偏極中性子と核スピン偏極を用いたメソスケール構造研究

Study of meso-scale structure by polarized neutron and dynamic nuclear polarization methods

熊田 高之   ; 能田 洋平; 橋本 竹治; 小泉 智

Kumada, Takayuki; Noda, Yohei; Hashimoto, Takeji; Koizumi, Satoshi

原子力機構JRR-3付属中性子小角散乱装置(SANS-J-II)に組合せる、動的核スピン偏極(DNP)装置を開発した。装置は超電導マグネット(3.3Tesla),半導体製ミリ波発振器(ガンダイオード94GHz)に、Heを用いた冷却システム(1K)により構成された小ささ(直径60cm、高さ1m)と、トップローディングによる試料交換を可能にするなどの、小角散乱実験の実情に即した扱いやすさを優先した仕様とした。現在までに、ポリエチレン試料を用いて最高63 percentの偏極を達成している。これは、1K環境下におけるこれまでの値(3040%)を既に上回るものである。また、SANS実験から、同試料中における、水素原子核による非干渉性散乱、及び結晶構造に由来する信号に、偏極による強度変化を観測することに成功している。今後、部分重水素置換によるコントラスト変調の難しい試料の測定,重水素置換・スピンコントラスト変調双方を用いた複雑物質の構造決定などに、本装置を活躍させていきたい。

We developed dynamic nuclear polarization (DNP) system for polarized small angle neutron scattering system in JAEA (SANS-J-II). The DNP system is composed of milliwave oscillator (94 GHz), cryostat (1 K), and superconducting magnet (3.5 Tesla). We succeeded in polarizing proton spins in polyetylene sample up to 63%, which exceeds the value reported elesewhere of 3040%.