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Zhao, Q.*; 齊藤 毅*; 宮川 和也; 笹本 広; 小林 大志*; 佐々木 隆之*
Journal of Hazardous Materials, 428, p.128211_1 - 128211_10, 2022/04
被引用回数:5 パーセンタイル:57.04(Engineering, Environmental)令和2年度以降の幌延深地層研究計画において原子力機構が取り組んでいる課題の1つである「実際の地質環境における人工バリアの適用性確認」では、坑道周辺の掘削損傷領域において物質移行に関するデータの取得が必要である。本研究では、地下水中に含まれる腐植物質であるフミン酸に着目し、放射線によるフミン酸の分解反応がCsイオンとEuイオンの収着能へ与える影響について、幌延地域の堆積岩を例として調べた。放射線を照射していないフミン酸の存在下では、Euはフミン酸と錯体を形成することで、岩石への収着能は低下する。一方で、放射線の照射によりフミン酸が分解されると、岩石へ収着するEuイオンが増加することが確認された。また、Csの岩石への収着能はフミン酸の影響を受けることが無く、また、放射線により分解されたフミン酸の影響も見られないことが分かった。以上のことから、廃棄体の近傍ではフミン酸の放射線分解により、岩石への収着するEuイオンの割合が大きくなることが考えられる。
中野 純佳*; 丸茂 和樹*; 風見 綸太郎*; 斉藤 拓巳*; 原賀 智子; 半田 友衣子*; 齋藤 伸吾*
Environmental Science & Technology, 55(22), p.15172 - 15180, 2021/11
被引用回数:5 パーセンタイル:32.67(Engineering, Environmental)環境中に存在する不定形有機高分子であるフミン酸(HA)は、環境中の有害重金属イオンや放射性金属イオンと強く錯形成し、超分子集合体を形成することによって、金属イオンの移行挙動に影響を与えている。そのため、土壌や河川の環境評価や放射性廃棄物処分の安全評価において、HAと金属イオンとの超分子化挙動を解明することが重要である。本研究では、環境中に広く存在する金属イオンとしてCu、3価のアクチノイドイオンのモデルとしてTbを対象として、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)を基盤とする独自に開発した分析法を用いて、深層地下水由来および泥炭由来のHAと強く錯形成したCuおよびTbがHAのどの分子量帯に多く分布しているかを調査した。超分子化したHAをPAGEで分離後、HAと結合していた金属イオンを検出し、さらにUV-Vis測定および励起蛍光マトリクス-平行因子分析を組み合わせることにより、超分子が形成されたHAの分子量帯およびHAと金属イオンとの化学量論比を算出することに成功した。その結果、金属イオンやHAの由来によってそれぞれ異なる超分子化挙動を示すとともに、その原因がHA中の硫黄原子の存在量に関係していることを明らかにした。
長尾 誠也*; 藤嶽 暢英*; 児玉 宏樹*; 松永 武; 山澤 弘実
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 255(3), p.459 - 464, 2003/03
被引用回数:8 パーセンタイル:49.75(Chemistry, Analytical)腐植物質のような高分子の有機物は環境中において微量元素及び放射性核種との錯体の配位子として重要であることは広く認識されている。腐植物質は生成される環境によりその構造,官能基等の特性が異なるため、放射性核種等との錯形成,錯体の特性が変動する可能性が考えられる。しかしながら、腐植物質は天然水中には微量にしか存在しないこと、分離精製には大量の天然水の処理が必要なために多くの労力と時間がかかること、さらに腐植物質の特性分析には各種の分析法が必要なために、放射性核種等と腐植物質との錯体特性に関する検討はそれほど進んではいない。本研究では、水質の異なる4つの河川水から分離精製した腐植物質を用いて、Amとの錯体特性を分子サイズの観点より比較検討した。その結果、Amの分子サイズ分布は、フミン酸共存下では2つのパターン、フルボ酸存在下では3つのパターンに分類された。この分類は、フミン酸及びフルボ酸自体の分子サイズ分布のパターンに相当していた。このことは、腐植物質の特性がAmとの錯形成を支配していることを示唆している。
田中 忠夫; 長尾 誠也; 坂本 義昭; 小川 弘道
Journal of Nuclear Science and Technology, 39(Suppl.3), p.524 - 527, 2002/11
Puの吸着に及ぼすフミン酸の影響について、フミン酸を吸着しない海岸砂及びフミン酸を良く吸着するクロボク土を用いてフミン酸の分子サイズとの関連から検討した。Puの海岸砂への吸着能はフミン酸濃度が高くなるにしたがって低下した。一方、クロボク土への吸着能は極低濃度のフミン酸を共存する場合に最も高くなり、フミン酸濃度の増加とともに減少した。また、吸着前後における液相中のPuとフミン酸の分子サイズを限外濾過法によって調べた結果、フミン酸のPuとの錯形成能と土壌への吸着能は分子サイズによって異なり、これらに支配的な分子サイズはフミン酸濃度が高くなるにしたがって小さなサイズ領域にシフトすることを明らかにした。
田中 忠夫; 長尾 誠也; 小川 弘道
Analytical Sciences (CD-ROM), 17(Suppl.), p.1081 - 1084, 2002/03
溶存状態にあるフミン酸官能基のFTIRスペクトル分析を試みた。脂肪族構造を主に有するもの及び芳香族構造を主に有するものとの2種類のフミン酸について、pH2から10の水溶液に溶存させた状態でATRスペクトルを測定した。また、これらフミン酸を凍結乾燥させ粉体状に精製し、一般的に用いられている透過法及び拡散反射法でFTIRスペクトル測定した。3通りの方法で測定したFTIRスペクトルを比較した結果、主要な官能基に起因する吸収波数はお互いに一致し、ATR法を用いることにより、フミン酸の官能基を溶存状態で分析できることを示した。
長尾 誠也; 田中 忠夫; 中口 譲*; 鈴木 康弘*; 村岡 進; 平木 敬三*
Understanding and Maraging Organic Matter in Soils, Sediments and Waters, p.525 - 532, 2001/00
地下水に存在する有機物はアクチニド元素と錯形成し、地層中における放射性核種の移行挙動に影響を及ぼす可能性が指摘されている。本研究では、アクチニド元素(Np,Pu及びAm)を対象に地下水に存在する有機物との錯体の特性を分子サイズの観点から考察した。実験には有機物濃度が高く、海水の化学組成に近い地下水を用いた。地下水にアクチニド元素を添加し、有機物と錯体を形成させた後、限外ろ過により5つの分子サイズフラクションに分離し、上記核種の分子サイズ分布を見積もった。その結果、地下水中のNp,Pu及び有機物は分子サイズ3,000以下のフラクションに70~80%存在した。一方、Amについては分子サイズ10,000~5,000と3,000以下のフラクションにそれぞれ33%と29%存在した。これらの結果は、核種による有機物と重炭酸との錯体の選択性の違い、有機物の分子サイズフラクションとの錯体の選択性の違いを反映している。
長尾 誠也; 中口 譲*; 藤嶽 暢英*; 小川 弘道
Proceedings of 10th International Meeting of the International Humic Substances Society (IHSS10), p.1143 - 1146, 2000/07
地下水に存在する高分子電解質の有機酸である腐植物質は、溶存有機物の大部分を占め、放射性核種との錯形成能が高いため、地中における放射性核種の行移行に影響を及ぼすと考えられている。有機物の影響を定量的に行うには、地下水から腐植物質(フミン酸、フルボ酸)を分離精製し、影響評価実験を行うとともにその特性を調べる必要がある。本研究では、比較的有機物濃度の高い海水地下水から腐植物質を分離精製し、各種の分析法により腐植物質の特性を調べた。海水系地下水のフミン酸は地表水のフミン酸に比べて芳香族炭素の割合が低く、より低分子の有機物で構成されていた。フルボ酸では、構成有機物の組成はフミン酸ほどの変動は認められなかったが、窒素含量が2.5%と地表水(0.7-1.8%)に比べて高かった。これらの結果より、海水系地下水の腐植物質が地表水の腐植物質とは異なる特性を有することが明らかとなった。
長尾 誠也; 妹尾 宗明
Humic Substances and Organic Matter in soil and Water Environments: Characterization,Transformations, 0, p.71 - 79, 1996/00
放射性廃棄物として固化された放射性核種が地下水中に溶出すると、地下水中の溶存有機物の大部分を占める腐植物質と錯体等を形成し、コロイドとして地質媒体中を保持されることなく移行する可能性がある。錯体形成及び移行挙動を理解するためには、腐植物質の特性を詳細に把握する必要がある。本研究では、錯体形成及び移行挙動に密接に関連している腐植物質の分子量分布に着目し、ゲル濾過高速液体クロマトグラフィーにより、複雑な濃縮等の前処理を行わずに簡易に測定する方法を検討した。その結果、通常のpH及びイオン強度範囲においてクロマトグラフは一致し、試水の化学的性質の違いによる影響は認められなかった。フミン酸0.5~100ppmのクロマトグラフの基本的な形状は一致し、再現性良く測定することができた。以上の結果は、本測定法により天然水中溶存腐植物質の分子量分布を直接測定できることを示唆している。
長尾 誠也; 田中 忠夫; 坂本 義昭; 妹尾 宗明
Radiochimica Acta, 74, p.245 - 249, 1996/00
高分子の有機物であるフミン酸はTRU元素等の放射性核種と比較的高い錯体形成能を有しているため、地層中における放射性核種の移行挙動を支配する要因の1つと考えられている。本研究では、TRU元素とフミン酸の錯体形成及びフミン酸共存下におけるTRU元素の土壌への収着に及ぼすフミン酸の影響を明らかにするため、分子量分布及び官能基組成が異なる4つのフミン酸を用い、Eu(III)とフミン酸の錯体形成及びそれら錯体の土壌への収着挙動をバッチ実験により調べた。その結果、フミン酸は砂質土壌へほとんど収着しないが、Eu(III)はフミン酸が共存しない場合、約95%収着した。一方、Eu(III)-フミン酸錯体の収着実験において、Eu(III)は85-96%、フミン酸は50-97%土壌へ収着した。これらの結果は、Eu-フミン酸錯体が砂質土壌へEuを介して収着していることを示唆している。
長尾 誠也
放射性廃棄物研究, 1(2), p.231 - 242, 1995/05
本論文では、地層中におけるTRU元素の溶存状態、地質媒体への収着性及び移行性を支配する要因の1つと考えられている地下水に存在する高分子の有機物である腐植物質を取り上げ、これまでに報告された地下水中の腐植物質の特徴(元素組成、官能基含量、分子量分布等)及びTRU元素と腐植物質間に形成される錯体の錯生成定数について調べた結果を紹介した。
長尾 誠也*; 中嶋 悟
Science of the Total Environment, 117-118, p.439 - 447, 1992/00
放射性廃棄物の地層処分において、土壌や堆積物中の腐植物質とアクチノイドの相互作用を把握することは重要であるが、そのためにはまず、その相互作用の機構を明らかにする必要がある。そこで、海底堆積物中でのウランと腐植物質の関係を調べてみた。酸化還元環境等の異なる3測点の海底堆積物間隙水中のウラン濃度、間隙水の紫外・可視スペクトル及び蛍光スペクトルの測定から、酸化的海底堆積物においては、ウラン濃度は間隙水中に溶存する腐食物質、その中でも特にフルボ酸の含有量と良い相関があることがわかった。従って、ウランは溶存腐植物質と錯体を形成している可能性が高い。この事は、又、海水から海底下へのウランの有効な除去機構を明らかにするものあり、如何なる廃棄物処分方式においても核種の最終シンク場所として海底土が期待されていることを裏付けるものである。
新井 英彦; 新井 陸正; 作本 彰久
Water Res., 20(7), p.885 - 891, 1986/00
被引用回数:31 パーセンタイル:82.01(Engineering, Environmental)現在、塩素殺菌処理により水道水中に生成する発ガン性のトリハロメタンの低減化が世界的な課題となっている。その対策の一つとして、腐植土から調製したフミン酸水溶液をモデル上水原水として用いて、放射線とオゾンの併用法によるトリハロメタンの生成抑制の検討を行った。その結果、この併用法により水中のフミン酸が迅速にかつ効率よく除去されること、また、その結果、塩素処理に際してトリハロメタンのみならず全有機ハロゲンの生成が極めて顕著に抑制されることを明らかにした。また、有害なパーオキサイド類の生成はほとんど認められなかった。この併用法による効率のよい酸化分解の説明として連鎖反応機構を考えた。
新井 英彦; 新井 陸正; 宮田 定次郎; 作本 彰久
JAERI-M 83-149, 50 Pages, 1983/09
現在、塩素殺菌処理により水道水中に生成する発ガン性の疑いのあるトリハロメタンの低減化が世界的な課題となっている。放射線とオゾンを併用してトリハロメタンの生成を抑制するための研究を始めるに先立って、トリハロメタン濃度(THM)および全有機ハロゲン(TOX)の測定方法、塩素処理方法、フミン質試料の調製法について検討を行った。その結果、塩素処理をバイアルびん中で行うことによってTHMとTOXの同時測定が可能になること、硝酸の添加によって有機ハロゲン化合物の加水分解を抑制できること、脱塩素剤としては易溶性の酸性亜硫酸ナトリウムが適していること、フミン質試料としては市販の試薬フミン酸は適当ではなく、腐植土から調製したものが適していること等を明らかにした。
紀室 辰伍*; 桐島 陽*; 秋山 大輔*; 佐藤 修彰*; 長尾 誠也*; 斎藤 拓巳*; 天野 由記; 宮川 和也
no journal, ,
高レベル放射性廃棄物から溶出した放射性核種が地下水中の天然有機物の一種である腐植物質と錯生成することで、放射性核種の移行が促進される可能性が指摘されており、腐植物質と金属イオンの錯生成を定量的に記述する試みがなされてきた。腐植物質は、組成不均質性を持つ高分子電解質であり、その性質は起源や履歴によって大きく異なる。しかしながら、実際の深部地下水中に溶存している腐植物質を用いた研究は限られている。本研究ではこれまでに、北海道幌延町の深度350m地下水中に溶存している腐植物質を抽出し、熱量滴定法により、幌延腐植物質のプロトン化反応における反応機構を調べてきている。本発表では、サイズ分画クロマトグラフィ(SEC法)およびフロー・フィールド・フロー・フラクショネーション法(Fl-FFF法)により、腐植物質の分子量および流体力学径を新たに取得し、単純有機物やIHSSの標準腐植物質のそれらの結果と比較した。その結果、幌延の腐植物質は、IHSSの標準腐植物質より小さな分子量、流体力学径、プロトン化エンタルピーを持つことが明らかになった。このことから、幌延の腐植物質は、表層の腐植物質に見られるような複雑な組成不均質性を持たない、より単純な構造を持ち、その反応メカニズムもより単純であることが分かった。
紀室 辰伍; 寺島 元基; 舘 幸男; 北辻 章浩; 宮川 和也; 秋山 大輔*; 佐藤 修彰*; 桐島 陽*
no journal, ,
深部地下環境中に存在する天然有機物の一種であるフミン酸は、錯生成能が高く放射性核種などの金属イオンの環境中での移行挙動に影響を与えると考えられている。しかし、その錯生成反応機構については知見が不十分であり、特に反応の熱力学を議論するために不可欠な反応エンタルピーやエントロピーは、平衡定数から推定されるに留まっていた。本研究では、北海道幌延町の深度350m地下水に溶存しているフミン酸を抽出し、プロトン化反応と銅(II)イオン、ウラニル(VI)イオンとの錯生成反応における反応熱力学量を、熱量滴定法を用いて直接決定した。得られた結果を典型的なフミン酸や構造既知の有機酸と比較し、幌延深部地下水中のフミン酸の特徴的な反応機構を明らかにした。さらに、得られた反応熱力学量を用いて熱力学平衡計算を行い、放射性核種の移行挙動に及ぼすフミン酸の影響を評価した。