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重イオン照射における水中OH ラジカル生成収率

Yield of OH radicals in water under heavy ion radiolysis

田口 光正; 小嶋 拓治

Taguchi, Mitsumasa; Kojima, Takuji

重イオンにより水溶液中に誘起される化学反応は、おもに水から生成したOHラジカルの量や空間分布により支配される。本研究では、OHラジカルとの反応速度定数の大きなフェノールを選び、その水溶液に220MeV Cイオンを照射し、生成物の定性・定量分析を行った。3種類の酸化反応生成物(ハイドロキノン,レソルシノール及びカテコール)について、その生成収量を、水中の進行方向に連続的に減弱するイオンエネルギーの関数として微分解析し、各生成物の収率(微分G値)を求めた。トラック内に生成した水素原子や水和電子とフェノールとの反応ではこれら反応生成物は生じない。ここで、トラック内再結合しなかったOHラジカルが$$gamma$$線と同じ反応機構で酸化反応に寄与すると仮定し、OHラジカルの微分G値を求めた。微分G値は、水中における重イオンの比エネルギーが減少するに伴い小さくなることがわかった。さらに、フェノール濃度を0.5から100mMと変えることにより、すなわち平均反応時間を1.5から300nsと変えた場合、微分G値は、イオン照射直後では比較的大きな値を示したが、時間経過に伴い小さくなった。これは、$$gamma$$線や電子線などでも観測される一般的な現象である、照射により生成した水素原子や水和電子との反応によりOHラジカルが消滅したと考えられる。

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