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論文

原子力安全にかかるパンデミックの国内外の現状と課題

小林 哲朗*; 高田 孝; 成宮 祥介*; 飯田 晋*

日本原子力学会誌, 63(1), p.50 - 54, 2021/01

2019年12月以降、中国湖北省武漢市を中心に発生した新型コロナウィルス感染症COVID-19は、翌年急激にパンデミック(感染症の世界的な大流行)に発展し、世界の人的・経済的・社会的な影響は極めて大きなものとなっている。そこで本稿では、パンデミックに対する原子力施設の安全について、国内外の医療以外の措置の現状と課題を解説する。

論文

緊急時海洋環境放射能評価システムの開発; 海洋拡散の迅速な予測を可能に

小林 卓也; 川村 英之; 上平 雄基

日本原子力学会誌, 62(11), p.635 - 639, 2020/11

原子力事故により海洋へ放出される放射性物質の移行過程を予測することは、近年原子力施設の立地が進む東アジア諸国の周辺海域において重要なことである。原子力機構は、放射性物質の海洋拡散モデルを基盤とした緊急時海洋環境放射能評価システムを開発した。本システムは、海象予測オンラインデータを活用して、東アジア諸国の周辺海域における放射性物質の海洋拡散を迅速に予測するものである。これまでに、システムで実行される海洋拡散予測の精度を定量的に評価するとともに、アンサンブル予測手法を導入することで予測精度が向上することを示した。さらに、領域海洋モデリングシステムを用いて沿岸域を対象とした高分解能モデルを導入する等、システムの高度化を継続している。

論文

最先端の研究開発,日本原子力研究開発機構,6; 廃止措置と廃棄物の処理処分を目指して,1; 低レベル放射性廃棄物の処理処分とウラン鉱山閉山措置に関する技術開発

辻 智之; 杉杖 典岳; 佐藤 史紀; 松島 怜達; 片岡 頌治; 岡田 翔太; 佐々木 紀樹; 井上 準也

日本原子力学会誌, 62(11), p.658 - 663, 2020/11

日本原子力研究開発機構ではバックエンド関連の研究・技術開発として、原子力施設の廃止措置や安全で環境負荷低減につながる低レベル放射性廃棄物の処理処分技術開発と、地層処分の基盤的研究開発を進めてきた。これらバックエンドに関する原子力機構の研究・技術開発のうち、原子力施設の廃止措置や低レベル放射性廃棄物の処理処分技術開発の最前線を紹介する。

論文

最先端の研究開発,日本原子力研究開発機構,5; 高温ガス炉システムの実用化をめざして

峯尾 英章; 西原 哲夫; 大橋 弘史; 後藤 実; 佐藤 博之; 竹上 弘彰

日本原子力学会誌, 62(9), p.504 - 508, 2020/09

高温ガス炉は、ヘリウムガス冷却,黒鉛減速の熱中性子炉で、優れた固有の安全性を有しており、発電のみならず、水素製造などの多様な熱利用に用いることができる。このため、我が国のみならず、海外においても温室効果ガス削減に有効な技術として期待されている。本稿では、ガスタービン発電や水素製造などの熱利用施設と高温ガス炉で構成される高温ガス炉システムの実用化に向け、原子力機構が取り組んでいる技術開発の最前線を紹介する。

論文

核セキュリティ入門,3; 核セキュリティのための核物質検知技術

高橋 佳之*; 小泉 光生

日本原子力学会誌, 62(8), p.452 - 456, 2020/08

本稿は、日本原子力学会誌の連載口座「核セキュリティ入門」に「核セキュリティのための核検知技術」という題名で、不法な核物質移転を検知するための技術開発について解説した記事の1章として寄稿するものである。解説記事では、原子力機構が文部科学省「核セキュリティ強化等推進事業費補助金」の一環として進めている技術開発のうち、レーザー・コンプトン散乱ガンマ線をプローブとした原子核共鳴蛍光散乱(Nuclear Resonance Fluorescence: NRF)による核検知・測定技術開発を紹介した。このNRF技術は、核種特有のガンマ線吸収・放出を用いるため、核種を選択的に測定することができる。また、高エネルギーのガンマ線を使用するので貫通力が高く、粒子放出の閾値以下のガンマ線エネルギーを使用するので、照射による放射化がほとんどないという点に特徴がある。この技術を用いた遮蔽物中に隠ぺいされている核物質を検知する技術を提案し、その実証実験を進めている。

論文

最先端の研究開発,日本原子力研究開発機構,4; 今こそ、高速炉の話; 持続性あるエネルギー供給へ

根岸 仁; 上出 英樹; 前田 誠一郎; 中村 博文; 安部 智之

日本原子力学会誌, 62(8), p.438 - 441, 2020/08

「もんじゅ」は2018年4月に廃止措置段階に移行した。わが国初めてのナトリウム炉の廃止措置であり、約30年をかけて進める大事業である。「もんじゅ」では設計や開発,製作,建設および40%出力運転などの50年にわたる活動を通じて膨大で多岐にわたる技術成果を得てきた。これまでに蓄積された知見・技術を決して散逸させることなく、今後の高速炉の実用化に向けた研究開発に確実に活用していくことが必要である。

論文

よくわかるPRA; うまくリスクを使えるために,3; 外部ハザードについて考えるべきこと

高田 孝*; 山野 秀将; 成宮 祥介*

日本原子力学会誌, 62(8), p.448 - 451, 2020/08

外部ハザードについて、リスク評価におけるハザードの選定や評価として適用されるリスク分析について概説するとともに、一例として火山降灰ハザード評価について示している。また、リスク評価の目的は原子力施設の安全性の確保や向上であり、外部ハザードのリスク評価から得られた情報を用いたリスク対処に対するプロセスについても考察を行った。

論文

よくわかるPRA; うまくリスクを使えるために,1; 確率論的リスク評価の技術課題

丸山 結; 喜多 利亘*; 倉本 孝弘*

日本原子力学会誌, 62(6), p.328 - 333, 2020/06

発電用原子炉施設, 核燃料施設などの原子力関連施設の安全確保において、確率論的リスク評価(PRA)が重要な役割を担っている。PRAより得られる様々な知見や情報が原子力関連施設の運用に関する意思決定に有用であり、自主的安全性向上活動、新検査制度などにおいて、PRAより得られるリスクの活用もなされている。一方で、PRAの評価技術についても、日本原子力学会標準委員会において、PRA手法を中心とした標準(実施基準)の整備を行うなど段階的に進展している。こういった背景の中で、「よくわかるPRA; うまくリスクを使えるために」と題する連載講座を本稿から7回にわたって開講する。第1回は、原子炉施設及び核燃料施設を対象に、内的事象及び外的事象、レベル1, レベル2及びレベル3、各運転状態(通常運転時や停止時)に対するPRAについて、技術の現状及び応用例、今後の技術課題や研究・開発の方向性について概説する。

論文

「レーザーの特徴を利用した研究開発IV」-東京大学弥生研究会-原子・分子の分光分析技術とその応用,3; レーザー法による原子炉厚板鋼材切断技術の開発

田村 浩司*; 遠山 伸一

日本原子力学会誌, 62(5), p.268 - 271, 2020/05

レーザー法による切断技術は、制御性が高くロボットアームを用いた遠隔技術との整合性が高いなど利点が多く、原子力施設の廃止措置へ適用されるならば、有望な選択肢となりうると期待されている。しかし、原子炉圧力容器のような厚板鋼材への適用は従来容易ではなかった。本解説では、このような厚板鋼材のレーザー法による切断技術開発の最新成果として、板厚300mm鋼材や模擬圧力容器の切断実証、厚板鋼材切断条件の解析、切断過程観察、遠隔切断システム、重ね切断、ヒューム対策などについて紹介する。

論文

「深地層の研究施設におけるこれまでの成果と今後への期待」バックエンド部会活動報告,1; 原子力機構における深地層の研究施設計画の成果の概要

仙波 毅

日本原子力学会誌, 62(4), p.186 - 190, 2020/04

日本原子力研究開発機構は、地層処分を実施するたに必要な技術や方法の信頼性を実際の地質環境において確認するため、地元自治体と協定などを締結し、北海道・幌延町と岐阜県・瑞浪市に設置した2つの深地層の研究施設計画を進めている。深地層の研究施設において地層処分事業の段階的な進展に先行して段階的に研究開発を進め、研究成果を発信している。本報告ではこれまでに得られた成果の概要を紹介する。今後とも地元自治体と締結した協定などを遵守し、地層処分の技術基盤の整備を目指して、研究開発に取り組んでいく。

論文

地層処分システムの性能を評価するための熱力学データベースの整備; OECD/NEAのTDBプロジェクトと国内外の整備状況

北村 暁

日本原子力学会誌, 62(1), p.23 - 28, 2020/01

高レベル放射性廃棄物や地層処分相当TRU廃棄物などの地層処分システムの性能を評価することを目的として、廃棄体が地下水に接触したあとの放射性核種の溶解および錯生成挙動を評価するために使用する熱力学データベース(TDB)が国内外で整備されている。本報告では、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)が実施している国際プロジェクトを中心に、わが国および欧米各国で整備されているTDBを概説する。

論文

今後の高速炉サイクル研究開発; 原子力機構の取組

早船 浩樹; 前田 誠一郎; 大島 宏之

日本原子力学会誌, 61(11), p.798 - 803, 2019/11

2018年12月の原子力関係閣僚会議で決定された「戦略ロードマップ」では、今後の10年程度の開発作業が特定され、その中で原子力機構(JAEA)が果たすべき役割が提示された。これを受けて、JAEAでは、高速炉サイクルの炉システム分野と燃料サイクル分野(再処理技術,燃料製造技術,燃料・材料開発)の当面5年程度の研究開発計画の大枠を作成した。今後は当該研究開発計画を元にしてJAEAとしての主体的な研究開発を推進すると共に、得られた研究開発成果をJAEAが有する各種の試験機能と合わせて民間等の活動に提供すること等を通じて、今後の高速炉開発に対して積極的に貢献していく。本稿では、JAEAの取組方針、これを受けた大枠の研究開発項目の概要(先進的設計評価・支援手法: ARKADIAの整備、規格基準体系の整備、安全性向上技術の開発、燃料サイクル分野の研究開発)、国際協力の活用方針と人材育成、今後の展開について解説した。

論文

新刊紹介: 腐植物質分析ハンドブック第2版; 標準試料を例にして

土肥 輝美

日本原子力学会誌, 61(11), P. 31, 2019/11

「腐植物質」と聞くと、「構造が複雑でよく分からないもの」「試料の取扱いや分析が難しそう」などの"とっつきにくさ"をイメージされる方が多いのではないか。けれども、環境中の放射性物質の移行挙動や物質循環の理解を進めようと土壌や堆積物に目を向けると、腐植物質は無視できない存在になる。本書の特徴を一言で表すと、「腐植物質の研究室を訪問し、先生や先輩から分析話を聞いてきたような錯覚を覚える本」である。初版は、日本の代表的な土壌とされる褐色森林土と黒ボク土から調整された日本腐植物質学会公認の標準試料(フミン酸・フルボ酸)を用いて、分析を行う人向けに企画されたガイドブックとして出版されたらしい。この第2版では、土壌由来の物とは構造が異なる水圏環境由来のフルボ酸の標準試料の分析データについても可能な限り追加され、腐植物質に関わる研究のより広範な理解・活性化が願われ改訂されている(「まえがき」より)。内容は、腐植物質の抽出・精製、定量法、分光学的分析、元素分析などの分析種別に項目立てられ、分析法の特徴や長所・短所が端的に記されている。特筆すべきは、試料量の目安や詳細な分析条件だけでなく、「留意点」で読み手が最も知りたい"試料調整や分析時の注意点、データが得られにくくなる要因、その対策"など、恐らく研究室で先生や先輩から分析時(失敗時)に"ちょっとしたコツ"として教わるようなことが書かれている点である。さらに全ての項目で標準試料の測定結果例と解説が記されている点も、初めて腐植物質を分析する人にとって心強い。これから腐植物質の研究に取り組んでみよう、という勇気を与えてくれる1冊になるのではないだろうか。

論文

環境科学に関わる学生・若手研究者たちが考える保健物理・環境科学研究

三輪 一爾; 寺阪 祐太; 越智 康太郎; 普天間 章; 佐々木 美雪; 廣内 淳

日本原子力学会誌, 61(9), p.687 - 691, 2019/09

本報告は、日本原子力学会2019年春の年会にて実施した、保健物理・環境科学部会の企画セッションの内容をまとめたものである。本企画セッションでは、原子力・放射線分野に携わる学生および若手研究者6名が、それぞれの専門的知見を通して見た保健物理・環境科学の在り方について講演を行った。全講演者の発表終了後には来場者を含めて当分野の課題や今後の発展についてディスカッションを行った。本報告書では、各講演概要とディスカッション内容の取りまとめを行った。

論文

クリアランスの現状と課題,5; 福島第一原子力発電所における低線量がれきの限定的な再利用の考え方

島田 太郎; 三輪 一爾; 武田 聖司

日本原子力学会誌, 61(7), p.531 - 534, 2019/07

福島第一原子力発電所(以下、1Fという)敷地内に保管されている表面線量率5$$mu$$Sv/h未満の汚染がれき類を資源化して敷地内に限定して再利用することが検討されている。1F敷地内のように放射線管理が実施されている現存被ばく状況において、汚染した資機材等の限定的な再利用の考え方などが示された例はない。そこで、適切な安全規制のために、1F敷地内での線量管理下の現存被ばく状況における再利用評価の考え方、1F敷地内での運用されている作業者及び周辺公衆の安全確保策に応じためやす濃度算出の方法論を構築するとともに、1F敷地内での道路材及びコンクリート構造材に関して用途別の資源化物のめやす濃度を試算して、とりまとめた。本報ではこの評価の方法について解説するとともに、1F敷地内の限定的な再利用の評価の一例について紹介する。

論文

クリアランスの現状と課題,3; 物品搬出ガイドラインとクリアランス

橋本 周

日本原子力学会誌, 61(7), p.525 - 528, 2019/07

管理区域で使用した物品について、法令に基づく管理基準への適合を確認する表面汚染測定の後に一般区域へ搬出することができる。この管理基準は1960年代から事実上同じ数値が使われている。この手順は、規制対象について一定の条件を満足することを確認したうえで管理対象から外す手法として運用されており、クリアランスの考え方にきわめて近いと考えられる。日本保健物理学会放射線防護標準化委員会では、「計画被ばく状況における汚染した物の搬出のためのガイドライン」を2016年に制定し、管理区域からの物の搬出に関する放射線防護上の考え方を整理した。そこでは、現行の物品搬出管理基準については、クリアランス規準の考え方と比較しても、見劣りのしない放射線防護レベルの管理基準であることが示された。

論文

福島第一事故由来物質に対する環境モニタリング手法の最先端,1; 福島第一原発事故で放出した放射性粒子

佐藤 志彦

日本原子力学会誌, 61(6), p.446 - 448, 2019/06

福島第一原子力発電所事故では大量の放射性物質が環境中に放出したが、チェルノブイリ原子力発電所事故のような炉心が直に大気と触れるような事象は発生しなかったため、核燃料を主とした放射性粒子の放出はないものと考えられていた。しかし2013年以降、放射性セシウム(Cs)を取込んだケイ素が主成分の微粒子が報告され、Cs-bearing particle、不溶性セシウム粒子などの名称で放射性粒子の存在が認知されるようになった。本稿では不溶性セシウム粒子がなぜ不思議な存在であるか、そしてどうして福島第一原子力発電所の廃炉で重要かを紹介した。

論文

福島第一事故由来物質に対する環境モニタリング手法の最先端,3; 事故7年後の福島の放射線分布状況および環境モニタリング技術の最前線

眞田 幸尚

日本原子力学会誌, 61(6), p.453 - 456, 2019/06

福島県で実施されている大規模な放射線モニタリングの情報を整理するとともに、福島第一原子力発電所事故直後からの線量率の変化傾向の考察および住民のニーズに応えるための放射線計測技術の新技術について紹介する。

論文

厚板鋼材のレーザー切断技術; 廃炉の時代の先端技術開発

田村 浩司*; 遠山 伸一

日本原子力学会誌, 61(5), p.413 - 415, 2019/05

原子炉廃止措置では、原子炉構造物の切断解体が必要とされる。従来の切断法に加え、レーザー法は遠隔制御性が高くブレードなどの交換部品の必要性がないなど利点が多く、有力な選択肢となり得る。原子炉は圧力容器など100mmを超える板厚の大きい鋼材で構成されており、このような厚板鋼材の切断に関してレーザー法は知見や実績に乏しい。そこで、近年利用が進んでいる高出力ファイバーレーザーを用い、鋼材切断を様々な条件で試行した結果、原子炉に用いられるような厚板に関してもレーザー切断が可能であることを実証した。また、廃炉現場の厚板鋼材切断に適用するためロボットを用いた遠隔制御を用いた切断の技術開発を行った。本稿ではその開発成果について解説する。

論文

コミュニケーションのある熱水力ロードマップによる展望

中村 秀夫

日本原子力学会誌, 61(4), p.270 - 272, 2019/04

日本原子力学会創立60周年に際し、熱流動部会にて熱水力安全評価基盤技術高度化戦略マップ(熱水力ロードマップ)の策定に2007年当初より携わった経験等を基にした展望が述べられる。特に、同ロードマップ2017年最新版では、軽水炉の熱流動技術の全体を内外の情報を基に技術マップで俯瞰し、継続的に安全性を改善・発展させる道筋がバックキャスティング的に検討されたこと。そして、今後の課題として、「国産安全評価解析コードの開発」、「検証用実規模データの整備とスケーリング分析」、「3次元二相流動の現実的な解析」、「シビアアクシデント(SA)時の現象評価、実機計装」、「ATFなど新しいチャレンジへの対応」、「炉物理と熱流動とのカップリング」など、安全評価等に用いる精度良い数値解析技術の開発と妥当性確認に必要な試験とその技術について、関係者間の議論に基づいた6つの課題が示されている。福島第一原子力発電所の事故により、我が国の原子力は岐路にあるが、同ロードマップの改定にあたり多数の関係者間に真の双方向コミュニケーションが実現して、次代への道筋が示されるとき、我が国の原子力に真の希望を見出せるのではないか、との期待が述べられる。

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