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廃炉環境国際共同研究センター; 北海道大学*
JAEA-Review 2026-017, 78 Pages, 2026/09
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和元年度から英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(1F)の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、さまざまな分野の知見や経験を従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究および人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和5年度に採択された研究課題のうち「遮蔽不要な耐放射線性ダイヤモンド中性子計測システムのプロトタイプ開発」の令和6年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、1F廃炉事業で強いニーズのある遮蔽不要な中性子計測システムのプロトタイプを開発する。本システムは、ダイヤモンド中性子検出素子と耐放射線性シリコン集積回路から構成され、将来的な用途としてデブリ調査用中性子検出器、臨界近接監視モニタ、圧力容器内ドライチューブ調査用中性子検出器等への適用が想定される。本開発では、5mm角相当のダイヤモンド検出素子100枚規模からなるプロトタイプを開発し、システム構築技術の獲得とシステム性能を評価する。あわせて未臨界度評価手法の開発を進める。令和6年度は、北海道大学では自立膜型ダイヤモンド検出素子の量産技術の確立が進んだ。産業技術総合研究所(AIST)ではCVD法による検出器用積層膜の成膜条件の探索が進んだ。高エネルギー加速器研究機構(KEK)では改良したASICの動作確認ができ、配線用印刷装置を使用して検出素子を信号処理回路基板に実装し、中性子の計測試験を行った。名古屋大学を中心に進めている臨界近接監視手法の開発は基本的検討が進み、近畿大学原子炉(UTR-KINKI)でのダイヤモンド中性子計測システムの評価試験を計画している。九州大学、原子力機構に関しても
線照射場、熱中性子等方場でのダイヤモンド中性子計測システムの評価が予定通り進んだ。
平岡 大和; 川崎 晃平*; 木村 仁宣; 齊藤 将大; 江嵜 巌*; 亀田 周二*; 外川 織彦
日本原子力学会和文論文誌(インターネット), 25(3), p.111 - 121, 2026/08
避難退域時検査における車両検査の効率化を図るため、可搬型ゲートモニタでタイヤ側面とワイパー部を同時検査する手法の開発を進めている。本研究では、タイヤとワイパー部のいずれが汚染しているかを判別する手法として、検出器を地面近くに水平・垂直に配置するL字型の測定構成を設計した。このL字測定法による判別手法をモンテカルロシミュレーションで評価した結果、点線源がタイヤ・ワイパー部のいずれにあるかにより、水平・垂直の検出器で得られる計数値の大小関係に差異が生じることが示された。この関係から汚染箇所を特定する判別手法を検討し、ゲートモニタ(千代田テクノル製「ガンマ・ポール」)による測定でL字測定法の有効性を検証した。その結果、タイヤ汚染を模擬した実験では30回全てでタイヤを正しく特定でき、ワイパー部汚染を模擬した実験では30回中29回でワイパー部を正しく特定できた。
廃炉環境国際共同研究センター; 大阪大学*
JAEA-Review 2026-009, 81 Pages, 2026/07
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス福島第一原子力発電所の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。本研究は、令和6年度に採択された研究課題のうち、「耐放射線性を有するレーザスキャナとAI・画像処理による3Dモデリング法の開発」の令和6年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究の全体像は、耐放射線性レーザスキャナと作成する点群の高質化に関する技術開発を行うものである。まず、高強度放射線下において半導体素子の利用を排除して耐放射線性を有する電気・機械素子のみで構成されるレーザ走査部と遠隔地の低線量場に設置する制御部が分離した3Dレーザスキャナシステムを開発する。開発した3Dレーザスキャナと商用化されている非耐放射線性3Dレーザスキャナを比較しながら性能を評価する。さらに、開発したスキャナが取得する疎な点群に対して機械学習等により解析し、新たな点群を増強・補完するシステムおよび写真群から対象物の3Dデータを生成するフォトグラメトリ技術により、点群を補完するシステムをそれぞれ開発することによって、信頼度のより高い3Dデータを得るための方法と技術を構築する。令和6年度の成果は以下のとおりである。(1)光学・電子回路系の設計と波形取得・解析ソフトの開発を通じて、耐放射線性3Dレーザスキャナの検出効率を評価する準備を行った。(2)AIを活用した点群補完システムを整備し、高密度化法と補完プロセスの検討を行った。(3)点群とフォトグラメトリ統合のための環境とワークフローを構築し、基準となる3Dモデルを作成した。(4)高線量下でのスキャン手法を分析し、精度比較評価の方法を検討した。(5)各研究項目と関係機関が連携し、計画的に研究を推進した。
普天間 章; 工藤 保; 高橋 史明
JAEA-Research 2026-002, 51 Pages, 2026/07
原子力災害時の緊急時航空機モニタリングでは、広域の空間線量率分布を迅速に把握し、関係機関で共有することが求められる。日本原子力研究開発機構では、原子力規制庁からの受託事業として、航空機から送信される
線計数率及び位置情報を地上で把握するためのリアルタイムデータ転送システムの開発及び改良を進めてきた。一方、従来のシステムは、測定データの位置情報及び計数率の表示を主目的としており、受信データを空間線量率へ換算し、分布図として逐次更新するリアルタイム解析機能は実装されていなかった。本研究では、衛星通信により約30秒間隔で逐次取得される航空機モニタリングデータを対象として、地表面から1m高さの空間線量率への換算、測線データの自動抽出及び空間線量率分布のマッピングを一連の処理として実行するリアルタイム解析手法を構築し、既存システムへ実装した。空間線量率換算では、速報性を確保するため、既往の航空機モニタリングデータに基づき、宇宙線成分及び空気中放射性核種成分の補正をリアルタイム処理に適用可能な形に整理した。また、従来は地理情報ソフトウェア上での目視確認に依存していた測線データ選別について、航空機の飛行挙動に基づく機械学習モデルを導入し、航空機の飛行挙動のみから測線データを自動抽出する手法を構築した。さらに、約30秒間隔で取得されるデータに対応するため、内挿補間(IDW)の条件及びマッピング方法を設定し、リアルタイム表示に適した空間線量率分布図の作成方法を整備した。既存解析結果との比較及び動作確認の結果、構築した手法は空間線量率分布の主要な傾向を再現し、速報的な状況把握に有効であることを確認した。また、今回対象としたデータ量に対しては、データ受信後数秒程度で空間線量率分布図を作成し配信できることを確認した。以上により、衛星通信データを用いた航空機モニタリングにおいて、従来は事後解析に依存していた空間線量率分布図の作成をリアルタイム化するための技術的基盤を整備した。
廃炉環境国際共同研究センター; 東京科学大学*
JAEA-Review 2026-007, 65 Pages, 2026/06
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和元年度から英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、さまざまな分野の知見や経験を従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究および人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和6年度に採択された研究課題のうち、「高線量かつ不可視環境下での炉内可視化を可能とするレーザ偏向検出型超音波広帯域3Dイメージングシステムの開発」の令和6年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、デブリ切り出し作業の安全性を最大限保証するため、作業中におけるダストおよび濁水環境下での炉内構造物/燃料デブリ形状および飛散物の可視化を数メートルオーダーの距離で可能とし、ロボットや作業アームへの搭載を鑑みて、小型かつ可搬性に優れた超音波装置を用いたレーザ偏向検出型超音波広帯域3Dイメージングシステムの開発を目的としている。令和6年度は、超音波イメージングシステムのイメージング性能評価および高度化/高速化検討、数値シミュレーション、システム試作と実スケール検証、耐放射線性検証、超音波サブミリ測距システムの構築、LIBSへの超音波サブミリ測距システムの適用、計測システムのバッテリ駆動遠隔化などを行い、本報告書に取りまとめた。
廃炉環境国際共同研究センター; 東北大学*
JAEA-Review 2026-003, 173 Pages, 2026/06
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和元年度から英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(1F)の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、さまざまな分野の知見や経験を従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究および人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和6年度に採択された研究課題のうち、「燃料デブリ研究とSEEM学構築を基軸とした研究人材育成」の令和6年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、不確実な苛酷環境下でのより合理的な意思決定を可能とする『シビアエンジニアリングマネジメント学(SEEM学)』の構築に資することを主眼とし、あわせて1F廃炉における中心課題である燃料デブリの取り出し・長期保管および処理・処分の学術基盤を支える研究人材の育成を図るため、令和6年度から令和10年度までの予定で異分野の専門家が有機的連携のもとで複数の研究ならびに人材育成タスクを推進するものである。初年度である令和6年度は、最終的な研究成果を得るために設定した【SEEM学分野】【専門分野1
2】および【共通工学分野1
3】において、具体的な研究方法を明確にして研究の方向付けを行うとともに、必要な試験・解析等を実施するための諸準備を行い、本格的な研究を行うための諸条件を整える必要があった。また、人材育成面においては、原子炉廃止措置に関する教育プログラムの運営およびSEEM学関連科目の企画検討を進める必要があった。このため、具体的な研究方法の検討や必要な試験などを実施するための諸準備を行い、本格的な研究を行えるよう諸条件を整えるとともに、一部の計測システム構築および解析、人材育成面の検討等を実施し、所定の成果を挙げることを目的とした。この目的のもとに、令和6年度の成果目標および実施方法を業務計画として定め、計画通り実施し、各技術分野および教育・人材育成活動においてそれぞれ目標とした成果を挙げることができた。
廃炉環境国際共同研究センター; 東京大学*
JAEA-Review 2026-001, 140 Pages, 2026/06
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和元年度から英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(1F)の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、さまざまな分野の知見や経験を従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和6年度に採択された研究課題のうち、「燃料デブリ取り出しに向けた遠隔ロボット-計測技術の統合のための研究教育人材育成」の令和6年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、1Fにおける燃料デブリ取り出しに関して、性状把握・キャラクタリゼーションを遠隔で実現するためのロボット技術やセンサ及び放射線計測技術の開発、そして、それらの技術をシステムとして統合できる人材の育成を目指す。また、関連する研究実績や講義等のリソースを再整理することでSEEM学の構築を目指すとともに、実際の教育現場へ展開する。令和6年度の実績としては、過酷環境での放射線計測・センサ技術において、高い放射線耐性が見込める中性子検出器の最適化や放射線の入射イベントを適切に生成できるシミュレータの構築、3次元体積モデル生成のためのローバーの設計・開発を行った。また、取り出し工法に調和した遠隔ロボット技術では、遠隔操作支援のためのシミュレーション及び実機環境の構築と放射線分布推定を実現するためのセンサ構成の検討を行うとともに、運搬機能を備えたモジュール分割型軌道構造体として吊下式多腕型軌道構造体の提案、デブリサンプリングのための軽量化アームの検討、多視点遠隔操縦システム及び軌道計画器に入力するインタフェースを検討した。計測-遠隔ロボット統合技術と実証では、実スケール環境構造モデリングのための画像処理手法の開発や画像データ伝送法の検討、統合DXプラットフォームの開発、センサ・ロボットのモジュール化の基礎検討を行った。そして、廃炉工程を俯瞰した性状把握、キャラクタリゼーションでは、燃料デブリ分布推定に向けた剛体・弾性体解析手法の開発に着手するとともに、気中工法における性状把握・廃棄物管理方針を検討し、ジオポリマーの充填材として適用性を検討した。また、SEEM学の構築では、未知の課題の抽出並びに課題解決方法や高等専門学校におけるSEEM学教育を検討した。
萩原 大樹; 小菅 淳; 斉藤 淳一; 浪江 将成; 木曽原 直之; 峰原 英介*; 坪井 昭彦; 石森 有
Next Research (Internet), 8, p.101581_1 - 101581_9, 2026/06
To understand how Type-A Cs-bearing microparticles were generated at the Fukushima Daiichi nuclear power plant, identifying the materials from which these particles originated is important. In this study, we focus on a methodological approach for generating Cs-bearing microparticles by laser irradiation of glass-fibers-based filter materials, with the aim of producing surrogate particles under controlled laboratory conditions. To evaluate this approach, a series of experiments was conducted, including vapor-phase exposure and aqueous loading of Cs, Fe, and Zn onto filter substrates, followed by laser irradiation to induce rapid, localized high-temperature effects. Morphology and size distributions of the Cs-containing surrogate particles were found to be comparable to those reported for Type-A particles, within the scope of the applied analytical methods. Overall, a reproducible laboratory framework was established for producing Cs-bearing surrogate microparticles suitable for systematic characterization, while not aiming to fully reproduce specific accident conditions.
Mohamad, A. B.; Chen, J.*; 井岡 郁夫*; 鈴木 恵理子; 近藤 啓悦; 阿部 陽介; 山下 真一郎; 大久保 成彰; 根本 義之; 岡田 裕史*; et al.
Journal of Nuclear Materials, 625, p.156513_1 - 156513_9, 2026/04
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Materials Science, Multidisciplinary)Ion irradiation was carried out on Cr coating Zry cladding to investigate their microstructure evolution and mechanical properties. The sample was irradiated at reactor normal operation conditions. Microstructural observation and mechanical testing of non-irradiated samples and irradiated samples were performed to understand irradiation damage to the Cr-coated Zry cladding. Results of High Resolution Transmission Electron Microscopy and chemical analysis revealed Fe enrichment at the Cr coating and Zr substrate interface of irradiated samples due to irradiation enhanced diffusion or irradiation induced mixing. Irradiation led to the formation of Fe enrichment at the Cr Zr interface approximately 15nm. Moreover, hardening of the Cr coating and Zr substrate regions was observed in the irradiated sample.
普天間 章; 越智 康太郎; 佐々木 美雪; 中間 茂雄; 川崎 義晴*; 岩井 毅行*; 平賀 祥吾*; 萩野谷 仁*; 松永 祐樹*; 山田 勉*; et al.
JAEA-Technology 2025-016, 253 Pages, 2026/03
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波に起因する東京電力福島第一原子力発電所事故直後から、放射線の分布を迅速かつ広範囲に測定する航空機を用いた空からの測定方法が採用されている。日本原子力研究開発機構は原子力規制庁からの受託事業として、令和6年度に東京電力福島第一原子力発電所周辺の航空機モニタリングを実施した。実施内容は、以下の通りである。過去のモニタリング結果との比較から空間線量率等の変化量を評価し、その変化要因について考察した。航空機モニタリングによる空間線量率の換算精度向上のために、地形の起伏を考慮に入れた解析を行った。地形の起伏を考慮する前後の解析結果を比較し、本手法による換算精度向上の効果を評価した。有人ヘリコプターについては、空気中のラドン子孫核種の弁別手法を測定結果に適用し、ラドン子孫核種が航空機モニタリングに与える影響を評価した。より効率的に広範囲な航空機モニタリングを展開するため、無人航空機によるモニタリングの技術開発を進めた。
普天間 章; 越智 康太郎; 佐々木 美雪; 中間 茂雄; 川崎 義晴*; 岩井 毅行*; 平賀 祥吾*; 萩野谷 仁*; 松永 祐樹*; 眞田 幸尚; et al.
JAEA-Technology 2025-015, 171 Pages, 2026/03
2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う津波により、東京電力福島第一原子力発電所事故が発生し、大量の放射性物質が周辺環境に飛散した。事故直後から、放射線の分布を迅速かつ広範囲に測定する手段として、有人ヘリコプター等による航空機モニタリングが活用されてきた。日本原子力研究開発機構は原子力規制庁からの受託事業として、緊急時モニタリングの迅速化に向け、発電所周辺のバックグラウンド線量率や地形、管制空域等の情報整備を進めている。令和6年度は、島根原子力発電所周辺で航空機モニタリングを実施し、線量率マップ等を作成し、地上測定値や他機関データと比較して妥当性を確認した。原子力総合防災訓練では、有人ヘリコプターに加え無人航空機を用いた訓練フライトを実施し、搭載方法やリアルタイム通信、迅速なマッピングの有効性を確認した。さらに、無人機データ収集システムの整備を進め、リアルタイム解析やマルチプラットフォームでの運用を検証し、改良課題を抽出した。マルチコプターの操作講習も実施し、運用技術の向上を図った。加えて、米国、フランス、韓国、カナダと合同環境放射線モニタリングを行い、各国の測定技術や運用体制に関する知見を得るとともに、国際的な情報共有の重要性を確認した。本報告書は、これら令和6年度の受託研究で得られた成果と技術的課題を取りまとめ、今後の緊急時モニタリング技術の高度化に資する知見を提供するものである。
福島マップ事業対応部門横断グループ
JAEA-Technology 2025-013, 206 Pages, 2026/03
東京電力株式会社福島第一原子力発電所(福島第一原発)事故による放射性物質の分布状況を平成23年6月より調査してきた。本報告書は、令和6年度の調査において得られた結果をまとめたものである。空間線量率については、走行サーベイ、平坦地上でのサーベイメータによる定点サーベイ、歩行サーベイ及び無人ヘリコプターサーベイを実施し、測定結果から空間線量率分布マップを作成するとともにその経時変化を分析した。山間部モニタリングへの無人航空機の適用可能性を確認するため、山間部における無人航空機の基礎性能試験を実施した。放射性セシウムの土壌沈着量に関しては、in-situ測定及び土壌中深度分布調査をそれぞれ実施した。さらに、これまで蓄積した測定結果を基に空間線量率及び沈着量の実効半減期を評価した。令和6年度調査での走行サーベイや歩行サーベイ等により取得した空間線量率分布データを階層ベイズ統計手法を用いて統合し、福島第一原発から80km圏内及び福島県内の空間線量率統合マップを作成した。令和6年度測定結果のWEBサイトでの公開、総合モニタリング計画に基づく放射線モニタリング及び環境試料分析を実施した。避難指示解除区域への帰還後に想定される複数の代表的な生活行動パターンを設定し、積算の被ばく線量を算出するとともに当該地方自治体・住民に向けた説明資料を作成した。令和6年度調査や原子力規制庁等で実施した環境モニタリングの測定データの一部をCSV等の形式で保存した。モニタリング地点の重要度を相対的に評価するスコアマップを作成するとともに、過去からのスコアの変化要因について考察しモニタリング地点の重点化及び最適化のための基礎評価を実施した。海水中のトリチウム濃度の評価結果を原子力規制庁へ報告する体制を構築・運用し、ALPS処理水の海洋への放出前後のトリチウム濃度の変動に着目して解析評価した。総合モニタリング計画に基づき実施された海域モニタリングの測定結果を集約するとともに、過去からの変動などに関して解析評価を行った。
原子力科学研究所 放射線管理部; 青森研究開発センター 保安管理課
JAEA-Review 2025-055, 107 Pages, 2026/03
本報告書は、日本原子力研究開発機構の原子力科学研究所、播磨放射光RIラボラトリー及び青森研究開発センターにおける放射線管理に関係する2024年度の活動をまとめたものである。これらの研究開発拠点で実施した放射線管理業務として、環境モニタリング、原子力施設及び放射線業務従事者の放射線管理、個人線量管理、放射線管理用機器の維持管理等について記載するとともに、放射線管理に関連する技術開発及び研究の概要を記載した。これらの研究開発拠点において、施設の運転・利用に伴って、保安規定等に定められた線量限度を超えて被ばくした放射線業務従事者はいなかった。また、各施設から放出された気体及び液体廃棄物の量とその濃度は保安規定等に定められた放出の基準値及び放出管理目標値を下回っており、これらに起因する周辺監視区域外における実効線量も保安規定等に定められた線量限度以下であった。放射線管理の実務及び放射線計測技術に関する技術開発・研究活動を継続実施した。
樋川 智洋; 宝徳 忍; 熊谷 友多; 阿部 侑馬*; 小山 幹一*; 深谷 洋行; 伴 康俊; 木田 孝; 長谷川 聡*; 中野 正直*; et al.
Journal of Nuclear Science and Technology, 63(3), p.322 - 327, 2026/03
被引用回数:1 パーセンタイル:46.18(Nuclear Science & Technology)燃料再処理施設における水素安全に資するため、放射線分解により生成する水素発生に対する温度の影響を調べた。プルトニウム硝酸水溶液の放射線分解による水素発生量を、室温から溶液の沸騰温度までの温度について実験的に取得した。その結果、沸騰条件まで温度を上昇させても有意な水素発生量の上昇は見られなかった。さらに溶液の撹拌が水素生成に与える影響についても検討したところ、室温での静的条件と混合条件の間で水素生成に違いがみられなかった。これらの知見は、溶液の温度上昇や沸騰が水素生成を大幅に増加させないことを示唆しており、重大事故時の水素リスク評価に貢献する。
松村 大樹; 辻 卓也; 瀬古 典明*; 他5名*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 335(2), p.1543 - 1552, 2026/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Chemistry, Analytical)The COVID-19 pandemic has underscored the need for protective materials with rapid and durable antiviral properties. We developed silver (Ag)-immobilized fabrics via radiation-induced graft polymerization and tested their activity against SARS-CoV-2. The fabrics reduced 40,000 viral particles to below detection within one hour, showed no Ag leaching after 24 h in water, and retained complete antiviral performance after one year of storage. These findings demonstrate the long-term stability and strong potential of Ag-immobilized fabrics for industrial use in protective equipment.
underwater radiation monitoring detectorJi, W.*; Lee, E.*; Ji, Y.-Y.*; 越智 康太郎; 吉村 和也; 舟木 泰智; 眞田 幸尚
Nuclear Engineering and Technology, 58(2), p.103933_1 - 103933_6, 2026/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Nuclear Science & Technology)汚染予測地点の河川や貯水池の堆積物中の
Cs放射能濃度を推定するために、水中放射線in-situ検出器MARK-U1(Monitoring of Ambient Radiation of KAERI - Underwater)の性能を検証することを目的とした。さらに、高純度ゲルマニウム(HPGe)半導体検出器を用いて放射能を測定するため、コアサンプルを採取した。放射能を推定するために、測定されたスペクトルと試料中の
Cs放射能を比較して換算係数を導き出した。モンテカルロN粒子(MCNP)シミュレーションを実施し、in-situ測定に有効な線源形状を決定した。シミュレーション結果は、31.62%の偏差で、現場のMARK-U1モニタリング結果とよく相関した。これらの結果は、in-situ検出器の性能を検証するものである。したがって、この装置は、試料採取を必要とせず、in-situモニタリングによって水底堆積物中の
Cs放射能濃度を推定するために使用することができる。
' phase precipitation in FeCrAl alloys山下 真一郎; 阿部 陽介; 大久保 成彰; 鵜飼 重治; 佐々木 泰祐*
QST-M-56; QST Takasaki Annual Report 2024, P. 28, 2026/02
This study continues our investigation of FeCrAl alloys, promising candidates for accident-tolerant fuel cladding materials, aiming to clarify the precipitation behavior of the embrittlement phase (
' phase) and to contribute to the development of a predictive model. In FY2024, the irradiation dose was increased from the previously achieved 0.3 dpa, and data up to 0.64 dpa (partially 1.44 dpa) were obtained. This enabled the development of an
' phase precipitation map using chemical composition, damage rate, and damage dose as parameters. Multiple regression analysis quantitatively demonstrated that a decrease in damage rate, along with increases in Cr concentration and damage dose, tends to increase precipitation volume fraction. Notably, Al addition was found to suppresses
' phase precipitation, providing important insights for alloy design.
シンチレーション検出システムの開発(委託研究); 令和5年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業廃炉環境国際共同研究センター; 東北大学*
JAEA-Review 2025-046, 70 Pages, 2026/01
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和5年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(1F)の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和5年度に採択された研究課題のうち、「簡易非破壊測定に向けた革新的なn・
シンチレーション検出システムの開発」の令和5年度の研究成果について取りまとめたものである。令和5年度に1Fでは、原子炉格納容器(PCV)からの燃料デブリの取り出しが予定され、さらに、将来的には段階的な取り出し規模の拡大が検討されている。本研究では、標的試料取り出し時のスクリーニングならびに連続監視に資する、革新的なシンチレーション放射線検出システムを開発する。また、1Fをはじめとした原子力施設廃止措置の炉内調査に資する遠隔測定システムを実用化する。より具体的には、(1)革新的な中性子・
線核種弁別シンチレータの研究(東北大学)、(2)センサーならびに信号処理システムの小型化(東京大学)、(3)多様な放射線場構築と特性評価(産業技術総合研究所)、(4)簡易非破壊測定システムの開発とホットセル内実証試験(原子力機構)の各要素技術に対し、垂直統合的に研究を展開することでPCV内や各受け入れセル内において、10Gy/hを超える環境下で
線、中性子線を弁別し、それぞれの線量率と核種同定を同時に行う検出器の開発に向け、令和5年度に計画した各研究項目に関する研究開発を実施した。
西條 友章; 島崎 洋祐; 石原 正博
JAEA-Technology 2025-010, 126 Pages, 2025/12
HTTR(高温工学試験研究炉)の運転中には、黒鉛構造物に熱応力が発生する。また、黒鉛材料は中性子照射により収縮挙動を示すとともに、クリープ現象が発生するため、原子炉停止時には黒鉛構造物に残留応力が発生する。そこで、HTTR炉心黒鉛構造物の設計においては、有限要素法応力解析コード「VIENUS」を用いた黒鉛構造物の応力解析を行ってきた。HTTRの黒鉛構造物は配置場所によって照射される温度域が400
Cから1200
Cと大きく異なるため、材料物性値や照射収縮などの照射挙動も黒鉛構造物ごとに異なる。一方、VIENUSコードは熱流動・熱伝導解析結果を解析条件として入力し応力を評価する解析コードであるため、温度条件や材料物性値をパラメータとした検討には向かない。そこで、本報告書ではVIENUSコードよりもパラメータスタディを効率的に実施できる2本のはり要素からなる簡易粘弾性評価モデルを用いて、400
Cから1200
Cの温度域にある黒鉛構造物の照射挙動が応力挙動に与える影響を解析し、運転時応力は黒鉛構造物の照射収縮の影響により、照射温度800
Cを境に2つの異なる挙動を示すことを明らかにした。また、原子炉停止時の残留応力は熱応力に漸近するため、照射収縮が大きくなった場合でも過度に大きくならないことがわかった。さらに、簡易粘弾性評価モデルとVIENUSの応力解析結果を比較した結果、応力挙動の傾向が一致し、簡易粘弾性評価モデルは応力挙動の把握に有用であることが明らかとなった。
廃炉環境国際共同研究センター; 理化学研究所*
JAEA-Review 2025-031, 124 Pages, 2025/12
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和5年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(1F)の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和4年度に採択された研究課題のうち、「高放射線耐性の低照度用太陽電池を利用した放射線場マッピング観測システム開発」の令和5年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、自立・遠隔で駆動するセンサーを応用した放射線場マッピングが可能なシステムを開発することで、原子炉格納容器(PCV)内の放射線情報を網羅的かつリアルタイムで取得し、非常に透過性が高く、事故の要因となりえるガンマ線や中性子などの漏洩監視により、作業員や住民に対する安全性が担保可能なシステムを実環境に実装するため実証研究を行うものである。太陽電池型線量計は、宇宙用太陽電池として開発された高放射線耐性を有する半導体素子を利用し、自立駆動形の省電力・小型センサーとして開発を進め、PCVへの適応可能性について議論してきたが、CIGS太陽電池型線量計をベースとした1F実装には、素子の高機能化及びシステム化が必要となる。高機能化として、さらなる難アクセス箇所への探索を目指したフレキシブルシート化、マッピングモニタリングシステム開発基盤となる多接続化及び再臨界事故評価システム開発に向けたガンマ線・中性子検出構造の最適化を実施している。令和5年度は、CIGS太陽電池素子構造をベースとしたフレキシブル素子作成条件の探査とガラス基板CIGS素子を用いた試作機による初期特性をガンマ線、電子線及び中性子線照射試験により解明する。中性子検出構造においては、変換材料のホウ素を塗布による成膜条件の探査、ミリングによる粉末材料粒径の調整条件の解明や塗布法及び溶剤条件に関する選定を行う。また、マッピング計測では、複数のセンサーの計測及び線量情報を表示可能なシステム開発を行う。