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田崎 真樹子; 木村 隆志; 清水 亮; 中谷 隆良; 須田 一則
JAEA-Review 2023-042, 121 Pages, 2024/03
2018年度に開始した「非核化達成のための要因分析と技術的プロセスに関する研究」の一環として、旧ソ連3か国(ベラルーシ、カザフスタン及びウククライナ)の非核化事例を調査して8つの非核化要因から分析すると共に、非核化の特徴及び教訓を考察した。3か国の非核化プロセスは国毎に異なり、特にウクライナの非核化プロセスは紆余曲折を経たが、共通項としては、核兵器国全てが安全の保証(assurance)を提供し、それをもって3か国は戦略核を露国に搬出し、非核兵器国として核兵器不拡散条約(NPT)に加入したこと、またその決断には、米露が非核化の経済的・物理的支援をしたことが功を奏したことが挙げられる。更にこの3か国の非核化の特徴としては、米国の巧みな非核化戦略を挙げることができる。米国は、この3か国が露国同様START-Iの当事国であるとの主張を支持して、最終的に第一次戦略兵器削減条約(START-I)の枠組みで3か国からの戦略核兵器の露国への搬出及びその後の露国での廃棄を達成した。また旧ソ連3か国の非核化からの教訓としては、非核化対象国への安全の保証(assurance)の提供は非核化の強力なインセンティブであるが、露国による2014年のクリミア併合及び2022年2月からのウクライナへの軍事侵攻を鑑みると、今後、将来的な非核化では、非核化対象国がより強固な安全の保証(guarantee)を求めるであろうと予想されることである。更に非核化に関しては、関係国の大統領・首脳の強力なイニシアティブが必要であること、また核兵器国が非核兵器国に非核化を求めるならば、核兵器国自身も核軍縮に対する積極的な取組を示す等の必要性があろう。
田崎 真樹子; 木村 隆志; 清水 亮; 中谷 隆良
第44回日本核物質管理学会年次大会会議論文集(インターネット), 4 Pages, 2023/11
旧ソ連崩壊によりウクライナに残された核兵器(戦術核及び戦略核)について、ウクライナがロシアへの搬出を完了するまでの紆余曲折の経緯を、「国家主権宣言」、「独立宣言」、「ウクライナの非核化の地位について」、「リスボン議定書」、「核政策の覚書」、「ウクライナ外務省が作成したウクライナがとり得るべき核に係る選択肢についての2つの分析・報告書」、及び「ブダペスト覚書」等の文書を基に明らかにする。
田崎 真樹子; 木村 隆志
エネルギーレビュー, 42(9), p.62 - 63, 2022/08
1991年12月のソ連邦崩壊に伴い独立国家となったウクライナには、ソ連の核兵器等が残された。ただし同国は、1990年には既に非核化の方針を明確にしており、露国等とも戦術核の露国への移送や戦略核の廃棄等で合意していた。しかし独立後、露国との間でクリミアやセヴァストポリの領有権、また黒海艦隊の帰属等に係る課題が浮上し、ウクライナ国内では、核兵器保有オプションを取引手段として有効活用することを求める声があった。1992年3月、ウクライナは突如、実施中であった露国への戦術核の引き渡しを停止、その後、米露の説得により戦術核の移送再開を決定したが、その間、露国は密かに戦術核の移送を完了させており、ウクライナを激怒させた。一方戦略核について、米ソは、1991年7月、第一次戦略兵器削減条約(START I)に署名したが、ソ連崩壊に伴い、露国の意向に反してウクライナ,ベラルーシ及びカザフスタンが自らを条約当事国であると主張し紛糾していた。これに対し米露は、1992年5月、上記3か国を条約当事国として認めるが、一方でウクライナ等の核不拡散条約(NPT)への早期加入や、露国によるソ連の核兵器等の一元的な管理等の方針を確認する内容を盛り込んだSTART Iの附属議定書(通称:「リスボン議定書」)の締結に成功し、ウクライナ,ベラルーシ及びカザフスタンから、7年間(START Iの有効期間)に自国の核兵器を撤去するとの約束も取り付けた。1994年12月、米露英はウクライナと、ウクライナの独立,主権及び現行の国境の尊重、ウクライナに対して威嚇ないし武力行使を行わないこと、ウクライナに対して核兵器を使用しないこと、を含む計6項目を盛り込んだ「ブダペスト覚書」 に署名した。同覚書により、「NPTに加入する法」が発効して、同日、ウクライナはNPTに加入し 、また同国がNPTに加入するまではSTART I批准書の交換を行わないとしていた露国もSTART Iの批准書の交換を行い、同日、START Iが発効した。ウクライナは、このSTART Iの下で、1992年から米国が開始したCTRによる財政的支援等を受け、1996年6月1日に戦略核の露国への移送を完了させた。
田崎 真樹子; 清水 亮; 木村 隆志; 玉井 広史; 中谷 隆良; 須田 一則
JAEA-Review 2021-076, 108 Pages, 2022/03
将来的に期待される非核化を成功裏に、また効果的かつ効率的に導く方策を見いだすため、2018年度から「非核化達成のための要因分析と技術的プロセスに関する研究」を実施している。本報告書はこのうち、前半部分の非核化のための要因分析」に係り、非核化の事例調査と要因分析の結果を取り纏めたものである。まず非核化対象国として、南アフリカ、イラク、リビア、ウクライナ、カザフスタン、ベラルーシ、北朝鮮、イラン、シリアを選び、各々の国の核開発及び非核化の経緯やその特徴を調査・分析した。次に国際社会が非核化対象国の非核化を導く方策を考察する上で、鍵となる主に8つの非核化要因((1)核開発の動機、(2)非核化決断時点の内外情勢、(3)核開発の進捗度、(4)制裁等の効果、(5)非核化の国際的枠組み等、(6)非核化の対価(インセンティブ)、(7)非核化の方法、(8)非核化の検証方法・検証者)を導いた。最後に、上記の対象国のうちシリアを除く8か国の非核化事例における(1)(8)の非核化要因の内容を抽出した。そして各々が非核化に有効であったか、そうでなかった場合その理由は何か、さらに非核化を成功裏に、また効果的かつ効率的に導くには、これらの要因について何をどのようになすべきか等も併せて考察した。このような結果は、今後の非核化の技術的プロセスに関する研究のベースとなると共に、まだ非核化が達成されていない国の非核化をどのように導いていくかを考察する上で、一助となると思われる。
天野 光; 斎藤 公明
JAERI-Conf 2000-016, 205 Pages, 2001/03
日本原子力研究所とチェルノブイル国際研究科学技術センターは「環境放射線影響に関する評価・解析及び評価システムの検証に関する研究」を主題として、1992年よりテーマ 1「原子力事故後の環境における外部被ばくの測定及び評価に関する研究」、及びテーマ2「原子力事故後の環境影響評価手法における評価モデルの検証に関する研究」について、1995年よりテーマ3「原子力事故後の地表面環境における放射性核種移行挙動に関する研究」を加えての研究協力協定を締結して、研究を行ってきた。この度、1999年12月に研究協力が終了するのに伴い、ワークショップを開催し、これまでの研究を総括し、今後必要な研究について議論を行った。なお、本ワークショップにはウクライナ緊急時省のハローシャ副大臣が出席し、「チェルノブイル30km圏について」と題して特別講演を行った。本レポートはこのワークショップのプロシーディングである。
清水 堅一
核物質管理センターニュース, 29(2), p.4 - 7, 2000/02
旧ソ連邦の崩壊によって、地域内で使用保管されていた核物質は、その安全な管理が非常に危惧される状況となり、1993年のパリサミットで西側諸国は旧ソ連邦諸国に対しての非核化技術支援を行うことになった。我が国も、1億米ドルの技術支援を行うことになった。原研は、国からの依頼で1995年から96年までベラルーシ、1997年から99年までウクライナへの技術支援を行った。これらの旧ソ連諸国ほの技術支援のうち、今回はウクライナへの支援内容について詳しく述べる。