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堅田 元喜*; Grote, R.*; Mauder, M.*; Zeeman, M. J.*; 太田 雅和
Biogeosciences, 17(4), p.1071 - 1085, 2020/02
被引用回数:8 パーセンタイル:43.67(Ecology)山間部の管理された草原では、冬季の寒冷な気候によって生産性が低下する。そのため、将来予想される気温上昇および雪面の変化は、草原の生産性に大きく影響する可能性がある。これを調べるため、陸面モデルSOLVEGに積雪,凍結・解氷および草の成長過程を導入し、このモデルを記録的な暖冬下における草原での熱輸送・炭素交換に適用した。モデル計算は、3年間のシミュレーション期間中に観測された熱フラックス,地温,積雪深度を再現した。計算結果から、暖冬下では高められた植物生理活動によって100g-C mのCO固定が起きたこと、更に、この固定された炭素の多くが春先の植物成長に利用されることなく地下部の根バイオマスへと供給されたことが示された。この暖冬の影響下で起きた地下部への炭素供給は、将来の温暖化環境においては土壌への炭素蓄積量および土壌からのCO放出量が増加するという可能性を示唆しており、既存の全球陸域生態系モデルが本過程を厳密に考慮する必要があることを示すものである。
太田 雅和; 永井 晴康; 小嵐 淳
Journal of Geophysical Research; Biogeosciences, 118(4), p.1646 - 1659, 2013/12
被引用回数:43 パーセンタイル:76.48(Environmental Sciences)深層土壌は土壌有機炭素(SOC)の半分以上を貯留していると見積もられている。しかし深層SOCの供給源・動態は不明な点が多い。根枯死によるC入力・溶存有機炭素(DOC)輸送が深層SOCの供給源として着目されてきた。本研究はこれら供給源及び関連する土壌中過程が深層SOC動態に及ぼす影響をモデルを用いて評価した。モデルは微生物分解に伴うSOCの消失、SOCとDOCの分配及び土壌中水輸送に伴うDOC輸送を分解性の異なる3つの炭素プール(各々分解の時間スケールとして年, 10年, 1000年程度を考慮)に対して考慮した。根の分布が異なる陸面生態系を模擬した数値実験により、全SOCのうち相当量(36-78%)が深層(表層30cm以深)に貯留され得ること及び深層SOCの大部分(39-73%)が10年あるいはそれ未満の時間スケールで回転しうることが示された。DOC輸送はCを深層へ供給する主要な過程であることが示され、その結果土壌中SOC分布は供給源である根の分布よりも深い分布となった。これらの結果は、表層のみに着目した従来研究では10年スケールで回転するSOCの貯留量、それゆえ土壌中炭素の気候変動、土地利用変化等に対する応答を過小評価し得ることを示すものである。
Povinec, P. P.*; 青山 道夫*; Biddulph, D.*; Breier, R.*; Buesseler, K. O.*; Chang, C. C.*; Golser, R.*; Hou, X. L.*; Jekovsk, M.*; Jull, A. J. T.*; et al.
Biogeosciences, 10(8), p.5481 - 5496, 2013/08
被引用回数:103 パーセンタイル:94.17(Ecology)北西太平洋の海水中の放射性物質の分布に関して福島第一原子力発電所事故による影響を大気圏内核実験からのグローバルフォールアウトと比較した。2011年6月における国際航海中に採取した海水中のCs, Cs, I, Hが分析された。福島沖合の表層海水のCs, I, Hは、それぞれ0.002-3.5Bq/L, 0.01-0.8Bq/L, 0.05-0.15Bq/Lの範囲だった。この3核種が分析された海岸から40km離れた採取地点では、福島事故影響はグローバルフォールアウトによるバックグランドのそれぞれ1000倍, 30倍, 3倍だった。また、鉛直分布データからは、既に水深300mまで輸送されていることを示した。Csの表層及び鉛直分布の観測値は海洋大循環モデルでの計算値とよい一致を見せ、福島沿岸から東へ輸送されたことを示した。海洋での滞留時間に起因して、福島由来の放射性物質は北西大西洋の水塊輸送に関する海洋研究に有益なトレーサーになるだろう。
鈴木 崇史; 乙坂 重嘉; 桑原 潤; 川村 英之; 小林 卓也
Biogeosciences, 10(6), p.3839 - 3847, 2013/06
被引用回数:26 パーセンタイル:58.89(Ecology)福島第一原子力発電所事故により環境中にさまざまな放射性物質が放出された。事故起因のIの影響を評価することを目的に事故前後における海水中のI濃度を測定した。事故前のI濃度の結果から北太平洋の北緯36度から44度における濃度分布は緯度の減少とともに減少している傾向を示した。事故後の海水中のI濃度は最大値で73倍、平均値で約8倍上昇していることが明らかとなった。また鉛直分布の結果から水深1000mまでの事故起因Iのインベントリーは(1.8-9.9)10atoms/mであった。海水中のI測定結果から海産生物摂取による内部被ばく量を見積もったところ、事故起因のIによる被ばく量は極めて小さいと考えられる。
小嵐 淳; Hockaday, W.*; Masiello, C.*; Trumbore, S.*
Journal of Geophysical Research; Biogeosciences, 117, p.G03033_1 - G03033_13, 2012/09
被引用回数:48 パーセンタイル:77.63(Environmental Sciences)深層土壌は、地球上の全土壌炭素の半分以上を貯蔵しているが、その炭素の動態は解明されていない。われわれは、シエラネバダ山の森林及び草地土壌から50年間に渡って採取した土壌試料への核実験起源の混入を追跡することで、深層土壌において数十年程度で循環する炭素の量と動態を調査した。その結果、深層土壌炭素の約半分が数十年程度で循環し、この炭素が生態系炭素バランスにおいて重要な役割を果たしていること、深層で鉱物と結合した有機炭素であってもその28-73%が数十年程度で分解されること、炭素が植物によって固定されてから深層で鉱物と結合されるまでに20年以上のタイムラグがあることを明らかにした。われわれの結果は、深層土壌に大量に貯留する炭素は、環境変化に対して数十年以上の時間差を持って応答し、地球炭素循環に大きな影響を及ぼしうることを示している。