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論文

Molecular dynamics of formation of TD lesioned DNA complexed with repair enzyme-onset the enzymetic repair process

Pinak, M.*

Journal of Molecular Structure; THEOCHEM, 499, p.57 - 70, 2000/03

DNA損傷のひとつであるチミンダイマー(TD)が修復酵素によって除去される過程は、酵素とDNAと複合体の形成に始まる。本研究では、酵素-DNA複合体形成のメカニズム解明のために、TDがあるDNAと、酵素の活性中心部位のみからなる系の500ピコ秒間の分子動力学シミュレーションを行った。TDは紫外線によって誘発されるDNA損傷、T4エンドヌクレアーゼVはTDに特異的な修復酵素である。これら2種類の分子を同一セル内に配置し、相対的な動きを計算した。特に、酵素-DNA複合体の形成における静電エネルギーの役割に重点を置いた。最初の100ピコ秒間に、酵素の一部は静電力とファンデルワールス力によってDNAの損傷部位に接近して結合し、500ピコ秒までの間安定な状態を維持した。計算の最初の段階で、酵素とTDの間の正の静電作用が働き、酵素はDNAに接近した。また、酵素とDNAの間に形成された水素結合が、複合体を安定に保つ役割を果たした。比較のために、損傷のないDNAについても同様の計算を行ったが、この場合には酵素とDNAの間には負の静電作用が働き、複合体は形成されなかった。

報告書

Computational study of hydration at the TD damaged site of DNA in complex with repair enzyme T4 Endonuclease V

Pinak, M.

JAERI-Research 99-077, p.31 - 0, 2000/02

JAERI-Research-99-077.pdf:4.42MB

チミンダイマー(TD)損傷部分を修復酵素T4 Endonuclease Vが適切に認識する過程で、DNA周辺の水分子の分布が果たす役割に関する解析を行った。損傷のない12塩基対DNA、TDを持つ12塩基対DNA、並びにDNAとT4 Endonuclease Vの一部との複合体を対象として、500psの間の分子動力学計算を実施した。DNA原子に隣接した水の数及び滞留時間を調べた。TD損傷がある場合、損傷のないDNAに比べ、TD付近の水分子の数の増加が観察された。TDの周囲の水分子が密集した領域は、修復酵素によるTD認識要因の一つになると考えられる。複合体付近では水の滞留時間が長いことがわかった。また、TDと活性中心との間の安定位置を6つの水分子が占めていることを発見した。修復過程の開始に必要な複合体の安定性維持に、これらの水分子が介在した水素結合ネットワークが貢献していると考えられる。

報告書

Molecular dynamics of formation of TD lesioned DNA complexed with repair enzyme; Onset of the enzymatic repair process

Pinak, M.

JAERI-Research 99-068, p.32 - 0, 1999/12

JAERI-Research-99-068.pdf:3.83MB

チミンダイマー(TD)損傷部分をDNAから除去する修復酵素の一部分(活性中心のArg-22,Glu-23,Arg-26,Thr-2を含む)に関する500psの間の分子動力学シミュレーションを行った。TDは紫外線によりDNAに生成される損傷で、T4 Endonuclease Vはこの損傷に特異の修復酵素である。TDとT4 Endonuclease Vの一部を同じシミュレーションセルの中に配置し、相対的な動きを調べた。最初の100psの間に酵素の一部がDNAのTD損傷部分に近づき、さらに静電力とファンデアワールス力を介して作用し複合体を形成し、500psの間安定な状態を持続した。最初の段階では正の静電作用エネルギーが酵素をDNAに向けて動かした。水分子を仲介とした水素結合が複合体を安定に保つのを助けた。

論文

Molecular dynamics of thymine dimer lesioned DNA and of T4 endonuclease V-role of electrostatic energy in recognition process

Pinak, M.*

Journal of Molecular Structure; THEOCHEM, 466, p.219 - 234, 1999/00

修復酵素によるDNA損傷の認識機構は、正確な修復のためには欠かせない。T4エンドヌクレアーゼVは、バクテリオファージT4由来のDNA修復酵素であり、チミンダイマー(TD)の修復過程の最初の段階を触媒する。TD部位を正確に認識する機構についての知見を得るために、損傷のないDNA、TDのあるDNA、T4エンドヌクレアーゼV、それぞれの分子について各々600ps間の分子動力学シミュレーション(MD)を行った。シミュレーション結果は、認識過程における静電作用の役割に着目して解析した。この結果、酵素のアミノ酸の静電エネルギーは、+15kcal/mol程度の正に荷電していることがわかった。TD部位の静電エネルギーは、-9kcal/mol程度の負に荷電しており、損傷のないDNAのチミン部位の中性の値とは異なった。TD部位の周囲の水との静電作用は、ほかのヌクレオチドの場合とは異なった。TDと損傷のないDNAのチミンとの違いは、静電エネルギーがTD部位を適切に認識するうえで重要な因子であることを示している。

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