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宮川 和也; 柏谷 公希*; 小村 悠人*; 中田 弘太郎*
Geochemical Journal, 57(5), p.155 - 175, 2023/00
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Geochemistry & Geophysics)厚い海成堆積層の深部には、地層の堆積時に取り込まれた海水が埋没続成過程で変質したと考えられる地下水(化石海水)が存在することがあり、このような場は、地層の隆起・侵食を経ても天水浸透の影響を受けず、地下水流動が緩慢であると判断される。続成過程ではケイ酸塩からの脱水などにより間隙水の塩濃度の低下などの変化が生じる。しかしながら、鉱物からの脱水反応のみでは水質変化を定量的に説明できず、水質進化の過程が明らかではない。本研究では、埋没過程におけるケイ酸塩からの脱水反応および圧密による間隙水の上方移動を考慮した解析モデルを構築し、埋没過程で生じ得る間隙水の水質進化について検討した。その結果、オパールAから石英に至る脱水反応の影響及び粘度鉱物からの脱水影響を強く受けた水質は、ボーリング調査による観測結果と近い値を示した。本解析結果は、地層の埋没続成過程において形成された化石海水の水質が地層の隆起以降現在まで保存されている可能性を示唆するものであり、化石海水が存在する場の地下水流動が緩慢であることを強く支持するものである。
小村 悠人*; 柏谷 公希*; 宮川 和也; 中田 弘太郎*; 小池 克明*
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高レベル放射性廃棄物の地層処分における安全性を確保するための一つの要件として、長期的に地下水流動が緩慢であることを示すためには、水理学的な指標のみではなく、化学的な指標から地下水水質の形成プロセスを把握し、それに基づいた地下水流動状態の理解が試みられている。北海道北部の幌延地域では、海成堆積岩が広く分布し、地下には海水が変質した化石海水が分布している。この化石海水の塩化物イオン濃度は海水の1/21/3まで低下し、水素酸素同位体比も海水の値から変化しており、どのような過程で水質進化が起きたか明らかとなっていない。本研究では、堆積、圧密排水による間隙水の移動や、続成過程で生じる水-岩石反応を考慮した一次元の堆積盆モデリングにより、堆積盆形成過程における地下水の塩化物イオン濃度や水素酸素同位体比、ヘリウム濃度の時空間変化を推定し、幌延地域に分布する化石海水の形成メカニズムを検討した。その結果、地層の圧密による上位層への排水により、下位層の間隙水が浅層まで上昇していることが確認され、幌延地域の化石海水の水質進化において、深部から上昇した間隙水の寄与が大きい可能性が明らかにされた。
小村 悠人*; 柏谷 公希*; 宮川 和也; 中田 弘太郎*; 小池 克明*
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高レベル放射性廃棄物の地層処分における安全性を確保するための一つの要件として、長期的に地下水流動が緩慢であることを示すために、水理学的な指標のみではなく、化学的な指標から地下水水質の形成プロセスを把握し、それに基づいた地下水流動状態の理解が試みられている。北海道北部の幌延町では、海成堆積岩が広く分布し、地下には海水が変質した化石海水が分布している。この化石海水の塩化物イオン濃度は海水の1/2-1/3まで低下し、水素酸素同位体比も海水の値から変化しており、どのような過程で水質進化が起きたか明らかとなっていない。本研究では、圧密排水による間隙水の移動や鉱物の相変化といった堆積過程を考慮した一次元の堆積盆モデリングにより、地下水の塩化物イオン濃度と水素酸素同位体比の時空間変化を推定し、本地域に分布する化石海水の形成メカニズムについて検討した。その結果、本地域の深層地下水は下位層から圧密排水によって上昇した間隙水がシリカの相変化の影響を受けたことで生じたものと考えられた。
宮川 和也; 柏谷 公希*; 小村 悠人*; 中田 弘太郎*
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厚い海成堆積層の深部には、地層の堆積時に取り込まれた海水が埋没続成過程で変質したと考えられる地下水が存在することがあり、このような場は、地層の隆起・侵食を経ても天水浸透の影響を受けず、地下水流動が緩慢であると判断される。続成過程では、ケイ酸塩からの脱水などにより間隙水の塩濃度の低下などの変化が生じると考えられている。しかしながら、鉱物からの脱水反応のみでは水質変化を定量的に説明できず、水質進化の過程が明らかではない。本研究では、埋没過程におけるケイ酸塩からの脱水反応および圧密による間隙水の上方移動を考慮した解析モデルを構築し、埋没過程で生じ得る間隙水の水質進化について検討した。その結果、オパールAから石英に至る脱水反応の影響及び粘度鉱物からの脱水影響を強く受けた水質の2つの傾向が確認され、ボーリング調査による観測結果と近い値を示した。このことから、天水との混合を経ずとも、埋没続成過程において、低塩濃度且つ酸素同位体比が海水より重い水質が形成され得ることが確認された。本成果は、経産省資源エネルギー庁委託事業「令和3年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業」の一部である。
小村 悠人*; 柏谷 公希*; 宮川 和也; 中田 弘太郎*; 小池 克明*
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高レベル放射性廃棄物の地層処分では、長期にわたる地下水流動や物質移行の予測が必要となる。地質学的な時間スケールを通して過去に生じた水理地質特性の変化や水質進化に関する理解は、現在の水理地質特性や水質の空間分布、さらには将来生じる地下水流動や物質移行の予測に役立つものと考えられる。北海道北部の幌延地域に分布する海成層の深部には化石海水が分布している。化石海水は推定された滞留時間から海成層堆積時に取り込まれたものと考えられているが、海水とは異なる水素酸素同位体比や塩化物イオン濃度を示し、海水から化石海水への水質変化の原因が明らかになっていない。そこで本研究では、化石海水の形成プロセスの理解を目的に、海底での継続的な地層の堆積を再現した一次元の堆積盆モデリングを行い、堆積・圧密に伴う上載圧および間隙水圧の時空間的な変化と間隙水の流動、続成過程で生じた水-岩石反応による水質の変化などについて推定した。
宮川 和也; 柏谷 公希*; 小村 悠人*; 中田 弘太郎*
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厚い海成堆積層の深部には、地層の堆積時に取り込まれた海水が埋没続成過程で変質したと考えられる地下水(化石海水)が存在することがあり、このような場は、地層の隆起・侵食を経ても天水浸透の影響を受けず、地下水流動が緩慢であると判断される。続成過程ではケイ酸塩からの脱水などにより間隙水の塩濃度の低下などの変化が生じる。しかしながら、鉱物からの脱水反応のみでは水質変化を定量的に説明できず、水質進化の過程が明らかではない。本研究では、埋没過程におけるケイ酸塩からの脱水反応および圧密による間隙水の上方移動を考慮した解析モデルを構築し、埋没過程で生じ得る間隙水の水質進化について検討した。その結果、オパールAから石英に至る脱水反応の影響及び粘度鉱物からの脱水影響を強く受けた水質は、ボーリング調査による観測結果と近い値を示した。本解析結果は、地層の埋没続成過程において形成された化石海水の水質が地層の隆起以降現在まで保存されている可能性を示唆するものであり、化石海水が存在する場の地下水流動が緩慢であることを強く支持するものである。