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天野 光
Fusion Technology, 28, p.797 - 802, 1995/10
植物によるトリチウム標識メタンガスの取り込みを調べた。トリチウム標識メタンは核融合炉ばかりでなく廃棄物処分場からも放出が予想される。密封型の暴露チェンバー内で鉢植えした数種類の植物をトリチウムで標識したメタンに暴露した。植物には光を照射し、ポロメータで光の強度を測定、また葉の気孔抵抗、蒸散量等、植物の生理パラメータを測定した。植物の光合成の機構の違いによる影響を調べるため、C3植物としてじゃがいも、こまつな、桜等、C4植物としてとうもろこし、CAM植物としてサボテンを選んだ。チェンバー内の温度、湿度、二酸化炭素、酸素及びメタンガス濃度を連続して測定した。光の存在下で植物の種類に関係なく、植物はトリチウムを取り込んだ。トリチウムは植物葉の可溶性部ばかりでなく誘起結合部にも検出された。このことは植物へのメタン型トリチウム移行が植物の種類によらず一般的な現象であることを示している。
天野 光; 新 麻里子; 野口 宏; 横山 須美; 一政 祐輔*; 一政 満子*
Fusion Technology, 28, p.803 - 808, 1995/10
環境中にHTガスが連続放出された場合のトリチウム挙動に関する知見を得るため、野外連続放出実験が1994年7月27日から8月8日の12日間にわたってカナダチョークリバー研究所敷地内の実験場で行われ、これに参加した。野外実験場は、10m四方の草地を四等分し、1/4を天然の草地、残りの3/4を耕し、こまつな、ミニトマト、20日大根を交互に植えた場所である。HTガスは高さ0.5mの所に19m四方のABS樹脂製のパイプで約50cm間隔の放出孔からSFガス、N
ガスと共に連続した。HTガスは主に土壌中のバクテリアによりHTOに酸化され、環境中を循環する。本研究は、HTガスの連続放出時に、生成したHTOが大気及び土壌中から植物に取り込まれ、有機結合型トリチウム(OBT)として固定される経過及びその特徴について調べたものである。
一政 祐輔*; 一政 満子*; H.Jiang*; 勝野 敬一*; 野口 宏; 横山 須美; 天野 光; 新 麻里子
Fusion Technology, 28, p.877 - 882, 1995/10
1994年7~8月のカナダトリチウムガス野外連続放出実験において採取した土壌と植物のHT酸化活性を実験室で測定した。自然地で採取した表層土壌(0~5cm)の酸化活性は耕地の約3倍であった。また、自生植物(ゴールデンロッド)と小松菜の酸化活性は、耕地の表層土壌の活性の、それぞれ約2と0.4%であった。放出開始後の数日間は、耕地の表層土壌中の水分のHTO濃度は、空気や小松菜中水分のHTO濃度よりも低かったが、その後小松菜中水分の濃度の約2倍に増加した。
山西 敏彦; 奥野 健二
Fusion Technology, 28(3), p.1597 - 1602, 1995/10
核融合炉では、冷却水及び廃水からのトリチウム回収システムの研究開発が重要課題の一つとなっている。水-水素化学交換塔、特に水と水素の向流接触が可能な液相化学交換塔は、この水処理系に有望なシステムと考えられる。核融合炉の水処理系では、トリチウム濃度は、水に自然に含まれる重水濃度と比較して充分に小さい。すなわち、塔のトリチウムに関する分離特性を議論するためには、重水も含めた水及び水素のすべての分子種(12分子種)を考慮する必要がある。筆者らは、この12分子種すべてを取り扱うことのできる化学交換塔の解析コードを開発した。本報告では、開発した解析コードにより塔の分離特性を詳細に検討するとともに、分離特性に影響を与える因子(塔内蒸気流量,水素流量,温度,還流比,重水濃度)を議論する。
林 巧; 山田 正行; 鈴木 卓美; 松田 祐二; 奥野 健二
Fusion Technology, 28(3), p.1503 - 1508, 1995/10
既存の触媒酸化・水分吸着方式のトリチウム除去系は原研・TPLにおいても十分な除去性能を実証しているが、ITERクラスの大型格納系にスケールアップすると、設備が大きくなりすぎる。このため、当研究室では、気体分離膜を用いたトリチウム除去設備の小型化の研究開発を進めている。市販の大型気体分離膜の中で水素及び水蒸気の窒素に対する透過係数の比の大きなものはポリイミド膜があり、その透過性能(選択的)は入口水素濃度100ppm,トリチウム条件下でも(50ci/mで10年連続運転)変化しないことを確認した。そのポリイミド中空系膜モジュール(40m
程度)を用い、水素及びトリチウムの窒素及び空気からの回収率を、透過/供給流量比(CUT),透過/供給圧力比(
)等をパラメータとして調べた。本報では特に、モジュールの回収性能についてまとめる。
林 巧; 山田 正行; 鈴木 卓美; 松田 祐二; 奥野 健二
Fusion Technology, 28(3), p.1015 - 1019, 1995/10
核融合炉においては大量のトリチウムは活性金属ベッド中に水素化物として貯蔵される。従来このトリチウムの計量は、ベッド昇温によりトリチウムをガス化した後、PVTC法により行われるが、大量になればなるほど長時間大労力を要するうえ、残留するトリチウム(ベッド内)量が不明で計量精度をおとすことになる。当研究室では、通気式熱量法によるベッド内のトリチウム計量技術開発を進めており、今回熱量計量ラインと模擬(トリチウム崩壊熱)ヒータを内蔵した25gトリチウム貯蔵用ZrCo bedを試作し、そのコールドでの熱量計量特性(通気ガスのbed出入口温度差)の把握と、トリチウム貯蔵(~1g程度)後の計量実証を行った。コールド(模擬ヒータ利用)での熱量計量実験では約1gトリチウム相当熱量(0.32W)で4度,25g分(8W)で97度の温度差を計測した。これは十分な検出感度であり、本方式の有効性を確認できた。
榎枝 幹男; 河村 繕範; 奥野 健二; 田中 健一*; 植竹 満*; 西川 正史*
Fusion Technology, 28(3), p.591 - 596, 1995/10
ITERではグロー放電洗浄ガラスからのトリチウム回収プロセスとして低温モレキュラーシーブ吸着塔を有力候補としている。本研究では、ベンチスケール実験により、実ガス条件を模擬したガスの吸着特性について、実験データを得、低温吸着塔のHHTガスと不純物メタンの混合ガスの吸着特性を明らかにしたものである。実験結果によると、H
,HT等水素同位体ガスはメタンに先行して吸着が進行し、遅れて吸着したメタンは先行して吸着している水素同位体ガスを追い出し吸着する。これらの過程は、ラングミュア式の多成分系等温式とボハートアダムスの吸着速度式を用いてモデル化され、よく実験結果を再現計算することができた。メタン濃度が100ppmレベルまで低濃度であれば、水素同位体の低温モレキュラーシーブ塔への吸着ダイナミックスは影響を受けず、トリチウムの回収除去性能は、純成分の場合に比べて劣らない。
矢板 由美*; 大平 茂; 奥野 健二
Fusion Technology, 28(3), p.1294 - 1298, 1995/10
核融合炉のプラズマ対向材料候補である黒鉛材料中での水素同位体の保持,放出挙動に関して検討を行った。黒鉛材料への重水素プラズマ照射は、重水素ガスを一定量封入し閉じた系で行う閉鎖系及び一定流量でガスを流しながら行う流通系の両系で行った。プラズマ照射された黒鉛からの重水素の昇温脱離曲線においては両系とも800Kと1250K付近に放出ピークが見られた。これらは前者が黒鉛内部のトラップサイトに捕捉されたD,後者が炭素と化学結合したDの脱離と考えられる。しかし2つのピークの面積比は閉鎖系と流通系で異なり、これは両系でプラズマ中のガス組成に違いがあるため重水素の捕捉状態に差が出たものと考えられる。さらにトリチウムプラズマ照射を行い、トリチウムインベントリに関する基礎的なデータを取得した。
大平 茂; 中村 博文; 奥野 健二; Taylor, D. J.*; Sherman, R. H.*
Fusion Technology, 28(3), p.1239 - 1243, 1995/10
核融合炉施設においてトリチウムのベータ崩壊によって引き起こされる、プロセス中あるいは環境中のガスとの自己触媒的反応に関するデータは、安全評価のうえで重要となるが、ほとんど得られていない。日本原子力研究所のTPL及び米国ロスアラモス研究所のTSTAでは、プロセスガスのその場分析に応用しているレーザーラマン分光法を用いてトリチウムの自己触媒的反応の研究を進めている。本報告では反応性の高い一酸化炭素との反応に関して述べた。COとTを1:1に混合すると石英性ラマンセル内に約1時間半後に細粒状の固体反応生成物が出現した。この生成物のラマンスペクトルからは反応生成物を固定できなかったが、残留ガス分析の結果この生成物の原素組成はC:T:O=1.4:3.0:1.0となっていることが判明した。
小西 哲之; 原 正秀*; 奥野 健二
Fusion Technology, 28(3), p.652 - 657, 1995/10
核融合炉においてプラズマ排ガスを処理する燃料精製系(FCU)はその他にベーキング,プロセス真空やサンプリング排ガスなど多様なガスを処理する必要がある。原研製燃料精製システムは構成を組み替えることで広い範囲の流量,組成,処理能力要求に対応することができる。パラジウム透過,白金触媒,水蒸気電解プロセスを使用した閉ループではメタン,水素,水蒸気を含むガスから5回分処理により水素を高率で回収できる。メタンの処理は、触媒により酸化,分解の両法が可能である。さらに固体電解質電解セルは陽極側にメタン,陰極側に水蒸気を通じることによりメタンと水蒸気を同時に分解し、水素を遊離することが確認された。この方法によれば、触媒や酸素ガスを用いず、単純で安全なシステムが構成できる。定常、大量の処理が必要な場合にはトラップ,吸着塔などを加えて対応する。
有田 誠; 尾幡 宏行*; 林 巧; 奥野 健二; Shu, W. M.*; 林 安徳*
Fusion Technology, 28(3), p.1132 - 1137, 1995/10
本件はSi,O酸化物コーティングを施した純鉄における重水素イオン注入透過挙動についての研究結果の報告である。RFスパッタリング法によりSiO
膜をコーティングした厚さ0.1mmの純鉄に種々の条件で重水素イオンビームを照射し、裏側からの透過量を測定し、トリチウム透過量低減の観点から、イオン注入透過挙動における表面コーティングの影響を考察した。裏側にコーティングを施した試料の透過率は、純鉄試料の透過率の数10分の1程度であった。これら二つの試料における温度依存性,入射イオンエネルギー依存性は類似していた。このことから裏側コーティングは鉄表面における重水素透過の有効面積を減少させると考えられる。この結果から、プラズマ対向材の酸化物コーティングによるトリチウム透過漏洩量の低減化の有効性が示された。
山田 正行; 榎枝 幹男; 本間 隆; 林 巧; 松田 祐二; 奥野 健二
Fusion Technology, 28(3), p.1376 - 1381, 1995/10
原研トリチウムプロセス研究棟(TPL)では、核融合燃料サイクルのR&Dを大量トリチウムを用い、1988年3月より行われてきた。TPLでのトリチウム最大貯蔵量は60gである。TPLの安全設備は、トリチウムに対して3重格納が構築されており、各々の格納系に対するトリチウム除去系が設けられている。トリチウム除去設備は、触媒酸化-水分吸着法が採用されている。TPLから環境へのトリチウム放出量は、管理基準値の200分の1を月平均で維持している。TPLでの安全設備の運転実績は、核融合炉における安全設備の運転管理に対して有効なデータベースとなる。本報では、TPL安全設備の運転及び改善等について6年間の不具合データと共に報告するものである。
平田 慎吾*; 角田 俊也*; 怡土 英毅*; 鈴木 達志*; 林 巧; 石田 敏勝*; 松田 祐二; 奥野 健二
Fusion Technology, 28(3), p.1521 - 1526, 1995/10
水素、及び水分に対して高い透過性を有しているポリイミド製分離膜モジュールをトリチウム除去設備へ適用することにより、従来から用いられてきた触媒酸化・吸着設備での処理量を低減し、設備の減容が可能であると考えられている。本実験では、ポリイミド製分離膜モジュールに水素含有乾燥窒素、及び水分含有窒素を供給して分離実験を実施した。また、窒素中の水素、及び水分の膜分離について理論的条件における解析作業を行った。本実験、及び解析の結果、ポリイミド分離膜は窒素中の水素、及び水分を選択的に透過することが確認された。特に水分については高い透過性を有していることが確認された。本実験に使用した分離膜では、分離膜モジュールの透過側/供給側圧力比を1/1000と充分に小さくすることにり、供給された混合ガスを1/100に減容することができた。