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角野 貴信; 舟川 晋也*; 小崎 隆*
Soil Science and Plant Nutrition, 55(2), p.243 - 251, 2009/04
被引用回数:11 パーセンタイル:29.87(Plant Sciences)湿潤アジアにおける土壌有機物動態を詳細にモデル化するためには、易分解性炭素(PMC),窒素(PMN),難分解性炭素(ROC),窒素(RON)量を規定する土壌及び気象特性値を明らかにする必要がある。タイ,インドネシア,日本の耕地及び森林から得られた89点の表層土壌を、一定温度・水分含量で静置培養し、放出されたCO及び無機態Nを経時的に定量した。積算した無機化C及びN量を幾つかのモデルにフィッティングさせ、速度定数,PMC,PMN量を算出した。ROC及びRONは、それぞれ全C及び全N量とPMC,PMNとの差とした。段階的重回帰分析の結果、PMC及びPMNは軽比重画分(1.6gcm)の炭素(LFC)及び窒素量(LFN)と粘土含量によって規定されていた。一方、ROC及びRONは、おもに軽比重画分の有機物と非晶質鉱物、及び粘土含量によって規定されていた。湿潤アジアにおける土壌有機物動態の正確な理解のためには、物理分画が有効であるだけでなく、非晶質鉱物など、母材の違いによる影響を詳細に検討する必要があることがわかった。
角野 貴信; 舟川 晋也*; 小崎 隆*
no journal, ,
土壌有機物(SOM)は陸域生態系において重要な役割を担っており、その動態をモデル化することは持続的な食糧生産や炭素循環の解明に大きく寄与する。これまで多くの動態モデルが提案されてきたが、そのほとんどが固有の代謝回転速度を持つ有機物画分を概念的に設定して構築されており、その各画分は実測することができないという短所を持つ。そこで本研究では、「実測できる特性値」によるSOM動態のモデル化を目的とし、その構築及び検証を行った。ユーラシアステップにおいて採取された表層土壌の全有機炭素量を、培養実験により易分解性炭素量(PMC)と難分解性炭素量(ROC)に分け、これらの存在量と土壌,気象特性値との関係を明らかにした。次に、PMC、見かけの一次生産(NPP),土壌呼吸速度を日単位で推定する、土壌有機炭素動態モデルを構築した。このモデルを用いて、20022004年のウクライナ北部(チェルノーゼム)及び南部(カスタノーゼム)の自然草地2地点における、全土壌呼吸速度(WR)及び微生物呼吸速度(MR)を推定した結果、本モデルは、ユーラシアステップにおける自然草地の炭素動態を再現することができたと結論付けられた。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 石塚 成宏*; 角野 貴信*; 守屋 耕一*; 中西 貴宏
no journal, ,
地球温暖化により、土壌に貯留した炭素の放出の加速が危惧されているが、土壌の炭素貯留メカニズムの解明の遅れにより、その規模やタイミングは不明のままである。われわれは、日本国内の土壌特性や植生が異なる4つの森林サイトで土壌を採取し、化学分画とC同位体分析を組合せた手法により、土壌炭素を滞留時間の異なる炭素プールに分割した。森林サイトごとに、炭素貯留量のみならず、滞留時間の分布が大きく異なっていることを明らかにした。ターンオーバーが比較的長い(100-1000年)炭素の貯留量は、土壌の鉱物学的特性(特にAl-腐植複合体の形成)によって、ターンオーバーが速い(数十年程度)炭素の貯留量は、森林サイトの年間平均気温によって規定されている可能性を見いだし、土壌が将来の温暖化によって異なる応答を示すことを明らかにした。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 石塚 成宏*; 角野 貴信*; 守屋 耕一*; 中西 貴宏
no journal, ,
土壌は陸域生態系における最大の炭素貯蔵庫であり、絶えず大気と炭素の交換を行っているため、将来の気候変化により炭素の発生源・吸収源のどちらにもなりうる。土壌に蓄積する炭素がどのように振舞うかを予測するためには、土壌がどのくらい長く炭素を貯留しているかを定量的に明らかにする必要がある。われわれは、国内の4つの森林サイトから採取した土壌に対して、有機物の分画と放射性炭素分析を行い、土壌炭素の数年から数千年の滞留時間を推定し、土壌ごとに異なる滞留時間分布、すなわち異なる分解性を持つことを定量的に明らかにした。土壌の全炭素貯留量は、滞留時間が100年以上の炭素貯留量と正の相関がある一方、100年未満で代謝回転する炭素との間には相関性がないことを見いだした。この結果は、炭素貯留量が多い土壌が必ずしも高いCO放出ポテンシャルを有しているわけではないことを示唆している。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 石塚 成宏*; 角野 貴信*; 守屋 耕一*; 中西 貴宏
no journal, ,
土壌有機物中の放射性炭素(C)は、放射壊変や過去の大気圏核実験による大気中濃度の増加とその後の減少を反映した分布を示すことから、土壌有機物の滞留時間(分解性の指標)を推定するトレーサーとして有用である。われわれは、国内の植生や土壌特性の異なる森林土壌のC同位体分析を通して土壌有機物の分解性を定量化し、土壌に貯留する炭素が将来の温暖化に伴ってどのように放出されうるかを解明しようと試みている。本発表では、土壌有機物の動態解明におけるCのトレーサー利用例及び得られた結果について紹介する。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 石塚 成宏*; 角野 貴信*; 守屋 耕一; 中西 貴宏
no journal, ,
土壌に有機物として大量に貯留する炭素の、将来の気候・環境変化に伴う応答を正しく予測するために、土壌有機物の分解性と、それを規定するプロセスの解明が強く望まれている。土壌有機物中の放射性炭素(C)は、放射壊変や1950-60年代の大気圏核実験に伴う大気中濃度の変化を反映した分布を示すことから、土壌有機物の分解性を推定するトレーサーとして有用である。われわれは、国内の植生や土壌特性の異なる森林土壌に対して、有機物分画とC同位体分析を行うことで、土壌有機物の分解性を定量化し、土壌ごとに有機炭素の貯留量のみならず、その分解性が異なることを明らかにした。さらに、森林土壌表層における分解性の低い有機炭素の大きな蓄積は、土壌の鉱物学的要因によるものである一方、分解性の高い有機炭素の量はサイトの気候学的要因によって規定されている可能性を示した。