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伊藤 均
放射線と産業, 0(55), p.37 - 41, 1992/00
多くの生物は凍結下では障害を受けるが、酵素や細菌数などは凍結下では長期にわたり安定である。多くの細菌類は凍結処理によって放射線抵抗性が2~5倍に増大する。しかし実際の冷凍エビでは室温に比べ抵抗性の増大はそれほど著しくなかった。一方、細菌芽胞は凍結下でも解凍下でも放射線感受性に大差のないことが知られている。ウイルスも室温照射では約10kGyで失活可能であるが、凍結下ではDNAウイルスは20~25kGy、RNAウイルスは30~40kGyで失活可能である。RNAウイルスには肝炎ウイルスやエイズウイルスも含まれ今後の応用が期待できる。凍結照射は生体成分の劣化を著しく抑制でき、血清蛋白は30kGyでも変性せず、酵素活性の低下も少ない。照射による食品の異臭も凍結下では著しく抑制された。このように凍結照射は生物活性の変化がない状態で殺菌できるため、食品や医療への応用が期待できる。