抵抗の増加を測定できた。他の実験値との比較の結果、本測定による照射損傷率は、1.1GeV陽子による照射損傷率と同程度であること、14MeV中性子による照射損傷率の約1.4倍であることがわかった。また、PHITSコードを用いて、欠陥生成効率の有無による銅のはじき出し断面積を算出し、照射損傷率の測定結果から導出した値と比較した。その結果、実験値は欠陥生成効率を含まない計算値より約2.5倍小さく、欠陥生成効率を含む計算値に比べて約1.4倍小さいことがわかり、PHITSに欠陥生成効率を導入することで、実験値をより良く再現することがわかった。