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佐藤 雄飛*; 谷 享*; 池之上 翼; 川村 英之; 大森 裕子*
Environmental Science and Pollution Research, 33(13), p.5818 - 5826, 2026/04
東京電力ホールディングスは、2023年8月から、福島第一原子力発電所(FDNPS)から多核種除去設備(ALPS)を用いて放射性物質が効果的に除去された処理水の海洋放出を開始した。ALPS処理水に含まれる放射能のほぼ全てを占めるトリチウムの環境動態は、科学的にも社会的にも極めて重要な懸念事項である。福島近海で採取された水産物の安全を確保し、根拠のない風評被害を防止するため、ALPS処理水の放出条件下における海洋生物へのトリチウムの蓄積可能性について検討した。まず、海洋放出が海水中のトリチウムのレベルに及ぼす影響について議論するために、福島近海におけるALPS処理水由来のトリチウムの海水中の分布に関する実測結果と数値モデルによる推定結果から得られた知見をまとめた。その結果、影響は極めて限定的であり、福島第一原子力発電所から200km以内の海域を除き、自然レベルと区別がつかない程度であることが示唆された。次に、これまでの実験および数値解析による研究から得られた知見を用いて、植物プランクトン、海藻、魚類などの海洋生物への有機結合型トリチウム(OBT)の蓄積可能性について評価した。その結果、これら生物におけるOBT蓄積量は、FAO/WHOが定める食物連鎖ガイドライン値と比較してはるかに小さいことが明らかとなった。最後に、福島沖で水揚げされる水産物の摂取に伴う内部被ばくリスクについて検討し、特に食物連鎖ガイドライン値と比較して極めて低いレベルであることを定量的に説明した。ただし、ALPS処理水の海洋放出に関しては、継続的な環境モニタリングが不可欠であると考える。