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Maamoun, I.; 徳永 紘平; 土肥 輝美; 菅野 太志*; Falyouna, O.*; Eljamal, O.*; 田中 万也
Frontiers in Nuclear Engineering (Internet), 2, p.1142823_1 - 1142823_17, 2023/03
テクネチウム99は半減期が長く易動性の高い放射性核種であることから、固相として回収することが困難であるとされてきた。本研究では、新たにFe-Niナノ粒子のTc(VII)除去へ有効性を評価するために、アナログ元素であるRe(VII)の除去実験を行った。その結果、Fe-Niナノ粒子を用いて高い効率で水溶液中からRe(VII)を回収できることが示された。
中村 詔司; 初川 雄一*; 木村 敦; 藤 暢輔; 原田 秀郎
Journal of Nuclear Science and Technology, 58(12), p.1318 - 1329, 2021/12
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Nuclear Science & Technology)本研究は、東大の高速中性子源炉「弥生」を用いて、放射化法によりTcの積分実験を行った。Tc試料を、気送管システムを用いて照射した。Tcの反応率は、Tcから放出されるガンマ線を測定して求めた。中性子束は、Au箔を用いてモニタした。本研究におけるTcの反応率の結果は、JENDL-4.0を支持した。
つくば特区プロジェクト6会合メンバー
JAEA-Review 2021-016, 102 Pages, 2021/11
2011年12月に内閣総理大臣によって「総合特別区域」につくば市と茨城県内の一部の地域が指定された。つくば国際戦略総合特区では、つくばの科学技術の集積を活用したライフイノベーションやグリーンイノベーションの推進による産業化を推進することを目的とし、9つの先進的な研究開発プロジェクトが進められている。その中で、核医学検査薬(テクネチウム製剤)の国産化は、2013年10月に新たなプロジェクトと認定され、日本原子力研究開発機構をプロジェクトリーダーとして、関係機関と連携して研究開発を実施している。日本は、米国、欧州に次いでモリブデン-99(Mo)の世界第3位の消費国であるにもかかわらず、そのすべてを輸入している。海外の製造用原子炉のトラブルによる停止や、火山噴火や事故による輸送(空輸、陸送)の停止により、供給が不十分になることから、早期の国産化が強く求められている。本プロジェクトは、診断薬として用いられている放射性同位元素のテクネチウム-99m(Tc)原料であるMoの国産化を目指した技術開発である。本報告書は、第12期計画(20142020年度)に行った活動をまとめたものである。
藤田 善貴; 関 美沙紀; 滑川 要二*; 西方 香緒里; 大伍 史久; 井手 広史; 土谷 邦彦; 佐野 忠史*; 藤原 靖幸*; 堀 順一*; et al.
KURNS Progress Report 2020, P. 136, 2021/08
高濃縮ウランの利用低減や核不拡散及び核セキュリティ、核分裂生成物の処理の観点から放射化法((n,)法)によるMo製造の研究開発が進められている。放射化法で生成されるMoの比放射能は極めて低いことから、娘核種であるTcを濃縮するためメチルエチルケトン(MEK)を用いた溶媒抽出法に着目した。照射ターゲットであるMoOペレットは、長時間照射すると還元されることが分かっている。本試験では、MoOが還元した際に酸化剤としてNaOClを使用する可能性を考慮し、MoOを溶解して得られたモリブデン酸ナトリウム水溶液中へのNaCl添加の有無がTc回収率に及ぼす影響を調べた。その結果、NaClはMEKへのTc抽出率を低下させる可能性が示唆された。
松枝 誠; 柳澤 華代*; 小荒井 一真; 寺島 元基; 藤原 健壮; 阿部 寛信; 北村 哲浩; 高貝 慶隆*
ACS Omega (Internet), 6(29), p.19281 - 19290, 2021/07
被引用回数:2 パーセンタイル:14.19(Chemistry, Multidisciplinary)多段階分離を用いた干渉物質(Ru及びMo)の除去を利用した完全自動のオンライン固相抽出ICP-MS分析法を開発した。TcのICP-MS分析では試料中に大過剰に含まれるMo由来の同重体(MoH)が定量を阻害するが、本法はTc/Mo = 1.510のアバンダンス比を得ており、ICP-MSの適用範囲を拡張した。検出下限値は50 mL導入で9.3pg/L、測定時間は24分であった。
末松 久幸*; 佐藤 壮真*; 中山 忠親*; 鈴木 達也*; 新原 晧一*; 南口 誠*; 土谷 邦彦
Journal of Asian Ceramic Societies (Internet), 8(4), p.1154 - 1161, 2020/12
被引用回数:3 パーセンタイル:16.44(Materials Science, Ceramics)MoとTc核医学の製造として、照射ターゲットを製造するために三酸化モリブデン(MoO)ペレットが、一段および二段の加圧法によりパルス電流焼結で行われた。二段加圧法による550Cでの相対密度は93.1%、一段加圧法による相対密度は76.9%であった。試料の温度は、パンチに熱電対を挿入することで直接測定した。二段加圧法により、ほぼ同じ金型でも試料温度は一段加圧法よりも高くなった。これは、電圧波形と電流波形から、2段階加圧法により試料の導電率が増加し、試料温度と相対密度が上昇すると考えられた。二段加圧法により、リサイクルされた粗粒Mo濃縮MoO粉末から低温でも高密度ターゲットを製作できる見通しを得た。
田中 万也; 香西 直文; 山崎 信哉*; 大貫 敏彦; Kaplan, D. I.*; Grambow, B.
Applied Clay Science, 182, p.105282_1 - 105282_8, 2019/12
被引用回数:16 パーセンタイル:69.69(Chemistry, Physical)本研究では、様々な組成を持つ水溶液中でのNi-Zn層状物質への過レニウム酸イオン(過テクネチウム酸イオンのアナログ)の吸着実験を行った。吸着等温線をラングミュアプロットすることで最大吸着量を127.7mg/g (6.8610eq/g)と見積もった。Ni-Zn層状物質への過レニウム酸イオンの吸着は可逆プロセスであり、塩化物イオン, 硝酸イオン, 硫酸イオンなどの陰イオンが共存する系では吸着量が低下した。また、EXAFSスペクトル解析の結果、過レニウム酸イオンはNi-Zn層状物質の層間サイトに外圏錯体として静電的に吸着していることが明らかとなった。Ni-Zn層状物質は、これまで陰イオン除去にしばしば用いられてきたMg-Al複水酸化物に比べて共存する陰イオンの影響が小さい。このことから、Ni-Zn層状物質の方が汚染水中の過テクネチウム酸イオンの除去により適していると言える。
鈴木 祐未*; 中野 寛子; 鈴木 善貴; 石田 卓也; 柴田 晃; 加藤 佳明; 川又 一夫; 土谷 邦彦
JAEA-Technology 2015-031, 58 Pages, 2015/11
テクネチウム99m(Tc)は、核医学分野で一般的に使用される放射性同位元素である。日本原子力研究開発機構では、材料試験炉(Japan Material Testing Reactor: JMTR)を用いた放射化法((n,)法)によるモリブデン-99(Mo)製造に関する開発研究が行われている。一方、2013年10月に「核医学検査薬(テクネチウム製剤)の国産化」として新規プロジェクトがつくば国際戦略総合特区に採択され、JMTRを用いたMo/Tc国産化のための実証試験が計画されている。このため、本プロジェクトの一環として、2014年に新しい設備や分析装置をJMTRホットラボ施設内に整備した。本プロジェクトにおける分析装置整備の一環として、Mo/Tc溶液及びその溶液から抽出されるTc溶液等の品質検査のために-TLCアナライザー及びHPLC用放射線検出器が導入された。これらの分析装置は、Mo/Tcの代替核種としてCs, Euを用いて検出感度, 分解能, 直線性, エネルギー範囲の選択性などの性能確認試験を行った。この結果、これらの分析装置を用いることにより、溶液の品質検査の見通しを得た。本報告書は、それらの性能確認試験結果をまとめたものである。
永目 諭一郎
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences, 6(3), p.205 - 210, 2005/12
周期表の重い上限に位置する超アクチノイド元素の合成と化学的研究に関してレビューする。超アクチノイド元素は加速器を使って人工的に合成されるが、生成量はきわめて少なく1分間に1原子程度又はそれ以下である。しかも寿命が短く数10秒以下で壊変してしまう。このため化学操作で一度に扱える原子の数は1個しかなく、実験的に超アクチノイド元素の化学的性質を明らかにするのは非常に困難である。ここではヨーロッパのグループが行った、周期表第7族に属すると期待される107番元素ボーリウムの合成と気相化学的研究を紹介し、同じ族と予想されるテクネチウムやレニウムの性質との比較などを議論する。また原研で進めている104番元素ラザホージウムの溶液化学的研究の最新の成果を紹介しながら、超アクチノイド元素の化学的研究の現状とこれまでの到達点を概説する。
峯尾 英章; 朝倉 俊英; 宝徳 忍; 伴 康俊; 森田 泰治
Proceedings of GLOBAL2003 Atoms for Prosperity; Updating Eisenhower's Global Vision for Nuclear Energy (CD-ROM), p.1250 - 1255, 2003/11
次世代核燃料サイクルのための高度化湿式再処理プロセスを提案した。本プロセスの枢要な要素技術は、ヨウ素129分離,選択的Np(VI)還元によるNp分離及び高濃度硝酸による核分裂生成物、特にTcの分離,抽出クロマトグラフィーによるMAの分離、並びにCs/Srの分離である。溶解後のウランの分離はそれに続く抽出分離プロセスの必要容量を低減するために有効である。これらの技術のうち、NpのTBP中還元速度を測定した。その結果水相中での還元速度より小さいことがわかった。また、この結果に基づいて改良したフローシートを用いて使用済燃料試験を行った結果、90%のNpがU/Pu分配工程の手前で分離されることがわかった。
中川 庸雄; 岩本 修; 長谷川 明
JAERI-Research 2002-035, 94 Pages, 2002/12
重要マイナーアクチニド核種であるAm及びAmと核分裂生成物核種Tc及びCeについて、JENDL-3.2に与えられている評価済核データを最近の測定データや評価済みデータと比較・検討を行った。その結果、データの問題点を抽出し、その改善を行った。AmとAmについてはMaslov et al.による最近の評価値が優れていることがわかり、それをさらに改善して再評価値とした。TcとCeについては、共鳴パラメータや計算に使用する光学模型パラメータの改善などを行い、連続領域の断面積も再計算し、JENDL-3.2のデータを改善した。データは10eVから20MeVで与え、ENDF-6フォーマットで編集した。今回の結果は、JENDL-3.3に採用された。
朝倉 俊英; 内山 軍蔵; 星 陽崇*; Wei, Y.*; 熊谷 幹郎*
Journal of Nuclear Science and Technology, 39(Suppl.3), p.340 - 342, 2002/11
カーボン繊維カラム電極を備えた、フロー型電解セルを用いて、テクネチウム,ネプツニウム,ウランの還元について検討した。3mol硝酸中+0.3V vs Ag/AgClの電位で、Np(VI)をNp(V)に還元できた。3mol硝酸中、-0.3V vs Ag/AgClの電位で、Np,Tc共存のもと、ウラン(VI)をウラン(IV)に定量的に電解できた。Tcの還元挙動については、なお、検討が必要である。
白数 淑郎; 湊 和生
Journal of Alloys and Compounds, 337(1-2), p.243 - 247, 2002/05
被引用回数:3 パーセンタイル:29.88(Chemistry, Physical)テクネチウム-99を核変換するうえで必要となる基礎データとして、金属テクネチウム及びテクネチウム-ルテニウム合金の熱容量を示差走査型熱量計により測定した。室温から約1100Kまで測定した金属テクネチウムの熱容量が金属ルテニウムの熱容量より大きいこと、ならびに、テクネチウム-ルテニウム合金の熱容量が金属テクネチウム及び金属ルテニウムの熱容量からNeumann-Koppの法則によって評価した計算値とよく一致することを明らかにした。
白数 淑郎; 湊 和生
Journal of Alloys and Compounds, 335(1-2), p.224 - 227, 2002/03
被引用回数:7 パーセンタイル:46.93(Chemistry, Physical)テクネチウム-99を核変換するうえで必要となる基礎データとして、金属テクネチウム及びテクネチウム-ルテニウム合金の熱膨張を押棒式熱膨張計によって測定した。室温から約1300Kまで測定した金属テクネチウムの熱膨張が金属ルテニウムの熱膨張より大きいこと、ならびに、テクネチウム-ルテニウム合金の熱膨張がルテニウム濃度の増加とともに減少することを明らかにした。
加藤 大生*; 嶺 達也*; 三原 守弘; 大井 貴夫; 本田 明
JNC TN8400 2001-029, 63 Pages, 2002/01
TRU廃棄物の処分システムにはセメント系材料の使用が考えられている。セメント系材料には収着により核種の移行を遅延させる機能が期待されている。このため、TRU廃棄物の処分システムの評価においては、セメント系材料に対する核種の分配係数Kd が重要なパラメータとなる。セメント系材料に対する核種の収着に関する研究は、国内外で数多く報告されている。したがって、既存の知見を整理し、核種の分配係数を把握しておく必要がある。本報告では、性能評価上重要となるC, Cl, Ni, Se, Sr, Zr, Nb, Mo, Tc, Sn, I, Cs, Sm, Pb, Ra, Ac, Th, Pa, U,Np, Pu, Am, Cm 等の元素を対象として、セメント系材料に対する分配係数を文献及び内部実験結果から抽出・整理し、収着データベース(SDB)としてまとめた。SDB 整備の過程で、Se, Tc, Pa, U, Pu, Np 等といった実験雰囲気や酸化還元電位により化学形態が変化すると考えられる元素について、実験雰囲気が制御された条件で得られた分配係数はいくらかあるももの、酸化還元電位が制御された条件で得られた分配係数はほとんどないことを把握した。また、Se, Mo, Sm, Cm, Ac の分配係数がこれまで測定されていないことが分かった。これらの元素のうち、Se及びMo について、OPC(普通ポルトランドセメント)に対する分配係数をバッチ収着実験により取得し、SDB に反映した。
内山 軍蔵; 朝倉 俊英; 宝徳 忍; 峯尾 英章; 亀井 一成; 渡辺 眞樹男; 藤根 幸雄
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 246(3), p.683 - 688, 2000/12
被引用回数:13 パーセンタイル:64.55(Chemistry, Analytical)現行PUREX法及び改良PUREX法(PARC法)におけるネプツニウムやテクネチウムなどの微量成分の溶媒抽出挙動を使用済燃料を用いたケミカルフローシート実験により調べた。PARC法の実験結果はn-ブチルアルデヒドがNp(VI)の還元分離試薬として有効であることを示した。
古高 和禎
JNC TN8400 2000-028, 70 Pages, 2000/10
本報告は、著者が核燃料サイクル開発機構において、平成9年11月から平成12年10月までの期間に博士研究員として行った研究内容をまとめたものである。本報告は、二つの内容に分かれる。すなわち、一つは、熱中性子吸収断面積の測定の高度化に関する研究である。今一つは、HHS検出器を用いた光核反応断面積の微細構造測定の高度化に関する研究である。1)放射化法を用いた線測定による熱中性子吸収断面積測定において、得られる結果の精度に影響を及ぼす主な要因には、線収量の統計精度の他に(1)線ピーク検出効率の校正精度、及び(2)線放出率の精度があげられる。本研究では、高速三次元同時計測システムを作成することにより、(1)線ピーク検出効率を精密に校正するための、-同時計測法を用いた標準線源放射能の精密測定、及び(2)短寿命核の線放出率の精密測定に用いるための、線検出器にプラスチックシンチレータを用いた-同時計測法の開発及び、それを使用した100Tcの線放出率の精密測定を行い、熱中性子吸収断面積測定の高度化を図った。2)熱中性子吸収断面積が小さい核種に対しては、巨大共鳴領域の線を用いた光吸収反応による核変換が提案されている。光吸収反応による核変換を効率的に行うためには、光吸収断面積の入射線エネルギー依存性を詳細に知る必要がある。本研究では、高分解能高エネルギー線スペクトロメータ(HHS)を用いた光吸収断面積の微細構造測定をより精密で信頼できるものとするために、精密なモンテカルロシミュレーション計算を実施し、検出器の標準線応答関数の整備を行った。
森田 泰治; 山口 五十夫; 藤原 武; 溝口 研一*; 久保田 益充*
JAERI-Research 2000-024, 55 Pages, 2000/06
現在開発中の4群群分離プロセスについて、NUCEFのプロセスセル内に設置した群分離試験装置により、模擬高レベル廃液を用いたコールド試験、及び少量の実高レベル廃液とTcを添加した模擬廃液を用いたセミホット試験を実施した。前処理工程、抽出工程、硝酸沈殿工程、活性炭吸着工程及び無機イオン交換体吸着工程の各工程を一連の操作で試験し、Am,Tcを含め各元素はほぼ想定どおり分離されることを確認した。例えば、抽出工程においてAmは、99.99%以上が抽出され、99.92%が抽出溶媒より逆抽出された。脱硝沈殿工程では、Tc沈殿率として96.6%が得られた。以上の試験により、群分離試験装置の元素分離性能を確認することができた。また、実高レベル廃液による群分離試験の結果と比較するためのデータを取得することができる。
水谷 昭彦; 庄野 彰; 石川 真
JNC TN9400 2000-013, 66 Pages, 2000/02
これまで高速炉を中核とする核燃料リサイクルシステムにおける、自己完結型システムの炉心概念検討を行ってきた。このシステムは、自身の炉で生成されるMA(Minor Actinide)及びLLFP(Long-Lived Fission Product)をリサイクルし、炉内に閉じ込めることによってそれら核種の消滅をはかるというものであり、「平衡炉心」概念と呼ばれるものである。しかしながら、前回までの検討では、LLFPは同位体分離を仮定することによって炉心にリサイクルされており、同位体分離の技術的困難さも相まって、核燃料サイクルシステムの経済性という観点からは現実的な検討にはなっていない。本解析では、酸化物、窒化物、及び金属燃料に対して、LLFPの分離をこれまで仮定していた同位体分離から元素分離に変更して、「平衡炉心」概念の実現可能性を評価する。すなわち、これまで同位体分離を仮定して炉内に閉じ込めていた7つのLLFP核種(79Se,93Zr,99Tc,107Pd,126Sn,129I及び135Cs)のうち、どれだけの核種を元素分離により炉内に閉じ込めて「平衡炉心」を成立させることが可能であるか、核特性の観点より検討を行うものである。この報告書では、地層処分のリスク及びLLFPの炉内閉じ込め許容量、という2つの観点から、同位体分離及び元素分離を核種毎に組み合わせたさまざまなLLFP消滅の組み合わせに対して、平衡炉心の核特性評価を行う。抵抗係数の大きさから見積もられた地層処分リスクの観点から、そのリスクを負っている順にTc、I及びSeの3核種であれば元素分離によって、酸化物燃料炉心でも「平衡炉心」に閉じ込められる可能性がある。他方、LLFPを可能な限り炉内に閉じ込めるという観点からは、Pd及びZrを除く5核種のLLFP(Tc, I, Se, Sn及びCs)であれば窒化物燃料炉心を用いた場合において、核特性を損なわずに元素分離によって炉心に閉じ込めた「平衡炉心」成立の可能性がある。
小林 捷平*
JNC TJ9400 2000-009, 63 Pages, 2000/02
本研究の前半では、長半減期を有する核分裂生成物(FP)の代表的核種であるTc-99について、まず、中性子核データの現状、評価済核データについて調査を行った。次に、京都大学原子炉実験所の電子線型加速器と組み合わせて付設されている京都大学鉛スペクトロメータ(KULS)を用いて、99Tc(n,)100Tc反応断面積を熱中性子から1keVのエネルギー領域において測定した。中性子捕獲によって放出される即発ガンマ線は、アルゴンガス入り比例計数管を用いて測定した。入射中性子束/スペクトルの測定はBF3比例計数管によって行い、捕獲断面積の絶対値は10B(n,)反応によって求めた相対測定値をTc-99の熱中性子断面積に規格化した。Tc-99試料に対する中性子自己遮蔽効果は、MCNPコードを用いた計算によって補正した。Chouらが鉛スペクトロメータを用いて測定したTc-99の中性子捕獲断面積は、本測定値より全体に高いがエネルギー依存性はよく一致している。ENDF/B-VI、JENDL-3.2の評価済核データは、5.6、20eV共鳴領域及び数100keV以上で高くなっている。本研究の後半では、鉛スペクトロメータの原理とその構築、諸特性についてまとめた。中でも、KULSの特性として(1)中性子減速時間t(s)とエネルギーE(keV)の関係(ビスマス孔:E=190/tの2乗、鉛孔:E=156/tの2乗)及び(2)エネルギー分解能(ビスマス孔、鉛孔共に約40%)に関しては共鳴フィルターを用いて実験的に求め、(3)飛行時間分析法によってKULS体系中の中性子スペクトルを測定した。一方、MCNPコードを用いてKULSの諸特性を計算した結果、全体に実験値とよい一致を示した。