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下山 巖; 馬場 祐治
DV-X研究協会会報, 28(1&2), p.62 - 69, 2016/03
触媒として注目されているリンドープグラファイトに対しドーパントの効果を調べるため、吸収端近傍X線吸収微細構造(NEXAFS)分光法によりPサイトの電子構造を調べた。70Cの高温ドーピングで作製した試料のP K端NEXAFSスペクトルにはグラファイト的な偏光依存性が観測され、リンサイトが平面構造をとることを明らかにした。配位数の異なる複数の平面リンサイトのモデルクラスターについてDVX法による電子構造解析を行い、NEXAFSスペクトルと比較したところ、炭素3配位の平面構造を持つグラファイト構造のPサイトがNEXAFSスペクトルを最もよく再現することがわかった。一方、室温ドーピングと800Cのアニーリングにより作製した試料では偏光依存性の低下が観測された。5員環を含んだ曲面構造のPサイトをもつモデルクラスターの電子構造計算により、NEXAFSの偏光依存性の低下とスペクトル形状の変化を説明できることがわかった。この結果はイオンドーピング時の温度によりリンサイトの局所構造を制御できることを示している。
下山 巖; 箱田 照幸; 島田 明彦; 馬場 祐治
Carbon, 81, p.260 - 271, 2015/01
被引用回数:23 パーセンタイル:58.3(Chemistry, Physical)イオン注入法で作製したPドープグラファイトのドーパントサイトの局所構造と触媒活性との相関関係をX線吸収微細構造(NEXAFS)分光法と電気化学的手法により調べる。室温ドーピングを行った試料と高温でドーピングを行った試料はNEXAFSスペクトルの偏光依存性が異なり、高温ドーピングの試料はグラファイトのような明瞭な偏光依存性を示す。NEXAFSスペクトルを密度汎関数理論計算により解釈し、Pサイトの化学結合状態について考察する。また、酸水溶液を用いた電気化学測定において、偏光依存性の大きい試料は酸素還元反応の触媒活性をほとんど示さなかったが、偏光依存性の小さい試料では触媒活性を示す。このことはドーパントサイトの立体配置が触媒活性に影響することを示唆しており、曲面構造の導入が炭素系触媒設計において重要であるとの指針を与える。