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花谷 育雄; 宗像 雅広; 木村 英雄; 三箇 智二*
原子力バックエンド研究(CD-ROM), 18(1), p.3 - 23, 2011/06
高レベル放射性廃棄物の地層処分においては、その長期的な安全性を確保するうえで、地下水流動に伴う人間社会への核種移行を評価する必要がある。本研究はその評価手法整備の一環として、地形変化による長期的な地下水流動への影響を評価するために、堆積岩分布地域である房総半島の4河川を対象として、河床縦断形変遷のシミュレーションを実施し、線的侵食プロセスを再現するとともに、氷期間氷期の1サイクル分に相当する12.5万年間の侵食量を求めた。その結果、4河川ともほぼ類似したパラメータを使用して河床縦断形の再現ができた。また、房総半島の場合は地質が比較的軟らかいため従順化しやすく、隆起速度に見合った河床縦断形に変化することがわかった。地域的には、内湾に注ぐ河川と外洋に注ぐ河川とでは異なる地形変化を生じ、前者では期間を通じて河床高度があまり変わらず、海域は広範囲にわたって凹型の縦断形が現れるのに対し、後者では海水準変動の影響が大きく、期間中に河床高度が2030m程度変化するとともに、現在の水深が30m以深の海域に凸型の縦断形が現れることが明らかになった。
花谷 育雄; 宗像 雅広; 木村 英雄; 三箇 智二*
原子力バックエンド研究(CD-ROM), 17(2), p.55 - 70, 2010/12
高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全評価に資するため、日本原子力研究開発機構では、広域を対象とした長期的な地下水流動評価手法の整備を進めている。本研究はその一環として、将来的な寒冷気候の到来に伴った地下水流動状況を予測評価するために、凍土が形成されていた可能性の高い北海道幌延地域を対象として、空中写真と高精度DEM(数値標高モデル)を使用した地形解析を実施した。その結果、氷期の幌延地域では周氷河性の平滑斜面が広く発達し、後氷期に入ると降水量の増大により平滑斜面が侵食されて後氷期斜面が形成されたが、この後氷期の侵食作用は対象地域内で一様ではなく、地質の違いによって明瞭な差があることがわかった。すなわち、勇知層や更別層では平滑斜面の60%以上が既に侵食され、一部では谷の切り合いにより稜線高度が低下していた。一方、声問層や稚内層では水系密度が低く、平滑斜面の40%未満を侵食するに留まっていた。また、後氷期に形成された谷は、声問層以上の比較的浅い谷と稚内層以下の比較的深い谷とに分類できることがわかった。
花谷 育雄; 宗像 雅広; 木村 英雄
no journal, ,
古気候変化が広域かつ長期的な地下水流動に与える影響を定量的に評価するために、東北日本の2地点の花粉分析データにモダンアナログ法を適用し、過去の気温と降水量について解析した。山形県荒沼のケースでは約9万年前から現在までの古気候が復元できた。一方、福島県赤井谷地のケースは約5万年前から現在までの古気候が復元できたものの、一部に地層が欠落していると思われる部分があり、検討の余地を残している。荒沼の解析結果によると、その平均気温はMIS4及びMIS2で24Cと、現在より57C低い。また、ヒプシサーマル期では13C前後と、現在より4C程度暖かい。古気温の個々のピークと深海底コアから得られた海水温変化とは良い対応を示した。降水量については、MIS4, MIS2において1,100mm前後と、現在の年間降水量1,381mmに比べて2030%程度少なく、また、MIS5.1やヒプシサーマル期では1,500mmを超える年降水量の値が示された。これらの結果により、氷期には現在よりも降水量が300mm程度少なく、逆に最終間氷期や完新世では100mmもしくはそれ以上多かった可能性が高いことが推定できた。
木村 英雄; 宗像 雅広; 花谷 育雄; 酒井 隆太郎; 滑川 麻紀; 松葉 久
no journal, ,
高レベル放射性廃棄物に関しては、平成20年代前半に処分施設の精密調査地区選定が行われる予定であり、その際には、規制機関の関与が求められることが考えられる。高レベル放射性廃棄物を地層処分する場合に安全性を確保するためには、放射性廃棄物の地下水流動に伴う人間社会への移行を抑制することが重要である。そこで、その移行を評価するために、隆起侵食,海水準の変動等の天然事象の変化等による外的要因を含む広域かつ長期にわたる地下水流動のメカニズムを解明し、広域における長期的地下水流動の評価手法を整備する必要がある。日本原子力研究開発機構安全研究センターでは、経済産業省原子力安全・保安院より「地層処分にかかわる水文地質学的変化による影響に関する調査」を受託した。本研究は、高レベル放射性廃棄物の地層処分を対象に、広域における地下水流動の評価手法を整備するものである。本報告ではこれまでの調査結果概要及び規制行政庁を支援するための研究について報告する。
花谷 育雄; 宗像 雅広; 木村 英雄; 三箇 智二*
no journal, ,
日本原子力研究開発機構では、安全規制の立場から、広域かつ長期間を対象とする地下水流動の評価手法を確立し、実測データ等により広域地下水流動モデルを検証することを目的とした調査研究を実施している。その一環として、一般にボーリング結果などの既存資料に乏しい山地部の結晶質岩地域において、地下水流動に影響を与える重要な地質構造である断裂系の分布状況を調査し、水理地質構造を評価するため、花崗岩分布地区におけるリニアメント解析及び自然線探査を実施した。リニアメントの解析では、(1)空中写真による判読,(2)DEM(数値標高モデル)からの自動抽出,(3)既往データの重合処理等により、信頼性の有無を評価したリニアメント分布図を作成した。また、カーボーンとマンボーンによりビスマス、タリウム、カリウムの3核種と総線について5インチ5インチのNaIシンチレーション検出器を使用して計数した。計数したBi/Tl比とBi/K比の標準偏差をもとに、プラス方向の大きな測定値を正の異常値,マイナス方向の小さな測定値を負の異常値と称することにし、それら値を指標として、開口割れ目や破砕帯の識別を試みた。
花谷 育雄; 宗像 雅広; 木村 英雄
no journal, ,
地形変化による長期的地下水流動への影響を評価するために、変化の顕著な線的侵食に着目して河床縦断形の形成プロセスの検討を行い、氷期間氷期の地形変遷を再現することで将来的な地形変化量を推定した。具体的には、下末吉期末期(MIS5.5)の段丘高度,最終氷期に形成された埋没谷,隆起速度分布などの既存情報に基づき、内湾に面する2河川と外洋に面する2河川の河床縦断形シミュレーションを実施し、12.5万年間の侵食量分布図を求めた。その結果、12.5万年間の侵食量は、地層境界を横断して谷が形成されている内湾に面した2河川の場合、河口付近で2050m,中流域で100150m,上流域で250300mと推定された。一方、地層境界に制圧されて流下する外洋に面した2河川の場合は、河川の全域で200250m、あるいは150250m程度の侵食を受けたと推定された。また、海水面低下に伴って形成される侵食前線(遷急点)の経時的な遡行については、0.71.0m/yrという移動速度が得られた。
宗像 雅広; 渕脇 博孝; 酒井 隆太郎; 花谷 育雄; 木村 英雄
no journal, ,
広域を対象とした長期地下水流動評価手法の開発の一環として、堆積岩分布地域を対象とした解析的検討を行った。対象となる地域は、砂泥互層が内湾方向に向かって緩く傾斜する単斜構造を呈する。この領域に対し、解析範囲を対象地域の中央に位置する河川とそれを取り囲む5河川の流域(およそ4050km)とした。また、地層の透水性は、既存文献による透水性データを参考に設定し、間隙率は岩相の一般的値からの推定値を用いた。隆起侵食量に関しては、既存の調査を参考に空間分布を考慮して設定した。10万年間の地下水流動解析の結果を見ると、隆起の影響により全水頭の勾配が大きくなり、領域中央に位置する河川の中流域の地下500mにおける流速の変化は5%程度増加していた。流速の変動は場所によって大きな差を示しており、地質の分布等による影響の大小が考えられる。このため、より現実的な隆起侵食速度とその空間分布の設定を行うことで、長期的な流動状況の変化を想定できる可能性が示唆された。
木村 英雄; 宗像 雅広; 花谷 育雄; 酒井 隆太郎; 渕脇 博孝; 松葉 久
no journal, ,
地層処分評価手法の整備を目的として、(1)外的要因を考慮した広域かつ長期にわたる地下水流動解析モデルの構築,(2)広域かつ長期に亘る地下水流動解析モデルの検証方法,(3)広域かつ長期にわたる地下水流動解析コードの整備を実施している。平成16年から平成21年までの研究計画においては、数10100km程度の広域における地下水流動が考慮可能な基本モデルを構築するとともに、その基本モデルによる解析結果の検証のための対象地区を選定して、広域的水文現象に関する既存調査結果並びに知見をもとに検証を行う予定としている。平成19年度からは、地形及び気候関連事象の変化等の外的要因による地下水流動系への影響を評価できる解析モデルに拡張し、水文地質学的変化を伴う広域における長期地下水流動の評価手法を整備中である。本報告並びに関連する報告において、長期的な地下水流動解析を実施する際の解析対象範囲に関する検討、海水面変化が地下水流動に影響を与えるシナリオの検討、地下水流動に与える長期的な地形変化の調査、地形変化がもたらす地下水流動変化の解析的検討等を報告する。