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魚住 祐介*; 執行 信寛*; 梶本 剛*; 森口 大輔*; 上山 正彦*; 吉岡 正勝*; 佐藤 大樹; 佐波 俊哉*; 古場 裕介*; 高田 真志*; et al.
HIMAC-136, p.248 - 249, 2011/11
本発表では、平成22年度に放射線医学総合研究所のHIMAC加速器を用いて行った測定について報告する。重粒子線がん治療では、入射重イオンと生体組織を構成する元素との核反応により中性子及び線が患者の体内にて生成される。これらの放射線による二次発がんリスクの評価には、重イオン核反応における生成二重微分断面積を広いエネルギー範囲で精度よく測定する必要がある。平成21年度は、既存の実験データのある炭素+炭素反応に対して測定を行い、最適な測定条件を検討した。平成22年度は、前年度までの検討を踏まえ、データの存在しない酸素+炭素反応の断面積を測定した。その結果、数百MeV領域から0.6MeVまでの極めて広いエネルギー範囲に渡って精度よく中性子生成二重微分断面積を取得できた。さらに、取得した実験データを利用してPHITSコードの精度検証を行った。PHITSは、前方角度領域において断面積をわずかに過小評価するものの、全体的に実験値をよく再現することがわかった。
佐藤 大樹; 森口 大輔*; 梶本 剛*; 古場 祐介*; 中村 泰博*; 執行 信寛*; 上山 正彦*; 魚住 祐介*; 吉岡 正勝*; 松藤 成弘*; et al.
Journal of the Korean Physical Society, 59(2), p.1741 - 1744, 2011/08
被引用回数:3 パーセンタイル:27.04(Physics, Multidisciplinary)重イオン相互作用からの中性子生成二重微分断面積に関する既存の実験データは、検出器の検出効率の評価に問題があり断面積を過大評価していることが知られていた。そこで、最新の検出効率計算コードを用いて既存のデータを再解析することにより、過大評価を改善した系統的な断面積データの評価を行った。また、放射線医学総合研究所の重イオン加速器を用いて、新たに中性子生成二重微分断面積を測定した。取得したデータは、既存のデータに比べ測定角度領域が後方角にまで及び検出下限エネルギーも10倍程度低い。両データは、同一核反応の同一角度において非常に良い一致を示した。さらに、各種シミュレーションコードの予測値と比較したところ、いずれのコードも前方角度領域の高エネルギー中性子生成を適切に再現できておらず、重イオン核反応模型の修正が必要であることが示唆された。
佐藤 大樹; 森口 大輔*; 梶本 剛*; 上原 春彦*; 執行 信寛*; 上山 正彦*; 吉岡 正勝*; 魚住 祐介*; 佐波 俊哉*; 古場 裕介*; et al.
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A, 644(1), p.59 - 67, 2011/07
被引用回数:18 パーセンタイル:77.90(Instruments & Instrumentation)重粒子線がん治療の普及に伴い患者体内に入射した重イオンビームの核反応で生成される二次中性子の放射線影響に関心が集まっている。しかし、二次発がんの潜在的なリスク評価のために必要となる重イオンビームと生体構成元素との核反応に関する実験データは整備されておらず、放射線輸送コードの計算精度も十分に検証されていない。そこでわれわれは、放射線医学総合研究所HIMAC加速器を利用し、炭素+炭素反応及び酸素+炭素反応における中性子生成二重微分断面積(DDX)を測定した。論文では、有機シンチレータと飛行時間法を利用した測定手法の詳細を説明し、得られた結果を過去の実験データ及びPHITSコードの計算値と比較することで、測定手法の妥当性や放射線輸送コードの有用性について議論した。実験データは、数百MeVから0.6MeVまでの極めて広いエネルギー領域で精度よく取得されており、PHITSの結果は全エネルギー領域に渡りファクター2以内で実験値を再現した。
魚住 祐介*; 岩元 大樹*; 古場 祐介*; 松藤 成弘*; 佐波 俊哉*; 佐藤 大樹; 執行 信寛*; 高田 真志*; 上山 正彦*; 吉岡 正勝*; et al.
Progress in Nuclear Science and Technology (Internet), 1, p.114 - 117, 2011/02
重イオン治療における二次的発ガンリスクを評価するために、患者の体内に入射した重イオンにより誘起される二次中性子の線量を知ることは極めて重要である。しかし、さまざまな放射線の混合場である患者体内において、高エネルギー中性子の線量を実験的に求めることは難しく、線量評価はシミュレーションコードに頼らざるを得ない。シミュレーションコードにおける重イオンと生体構成元素の核反応計算の精度向上のため、放射線医学総合研究所の重イオン加速器を用いた中性子生成二重微分断面積の測定を計画している。実験に先駆け既存のシミュレーションコードを用い、最適な実験体系を検討した。これにより、重イオンの輸送経路にある空気及びビームダンプからの寄与が大きく、精度の良い断面積データを取得するためには適切な遮蔽が必要であることがわかった。発表では、断面積測定計画の概要及びシミュレーション解析の結果を示す。
佐藤 大樹; 執行 信寛*; 魚住 祐介*; 森口 大輔*; 梶本 剛*; 吉岡 正勝*; 上山 正彦*; 佐波 俊哉*; 古場 裕介*; 松藤 成弘*; et al.
no journal, ,
重粒子線がん治療の普及に伴い、患者体内に入射した重イオンビームの核反応で生成される二次中性子の放射線影響に関心が集まっている。しかし、二次発がんの潜在的なリスク評価のために必要となる重イオンビームと生体構成元素との核反応に関する実験データは整備されておらず、放射線輸送コードの計算精度も実験データの不備から検証されていない。そこで本研究では、放射線医学総合研究所HIMAC加速器を利用し、重イオン入射反応における中性子生成二重微分断面積(DDX)の測定を進めている。人体を構成する元素は、おもに水素,炭素,窒素及び酸素であるが、治療に利用されている炭素ビームを用いた炭素ターゲットに対するデータは既に取得している。今回は、酸素ターゲットに対するデータ取得を目指した。実験では、酸素イオンビームを固体の炭素ターゲットに入射する測定を行い、逆反応解析により酸素をターゲットとしたDDXを導出する。バックグラウンドイベントの低減と測定システムの改善により、リスク評価において重要となる約1MeVを含む幅広いエネルギー領域での中性子を測定した。また、放射線輸送コードPHITSが前方角度領域の実験データを全体的によく再現していることを示した。
執行 信寛*; 魚住 祐介*; 梶本 剛*; 森口 大輔*; 上山 正彦*; 吉岡 正勝*; 古場 裕介*; 中村 泰博*; 佐藤 大樹; 佐波 俊哉*; et al.
no journal, ,
陽子や重イオンによるがん治療は、腫瘍への線量集中性の高さから注目を集めている。患者に陽子や重イオンを照射すると、患者体内の元素と原子核反応を起こしさまざまなエネルギーの中性子を生成するが、この中性子による患者への影響は十分に考慮されてこなかった。今後、治療の高精度化のためには、中性子に対する線量評価が重要となってくる。本研究では、重イオンがん治療で多く利用されている290MeV/uの炭素イオンを生体構成元素の一つである炭素ターゲットに入射し、原子核反応により生成される中性子の二重微分断面積(DDX)を測定した。実験は、放射線医学総合研究所HIMACにて行った。中性子検出器としてNE213シンチレータを採用し、測定角度は15, 30, 45, 60, 75及び90とした。中性子の運動エネルギーは飛行時間法に基づき決定した。データ解析の結果、2.8MeV以上のエネルギーの中性子についてDDXデータを導出することができた。これは既存の実験データの下限エネルギーに比べ約1/5であり、生物学的効果を考察するうえで重要となる低エネルギー領域の中性子をほぼ測定できている。取得したDDXデータは、汎用粒子輸送コードPHITSの計算結果と比較した。両者は全エネルギー領域において良い一致を示した。PHITSは重イオン入射の原子核反応を記述するために量子分子動力学(QMD)モデルを採用しているが、このエネルギー領域におけるQMDモデルの妥当性が確認できた。
佐藤 大樹; 森口 大輔*; 中村 泰博*; 梶本 剛*; 上山 正彦*; 吉岡 正勝*; 古場 祐介*; 執行 信寛*; 魚住 祐介*; 松藤 成弘*; et al.
no journal, ,
放射線医学総合研究所の重イオン加速器と生体構成元素から成るターゲット材を用い、重イオン入射反応における中性子生成二重微分断面積を測定した。得られたデータは、入射エネルギーに相当する数百MeVから生物学的に重要なエネルギー領域である1MeV近傍まで幅広く含む。さらに、既存の実験データを再解析して利用することにより、系統的な断面積の評価を行った。既存の実験データは検出器の検出効率の見積もりに問題があるとされていたが、最新の検出効率計算コードを利用した解析により、断面積の過大評価が修正された。評価した断面積データを、重粒子線治療における線量評価への応用が検討されている各種シミュレーションコードの予測値と比較した。いずれのコードも前方角度領域への高エネルギー中性子の放出を再現できておらず、重イオン核反応模型に問題があることが指摘された。