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角田 直文*; 大塚 孝治; 高柳 和雄*; 清水 則孝*; 鈴木 俊夫*; 宇都野 穣; 吉田 聡太*; 上野 秀樹*
Nature, 587, p.66 - 71, 2020/11
被引用回数:42 パーセンタイル:93.06(Multidisciplinary Sciences)与えられた陽子数に対し、どれだけの中性子数の原子核が存在可能であるかという問いは、原子核物理における最も基本的な問題の一つである。原子核は独立粒子描像がよく成り立つため、従来は陽子数で決まるポテンシャルが作る束縛状態の個数で決まると考えられてきた。この研究では、最近実験で確定した、フッ素からナトリウムに対する中性子ドリップ線(最も中性子数の多い同位体)を、核力から出発した第一原理的な大規模殻模型計算によって再現し、そのメカニズムを理論的に解析した。ハミルトニアンを単極相互作用と多重極相互作用に分解し、さらに多重極相互作用を対相互作用と残りの部分に分け、基底状態におけるそれぞれの項の寄与を調べた。その結果、多重極相互作用の変形エネルギーに相当する部分が中性子ドリップ線を決めるのに非常に重要な役割を果たしていることがわかった。すなわち、中性子数が増えていくと徐々に変形エネルギーが増大するものの、ある中性子数でそれが飽和し、その後は減少していくが、その減少過程で中性子ドリップ線が決まるというシナリオである。本研究は、ドリップ線に対する新しい見方を与え、天体中の元素合成過程の理解に重要な貢献をすることが期待される。
大塚 孝治*; Gade, A.*; Sorlin, O.*; 鈴木 俊夫*; 宇都野 穣
Reviews of Modern Physics, 92(1), p.015002_1 - 015002_52, 2020/03
被引用回数:201 パーセンタイル:96.42(Physics, Multidisciplinary)魔法数によって特徴づけられる原子核の殻構造は、長らく陽子数, 中性子数によらずほぼ不変であると考えられてきたが、近年、不安定核ビーム実験の著しい進展により、極めて中性子過剰核では安定核では見られなかった魔法数が出現するなど、殻構造が陽子数, 中性子数に応じて動的に変化することが明らかになった。本レビュー論文は、不安定核の殻構造研究に業績のある理論, 実験研究者によって、その理論的な基礎と最近の実験の進展をまとめたものである。殻構造の変化の源となるモノポール相互作用の定義など、従来の文献でははっきりと書かれてこなかった事項も含め、詳しく説明した。
Sanetullaev, A.*; Tsang, M. B.*; Lynch, W. G.*; Lee, J.*; Bazin, D.*; Chan, K. P.*; Coupland, D.*; Hanzl, V.*; Hanzlova, D.*; Kilburn, M.*; et al.
Physics Letters B, 736, p.137 - 141, 2014/09
被引用回数:15 パーセンタイル:69.65(Astronomy & Astrophysics)Niの1/2状態は二重閉殻核Niの中性子s軌道が空となった一空孔状態が支配的であると考えられ、したがってその状態の性質は不安定核の殻構造を知る上で重要な情報となる。本論文では、Niの1/2状態における一空孔状態の割合となる分光学的因子を測定し、その値を最新の理論計算と比較した結果を報告した。実験はミシガン州立大学の超伝導サイクロトロンを用い、(Ni, Ni)反応によって調べた。実験の解析の結果、sの一空孔状態が支配的な1/2状態は3.18MeVに現れ、その分光学的因子は1.00.2であることがわかった。発表代表者が行った殻模型計算では対応する状態の励起エネルギーが3.75MeVで分光学的因子が1.21と実験値を比較的よく再現するのに対し、グリーン関数による第一原理計算では分光学的因子は1.10と良いものの、励起エネルギーが11.5MeVと実験値からの大きなずれが見られた。
鈴木 俊夫*; 吉田 敬*; 千葉 敏; 梶野 敏貴*
日本物理学会誌, 67(1), p.49 - 54, 2012/01
超新星におけるLi, B, La, Ta等の元素合成には、ニュートリノ過程が重要な役割を果たす。最近の中性子過剰核を中心とした原子核物理の発展に基づいて新しい殻模型ハミルトニアンを構築し、実験との詳細な比較検討を行って、ニュートリノ-原子核反応断面積の理論計算を改善した。これにより、超新星で合成されるLi, B等の軽元素合成量のより正確な評価が可能となった。物質振動(MSW)効果によって元素合成量がニュートリノ混合角と質量階層に強く依存することを利用して、われわれは未知のニュートリノ振動パラメータを決定する新しい方法を提案した。
鈴木 俊夫*; 吉田 敬*; 千葉 敏; 梶野 敏貴*
日本物理学会誌, 67(1), p.49 - 54, 2012/01
超新星におけるLi, B, La, Ta等の元素合成には、ニュートリノ-原子核反応過程が重要な役割を果たす。最近の中性子過剰核を中心とした原子核物理の発展に基づいて新しい殻模型ハミルトニアンを構築し、原子核のスピン応答の記述を改善した。新しいハミルトニアンをニュートリノ-原子核反応断面積の理論計算に適用することによって、超新星で合成されるLi, B等の軽元素合成量のより正確な評価が可能となった。物質振動(MSW)効果によって元素合成量がニュートリノ混合角と質量階層に強く依存することを利用して、われわれは未知のニュートリノ振動パラメータを決定する新しい方法を提案した。
澁田 靖*; 鵜浦 誠司*; 佐藤 匠; 柴田 裕樹; 倉田 正輝*; 鈴木 俊夫*
Journal of Nuclear Materials, 414(2), p.114 - 119, 2011/07
被引用回数:16 パーセンタイル:75.64(Materials Science, Multidisciplinary)乾式再処理プロセスの電解精製における溶融塩中からの陰極へのウランの電析について、フェイズフィールド法を用いたシミュレーション計算を行った。金属ウランはデンドライト状に析出するが、ジルコニウムが共存する環境下では樹状部があまり成長しないことが知られている。そこで、ウランの析出形態が変化するジルコニウム濃度のしきい値を電流密度の関数として評価し、そのしきい値は電流密度が低くなるほど大きくなることを明らかにした。
大塚 孝治*; 鈴木 俊夫*; 本間 道雄*; 宇都野 穣; 角田 直文*; 月山 幸志郎*; Hjorth-Jensen, M.*
Physical Review Letters, 104(1), p.012501_1 - 012501_4, 2010/01
被引用回数:361 パーセンタイル:98.93(Physics, Multidisciplinary)近年われわれのグループにより、安定核から不安定核に移動に伴う原子核における殻構造の変化は、モノポール相互作用と呼ばれる二体力の軌道依存性によってよく記述されることがわかった。その依存性の起源の一つとしてスピンに依存するテンソル力があるが、テンソル力を引いた残りの部分はスピン依存性があまりない単純な構造をしていることが見いだされた。さらに、この部分は、1レンジのガウス型中心力によって定量的によく記述されることがpf殻の現実的相互作用との比較からわかった。以上の知見から、核図表全体に適用できる普遍的なモノポール相互作用を提唱し、それを不安定核研究で注目を集めているNi近傍及びSn近傍に適用した結果、知られている実験の殻変化を説明することができ、非常に有望な手法であることがわかった。
吉田 敬*; 鈴木 俊夫*; 千葉 敏; 梶野 敏貴*; 横枕 英和*; 木村 恵一*; 高村 明*; Hartmann, D.*
Astrophysical Journal, 686(1), p.448 - 466, 2008/10
新しい殻模型ハミルトニアンを用いてHeとCのニュートリノ反応断面積を求めた。超新星ニュートリノに対してLi, BeとB同位体を生成する崩壊比を導出した。今回求めた断面積を使うと太陽質量の16.2倍の星が超新星を起こした場合に生成するLiとBの量が以前の結果のそれぞれ1.3, 1.2倍になることがわかった。それに対してBの量は三分の一になるなど、顕著な違いのあることもわかった。また、銀河の化学進化のモデルにおいて、超新星で合成されたBの量から、超新星爆発時に発生する各種のニュートリノの温度に対する制限が得られた。さらには新しい断面積を用いて、ニュートリノ振動によるLiとBの増加がどの程度であるかを示した。
吉田 敬*; 鈴木 俊夫*; 千葉 敏; 梶野 敏貴*; 横枕 英和*; 木村 恵一*; 高村 明*; Hartmann, D. H.*
Astrophysical Journal, 686(1), p.448 - 466, 2008/10
被引用回数:92 パーセンタイル:89.55(Astronomy & Astrophysics)新しい殻模型ハミルトニアンと統計崩壊模型によりHeとCのニュートリノ原子核反応断面積を計算して、太陽質量の16.2倍の星の超新星爆発元素合成に適用した。LiとBの生成に従来の断面積を用いた場合と有意の差が見られた。これによりニュートリノ温度やニュートリノ振動についての制限を付けられる可能性を見いだした。
大塚 孝治*; 鈴木 俊夫*; 宇都野 穣
Nuclear Physics A, 805(1-4), p.127c - 136c, 2008/06
被引用回数:36 パーセンタイル:85.84(Physics, Nuclear)不安定核では、安定核とは異なる殻構造が出現することが近年示唆されており、その様相やメカニズムについての研究が進められている。発表者らは、不安定核の殻模型計算をもとに独自の殻進化(不安定核において殻構造が変化すること)描像を提唱し、その普遍性について研究してきた。本論文では、殻進化を引き起こすメカニズムとして有力であるテンソル力が、不安定核でどのような殻構造を生み出すかを示すとともに、テンソル力を取り入れた殻模型計算の結果について議論する。テンソル力を入れた-殻模型相互作用を新たに構築し、それによって中性子数28領域の不安定核構造を計算した結果、魔法数核であるシリコン42が変形し、最近の実験値とよく一致することが示された。これは、テンソル力が殻ギャップの変化を通じて変形を引き起こすことを示す初めての例であり、テンソル力駆動変形と名付けた。
鈴木 俊夫*; 千葉 敏; 吉田 敬*; 東島 浩二*; 本間 道雄*; 梶野 敏貴*; 大塚 孝治*
Nuclear Physics A, 805(2), p.579 - 581, 2008/02
CとHeのニュートリノ反応断面積を、新しく導出した殻模型ハミルトニアンを用いて計算した。従来のハミルトニアンに比べてニュートリノ断面積が増加することがわかった。それによって超新星爆発時に生成するLiとBの量も増加することと、これらの生成量からニュートリノ混合角を決定できる可能性について議論した。鉄及びニッケル領域におけるニュートリノ反応断面積についても新しい殻領域ハミルトニアンを用いて計算した。
平出 哲也; 鈴木 直毅*; 斎藤 文修*; 兵頭 俊夫*
Physica Status Solidi (C), 4(10), p.3714 - 3717, 2007/09
被引用回数:6 パーセンタイル:82.36(Physics, Atomic, Molecular & Chemical)分子性固体中では、低温において捕捉電子と自由電子によるポジトロニウム形成が起こる。従来考えられてきた陽電子の運動エネルギーによる吸熱反応を伴うOre過程によるポジトロニウム形成,あるいは入射陽電子自体が引き起こすイオン化により生じる過剰電子がもたらすスパー過程によるポジトロニウム形成の機構は、いずれも「速い反応」である。しかし、最近、われわれが見いだした捕捉電子と自由陽電子から生じるポジトロニウムは、陽電子の入射後ある程度時間が経ってから生じることが予測され、われわれはこの遅延ポジトロニウム形成を、消滅寿命と消滅時の運動量の相関を測定することで実験的に検証した。今回、われわれは、測定で得られた寿命-運動量の相関に基づき、陽電子反応モデルの特定を試みた。すなわち、Ore過程やスパー過程による「速い」ポジトロニウム形成を逃れた自由陽電子が、その後でポジトロニウムを形成する場合には、自由陽電子の局在化を考慮するモデルが妥当との結果が得られた。これにより、寿命-運動量の相関をうまく説明できた。
鈴木 俊夫*; 千葉 敏; 吉田 敬*; 梶野 敏貴*; 大塚 孝治*
Physical Review C, 74(3), p.034307_1 - 034307_9, 2006/09
被引用回数:103 パーセンタイル:97.18(Physics, Nuclear)スピン・アイソスピン相互作用の重要な特徴を考慮した-殻核に対する新しい殻模型ハミルトニアンを用いて、静止崩壊ニュートリノ及び超新星ニュートリノに対するニュートリノC反応断面積を求めた。さまざまなチャンネルへの崩壊分岐比はHauser-Feshbach理論を用いて計算した。同様にニュートリノHeについての計算も行った。われわれの計算はほかのの計算に比べて、He, Cとも反応断面積が増大し、その結果、超新星爆発時に合成される軽元素、特にLiとBの量も増加することがわかった。
鈴木 俊夫*; 千葉 敏; 岩本 修; 梶野 敏貴*
AIP Conference Proceedings 847, p.479 - 481, 2006/07
元素の起源を理解するために、超新星爆発時に発生するニュートリノと軽い原子核の反応の計算を行った。まず、スピン・アイソスピン相互作用の重要な側面を適切に考慮したp-殻原子核の殻模型ハミルトニアンを用いて、He及びCの、ニュートリノによる荷電交換及び中性カレント励起スペクトルと励起確率の計算を行った。励起された原子核からの崩壊確率は、Hauser-Feshbachの統計模型を用いて、角運動量,パリティー及びアイソスピンの保存を考慮して計算した。これにより、従来宇宙線起源とされてきたLiやB等の軽元素が超新星爆発におけるニュートリノによる反応で生成された可能性,超新星爆発機構や、ニュートリノ振動パラメータを決定する可能性を議論する。
鈴木 直毅*; 平出 哲也; 斎藤 文修*; 兵頭 俊夫*
Radiation Physics and Chemistry, 68(3-4), p.647 - 649, 2003/10
被引用回数:23 パーセンタイル:80.61(Chemistry, Physical)1980年台からいろいろな物質中で低温で陽電子消滅寿命測定を行うとポジトロニウム形成が増加する現象が見られてきた。1998年、平出らはこれを低温で陽電子の照射効果によって形成される捕捉電子と自由陽電子との反応であると説明し、予測されるいろいろな現象を実験で確かめ、従来の間違った解釈を改めた。われわれはさらに、今回、予測されていた、遅れて起こるポジトロニウム形成を、陽電子寿命-運動量相関測定(AMOC)により確認することに成功したので、その結果について報告する。
柳澤 和章; 片西 昌司; 本間 功三*; 笹島 栄夫; 藤城 俊夫; 堀木 欧一郎; 三村 英明; 大枝 悦郎; 大和田 功; 本田 順一; et al.
JAERI-M 92-015, 211 Pages, 1992/02
NSRR計画の一環として、美浜2号機で照射された燃料集合体K4/G08から得たセグメント燃料K4-2(MH-2)を用いたパルス照射がNSRRで1990年3月8日に実施された。当該燃料の発熱量は68cal/g・fuelであり、炉内計装機器やパルス後の照射後試験データからは、破損と結びつく兆候は認められなかった。本報は、セグメント燃料K4-2に関して燃料棒再製作時のデータ。NSRR照射時の炉内データ及びパルス照射後のデータをまとめたものである。
稲辺 輝雄; 石島 清見; 丹沢 貞光; 島崎 潤也; 中村 武彦; 藤城 俊夫; 大友 正一; 鈴川 芳弘; 小林 晋昇; 谷内 茂康; et al.
JAERI-M 88-113, 55 Pages, 1988/06
NSRRにおいては、反応度事故時の燃料挙動解明を目的とした炉内実験のために、これまで1kW以下の低出力状態から急嵯なパルス状出力を発生する運転(単一パルス運転)を行ってきた。今後はさらに、実験条件の範囲を拡張するために、10MWまでの高出力の発生と急峻なパルス状出力の発生の組合わせを行う運転(合成パルス運転)及び10MWまでの範囲の過渡出力の発生を行う運転(台形パルス運転)を、改良型パルス運転として実施する。これを実現するためには、NSRRの計測制御系統施設の改造が必要であり、このため、改良型パルス運転における原子炉の安全性を配慮した計測制御系統施設の基本設計を図った。本報告書は、安全設計に当っての基本的な考え方、改良型パルス運転の方法、計測制御系統施設の各構成設備の設計方針及び基本設計の内容、改良型パルス運転に係る主要な動特性等について述べるものである。
鶴野 晃; 鈴木 紘; 田畑 俊夫
日本原子力学会誌, 17(10), p.554 - 558, 1975/10
照射後試験法の一つとしての非破壊検査は、試料の内部の状態を正確に把握することを目的とし、あとに続く試験に有益な情報を提供する。X線ラジオグラフを補うものとして中性子ラジオグラフを使用することは早くから注目されていた。その理由は、第1に熱中性子が鉛,ウランなど重金属を容易に透過すること、第2に間接法を用いることにより照射剤試料からの放射線の影響を除去できることである。我々は原子炉を中性子源とする中性子ラジオグラフを実用化することを考え、ホットセルより照射済試料をキャスクにて原子炉まで運搬し撮影することを試みた。JRR-3中性子ラジオグラフ装置の概要と照射済試料の撮影例ならびに露出条件、解像力について一部実験を行なったので、その結果を報告する。
平出 哲也; 鈴木 直毅*; 斎藤 文修*; 兵頭 俊夫*
no journal, ,
低温域(-50C以下)では多くの物質中で分子運動が凍結され、電離の際に放出された電子は0.53eV程度で束縛され長時間安定に存在できる。このような物質中に入射された陽電子は通常のスパー(放射線がエネルギーを付与することで形成される活性種が集まった領域)内過程によってポジトロニウム形成するが、この過程を逃れた陽電子は、その後拡散する過程で弱く束縛された電子を捕まえることによりさらにポジトロニウム形成が可能となる。この過程は通常のポジトロニウム形成に比べ比較的遅く起こることを実験により示してきた。今回、これら実験データを物質中における陽電子の局在化も考慮し、解析を試みた。その結果、ポリエチレン中、20Kにおいて陽電子は数十ピコ秒程度で局在し、拡散できなくなることがわかった。
和田 健*; 兵頭 俊夫*; 柳下 明*; 池田 光男*; 大澤 哲*; 設楽 哲夫*; 満汐 孝治*; 鈴木 亮平*; 立花 隆行*; 長嶋 泰之*; et al.
no journal, ,
KEK低速陽電子実験施設の最近の進展について報告する。はじめに、低速陽電子ビームを生成するためのモデレーター・コンバーターの交換を行った。コンバーターとモデレーターのフレームをタンタルで作製した。モデレーターは、25m厚のタングステン薄膜を井桁状に2セット組み、2段に配置した。モデレーター・コンバーター交換前後の低速陽電子ビームの強度を比較したところ、毎秒710個に増大した。続いて、陽電子ビームを用いた物性研究として、以下の2つの実験が進展した。ポジトロニウム負イオンの実験に関しては、アルカリ金属を蒸着したタングステン表面から、ポジトロニウム負イオンが高い効率で生成することがわかった。さらに、短パルス陽電子ビームとレーザーを用いて、ポジトロニウム負イオンの光脱離実験を行い、エネルギーが揃ったポジトロニウムを取り出すことに成功した。また、KEK低速陽電子実験施設のビームラインに反射高速陽電子回折(RHEPD)実験装置を設置し、RHEPD実験を開始した。Si(111)-77表面超構造の陽電子回折パターンの観察に成功し、ばらつきが非常に小さいロッキング曲線の測定にも成功した。現状で、5-10倍の反射強度を得ている。今後は、さらなるビーム強度の増大及び実際の表面超構造物性の研究に展開させる。