Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
横田 裕一郎; 舟山 知夫; 池田 裕子; 坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 小林 泰彦
JAEA-Review 2015-022, JAEA Takasaki Annual Report 2014, P. 67, 2016/02
本研究ではバイスタンダー効果における一酸化窒素(NO)の役割を調べた。ヒト正常線維芽細胞に線(LETは0.2keV/
m)あるいは炭素イオンビーム(108keV/
m)を照射した後、非照射細胞と共培養した。24時間の共培養後に非照射細胞の生存率と培養液に含まれるNOの酸化物である亜硝酸イオンの濃度を測定した。非照射細胞の生存率低下は照射細胞に曝露する線量に依存したが線質には依存しなかった。非照射細胞の生存率と亜硝酸イオン濃度には負の相関関係が認められた。一方で、NO発生剤であるNOC12を培養液に加えるだけでは、細胞の生存率は低下しなかった。以上の結果から、細胞内で生成されるNOの量がバイスタンダー効果の決定因子の一つであるが、細胞間情報伝達因子ではない可能性が示された。
横田 裕一郎; 舟山 知夫; 池田 裕子; 小林 泰彦
Isotope News, (741), p.21 - 25, 2016/01
International Journal of Radiation Biology誌2015年5月号で我々が発表した論文を中心にバイスタンダー効果について概説した。実験では、バイスタンダー効果の線量及び線質依存性と、それに関連する分子メカニズムを調べるため、線あるいは炭素イオンビームで照射したヒト正常線維芽細胞を非照射細胞と共培養した。その結果、照射細胞に曝露する線量が増加すると非照射細胞の生存率は低下し、一酸化窒素(NO)ラジカルが酸化して生じる培養液中の亜硝酸イオン濃度は上昇した。それらの線量応答は
線と炭素イオンビームで類似した。また、NOラジカルの特異的消去剤を投与すると非照射細胞の生存率低下は抑制された。さらに、非照射細胞の生存率と培養液中の亜硝酸イオン濃度は負に相関した。以上の結果から、NOラジカルが媒介するバイスタンダー効果は放射線の線量に依存するが線質には依存しないことが明らかになった。NOラジカル産生はバイスタンダー効果の重要な決定因子の一つかもしれない。バイスタンダー効果を制御することで放射線がん治療の副作用低減や治療効果を増強できる可能性にも言及した。
服部 佑哉; 鈴木 芳代; 舟山 知夫; 小林 泰彦; 横谷 明徳; 渡辺 立子
Radiation Protection Dosimetry, 166(1-4), p.142 - 147, 2015/09
被引用回数:5 パーセンタイル:41.27(Environmental Sciences)本研究では、細胞集団中の細胞間シグナル伝達と細胞周期の時間・空間的な動態を計算可能な数理モデルを構築し、照射する放射線の線量や照射領域によってシグナル伝達がどのように変化するのか、その結果、放射線応答として細胞周期や細胞の生存にどのような変化が現れるのかを明らかにすることを目的とする。提案する放射線応答モデルでは、細胞間のシグナルをギャップ結合経由のシグナルX、培養液経由のシグナルYとし、これら2つのシグナル伝達を誘発する放射線をシグナルZとして表現する。個々の細胞の細胞周期は、周期的な進行(G1, S, G2, M期)がシグナルX, Y, Zによって停止する仮想時計として表現する。講演では、2次元平面上に配置された細胞集団にシグナルZが入力されたとき、シグナルX, Yが拡散方程式に基づいて集団全体に伝達する様子と、各シグナルによって仮想時計(細胞周期)が変化する様子について、線量や照射領域を変えた計算結果の一例を示し、放射線応答の解析に対する本モデルの有用性を報告する。
冨田 雅典*; 松本 英樹*; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 大塚 健介*; 前田 宗利*; 小林 泰彦
Life Sciences in Space Research, 6, p.36 - 43, 2015/07
放射線誘発バイスタンダー効果は、放射線で直接照射された細胞から放出された細胞間シグナルが、周辺の非照射細胞に放射線応答を誘導する現象である。とりわけ、低フルエンス重イオンが誘導するバイスタンダー効果は、宇宙環境における宇宙飛行士の放射線リスクに直結する重要な問題である。そこで、原子力機構・高崎量子応用研究所のマイクロビーム細胞照射装置を用いた重イオン照射でバイスタンダー効果を誘導し、そのシグナル経路の解析を行った。研究の結果、COX-2遺伝子が含まれる、AktおよびNF-B依存シグナル伝達経路が、一酸化窒素ラジカルが関与する重イオン誘発バイスタンダー応答の誘導に重要であることが示された。加えて、COX-2タンパク質が重イオン誘発バイスタンダー応答におけるバイスタンダー細胞の分子マーカーとして利用できる可能性も示した。
横田 裕一郎; 舟山 知夫; 武藤 泰子*; 池田 裕子; 小林 泰彦
International Journal of Radiation Biology, 91(5), p.383 - 388, 2015/05
被引用回数:9 パーセンタイル:58.17(Biology)本研究ではバイスタンダー効果の線量及び線質依存性と関連する分子メカニズムを調べるため、線あるいは炭素イオンビームで照射したヒト線維芽細胞を非照射細胞と共培養した。その結果、照射細胞に曝露する線量の増加につれて非照射細胞の生存率は低下し、一酸化窒素(NO)ラジカルが酸化して生じる培養液中の亜硝酸イオン濃度は上昇した。それらの線量応答は
線と炭素イオンの間で類似していた。また、NOラジカルの特異的消去剤で処理することで非照射細胞の生存率低下は抑制された。さらに、非照射細胞の生存率と培養液中の亜硝酸イオン濃度は負に相関した。以上の結果から、ヒト線維芽細胞においてNOラジカルが媒介するバイスタンダー効果は放射線の線量に依存するが線質には依存しないことが明らかになった。NOラジカルの産生は
線及び炭素イオンが誘発するバイスタンダー効果の重要な決定因子の一つかもしれない。
坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 服部 佑哉; 池田 裕子; 武藤 泰子*; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 浜田 信行*; 白井 花菜*; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 74, 2015/03
昆虫・哺乳動物等を用いた実験から、放射線被ばくにより学習障害等の神経系への影響がもたらされることが示唆されている。我々は、神経系を研究するためのモデル生物として知られる線虫を用いて、化学走性学習が、特定の条件下においてのみコバルト60線照射の影響を受けることを明らかにした。しかし、線虫のどの部位における放射線応答が、化学走性学習行動の変化を誘導するかは明らかでない。そこで、我々は、炭素イオンマイクロビームを用いて、線虫の化学走性学習に対する直接的な放射線の影響部位を明らかにすることを目的とした。マイクロビーム照射技術は、細胞あるいは組織レベルでの直接的な放射線の影響を調べるための有効なツールとして知られている。本報告では、2つの線虫変異体(
,
)に対して、マイクロビームの局部照射を行った結果について報告する。
渡辺 和代*; 秋月 岳*; 志村 幸子*; Gusev, O.*; Cornette, R.*; 黄川田 隆洋*; 坂下 哲哉; 舟山 知夫; 小林 泰彦; 奥田 隆*
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 87, 2015/03
ネムリユスリカは極めて高い乾燥耐性と放射線耐性を示す。我々は、ネムリユスリカ由来の培養細胞Pv11を確立し、培養細胞においても乾燥耐性を示すことを明らかにした。本報告では、このネムリユスリカ由来の培養細胞Pv11を用いてイオンビーム照射の影響を明らかにすることを目的とする。高崎量子応用研究所TIARAでのヘリウムイオン照射実験の結果、480Gyのヘリウムイオン照射後も、再水和後の培養細胞に増殖能力が残されていることを確認した。
鈴木 芳代; 服部 佑哉; 坂下 哲哉; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 池田 裕子; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 88, 2015/03
The nematode is a good
model system to examine radiation effects on vital functions such as locomotion, feeding, learning and memory. Using
, we recently investigated the radiation effects on locomotion (snake-like crawling motion) and found that whole-body irradiation significantly reduced locomotion. Furthermore, we focused on the pharyngeal pumping motion (chewing and swallowing), which is a rapid periodic motion, and found that the proportion of pumping-motion arrest increased after whole-body irradiation. As the next step, we started to examine whether or not the effects observed after whole-body irradiation could be induced by microbeam irradiation to a very limited region. In this report, we summarize the results of microbeam irradiation experiments we carried out in the past few years. Main findings in this study are the following: (1) Effects of the region-specific microbeam irradiation differ depending on types of motion, and (2) effects of whole-body irradiation tend to be more effective than those of the region-specific microbeam irradiation at the same irradiation dose. Further studies on the mechanisms underlying the radiation-induced changes of movements are required.
横田 裕一郎; 舟山 知夫; 池田 裕子; 坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 75, 2015/03
本研究では、異なる線量の線あるいは炭素イオンビームによって誘発されるバイスタンダー効果の線量及び線質依存性と、一酸化窒素(NO)ラジカルの役割について調べた。ヒト正常繊維芽細胞を実験に用い、
線あるいは炭素イオンを照射した細胞と非照射細胞を多孔性メンブレンの上側と下側で24時間培養した。培養後、非照射細胞の生存率は照射細胞に曝露した線量の増加とともに低下し、0.5Gy以上では下げ止まった。このことから、バイスタンダー効果は照射細胞に曝露した放射線の線量に依存するが、線質には依存しないことが明らかになった。さらに、NOラジカルの特異的消去剤であるc-PTIOをあらかじめ培養液に加えておくと、非照射細胞の生存率の低下が抑制された。以上の結果から、
線や重イオンビームによって誘発されるバイスタンダー効果にNOラジカルが重要な役割を果たすことが示された。
舟山 知夫; 横田 裕一郎; 鈴木 芳代; 坂下 哲哉; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 73, 2015/03
原子力機構・マイクロビーム細胞照射研究グループでは、集束式重イオンマイクロビームを用いた、従来のコリメーション式重イオンマイクロビームを用いた照射より高速でかつ正確な細胞照準照射技術の開発を進めている。これまでに集束式重イオンマイクロビームを用いた細胞の照準照射のための要素技術の開発を行ってきた。そこで、2013年度は、これまでに確立したそれらの要素技術を用いて、実際の細胞への高速で正確な照準照射技術の確立を目指す実験を実施した。実験では、ヒト子宮頸がん細胞由来細胞株HeLaを用い、顕微鏡下で細胞試料へのスキャンビームを用いた照準照射を行った。その結果、CR-39上で検出したイオンヒット位置と、細胞核内に検出された H2AXフォーカスの位置が一致したことから、細胞への高速な照準照射を実現することができたことが確かめられた。
松本 英樹*; 冨田 雅典*; 大塚 健介*; 畑下 昌範*; 前田 宗利*; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 鈴木 芳代; 坂下 哲哉; 池田 裕子; et al.
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 76, 2015/03
低線量/低線量率放射線に対して生物が示す特異的な応答様式には、放射線適応応答、放射線誘発バイスタンダー応答、放射線超高感受性、遺伝的不安定性等がある。我々は、原子力機構において開発された細胞局部照射装置(HZ1)および深度制御種子照射装置(HY1)を用いて、放射線誘発バイスタンダー応答による放射線適応応答の誘導機構の解析を実施した。中央にスポットしたコロニーの細胞に520MeV Ar
をマイクロビーム照射し、4-6時間培養後に同
Ar
をブロードビーム照射した結果、放射線適応応答の誘導が認められ、この誘導はNO特異的な捕捉剤であるcarboxy-PTIOの添加でほぼ完全に抑制された。このマイクロビーム照射による放射線適応応答の誘導が起きた細胞で、
遺伝子の発現が特異的に発現誘導されていることが見いだされ、放射線適応応答の誘導にNOを介したバイスタンダー効果の誘導が関与していることが強く示唆された。
冨田 雅典*; 松本 英樹*; 大塚 健介*; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 鈴木 芳代; 坂下 哲哉; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 77, 2015/03
低粒子数の重イオン線による生物影響を解明する上で、DNA初期損傷量に依存しない「非標的効果」が注目されている。特に、放射線に直接曝露された細胞の近傍に存在する全く放射線に曝露されていない細胞において観察される「放射線誘発バイスタンダー応答」は、最も特徴的な非標的効果であり、その解明は放射線生物学のみならず、粒子線がん治療、宇宙放射線の生体影響評価においても重要である。本研究は、これまでの2次元での培養細胞を用いた研究から、組織レベルでの生体応答研究への展開を図るため、分化誘導させたヒト3次元培養皮膚モデルを用い、原子力機構の細胞局部照射装置を利用し、放射線誘発バイスタンダー応答によって生じるシグナル伝達経路の変化を明らかにすることを目的とした。2015年度は、ヒト3次元培養皮膚モデルへの重イオンマイクロビーム照射条件の検討を行い、照射した試料のMTT法による生細胞率測定を実施し、試料全体を重イオンビームで照射したものと比較した。その結果、全体照射した試料では生存率の低下が認められた一方、本条件でマイクロビーム照射した試料では生存率の低下が認められなかった。
鈴木 雅雄*; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 武藤 泰子*; 鈴木 芳代; 池田 裕子; 服部 佑哉; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 78, 2015/03
これまでに、バイスタンダー効果で誘発される細胞死や染色体変異における照射イオン種依存性の解析を進めてきた。2015年度の研究では、バイスタンダー効果による遺伝子の変異誘発におけるイオン種依存性を、ヒト正常線維芽細胞を用いて解析した。コンフルエントに培養した細胞試料に対し、16
16マトリックス照射法で、異なる核種(炭素,ネオン,アルゴン)のマイクロビーム照射を行った。
遺伝子の変異誘発頻度は、6-チオグアニン耐性コロニーの頻度で測定した。炭素イオンマイクロビーム照射した試料では、非照射試料およびギャップジャンクション経由の細胞間情報伝達に特異的な阻害剤で処理した試料と較べ、変異頻度が6倍高くなった。一方、ネオン及びアルゴンマイクロビームで照射した試料では、このような変異頻度の上昇が認められなかった。この結果は、ギャップジャンクションを介したバイスタンダー効果による突然変異誘発において、イオン種依存性が存在すること意味する。
和田 成一*; 安藤 達彦*; 渡辺 彩*; 柿崎 竹彦*; 夏堀 雅宏*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 横田 裕一郎; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 79, 2015/03
これまでのマイクロビームを用いた細胞の局部照射実験でバイスタンダー効果の誘導には細胞核の損傷応答だけでなく細胞膜応答も重要であり、細胞膜応答分子であるスフィンゴミエリナーゼがその応答に関与することが明らかになってきた。しかし、スフィンゴミエリナーゼがどのようにして細胞間情報伝達に関与しているかはまだ明らかになっていない。そこで本研究では、照射後に細胞外に分泌されるスフィンゴミエリナーゼが、細胞から放出され、細胞間情報伝達に関与する膜小胞であるエクソソーム内に含有されているかを解析した。照射したグリオーマ細胞をから細胞外に放出されたエクソソーム中にスフィンゴミエリナーゼが含まれるか解析するため、培養上清からExo Quickによるエクソソームの精製を行い、抗スフィンゴミエリナーゼ抗体を用いたウエスタンブロットを行った。その結果、照射によって細胞外に分泌されたスフィンゴミエリナーゼは主にエクソソームの形態で細胞外に分泌されることが明らかになった。この結果からバイスタンダー効果においてスフィンゴミエリナーゼ自身がバイスタンダー因子としてシグナル伝達に関与することが示唆された。
明尾 潔*; 舟山 知夫; 小林 泰彦; 明尾 庸子*
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 80, 2015/03
イオンビームがヒト培養網膜色素上皮細胞に及ぼす影響を明らかにするために、異なる核種のイオンビームで照射した細胞におけるSuperoxide Dismutase (SOD)活性の測定を実施した。ヒト培養網膜血管内皮細胞にヘリウムイオンビーム、および炭素イオンビームを照射し、照射後0, 4, 8, 24時間後に細胞を採取した。この細胞試料にSODアッセイバッファを加えて凍結解凍を繰り返すことで溶解した細胞抽出液のSOD活性を、ルミノールアッセイ法を用いて定量した。その結果、ヘリウムイオンビームを照射した細胞試料では、照射後の時間経過に伴いSOD活性の低下が進むことが認められたが、炭素イオンビームを照射した細胞では、照射24時間後にSOD活性が上昇することが明らかになった。この結果は、ヘリウムイオンと炭素イオンでは、照射後のSOD活性に及ぼす影響が異なることを示唆する。
上田 大介*; 白井 孝司*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 横田 裕一郎; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 84, 2015/03
これまで産下2時間後のカイコ初期発生卵に10Gyの炭素イオンを照射すると短時間の発生停止の後に発生を再開するものの、傷害の修復は不完全であり、多くの卵が、産下12-13時間後に傷害核がアポトーシスにより排除されることで孵化することなく致死することを報告した。そこで、本研究では、カイコ初期発生卵における放射線に対する応答の詳細をさらに明らかにすべく、受精直前と受精後卵黄内核分裂期に照射を行うことでその影響を調査した。最初に、産下1.5時間の受精直前の卵に炭素イオン照射を行った。その結果、照射卵では受精直後に発生が停止し、非照射卵と比較すると平均して約2時間の発生遅延が認められた。この結果は、照射によって前核に生じたDNA損傷は受精を阻害しないことを意味する。次に、卵黄内核分裂期である産下6時間後の卵に炭素イオン照射を行い、その後の発生を調査した。その結果、非照射卵と比較して明らかな発生遅延が認められ、発生再開に要する時間は、産下1.5時間の卵の場合と較べ約2倍必要となることが明らかになった。
保田 隆子*; 尾田 正二*; 浅香 智美*; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 武藤 泰子*; 池田 裕子; 小林 泰彦; 三谷 啓志*
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 85, 2015/03
本研究では、卵殻が透明で発生までの全過程を生きたまま詳細に観察可能なメダカ胞胚期に重イオン照射を行い、その後の発生を詳細に観察した。メダカ胞胚期に炭素線をブロードビーム照射した結果、10Gyでは体軸形成不能、5Gyでは体軸形成異常、2Gyでは器官形成異常が観察され、全て早期胚死となり孵化には至らなかった。次に、炭素線マイクロビーム(ビーム径120および180m)を用いて胚盤(約500
m径)中央を局部照射し、胚盤全体をブロードビーム照射した試料と比較した。その結果、局部照射した試料では、発生遅延や、眼組織における器官形成異常が観察された。一方、孵化率では、全体照射した試料では2Gyでほとんどの胚が孵化できなかったが、炭素イオンマイクロビームで胚盤中央部のみを50Gyで局部照射した試料では約半数の胚で正常な孵化が観察された。
吉田 由香里*; 溝端 健亮*; 松村 彰彦*; 磯野 真由*; 八高 知子*; 中野 隆史*; 舟山 知夫; 小林 泰彦; 金井 達明*
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 81, 2015/03
日本の炭素線治療において臨床線量を決定するために用いられているclinical RBE (cRBE)はexperimental RBE (eRBE)にscaling factorをかけたものである。eRBEはhuman salivary gland(HSG)細胞を用いたコロニー形成法によりlinear-quadratic(LQ)モデルで得られた値および
値から求められた各LETにおけるRBEが採用されており、これが全ての患者(すなわちすべての細胞および組織)における炭素線治療計画に反映されている。しかしながら、RBEは線量,線量率,細胞や組織の種類、エンドポイント、酸素化の程度などにより異なる。そこで、群馬大学重粒子線照射施設(GHMC)のLET 13
80keV/
m、および原子力機構TIARAのLET 108
158keV/
mの炭素線を用い、その線量分布を評価すると共に、ヒト正常皮膚細胞への照射を行い、得られたRBE値について過去のHSG細胞の結果と比較・解析した。
高橋 昭久*; 久保 誠*; 五十嵐 千恵*; 吉田 由香里*; 舟山 知夫; 小林 泰彦; 中野 隆史*
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 82, 2015/03
放射線によるDNA二本鎖切断(DSB)は致命的であるが、相同組換え(HR)および非相同末端結合(NHEJ)によって修復される。そこで、我々は殺細胞効果におよぼすDNA二本鎖切断修復のLET依存性を明らかにすることを目的に、DNA二本鎖切断修復の異なる細胞における高LET放射線感受性をコロニー形成法で評価した。その結果、NHEJがはたらく野生型細胞とHR欠損細胞は108keV/mの炭素線で高いRBE値を示した。SER値はHR修復欠損ではLETの違いによらず約2と一定だったのに対して、NHEJ修復欠損ではX線に比べて、HR修復欠損よりも高い値を示した。
斎藤 克代*; 舟山 知夫; 小林 泰彦; 村上 孝*
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 83, 2015/03
エピジェネティック分子標的薬は、DNAに記された遺伝暗号(塩基配列)自体は変化させないが、DNAや付随するヒストン蛋白の修飾を後天的に変化させることができる。これらの薬剤は、遺伝子異常が蓄積しているがん細胞を狙って作用するために、がん選択的な治療効果を高めることが可能である。そこで本研究では、エピジェネティック分子標的薬と重粒子線の併用が、悪性黒色腫細胞に与える影響を調べた。マウス悪性黒色腫細胞株B16F10にエピジェネティック分子標的薬を投与した後、原子力機構・TIARAにおいて炭素イオンビームで照射した。照射した細胞の生存率をコロニー形成法で評価した結果、代表的なヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)で処理した試料において、TSAと重粒子線の併用が、B16F10のコロニー形成能を抑制することが明らかになった。