多核子移行反応の原子力研究への応用

Application of multi-nucleon transfer reactions to nuclear data measurements

千葉 敏

Chiba, Satoshi

原子力利用の高度化に伴い、使用済み燃料に含まれる放射性核種の処理が主要な問題の一つとなっている。特にその中に含まれるマイナーアクチノイド(MA)や長寿命核分裂生成物(LLFP)の処理をどうするかは、原子力システム全体のあり方に影響を及ぼす重要課題である。これらの核種は天然に存在せず、中性子を用いて断面積を測定するほどの試料を用意するのが困難なため、一部の核種,一部の反応を除いて核データ(中性子反応断面積)の測定は行われていない。そのため革新的高速炉や加速器駆動炉など、MAを含む核変換システムの設計に大きな不確定性が存在する。われわれは、代理反応と呼ばれる多核子移行反応を用いてこれらの核種が中性子を吸収した場合と同じ複合核を合成し、その崩壊比の測定から中性子断面積を間接的に決定する測定を計画している。この方法で半減期が数秒以下の核種の断面積でも決定可能である一方、原理的な諸問題も存在する。ここでは計画概要,手法,メリット,問題点,その解決方法などについて説明する。

Surrogate reaction method will be used to measure nuclear data for short-lived nuclei. The principles and problems inherent it will be explained.