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古川 和男; 大野 英雄; 高木 喜樹*
日本化学会誌, (6), p.942 - 946, 1982/00
溶融塩のエネルギー工学への利用をはかる場合、その密度は最も基本的な物性値の一つである。液体の密度はその構造と密接な関連があり、今まで液体構造に関する情報が不足しており密度推定等は困難であった。しかし最近のX線あるいは中性子線回析実験等による溶融塩構造化学に関する研究の進歩により密度推定が可能となった。本論文では、融点Tmにおける分子容Vmを各構成イオンの最密充填させたと仮定して求めた理論的イオンモル体積Vi,電子分極率i,ならびに電荷Ziおよびイオン半径riの比Zi/riを用い解析した。錯イオンを形成しない単純イオンからなる溶融塩は
10%以内の巾で最適化曲線の上によく集まり、密度推定に利用できると思われる。しかし、錯イオンを形成する場合は複雑で、錯イオンの実効体積ならびに有効な電子分極率の評価にはさらに検討を要する。
大野 英雄; 古川 和男
日本化学会誌, (6), p.934 - 941, 1982/00
本論文は回析実験から求められた溶融アルカリハライドの構造(我々が最近X線回析法で行なった未発表の研究を含む)に関し、計算機実験結果との比較ならびに安定同位元素を利用した中性子線回析法の問題点等をのべたものである。動径分布函数における第一ピーク位置は、X線あるいは中性子線回析結果と計算機実験結果では僅かではあるが明きらかな差(0.1~0.3が存在する。これは、イオンがお互いに近づきあった付近で、electron-shellに非対称的な変形(液体の本質を示す)がおこっているためと考えられ、球対称を維持したまま中心の偏極(分極)しうるelectron-shellを仮想するだけでは十分でないことを示している。安定同位元素を利用した中性子線回析法はX線回析法では得にくい、部分相関函数を直接求めることができるが、現在得られている結果には誤差が多く含まれているものもあり、精度をあげた再測定が必要と考えられる。
古川 和男; 大野 英雄
Proc.3rd Int.Symp.on Molten Salts, 81(9), p.36 - 51, 1981/00
溶融アルカリハライドの動径分布函数における第一ピーク位置(最近接異種イオン間距離に相当)は、X線あるいは中性子線実験結果と計算機実験結果では、わずかではあるが明らかな差が存在する。この差(0.1~0.3は実験誤差ではなく液体の本質を反映しているものであろう。すなわち、液体中では各イオンに作用する電場が結晶とは異なり、各イオンのまわりの非対称電場によって、イオン分極変形がおきているためと考えられる。これを我々は可変型イオン模型と名づけた。これは、ペアポテンシャルを用いた計算機実験は理論的に不完全なものであることを明らかにしたものである。
古川 和男; 大野 英雄
物性研究, 19(5), p.B35 - B45, 1973/05
液体の本性は、その流動性にあるといってよいが、その原因がどのような構造論的条件によって現れるかを、具体的な無機物質について考察を始め、その物性の特長をも明らかにして行こうとするのが、副題の無機液体構造化学の目的とする所である。現在までに明らかにすることができた所を単原子液体すなわち、稀ガス元素液体および純金属液体につき、まず論じ、液体合金およびイオン性液体、特にアルカリハライド液体構造研究における基本的な立場を明らかにして、今後の詳細かつ定量的な理論樹立の前提条件を明らかにした。