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論文

Long-term simulation of $$^{137}$$Cs behavior in the ocean around Fukushima considering multiphase interaction processes

池之上 翼; 中西 貴宏; 川村 英之

Marine Pollution Bulletin, 232, p.120110_1 - 120110_9, 2026/11

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Environmental Sciences)

福島第一原子力発電所の事故は、$$^{137}$$Csを含む放射性核種の大規模な海洋環境への移行を引き起こした。海洋中の$$^{137}$$Csは4つの相(溶存相、懸濁相、海底堆積相、生物相)で存在し、これらの相間の相互作用がその長期挙動に大きな影響を与える。そこで本研究では、多相の挙動を考慮した海洋拡散モデルを開発し、事故後10年間の$$^{137}$$Csの長期挙動に対する相間相互作用の影響を評価した。モデルは、海況場、プランクトン、懸濁粒子、$$^{137}$$Csの挙動を十分に再現した。解析結果は既往研究と整合しており、事故後3ヶ月までは溶存相が、それ以降は海底堆積相がそれぞれ海洋における$$^{137}$$Csの挙動において中心的な役割を果たした。事故後10年以内に、沖合海域(水深が25mより深い海域)における全相中の濃度は事故前の水準に戻ったが、沿岸海域(水深が25mより浅い海域)では、海底堆積相が他の相への長期的な$$^{137}$$Csの供給源となったため、依然として高濃度を維持していた。これは、海底堆積物中に高濃度の$$^{137}$$Csが保持されていることに起因すると考えられる。この保持は、微細粒子の割合が高いこと(湾内地域)、河川からの流入(福島県北部)、事故初期における海底堆積物表層への高蓄積と激しい鉛直混合(福島県南部)によって引き起こされた。

論文

Applications of plastic scintillator fibers for the decommissioning of nuclear facilities

森下 祐樹; 阿部 智久; 佐々木 美雪; 山田 勉*; 中曽根 孝政*; 眞田 幸尚

Radiation Measurements, 198, p.107772_1 - 107772_11, 2026/11

 被引用回数:0

原子力施設の廃止措置においては、ベータ線による表面汚染を正確かつ迅速に測定することが不可欠である。しかし、従来のガイガー・ミュラー(GM)式サーベイメーターは検出範囲が限られており、配管内部の汚染を測定できないため、多大な労力と測定効率の低下を招いている。本研究では、広範囲の表面モニタリング、配管内部の汚染測定、および排水路のモニタリングを目的とした、プラスチックシンチレーションファイバー(PSF)を用いた検出器を数種類開発した。PSFは全長にわたって放射線を検出できるため、広範囲の走査や狭い空間への挿入が可能となる。表面測定については、ジグザグ状に配置した10mのPSFを台車の下に搭載し、福島におけるアスファルト床面のベータ線汚染の効率的なマッピングを実現した(5m$$times$$5エリアでの実証)。配管用途向けには、薄型で柔軟なPSFプローブが開発され、内径8mmの配管への直接挿入が可能となり、1分以内に規制基準値である4Bq/cm$$^{2}$$;を下回る検出限界を達成した。さらに、排水路の放射能汚染を監視するための防水型PSFシステムが開発され、降雨による放射能の増加を含む時間的な変動の検出に成功した。開発したPSFシステムは、原子力施設の廃止措置環境における汚染モニタリングにおいて、従来のサーベイメーターに代わる実用的かつ汎用性が高く、高効率な代替手段を提供する。

論文

Critical power of boiling water flows in 3$$times$$3 rod bundle simulating BWR subchannels at elevated pressure conditions

和田 裕貴; 柴本 泰照; 日引 俊詞*

International Communications in Heat and Mass Transfer, 179(Part.3), p.112282_1 - 112282_22, 2026/10

 被引用回数:0

An experiment was conducted to measure critical power (CP) for steam-water flows in a short-length 3$$times$$3 rod bundle simulating boiling water reactor (BWR) subchannels at elevated pressure conditions. Two inlet conditions were considered: water single-phase flow and steam-water two-phase flow. The test conditions covered pressures from 2 to 7 MPa, mass fluxes from 250 to 1500 kg/m$$^{2}$$s, and inlet thermal equilibrium qualities (inlet quality) from 0.0 to 0.6. The measured CP data were compared with existing correlations: the CISE-GE, Biasi, and two types of Bowring correlations for single-phase and two-phase inlet conditions. For single-phase inlet conditions, these correlations somewhat overpredicted the CP data at lower pressure conditions. For two-phase inlet conditions, the Bowring correlation significantly underpredicted the CP data at higher inlet quality or higher mass flux conditions. The Bowring correlation for two-phase inlet conditions was modified using a correction factor formulated by the inlet vapor Reynolds number. The modified Bowring correlation predicted the CP with a mean absolute percentage error of 10.3%. The rod location of the first dryout was also investigated. The first dryout occurred on the center rod at higher mass flux conditions ($$>$$500 kg/m$$^{2}$$s) and on the peripheral rod at lower mass flux conditions ($$leqq$$500 kg/m$$^{2}$$s). This dependence on mass flux was influenced by steam-water distributions resulting from entrainment, deposition, and crossflow effects across subchannels. The experimental observations provide useful insights for developing mechanistic models to correlate CP or critical quality with local parameters at the CP location, independent of inlet flow conditions.

論文

Interactions between U-Zr-O and concrete near the melting range of concrete

須藤 彩子; 佐藤 拓未; 永江 勇二

Journal of Nuclear Materials, 632, p.156936_1 - 156936_16, 2026/10

 被引用回数:0

現在の溶融コリウムコンクリート反応コードは溶融プール初期温度が2000$$^{circ}$$C付近で行われた炉心材料とコンクリートの大型反応試験に基づいて設計されている。U-Zr-Oのような亜酸化物はコンクリート溶融付近の低温でコンクリートと反応する可能性がある。コンクリート溶融付近での溶融コリウムコンクリート反応の調査はシビアアクシデント解析の高度化のため必要不可欠である。コンクリートとU-Zr-Oの小規模反応試験(Ar雰囲気下、1200$$^{circ}$$Cおよび1300$$^{circ}$$Cで2時間保持)を行った結果、Si-Zr-U-O層が反応界面で観測された。1500$$^{circ}$$Cで2時間保持した結果、(i) Si-Zr-U-O層、(ii) (U,Zr)O$$_{2}$$およびコンクリート、(iii) Si-Zr金属の3層が観測された。熱力学解析によると、Caは(U,Zr)O$$_{2}$$に固溶し、一方でSi-Zr-U-O層にUは入らないことが示された。この違いは計算が炉心材料とコンクリートが完全に混ざり合ったことを前提としているため起こる。本研究から、1200$$^{circ}$$C-1500$$^{circ}$$Cの温度領域ではU-Zr-Oとコンクリート間の反応層は温度上昇によって厚くなり、また、組成は熱力学解析だけでは完全に予測できないことが示された。

報告書

大熊分析・研究センター 放射性物質分析・研究施設第1棟における1F廃棄物分析(2024年度活動報告)

大熊分析・研究センター

JAEA-Technology 2026-007, 82 Pages, 2026/09

JAEA-Technology-2026-007.pdf:8.05MB

2024年度に大熊分析・研究センター放射性物質分析・研究施設第1棟(第1棟)で実施した東京電力福島第一原子力発電所(1F)の廃棄物に対する分析の内容及び結果について報告する。2024年度は、瓦礫コンクリート、土壌、焼却灰、水処理二次廃棄物(炭酸塩スラリー及び鉄共沈スラリー)、瓦礫金属及び解体瓦礫を対象試料とし、放射性核種を分析した。核種分析方法は、国の補助事業を通して1F廃棄物分析のために新たに開発した手法を適用し、測定対象を、東京電力ホールディングス株式会社の分析計画における必須核種であるCo-60,Cs-137,Sr-90,Ni-63,Pu-238,Am-241,Cl-36,Tc-99,I-129,C-14の10核種とした。また、2024年度は第1棟の本格操業初年度となることから、その分析については、廃棄物の処理・処分の安全性の見通しを得る上での性状把握を目的とした分析値の取得という本質的な目的に加え、コンクリート、土壌、水処理二次廃棄物等様々な試料への分析手法の適用性を確認することも目的とした。このため、本報告では分析結果を得るのみならず、試料マトリクスの違いが分析に与える影響を評価すること、様々な試料への当該分析手法の適用性を評価することにも着目した。大熊分析・研究センターでは、これまでに1F廃棄物のための簡易・迅速な新しい分析手法を開発するとともに、その分析手法の1F廃棄物試料への適用性を確認することを目的として、最も主要なマトリクスであるコンクリート試料を用いた分析手法の妥当性確認を実施してきた。2024年度は、当該分析手法をコンクリートも含めた様々な試料へ適用し、各試料に対する分析手法の妥当性を確認することでその適用性を評価した。妥当性評価については、共存する放射性核種等の測定干渉の影響を受けることなく対象の測定ができ、目標とする検出下限値であるトレンチ処分の基準線量相当濃度が達成できることを確認した。その結果、すべての試料の種類において妥当性基準を満足し、コンクリート以外のマトリクスへの本分析手法の適用性を確認することができた。また、本件では、試料の違いが分析に与える影響を化学分離操作の回収率及びその標準偏差により評価した。その結果、ほとんどの試料の種類及び測定核種において、分析手法開発時に対象としたマトリクスであるコンクリート試料と同等の回収率及びその標準偏差が得られた一方で、土壌及び焼却灰のCl-36については、回収率の低下が確認された。これによる検出下限値等手法の妥当性への影響は測定時間を長くすることで対応できる程度であるが、今後より低い検出下限値への要求に十分対応できない可能性があり、分析手法の改善の必要性が課題として確認された。

報告書

PCV気相漏洩位置及び漏洩量推定のための遠隔光計測技術の研究開発(委託研究); 令和6年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業

廃炉環境国際共同研究センター; 千葉大学*

JAEA-Review 2026-024, 60 Pages, 2026/09

日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和元年度から英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、さまざまな分野の知見や経験を従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和5年度に採択された研究課題のうち、「PCV気相漏洩位置及び漏洩量推定のための遠隔光計測技術の研究開発」の令和6年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究では、ミー散乱ライダー・ラマン散乱ライダーによる漏洩箇所検出の研究を千葉大学にて実施した。PCVから建屋内に気体の漏洩があれば、ミー散乱のデータから大気と構造物表面からの後方散乱を時間分解することにより、その気流のエアロゾルの動き・濃度変化を信号強度の時空間変動として検出できる。一方、ラマン散乱の信号強度の時空間変動からは気流の空気密度や水蒸気量の変化を検出できる。このため、ミー散乱、ラマン散乱のいずれについても、実験室での模擬的なテストを実施してエアロゾルと気体種の濃度と流量分布を導出し、気体の漏れ方や流量とライダーによる検出感度の関係を系統的に調べた。また、フラッシュライダーとシアログラフィーによる漏洩箇所の可視化の研究をレーザー技術総合研究所にて実施した。ハイパースペクトル型フラッシュライダーの開発に関しては、令和5年度の干渉フィルターで単一波長を取り出す方式からグレーティングで波長分散を与えて数種類のガス等を同時に記録できる方式に変更し、フラッシュライダーの性能を検討した。また、シアログラフィー光学系の開発に関しては、令和5年度に開発したマイケルソン干渉計型のシアログラフィーシステムの光源を高出力パルスレーザーとし、CMOSカメラをICCDカメラに変更し、測距性能を有するシアログラフィー技術を検討した。

報告書

動画像からの特徴量抽出結果に基づいた高速3次元炉内環境モデリング(委託研究): 令和6年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業

廃炉環境国際共同研究センター; 札幌大学*

JAEA-Review 2026-020, 81 Pages, 2026/09

日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和元年度から英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(1F)の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、さまざまな分野の知見や経験を従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究および人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和5年度に採択された研究課題のうち、「動画像からの特徴量抽出結果に基づいた高速3次元炉内環境モデリング」の令和6年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、1Fの廃炉に向けて、原子炉格納容器および原子炉建屋内を調査する際に撮影した動画像を入力し、指定された時間、動画像から抽出された特徴量に応じて周辺情報を補強したうえで、情報量が大きい立体復元手法を選択し、作業空間を3次元モデリングする研究開発を行う。令和6年度は、シミュレーションから得られる1映像を入力として、指定された制限時間以内でより精度の高い写真測量に基づいた立体復元結果が得られる方法論を研究開発した。また、構造物のグループ化に基づく3次元モデリングアルゴリズムの開発を実施し、3次元モデリングの高速化を目的とした立体復元計算の時短化アルゴリズムの開発もあわせて行った。さらに、生成モデルを用いて動画像データに対する生成精度を定量的に評価し、時短に結びつけるためのハードウェアの構築とソフトウェアの開発を進めた。

報告書

ペデスタル部鉄筋コンクリート損傷挙動の把握に向けた構成材料の物理・化学的変質に関する研究(委託研究); 令和6年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業

廃炉環境国際共同研究センター; 東海国立大学機構*

JAEA-Review 2026-018, 141 Pages, 2026/09

日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和元年度から英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(1F)の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、さまざまな分野の知見や経験を従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究および人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和5年度に採択された研究課題のうち、「ペデスタル部鉄筋コンクリート損傷挙動の把握に向けた構成材料の物理・化学的変質に関する研究」の令和6年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、1F1号機原子炉格納容器(PCV)の内部調査で観測されたペデスタル鉄筋コンクリート部材において、鉄筋を残したままコンクリートだけ崩落するという1号機固有の損傷状態に着目し、発生メカニズムを調査・検証を実施した。コンクリート固有の要因では、(1)高温による短期の溶解メカニズムの調査として、セメントペーストと骨材、その混合物の高温加熱実験による加熱挙動の取得、高温作用下での相組成変化や溶融挙動の熱力学的相平衡計算による整理、高温曝露後の吸水挙動を再現する数値モデル開発を実施した。(2)温度履歴による長期の溶解メカニズムの調査では、ペデスタル部の温度・注水履歴を模擬した曝露実験から、高温加熱後の経時膨張量の測定と水分供給による膨張挙動を評価した。次に、特殊な外部環境要因の調査・検証では、(1)燃料デブリの伝熱解析によるコンクリート熱条件の評価として、事故シナリオ等を参照して1号機PCVにおけるデブリ堆積時の境界条件等の解析パラメータを整備、伝熱解析によりコンクリートの熱分布を評価した。また、(2)要素挙動試験と総合試験として、水蒸気や温度がコンクリート材の変質挙動に及ぼす影響について、コンクリート材の水蒸気雰囲気での高温保持小規模試験を実施し、水蒸気の有無におけるコンクリート崩落挙動を評価した。また、ウラン酸化物を含む亜酸化模擬燃料デブリとコンクリートの高温反応試験を実施し、燃料デブリとの反応によるコンクリート破損挙動を評価した。本研究により、1F1号機固有のコンクリート損傷発生メカニズムに関する総合的知見を得た。

報告書

遮蔽不要な耐放射線性ダイヤモンド中性子計測システムのプロトタイプ開発(委託研究); 令和6年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業

廃炉環境国際共同研究センター; 北海道大学*

JAEA-Review 2026-017, 78 Pages, 2026/09

JAEA-Review-2026-017.pdf:5.67MB

日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和元年度から英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(1F)の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、さまざまな分野の知見や経験を従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究および人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和5年度に採択された研究課題のうち「遮蔽不要な耐放射線性ダイヤモンド中性子計測システムのプロトタイプ開発」の令和6年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、1F廃炉事業で強いニーズのある遮蔽不要な中性子計測システムのプロトタイプを開発する。本システムは、ダイヤモンド中性子検出素子と耐放射線性シリコン集積回路から構成され、将来的な用途としてデブリ調査用中性子検出器、臨界近接監視モニタ、圧力容器内ドライチューブ調査用中性子検出器等への適用が想定される。本開発では、5mm角相当のダイヤモンド検出素子100枚規模からなるプロトタイプを開発し、システム構築技術の獲得とシステム性能を評価する。あわせて未臨界度評価手法の開発を進める。令和6年度は、北海道大学では自立膜型ダイヤモンド検出素子の量産技術の確立が進んだ。産業技術総合研究所(AIST)ではCVD法による検出器用積層膜の成膜条件の探索が進んだ。高エネルギー加速器研究機構(KEK)では改良したASICの動作確認ができ、配線用印刷装置を使用して検出素子を信号処理回路基板に実装し、中性子の計測試験を行った。名古屋大学を中心に進めている臨界近接監視手法の開発は基本的検討が進み、近畿大学原子炉(UTR-KINKI)でのダイヤモンド中性子計測システムの評価試験を計画している。九州大学、原子力機構に関しても$$gamma$$線照射場、熱中性子等方場でのダイヤモンド中性子計測システムの評価が予定通り進んだ。

論文

Chemisorption behavior of CsOH vapor on UO$$_{2}$$ under high temperatures and various water vapor concentrations

Mohamad, A. B.; 中島 邦久; 井元 純平*; 高野 公秀

Journal of Nuclear Materials, 631, p.156826_1 - 156826_12, 2026/09

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Materials Science, Multidisciplinary)

It is estimated that considerable amounts of Cs remain in the reactors at the Fukushima Daiichi nuclear power plant and may react with the reactor materials such as UO$$_{2}$$ fuel as reported by our previous paper. In order to understand the chemisorption behavior of CsOH vapor on UO$$_{2}$$ fuel, chemisorption tests between CsOH vapor on UO$$_{2}$$ under different water vapor concentrations and temperatures were performed. As predicted by the thermodynamic analysis, the experimental result indicated that, under the poor water vapor condition, chemisorption to form Cs$$_{2}$$UO$$_{4}$$ occurred even at 1273 K. On the other hand, as predicted by the thermodynamic analysis, the experimental result indicated that, under the rich water vapor condition, chemisorption to form Cs$$_{2}$$U$$_{4}$$O$$_{12}$$ occurred at 1273 K and 1473 K. Therefore, this study demonstrates the crucial role of thermodynamics in predicting the conditions under which chemisorption occurs. In addition, it was suggested that the chemisorption rate of CsOH vapor on UO$$_{2}$$ pellet was considerably higher than that onto type 304 stainless steel.

論文

Clarification of key input parameters for site boundary dose due to criticality of fuel debris at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant

福田 航大; 柴 茂樹*; 岩橋 大希*; 郡司 智

Journal of Nuclear Science and Technology, 63(9), p.1001 - 1014, 2026/09

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Nuclear Science & Technology)

To proceed with the fuel debris removal at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station (1F-NPS), it is important to evaluate the potential impact of unexpected criticality events. The purpose of this study is to clarify parameters that can have a significant impact on the site boundary dose due to the criticality of the fuel debris at 1F-NPS. Criticality, kinetics, and dose calculations were performed using a set of analysis conditions for 1F-NPS. The results showed that the impacts of specific input parameters on the site boundary dose were much larger than others. Even when these high-impact parameters were assumed to be very large or small, the site boundary dose did not exceed about 0.1 mSv under conditions considered in this study. The findings contribute to confirming the effectiveness of criticality countermeasures and to supporting the planning of efficient debris removal. To further improve the generality of the conclusions, additional analyses that consider 1F-NPS-specific criticality scenarios, such as continuous inflow of water around the fuel debris, would be necessary.

論文

Experimental analysis of non-condensable gas and steam distribution due to condensation in the CIGMA facility simulating the reactor building

Hamdani, A.; 相馬 秀; 安部 諭; 柴本 泰照

Nuclear Engineering and Technology, 58(9), p.104219_1 - 104219_9, 2026/09

 被引用回数:0

This study experimentally investigates non-condensable gas transport induced by steam condensation using the CIGMA facility, simulating reactor building conditions of Fukushima Daiichi Unit 3 during a severe accident. Steam and helium, used as a hydrogen surrogate, were continuously injected into the CIGMA's vessel equipped with partition plates representing the hierarchical structure of the reactor building. Parametric experiments were conducted by varying flow path ratio, steam-to-helium mass ratio, and cooling conditions. The results show that steam condensation is the dominant mechanism controlling non-condensable gas accumulation by increasing the relative concentration of helium. The highest helium concentrations generally occur below the injection point rather than at the injection elevation, indicating downward transport followed by condensation-driven accumulation. Shapiro ternary diagram analysis indicates that condensation-driven changes in gas composition lead to prolonged residence within flammability and detonation regions. These findings highlight the critical role of condensation in hydrogen distribution and provide experimental insight relevant to hydrogen risk assessment and mitigation in reactor buildings during severe accidents.

報告書

大熊分析・研究センター 放射性物質分析・研究施設第1棟 建設工事報告書

真道 隆治; 市村 隆人; 野澤 芳彦; 小森 剛史; 良知 玲生奈; 北原 勝美*; 中村 智樹*; 小池 彰弘*

JAEA-Technology 2026-005, 379 Pages, 2026/08

JAEA-Technology-2026-005.pdf:45.42MB

放射性物質分析・研究施設第1棟は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の廃炉作業で発生する放射線量が低・中線量の瓦礫類、伐採木、焼却灰、汚染水処理に伴う二次廃棄物等の性状を把握することにより、処理・処分方策とその安全性に関する技術的な見通し等を得るための分析、試験を行う。また、ALPS処理水の海洋放出に関し、東京電力HDから独立した第三者の立場で放出前のALPS処理水分析を行うことを目的に、1F特定原子力施設の一部として2017年(平成29年)1月から2022年(令和4年)6月にかけて日本原子力研究開発機構が整備を行った施設である。第1棟の建設工事は、建築工事、電気設備工事、機械設備工事により建屋の建設を行う「建屋工事」と、鉄セル、グローブボックス、フード等の分析設備の整備を行う「内装設備工事」に区分される。本報告書は、大熊建設室が担当した「建屋工事」に関する工事記録等をまとめたものである。建屋工事の各工種における品質管理、施工状況等の他、コンポジット調整、安全・施工品質管理に関する実施体制・手法、許認可(実施計画変更、建築確認申請、林地開発許可等)等、原子力施設の建設に係る施工管理について技術的観点からの経験・知見を網羅的に取りまとめた。また、1F敷地内・帰還困難区域における建設といった特殊環境下での建設における放射線管理等の特異な管理内容等についてもまとめた。今後、第1棟のような原子力施設整備において、本報告が施設整備の参考として、課題の抽出や合理的な施設計画に寄与することを期待する。

報告書

デブリ取り出しの安全性確保を目的とした中性子源等のイメージング手法の研究(委託研究); 令和6年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業

廃炉環境国際共同研究センター; 京都大学*

JAEA-Review 2026-014, 61 Pages, 2026/08

JAEA-Review-2026-014.pdf:5.86MB

日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和元年度から英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、さまざまな分野の知見や経験を従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究および人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和6年度に採択された研究課題のうち、「デブリ取り出しの安全性確保を目的とした中性子源等のイメージング手法の研究」の令和6年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、廃炉を安全かつ迅速に行うため、燃料デブリ取り出し作業時に期せずして発生した中性子源の方向特定を目的に、小型軽量な全方位型中性子イメージャーを開発する。想定する使用環境は、作業員が立ち入る原子炉建屋内と原子炉格納容器周囲の超高線量環境下の二つである。前者は、これまでに開発した$$beta$$線・$$gamma$$線に対する全方位型検出器を中性子に応用し、中性子が飛来する方角を指示することで作業員の避難指示等に活用できる。令和6年度では、検出器を校正する検出素子の中性子/$$gamma$$線弁別性能、方向依存性などの諸特性をモンテカルロ計算および実験的に評価した。また、全方位型中性子検出器により得られた情報を360度カメラと組み合わせ、中性子の飛来方向を視覚的に取得できるようなシステムを構築した。後者は、超高線量環境下において、バックグラウンドとなる$$gamma$$線との極めて優れた弁別性能を有する検出器が必要となるため、減衰時間が非常に短い検出素子を選定した。前者の全方位中性子検出器の構造を参考に、中性子の飛来方向を特定可能な検出器構造を構築する。これら開発する検出器の特性評価を行うために研究用原子炉を使用するが、あらかじめ照射場の特性評価試験を実施した。

論文

Development of a 3D-printed two-stage virtual impactor for radioactive aerosol size classification and direct analysis

Laffolley, H.; 坪田 陽一; 黒江 彩萌; 加藤 友彰

ACS Omega (Internet), 11(30), p.45423 - 45438, 2026/08

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Chemistry, Multidisciplinary)

放射性エアロゾルの粒径分級は、被ばく評価や廃炉作業において極めて重要である。本研究では、エアロゾルを3つの空気動力学径クラス(10$$mu$$m超、1$$sim$$10$$mu$$m、1$$mu$$m未満)に分離し、内蔵フィルター上での直接分析を可能にする3Dプリント製2段式バーチャルインパクター「$$mu$$SPLIT」の開発を報告する。本装置は低コストで製造でき、使用後は焼却廃棄が可能なため、洗浄時の被ばくリスクや金属廃棄物の発生を回避できる。流路は数値流体力学により最適化し、光造形法で作製した。シミュレーションではカットオフ径を9.0$$mu$$mおよび1.3$$mu$$mと予測し、シャープな分離が示されたが、フロー間のわずかな粒子混入の課題も確認された。プロトタイプの寸法測定では流路の収縮や角の丸みがみられ、製造時の補正の必要性が示された。線香の煙を用いた実験では、サブミクロン粒子が主に1$$mu$$m未満のクラスに捕集された。また、平均径1.70$$mu$$mのRn娘核種含有NaCl粒子を用いた試験では、中間フィルター(1$$sim$$10$$mu$$mクラス)で最大の$$alpha$$放射能が検出され、予想通りの分級結果が得られた。本成果は、粒径分級と放射性粒子の直接分析を同時に実現する、軽量かつ低コストなインパクターの概念を実証するものである。

論文

放射線監視用連続モニタの特性が原子力緊急時における測定値へ与える影響

佐藤 俊; 外間 智規*; 三上 智; 高橋 史明

日本原子力学会和文論文誌(インターネット), 25(3), p.93 - 105, 2026/08

放射線監視用連続モニタ(連続モニタ)の測定値は、原子力緊急時における空間線量率分布の把握や防護措置の判断に活用されるが、測定地上高、測定装置の種別、測定値の単位といった特性は様々である。本研究では、日本全国に設置された1,692か所の連続モニタを対象に、特性に関する調査を実施した。さらに、これらの特性が測定値に及ぼす影響について、軽水炉事故を想定した放射性核種の分布条件下で数値シミュレーションにより定量的に評価した。加えて、福島第一原子力発電所事故時の実測データとの比較により、解析モデルの妥当性を検証した。その結果、原子力緊急時の防護措置判断の基準である1m高さの周辺線量当量率を指標とした場合、連続モニタの採用している単位や地上高の違いによる測定値の変動は概ね0.7$$sim$$1.1倍の範囲内に収まることを明らかにした。本成果は、原子力緊急時における連続モニタの測定値の活用および今後の緊急時モニタリングに対して、有用な知見を提供するものである。

論文

廃炉・環境回復課題における研究基盤の役割;高い不確実性を前提としたCLADS基礎・基盤研究とその戦略

眞田 幸尚; 須山 賢也; 飯島 和毅

日本原子力学会誌ATOMO$$Sigma$$, 68(8), p.529 - 533, 2026/08

福島第一原子力発電所(1F)の廃炉および環境回復は、作業対象や作業環境に関する情報取得が高線量等により制約される中で進められる、極めて不確実性の高い長期的事業である。このため、廃炉の各段階において求められるのは、不確実性を完全に解消することではなく、不確実性が残る状況を前提として、将来の工程選択肢を狭めないための技術基盤をあらかじめ整備しておくことである。CLADSでは、燃料デブリや放射性廃棄物の性状把握、分析・処理・保管・処分に関する基礎・基盤研究を通じて、多様な技術オプションを幅広く準備・維持することを研究戦略の中核としてきた。本稿では、廃炉全体工程に内在する判断点を俯瞰的に整理した上で、CLADS研究のうち、現状把握や戦略検討に直接関与する研究を判断・意思決定との関係から位置づけるとともに、その他の工程において将来の選択肢を確保するための研究の役割を整理する。これにより、CLADSの基礎・基盤研究を、高い不確実性を前提とした研究基盤として捉え直し、1F廃炉・1F周辺の環境回復における研究の意義と今後の展望を示す。

論文

原子力防災における大気拡散解析の活用に向けて

永井 晴康

日本原子力学会誌ATOMO$$Sigma$$, 68(8), P. 501, 2026/08

原子力事故時の放射性物質の放出に対する防災対策では、目に見えない放射性物質の分布状況を把握することが不可欠であり、大気拡散解析による可視化が有効である。しかし、東京電力福島第一原子力発電所(1F)事後において、大気拡散予測システムSPEEDIが活用されず、原子力規制委員会は、緊急時における避難や一時移転等の防護措置の判断にあたって、大気拡散解析は使用しない方針とした。その後、大気拡散解析を避難判断に使うことの是非だけが議論され、大気拡散解析の活用方法の検討や研究開発が停滞している。1F事故から15年たち、大気拡散解析に関する技術革新も進展していることから、社会状況の変化や防災対策の課題も踏まえ、改めて大気拡散解析の活用について検討すべきである。

論文

BWR RPV lower head penetration failure caused by eutectic reactions with Zr-rich simulated metal; ELSA-3 test

下村 健太; 山下 拓哉

Proceedings of the 12th European Review Meeting on Severe Accidents Research (ERMSAR2026) (Internet), 11 Pages, 2026/08

Internal investigations at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant have been conducted by Tokyo Electric Power Company Holdings, however, the condition of the reactor pressure vessel (RPV) has not yet been confirmed. To clarify the RPV damage progression during the accident, a simulation test (ELSA-3) was conducted using the LEISAN test facility owned by JAEA, focusing on the interaction between a zirconium-containing liquid metal (Zr-rich materials) that discharged to the bottom of the RPV lower head and the lower head structural components, forming a liquid metal pool and potentially causing failure through eutectic reactions. The test results showed that at the lower head penetration region, the eutectic reaction between the simulated metal debris and the lower structural components (CRD housings and CRD stub tubes) caused melting of the structural components, allowing the simulated metal debris to flow into the CRD housings. This eutectic reaction temperature is below the melting point of the individual structural materials, indicating that failure can occur due to inter-material eutectic reactions even without reaching the melting point. These results suggest that for Zr-rich molten materials, damage may occur through eutectic reactions between materials even below their melting points.

論文

Real-time inversion of radioactive source distribution using air dose rate measurements via least absolute shrinkage and selection operator method

Shi, W.*; 町田 昌彦; 岡本 孝司*; Luo, X.*; Feng, W.*; Liu, X.*

Reliability Engineering & System Safety, 272, Part1, p.112538_1 - 112538_18, 2026/08

深刻な原子力事故時における緊急対応の信頼性は、放射性線源分布をリアルタイムで確実に監視できるかどうかに大きく依存する。しかし、この安全機能は、監視の死角を生じさせる物理的制約や動的な放出を追跡するには静的手法が不十分であるという問題によって大きく制約されている。本研究では、線源推定の信頼性およびロバスト性を向上させるため、時間正則化を導入したLASSO回帰に基づく動的再構成フレームワークを提案する。具体的には、スライディングウィンドウ型の時間ペナルティ機構を導入し、時間ステップ間の線源変化に対して$$L_2$$ノルム制約を課すことで、物理的連続性を確保する。また、放射線遮蔽や時間的に変動する強度によるバイアスを補正するため、寄与行列および測定ベクトルを正規化した。検証には、内部遮蔽を有する二室モデルを用い、PHITS(モンテカルロシミュレーション)を用いて実施した結果、遠隔測定データから動的線源を高精度に再構成できることが示された。時間正則化は、空間エイリアシングを抑制し、状況認識能力を向上させる。スライディングウィンドウ幅$$T = 1$$(正則化なし)の場合、ホットスポット位置は大きく変動し、平均絶対誤差の変動量は約$$5.4 times 10^{-3}$$であった。一方、$$T geq 2$$では空間的一貫性が改善され、誤差変動量は$$3.1 times 10^{-3}$$程度まで低減した。比較解析の結果、精度と計算コストのバランスの観点から$$T = 2$$が最適であることが示された。本研究は、困難な条件下においても線源位置および強度を高精度で追跡可能とする、動的ハザード評価のためのより信頼性の高い手法を提示するものである。提案手法は、原子力施設における緊急時管理のレジリエンスと安全性を向上させる意思決定支援ツールとしての活用が期待される。

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