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佐賀 要
JAEA-Review 2025-003, 23 Pages, 2025/05
医療分野における放射性同位体(以下、RI)を用いた診断と治療は、人々の福祉向上に貢献している。一方で、国内に流通している医療用RIのほぼすべてが海外からの輸入である。そのため、これまでにも地政学的な影響や自然災害の影響を受けて輸入が困難になる状況が発生した。これらの背景を踏まえて、国内では原子力委員会内に医療用等ラジオアイソトープ製造・利用専門部会を設置し、2022年5月に「医療用等ラジオアイソトープ製造・利用推進アクションプラン」を策定した。このアクションプランではRIを輸入に依存している課題に対して、RIの国産化を目指し、安定供給に向けたオールジャパン体制での研究・技術開発を実施する旨が記載されている。日本原子力研究開発機構(以下、JAEA)では、2024年度よりNXR開発センターを立ち上げ、使用済み燃料の再処理工程で発生する高レベル廃液中に含まれる有価元素を分離・リサイクルすることで、産業分野及び学術分野での有効利用、原子力発電により発生する廃棄物量の低減並びにリサイクルによる収益化への検討を行っている。高レベル廃液を使用する利点は、多種多様かつ大量の核種が含まれていることにある。そこで本検討では、高レベル廃液に含まれるRIに着目し、医療用に供給可能であるか評価を実施した。具体的には、現在許可を得ている核種であるY-90を評価対象核種として、Y-90の親核種であるSr-90の目標供給量と高レベル廃液に含有するSr-90の量及び高レベル廃液の年間必要処理量を試算した。試算結果を基にして、供給施設の例として、JAEA内の再処理研究設備での実施可能性を評価した。評価の結果、高レベル廃液中のRI濃度によっては小規模の処理量(数百mL数L)で国内需要に匹敵する量の医療用RIを生産できる可能性があるとわかった。また、必要な処理設備として、JAEAのNUCEF等の再処理研究設備であれば対応可能であると評価した。以上の評価結果から、既存の再処理研究施設を活用することにより、小量(数百mL
数L)の高レベル廃液から国内需要に見合う医療用Y-90用のSr-90を分離できる可能性があると結論付けた。