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土肥 輝美; 武藤 琴美; 吉村 和也; 金井塚 清一*; 飯島 和毅
KEK Proceedings 2019-2, p.14 - 19, 2019/11
福島第一原子力発電所(FDNPP)の事故により放射性物質が環境中に放出された。現在の空間線量率を支配しているのはCsで、その多くは山地森林に沈着し残存しているが、アクセスの困難さもあって空間線量率の実測値のデータは十分とは言えない。山域においてCsによる汚染の実態を把握することは、林業・林産物・レクリエーション利用の観点において重要である。本研究では、湿性沈着が優勢とされる主要なプルーム軌跡に着目し、同軌跡上における高太石山および十万山において標高や方位が空間線量率の分布に与える影響を調べるため、歩行サーベイを行った。さらに、歩行サーベイで得られた空間線量率の実測値とデータの解析から、沈着メカニズムの評価を試みた。その結果、高太石山では山域の東側で高く、西側で低い傾向が認められるなど空間線量率の方位依存性が明瞭に示された。さらに山麓付近の標高で空間線量率が高くなっていた。このような特徴から、高太石山ではFDNPPからのプルーム通過による沈着が起きている可能性が新たに見出された。十万山では、空間的に一様な線量率の分布がみられ、高太石山のような方位依存性は認められなかった。十万山の空間線量率の標高特性からは、航空機サーベイと大気拡散シミュレーションから推定された湿性沈着と同様の傾向が示されたことから、湿性沈着の影響を受けた可能性が考えられる。よって、今回の地上計測によって、FDNPP近傍の同一プルーム軌跡上の山域であっても、沈着メカニズムが異なる可能性が示された。