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岩井 保則; 山西 敏彦; 西 正孝
JAERI-Tech 2005-045, 38 Pages, 2005/08
核融合炉の水素同位体分離に用いられる深冷蒸留塔では、水素を液化させるヘリウム冷媒配管を、凝縮器外周に巻き付ける構造が採用されている。冷媒配管にトリチウムが混入する可能性を確実に除外するためこの構造が採用されているが、凝縮器に広い外表面積が必要なことから、凝縮器そのものが大型化する問題が生じる。この問題を解決するために、ヘリウム冷媒配管流路及び凝縮器内部にフィンを挿入したスパイラルフィン形状凝縮器の概念を考案した。これにより、従来型の凝縮器と比較して半分以下の大きさに縮小することが可能となった。さらに、凝縮器内部の水素同位体インベントリーを評価する簡易モデルを提案し、その妥当性を検証した。
岩井 保則; 山西 敏彦; 大平 茂; 鈴木 卓美; 洲 亘; 西 正孝
Fusion Engineering and Design, 61-62, p.553 - 560, 2002/11
被引用回数:15 パーセンタイル:65.5(Nuclear Science & Technology)深冷蒸留法を採用した水素同位体分離システム(ISS)は核融合炉の燃料循環システムを構成する中核機器の一つである。国際熱核融合実験炉ITERのISS設計にあたり、設計検討上必要な体系的データ取得を目的とした深冷蒸留実験を実施した。得られた主な結果は以下の通りである。(1)ISS設計のキーパラメーターである理論段相当高の値は、実験から5cmと評価した。この値はITER-ISSの設計に採用された。(2)ISS制御ツールとしてレーザーラマン分光法を用いた高速遠隔多点水素同位体分析システムの開発を進め、水素同位体6成分(H2, HD, HT, D2, DT, T2)を1分以内に分析限界1000ppmの精度で分析できることを実証した。本システムの長期間信頼性は、2年間に渡り機器故障なく使用できた実績により確証した。(3)ISS動作評価コードを実験結果と比較検討を行うことで改良し、蒸留塔の動特性を模擬することに成功した。一連の実験を通し、ISSの設計手法及び運転手法を確立した。
岩井 保則; 中村 博文; 小西 哲之; 西 正孝; Willms, R. S.*
Fusion Science and Technology, 41(3), p.668 - 672, 2002/05
核融合実験炉の燃料循環システムではトリチウムの大部分が水素同位体分離システム(ISS)の深冷蒸留塔に液の形で滞留する。ISSの冷却材喪失事象は塔内の液化水素の異常な蒸発を引起こす。核融合炉の安全性の観点から、冷却材喪失事象時のISSの挙動を把握し、数値評価手法を確立することを目的に、日米協力の下、米国ロスアラモス国立研究所トリチウムシステム試験施設の核融合実験炉規模の深冷蒸留塔で冷却材喪失事象模擬試験を世界で初めて実施した。定常状態における深冷蒸留塔内の水素同位体インベントリーの所在を評価した後、冷凍機を手動で停止させることで冷却材喪失事象を模擬した。また同時に再沸器のヒーター出力を零とした。塔内の圧力が定常時の106.7kPaから液の蒸発とともに上昇し、235kPaに達するまでに90分を要することを観測し、水素吸蔵ベットを用いた水素急速回収等により圧力上昇を防ぐ十分な時間猶予があることを見いだした。
岩井 保則; 山西 敏彦; 西 正孝
Fusion Technology, 39(2-Part2), p.1078 - 1082, 2001/03
現在進行中のITER設計見直し作業の一環として、燃料循環システムの中核である水素同位体分離システム(ISS)の処理流量の減少に基づいた概念設計の再検討を行った。ISSでは供給される三種類(プラズマ排ガス,水処理システムからの排ガス,中性粒子注入システムからの排ガス)のフィードを深冷蒸留法により、燃料用のトリチウム濃縮流、中性粒子注入システム用の重水素濃縮流、軽水素排ガスに分離する。本報ではサイドカット流、平衡器の減数などシステムの簡略化とITERの段階的運転シナリオを考慮した4塔からなる独自の塔構成を提案した。プラズマ排ガスのトリチウム濃度、要求される燃料流中のトリチウム濃度及びその流量が総トリチウムインベントリーに与える影響を考察した。また現状の塔構成では軽水素排ガス中のトリチウム濃度が運転中に変動する可能性を指摘し、塔の構成変更による対策を提案した。
西 正孝; 山西 敏彦; 河村 繕範; 岩井 保則; 磯部 兼嗣; 大平 茂; 林 巧; 中村 博文; 小林 和容; 鈴木 卓美; et al.
Fusion Engineering and Design, 49-50, p.879 - 883, 2000/11
被引用回数:4 パーセンタイル:32.51(Nuclear Science & Technology)原研では、トリチウムプロセス研究棟(TPL)において核融合炉燃料プロセスの研究開発を主要な研究課題の一つとして進めている。最近はITER燃料系の模擬試験に重点を置いており、世界で唯一の模擬ループの試験を開始している。ループは、ZrCoトリチウム貯蔵ベット,プラズマ排ガス処理系,深冷蒸留による同位体分離系、及びマイクロガスクロマトグラフと、光ファイバーによるレーザーラマン分析系より構成される。プラズマ排ガスを模擬したDTとHe,メタンなどの混合ガスは連続的に循環処理され、不純物元素の排出と純DTガスの再循環が模擬される。実験では、リアルタイム分析の特徴を生かして、総合システムとしての挙動の測定,動特性の解析と、運転制御法の開発を行っている。また、実験をサポートするトリチウム安全設備の運転結果についても言及する。
岩井 保則; 山西 敏彦; 西 正孝
JAERI-Tech 2000-002, p.37 - 0, 2000/02
ITER-FDRの定常状態プラズマオペレーション(燃焼時間10,000s,排気流量200Pam/s)に対応した水素同位体分離システム(ISS: Isotope Separarion System)について、ISSに供給される三種類のフィード流(プラズマ排ガス、水処理システムの排ガス、中性粒子流量システムの排気ガス)の中の水処理システムからの水素流量を大幅に減少できるという見通しに基づき、設計の見直しを行った。本検討ではITERの段階的建設のシナリオも考慮して、四塔からなる独自の塔構成を提案した。最大冷媒容量はFDRのISS基本設計の44%と大幅に減少した。一方、最大トリチウムインベントリーについてはFDR-ISS基本設計と同等となったが、運転条件に対応したペレット用のトリチウム濃縮流の検討の進展によって、トリチウムインベントリー低減の可能性を見いだした。
山西 敏彦; 小西 哲之; 林 巧; 河村 繕範; 岩井 保則; 丸山 智義*; 角田 俊也*; 大平 茂; 中村 博文; 小林 和容; et al.
Fusion Technology, 34(3), p.536 - 540, 1998/11
原研トリチウムプロセス研究棟において核融合炉燃料循環模擬ループを組み上げ、ITER条件での試験を行った。模擬ループは、電解反応器及びパラジウム拡散器を用いた燃料精製システム,深冷蒸留塔を用いた同位体分離システムから成る。模擬プラズマ排ガスとして、水素同位体混合ガス(トリチウム量1g)にメタン等不純物を添加してループに供給し、実証試験を行った。その結果、燃料精製システムから純粋な水素同位体のみを同位体分離システムに送ること,同位体分離システムからトリチウムを含まないHを抜き出すことを実証した。今回新たに得られた実証試験結果としては、電解反応器によりメタンを分解して水素として回収すること,同位体分離システムに設置したレーザーラマンにより、遠隔実時間分析が可能であることを示したことが挙げられる。
山西 敏彦; 岩井 保則; 西 正孝; 吉田 浩
Fusion Technology, 34(3), p.531 - 535, 1998/11
ITERの同位体分離システムは、5本の深冷蒸留塔より構成される。この5本の塔により、プラズマからの排ガス,NBIからの排ガス,水処理系からの軽水素ガスを処理するが、組成・流量がかなり変動することが予測されているプラズマ排ガスを受け入れる第1塔の制御手法を、シミュレーションにより検討した。第1塔は、プラズマ排ガスを受け入れ、塔中央部よりD-T50%の流れを、塔底からトリチウム90%の流れを製品として抜き出す。塔に供給されるトリチウム量を測定し、塔中央部からの抜き出し量をフィードフォワード制御する。また塔底温度を測定し、塔底からの抜き出し量をフィードバック制御する。この制御手法は、プラズマ排ガスの流量・組成の大きな変化に対しても、塔中央部及び塔底からの製品流組成を一定に保つことができる。
山西 敏彦; 西川 正史*; 中塩 信行*
プラズマ・核融合学会誌, 73(12), p.1326 - 1332, 1997/12
現在、ITER燃料システムの主コンポーネントの設計が、トリチウムインベントリー推算、故障事象解析の観点からも進められている。システムは2つの大きな特徴を持っている。約1kgの大きなインベントリーを持っていること、さまざまなプラズマからの排ガスに対応して高純度精製燃料(D-T)を再びプラズマに供給しなければならないことにある。この観点に立てば、シミュレーションコードを整備し、トリチウム計量管理及び制御システムを設計することの重要性が認識されよう。一例として、燃料システムの主コンポーネントである深冷蒸留塔の制御システム設計について、本報告で紹介する。燃料システムでのトリチウム取り扱いという観点からは、材料表面とプロセスガスのトリチウムに関する挙動が、プロセスのメンテナンス及びそれによって生じる廃棄物の問題を議論するうえで重要である。
山西 敏彦; 奥野 健二
Journal of Nuclear Science and Technology, 34(4), p.375 - 383, 1997/04
被引用回数:5 パーセンタイル:42.9(Nuclear Science & Technology)フィードバック流れを持つ深冷蒸留塔の制御特性を、シミュレーションにより検討した。このフィードバック流れを持つ塔は、核融合炉において重要な役割をになっている。シミュレーションの結果により、塔の新しい制御システムを考案した。塔頂流量は、主フィード流の組成及び流量から、フィードフォワード制御によって決定される。フィードバック流れの流量及び塔内蒸気流量は、フィード流量に比例して調節される。塔内蒸気流量については、フィードバック制御ループにより更に調節される。提案したシステムは、フィード流の大きな組成変化、流量変化、塔の全理論段数の減少あるいは増加に対して、製品純度を制御することができる。制御システムは、各塔毎に、塔の運転条件、機能を考慮して設計されなければならない。本研究は、深冷蒸留塔の制御システムの基本的設計手順を示すものである。
岩井 保則; 山西 敏彦; 奥野 健二
JAERI-Tech 96-043, 31 Pages, 1996/11
核融合炉の水素同位体分離プロセスには深冷蒸留塔が最有力視されている。しかし、この方法は水素を液体として扱うことからトリチウムインベントリーが大きくなることが問題であり核融合炉の安全上、インベントリーが最小限になるように深冷蒸留塔システムを設計する技術を確立することが非常に重要である。本報告では、ITER規模の核融合炉を想定し、予想されている各排ガスの流量と組成に基づき設計計算を実施し、インベントリーの最小化という観点から塔構成の検討、考察をおこなった。従来のITER用ISSの設計条件に基づき計算をおこなった結果H濃縮塔とHT分離塔、D濃縮塔、T濃縮塔の3塔ループからなる4塔構成でシステム全体の総インベントリーを94gと目標の100g以下を満たすことができた。またこの手法は新しい条件にも対応させることができることができた。
山西 敏彦; 榎枝 幹男; 奥野 健二; Sherman, R. H.*
Fusion Technology, 29, p.232 - 243, 1996/03
フィードバック流れを持つ深冷蒸留塔のコントロール手法を提案した。塔の塔頂及び塔底の流量は、フィード組成の変化に対して製品純度をコントロールするために調整する。塔のサイドカット流量とリボイラー出力は、フィード流量の変化に対して、直ちに比例して調整する。フィードバック流れを持たない塔では、塔頂流量を抑制因子に選択する限り、一次おくれ系で表現できる。ところが、フィードバック流れを持つ塔では、この場合においても2次おくれ系となる。PIコントローラを採用した場合の、パラメータ設定法を提案し、パラメータの値により、塔のコントロールに非安定領域があることを示した。本パラメータ設定法は、製品純度の測定にかなりの時間遅れがある場合にも有効であるが、この場合、大きな積分時間を設定する必要があり、コントロールの迅速性、安定性が失われる。PIコントローラにかわり、PIDコントローラを用いることで、迅速性は改善できる。
小西 哲之; 榎枝 幹男; 山西 敏彦; 奥野 健二
Fusion Technology 1996, 0, p.1221 - 1224, 1996/00
原研はITERなどの次期装置を念頭においた核融合炉燃料循環系の研究開発を実施している。主要な構成要素は、トーラス排気を処理して水素同位体を精製回収するシステム、同位体分離システム及びブランケットからのトリチウム回収を行う低温モレキュラーシーブシステムである。それぞれが原研独自の発想に基づくプロセス構成であり、構成コンポーネント特性研究、大量トリチウムを用いた総合システム試験、数値計算などにより開発を進めている。また、これらの開発研究で得られたデータに基づいてITERの燃料系全体のシステム設計を行った。
山本 一良*; 山西 敏彦; 西川 正史*
プラズマ・核融合学会誌, 71(3), p.202 - 211, 1995/03
核融合炉燃料サイクルの同位体分離システムとして、大流量の連続処理が可能であり、高い分離係数を持つ深冷蒸留塔は、最も有望視されており、現にITERの同位体分離システムとして採用されている。深冷蒸留法とは、水素同位体間の気液平衡比の差、すなわち相対揮発度の差を利用した分離法であり、例えばHとHTの分離係数は約1.9に達し、水蒸留法等と比較して大きな分離係数を持つ。この深冷蒸留塔の基礎実験データの取得とシミュレーションコードの開発が原研トリチウム工学研究室で行われ、設計に必要なデータの蓄積と、コード開発が終了した。更に、米国ロスアラモス研究所と原研の間で実施された協力研究により実規模の深冷蒸留塔の分離実証試験も完了した。その結果、トリチウム工学研究室で取得した基礎実験データにより、塔のスケールアップが可能であること、解析コードが妥当であることが証明された。
小西 哲之; 山西 敏彦; 榎枝 幹男; 林 巧; 大平 茂; 山田 正行; 鈴木 卓美; 奥野 健二; Sherman, R. H.*; Willms, R. S.*; et al.
Fusion Engineering and Design, 28, p.258 - 264, 1995/00
被引用回数:4 パーセンタイル:43.46(Nuclear Science & Technology)米国ロスアラモス国立研究所のトリチウムシステム試験施設(TSTA)は核融合炉燃料循環系の模擬試験施設であり、原研との日米協力によって100グラムレベルのトリチウムを用いて最長25日間の定常運転に成功した。しかし近未来のトカマクはパルス運転が想定され、また現実の装置では起動、停止など非定常条件にも対応する必要がある。この燃料循環系の非定常条件での挙動の研究を行うため、2年間協定を延長して実験を行っている。深冷蒸留による同位体分離システムはフィードバック流を用いた流路と1~2本に蒸留塔を減らした配位を用い、また自動制御を加えた。原研製燃料精製システム(JFCU)は新たに模擬プラズマ排ガスをバッチ処理する配位を用い、インベントリーを大きく低減することが確認された。TSTAループは満足すべき運転の柔軟性を示したが、制御上のいくつかの問題も摘出された。
山西 敏彦; 奥野 健二
JAERI-Research 94-020, 22 Pages, 1994/10
フィードバック流れを持つ深冷蒸留塔から構成される2塔カスケードの制御手法を提案した。先頭の塔は、プラズマからの排出ガスを処理し、高純度のトリチウムを塔底から精製する。2番目の塔は、先頭の塔の塔頂流と、ブランケット及び水処理システムからのトリチウムを含んだ軽水素ガスを処理する。塔の塔頂及び塔底流量は、フィード組成の変化に対して、製品純度を保つように調整する。フィード組成のステップ変化に対する比例積分(PI)コントローラのパラメータ設定手法を提案した。先頭の塔では、塔頂流中のDTモル分率あるいは塔底流中のTの原子分率が制御因子となりうる。制御の迅速性からは、塔頂流中のDTモル分率を制御因子として選ぶことが望ましいが、この場合、制御因子測定のための遅れ時間は極めて短くなければならない。2番目の塔に対しては、塔頂流中のHTモル分率を制御因子とすることで安定な制御が可能である。
山西 敏彦; 榎枝 幹男; 奥野 健二
Journal of Nuclear Science and Technology, 31(9), p.937 - 947, 1994/09
被引用回数:4 パーセンタイル:42.34(Nuclear Science & Technology)フィードバック流れを持つ深冷蒸留塔の実験を、H-D-T系で行った。塔からの抜き出し流れは、同位体平衡器を介してフィードバック流れとして戻される。シミュレーションによる計算値はすべての成分について実験値と一致し、その妥当性が証明された。フィードバック流れは塔内のHD濃度をかなり減少させ、高濃度のH及びDを塔頂及び塔底から得た。このように、実験によりフィードバック流れの塔性能に対する効果を実証した。1つの重要な結果として、抜き出し流れの位置及び流量が、塔性能に大きな影響を持つことを確認した。特に、最適な抜き出し位置を選ぶことは、塔性能を増大させるうえで重要である。フィードバック流れを持つ蒸留塔の大きなフィード流量及び蒸気流量の大きな変化により、各理論段におけるHETPの値が変化しがちであった。塔の設計段階において、抜き出し位置を複数用意しておくことが必要である。
山西 敏彦; 榎枝 幹男; 奥野 健二
JAERI-Tech 94-011, 32 Pages, 1994/07
ITER規模の核融合炉における燃料サイクルのための深冷蒸留塔カスケードを提案した。カスケードは3本の塔からなり、以下の重要な特長を持っている。カスケードを構成するすべての塔に対し、塔底あるいは塔頂流どちらかがより重要である。サイドカット流を、製品あるいは下流の塔のフィード流としていない。塔間のリサイクル流がない。カスケードを構成する各々の塔に対して、制御系を設計した。重要な製品流中の鍵となる成分を選択し、その成分の分析手段を提案した。設計した制御系は、鍵となる成分の分析が遅れ時間なく可能ならば安定である。一つの解析による重要な結論として、制御系を安定させるために許される分析時間が約30分であることが判明した。ガスクロマトグラフにより、水素同位体の分析を30分間で行うことは可能であり、制御系の分析手段として用いられることは可能である。
山西 敏彦; 奥野 健二
Journal of Nuclear Science and Technology, 31(6), p.562 - 571, 1994/06
被引用回数:7 パーセンタイル:56.56(Nuclear Science & Technology)水素同位体を分離する深冷蒸留塔内の物質及び熱移動速度を検討するために、一つのモデルを提案した。このモデルはアナロジーを基礎とするものであり、小菅及び恩田の相関式を基に、物質移動速度及び有効表面積を推算している。本モデルによる計算値は実験値とおおよそ一致したが、実験値と比較して、若干高い分離性能を与える傾向がある。この傾向は、有効表面積の推算値が、実際の値よりも大きいと思われることに起因する。HETPと物質移動速度の関係を議論することを目的に、本モデルによる計算値と段モデルによる計算値の比較を試みた。推算された物質移動係数及び有効表面積は、H-D系とD-T系でほとんど同じ値を示した。この計算結果は、HETPが水素同位体間の物性の差の影響を受けないことに対して、一つの理由を与えている。本モデルによる計算値と段モデルによる計算値を比較することで、HETPを推算することが可能である。
山西 敏彦; 林 巧; 中村 博文; 奥野 健二; Sherman, R. H.*; Taylor, D.*; Barnes, J. W.*; Bartlit, J. R.*
JAERI-M 93-188, 31 Pages, 1993/10
フィードバック流れを持つ深冷蒸留塔の最初の実験が、H-D系で成功裏に行われた。この塔のシミュレーションのために幾つかの計算コードを整備し、より良い収束特性を得、塔内のバイパス流あるいはよどみ等のファクターを考慮できるように、コードに適当な修正を加えた。これらコードを用いて、H-D系で、フィードバック流れを持つ塔の特性をシミュレーションにより検討した。その結果、抜き出し流の流量及びその抜き出し箇所が、塔性能に最も大きな影響を持つことを確認した。更に、抜き出し流量及び抜き出し箇所の決定法を検討した。実験によって認められた1つの重要な結果は、フィードバック流れを持つ塔により、高純度のDが塔底より得られたことである。一方フィードバックを持たない塔では、塔底の主成分はHDであった。このように、実験によりフィードバック流れの効果を実証することができた。