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武井 早憲
Journal of Nuclear Science and Technology, 61(8), p.1075 - 1088, 2024/08
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Nuclear Science & Technology)陽子線形加速器では、機器の故障、高周波による放電などにより、陽子ビームが不意に供給できないことが知られている。このビームトリップ事象はランダムに発生しているのだろうか?従来、ビームトリップ事象はランダムに発生していると暗黙的に仮定していた。今回、加速器駆動核変換システムにおける超伝導線型加速器で生じるビームトリップ頻度を推測するため、J-PARCリニアックにおけるビームトリップ事象がランダムに発生しているかどうかを検討した。すなわち、まずJ-PARCリニアックを5つのサブシステムに分類した。そして、信頼性工学の一つの方法であるカプラン・マイヤー推定法を用いて、各サブシステムにおける運転時間の信頼度関数を求めた。この信頼度関数より、ビームトリップ事象のランダムさを調べた。5つのサブシステムにおける5年間の運転データを解析したところ、いくつかのサブシステムではビームトリップ事象がランダムに発生していることを示していた。しかし、陽子リニアックの主要なサブシステムであるイオン源と加速空洞を含む、多くのサブシステムでビームトリップ事象がランダムに発生していなかった。
武井 早憲
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原子力機構(JAEA)はマイナーアクチニドを効率的に核変換するADSの研究開発を行っている。JAEAが提案するADSは、未臨界炉と大強度超伝導陽子線形加速器の組み合わせである。ADS用陽子加速器の開発課題の一つとしてビームトリップ事象の低減がある。すなわち、ビームトリップ事象により未臨界炉の機器が熱サイクル疲労で損傷するおそれがあるからである。この損傷を防ぐため、ADS用陽子加速器のビームトリップ頻度を許容ビームトリップ頻度以下まで低減させる必要がある。武井らはADS用陽子加速器の許容ビームトリップ頻度を算出するとともに、J-PARCリニアックの運転データを用いてADS用陽子加速器のビームトリップ頻度を推測した。推測では、J-PARCリニアックのイオン源、RFQ、常伝導加速空洞における5年分の運転データを用いた。その結果、ビームトリップ時間が10秒を超えるビームトリップ頻度は許容ビームトリップ頻度を満たさないことがわかった。ところで、大強度陽子リニアックの一つであるSNSの超伝導加速空洞におけるビームトリップ事象のデータが公表された。このデータは超伝導空洞を用いるADS用陽子加速器のビームトリップ頻度を推測するうえで重要となる。そこで、本研究では、J-PARCリニアックにおける常伝導加速空洞とSNSリニアックの超伝導加速空洞における平均ビームトリップ間隔を比較し、両者の相違などについて述べる。