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神長 輝一; 野口 実穂; 成田 あゆみ; 坂本 由佳; 嘉成 由紀子; 横谷 明徳
Radiation Protection Dosimetry, 166(1-4), p.91 - 94, 2015/09
被引用回数:8 パーセンタイル:48.80(Environmental Sciences)To explore radiation effects on the mammalian cell cycle, it would be essential to trace single cells as live cell images observed by a time-lapse imaging technique. HeLa-FUCCI cells are one of useful model cell lines to visualize cell cycle because their nucleus show different colors. We irradiated the cells with X-rays of 5 Gy. The cells were incubated for 48 hr in a small incubator set on a fluorescent microscope to track about 40 cells. Most of the irradiated cells underwent cell division at M phase, and then progressed into G1 phase. However, about a half of the cell population showed a significantly longer period toward cell division, indicating that G2 phase was prolonged (G2 arrest) by irradiation. The elongation of G2 phase was more prominent for irradiation to cells in S/G2 phase than those in G1 phase. The observed cell cycle modification suggests that G2/M checkpoint system control the cycle to ensure repairing DNA damage.
成田 あゆみ; 神長 輝一; 横谷 明徳; 野口 実穂; 小林 克己*; 宇佐美 徳子*; 藤井 健太郎
Radiation Protection Dosimetry, 166(1-4), p.192 - 196, 2015/09
被引用回数:3 パーセンタイル:24.46(Environmental Sciences)動物培養細胞の細胞周期に依存した放射線照射影響に関する知見は、そのほとんどが照射された細胞集団を統計学的手法により解析したものである。本研究は、照射された細胞一つを顕微鏡下で直接追跡することにより、刻々と変化する照射細胞の挙動をリアルタイムで観察する手法を確立することを目的とした。照射細胞には細胞周期が判別できるFUCCI(Fluorescent Ubiquitination-based Cell CycleIndicator)発現HeLa細胞(ヒトがん細胞)を用いた。また、照射には細胞一つ分まで大きさが調整できる放射光X線マイクロビームを利用した。さらに照射した細胞を長時間観察するために、細胞を培養しながら観察可能なタイムラプス顕微鏡を立ち上げ、照射した個々の細胞の分裂の様子を追跡した。その結果、G1期で照射した細胞では周期の遅延が認められなかった。それに対してS/G2期にある細胞に照射を行ったところ、明確な周期遅延が観察された。以上から、顕微鏡下での長時間観察によって、放射線照射された細胞への影響をリアルタイムで観察することができた。
横谷 明徳; 神長 輝一
放射線生物研究, 49(4), p.418 - 431, 2014/12
最近、細胞標識技術の発展に伴う顕微鏡下でのライブセルイメージングにより、細胞の様々な活動が比較的容易に動画像(ムービー)として観察できるようになった。これらの実験により得られた動画像データは、個々の細胞に関する豊富な情報を含む。このような細胞機能に関するダイナミクスは、従来の免疫染色による静止画像データや細胞集団全体から生化学的に抽出された生体分子の平均化された値からは得ることができない。われわれは、細胞周期がライブセルでモニターできるHeLa-Fucci細胞を試料とし、タイムラプス法を用いてX線照射後に個々の細胞の細胞周期を追跡した。その結果、細胞集団は細胞周期が変調する群とほとんど影響を受けない群の2つに分かれる可能性が示された。このデータに対してシステム生物学的な解釈を試み、HeLa細胞の細胞周期制御とG2/Mチェックポイントのシグナル伝達系に内在する、"デジタル"的なスイッチ機構の存在を推定した。
坂本 由佳; 神長 輝一; 嘉成 由紀子; 野口 実穂; 横谷 明徳
Journal of Radiation Research, 55(Suppl.1), p.i120 - i121, 2014/03
In order to examine bystander effects in the 3D cell system, we have developed a FUCCI-HeLa spheroid system. FUCCI (Fluorescent Ubiquitination-based Cell Cycle Indicator) cells show specific colors of cell nuclei depending on a cell cycle. Thus we can easily trace cell cycle modifications by irradiation. We observed bystander cell-cycle delay as preliminary tests using monolayer culture of the HeLa-FUCCI cells. It will be very interesting to examine whether the cell-cycle effect also appears in the 3D cell system exposed to single high LET particles. We have determined suitable conditions for the spheroid culture, such as size of spheroids and methods of stable fixing a spheroid in a dish to perform the microbeam irradiation, and observation of the cell cycles of each cell in a spheroid after irradiation using a time-lapse micro-imaging technique.
嘉成 由紀子; 野口 実穂; 神長 輝一; 坂本 由佳; 横谷 明徳
Journal of Radiation Research, 55(Suppl.1), p.i129 - i130, 2014/03
In this study, we report a new approach of tracing the mitochondrial morphological change of the cells exposed to high LET radiation using a live-cell imaging technique. We used the NMuMG (Normal murine mammary gland)-FUCCI2 cell line. Using the FUCCI2 expressing cells, we can observe red fluorescence in the nuclei of G1 phase cells and green fluorescence in the nuclei of S/G2/M phase cells. We labeled mitochondria by Mitotracker Red. Kinetics of mitochondrial morphology was analyzed by the live-cell imaging technique using a fluorescence microscope. Mitochondrial images were captured for 4 days after irradiation. In a preliminary study, we found that X-ray irradiation of cells caused mitochondrial fragmentation, and proportion of cell population with fragmented mitochondria increased with increasing dose and with time after irradiation. It is demonstrated that the method proposed in this study works successively to trace cytoplasmic effects by high LET irradiation.
神長 輝一; 坂本 由佳; 嘉成 由紀子; 野口 実穂; 横谷 明徳
Journal of Radiation Research, 55(Suppl.1), p.i127 - i128, 2014/03
Fluorescent ubiquitination-based cell cycle indicator (FUCCI) HeLa cells are one of useful model cell lines to visualize a cell-cycle because their nuclei show different colors; orange indicating G1; green indicating S/G2. In order to establish a novel assay system to study cell-cycle modification by high LET irradiation such as ion beams for cancer therapy we have observed time-lapse images of HeLa-FUCCI cells irradiated as a preliminary experiment using conventional X-rays instead of high LET ion beams. The cell-cycle was strongly arrested by irradiation at S/G2 and never progressed to G1. In contrast, cells irradiated at G1 progress to S/G2 with a similar time course as non-irradiated control cells. These results show that single FUCCI cell exposure and live cell imaging are a powerful method to trace the single cell effect of high LET irradiation on the cell-cycle in future.
坂本 由佳; 嘉成 由紀子; 神長 輝一; 野口 実穂; 横谷 明徳
no journal, ,
低線量放射線による生物影響を考える上で、バイスタンダー効果は1つの重要なポイントであり、これまで様々な報告がされている。しかし、それらの研究のほとんどは単層培養の細胞を使用したものであり、細胞間の情報伝達物質も培地を介して移動することが分かっている。だが、実際の生体内は細胞同士が密になって組織を形成しており、その周囲に培地は存在していない。これらの矛盾を解決すべく、本研究ではスフェロイドに対するX線マイクロビーム照射といった新しい実験系を提案する。本研究ではヒトのガン細胞(HeLa-FUCCI)を培養し、直径100-200ミクロンのスフェロイドを作製した。このスフェロイドの中心に対し、KEK・PFにおいて20ミクロンのX線マイクロビームで部分照射を行った。しかし照射後にスフェロイドの経時観察を行おうとすると、その位置が顕微鏡の視野の外に出てしまうことが分かった。これは培養ディッシュの温度ムラや水蒸気の蒸発による対流が原因と考えられる。スフェロイドが一つだけ入るウェルのあるディッシュなど、さらに工夫が必要であることが分かった。
成田 あゆみ; 神長 輝一; 横谷 明徳; 野口 実穂; 小林 克己*; 宇佐美 徳子*; 藤井 健太郎
no journal, ,
ヒト由来の細胞に対して細胞周期に依存した照射影響を明らかにすることを目標とし、我々はこれまでにKEK-PF BL27Bにおいて、マイクロビームで狙い撃ちされた細胞をリアルタイム観察するための実験システムを構築してきた。本研究ではこのシステムを利用したより長時間の経時観察を行い、X線照射された細胞の行く末を追跡した。照射細胞には顕微鏡下で細胞周期が判別できるFUCCI(Fluorescent Ubiquitination-based Cell Cycle Indicator)発現HeLa細胞を用い、任意の周期にある細胞をマイクロビームで狙い撃ちした。その後、48時間の経時観察を行った。その結果、G2期で照射したときには、約60%の細胞がG2期からM期に進行する直前に細胞死に至った。これは損傷を修復するために周期が一時的に停止したものの、修復することができずにアポトーシスしたと考えられる。一方で同じ視野内にある非照射の細胞では、G2期から観察を開始したものに関しては、周期が進行してから細胞死したものの割合が増加した。これは照射細胞からの影響を受け、バイスタンダー効果が現れている可能性がある。以上の結果より、照射・非照射細胞の双方に周期に依る照射影響が現れることがわかった。
神長 輝一; 嘉成 由紀子*; 坂本 由佳*; 野口 実穂; 成田 あゆみ*; 藤井 健太郎; 宇佐美 徳子*; 小林 克己*; 鈴木 啓司*; 横谷 明徳
no journal, ,
We performed selective exposure to HeLa-Fucci cells of a specific cell cycle using synchrotron X-ray microbeam. The results suggested that, not only the irradiated, but also non-irradiated cells surrounding the exposed cells also undergo cell cycle arrest as a consequence of a novel "bystander" effect. When irradiated to spheroids of the HeLa-Fucci cells as a model of 3D cellular tissues, we have succeeded to track the cell cycle modulations in the spheroid using a confocal microscopy. Further we performed sub-cellular irradiation to target a cell nucleus or cytoplasm to look at the effect on mitochondria in human fibroblast cells stained with a specific chemical. Even when the nucleus was irradiated, the potential of mitochondria was enhanced for 12 h. It is inferred that not only DNA damage repair but also certain responses to cellular damage might need excess production of ATP. These clearly show that the live cell imaging appears to be a promising method for single cell tracking.
横谷 明徳; 野口 実穂; 神長 輝一; 坂本 由佳; 嘉成 由紀子; 成田 あゆみ; 藤井 健太郎
no journal, ,
本研究では、Fucci(Fluorescent Ubiquitination-based Cell Cycle Indicator)発現したHeLa細胞に対してX線を照射し、細胞周期への照射の影響を観察した。Fucci発現細胞ではG1あるいはS/G2/M期にある細胞核中にそれぞれ異なる色の蛍光が観測されることから、顕微鏡下で容易に区別できる。培養ディッシュに播種した細胞に、X線照射を行った。照射後細胞ディッシュを蛍光顕微鏡に設置された細胞培養ステージに移し、2448時間15分程度の間隔で画像撮影を行った。得られた画像は、顕微画像タイムラプス解析ソフトで動画像として時系列再構築を行った。20Gyの照射により次第に緑色の細胞が増加し、10時間程度でほとんどが緑色の細胞になった。また、ディッシュの半分だけ照射した場合でも、非照射部位の細胞のほとんどが緑色になった。これらの結果は、照射により細胞周期がG2で顕著に休止し、通常8時間程度続くG2期間がほぼ倍になることをしめしている。さらにこの細胞周期遅延効果が非照射部位にも及ぶことから、新しいバイスタンダー効果がある可能性を見いだした。
成田 あゆみ; 神長 輝一; 野口 実穂; 横谷 明徳; 小林 克己*; 宇佐美 徳子*; 藤井 健太郎
no journal, ,
細胞周期に依存した放射線照射影響を観察及び解析するためには、任意の細胞周期にある細胞を選択し、その細胞のみを狙い撃ちすることが必要である。この課題を解決するために、われわれは顕微鏡下で観察するだけで細胞周期が判別できるFUCCI(Fluorescent Ubiquitination-based Cell Cycle Indicator)発現HeLa細胞(ヒトがん細胞)と、細胞一つ分まで大きさが調整できる放射光X線マイクロビームに着目した。さらに照射した細胞を長時間観察するために、細胞を培養しながら観察可能なタイムラプス顕微鏡を立ち上げ、照射した個々の細胞の分裂の様子を追跡した。その結果、G1期で照射した細胞では周期の遅延が認められなかった。それに対してS/G2期にある細胞に照射を行ったところ、明確な周期遅延が観察された。以上から、顕微鏡下での長時間観察によって、放射線照射された細胞への影響をリアルタイムで観察することができた。
神長 輝一; 成田 あゆみ; 野口 実穂; 横谷 明徳
no journal, ,
細胞に放射線が照射されると細胞周期がある個所で停止並びに遅延を起こす現象は以前から報告されてきた。しかし、これらの研究の多くはフローサイトメトリーなどの細胞集団を対象とした解析によるものだった。今回我々は、Fucci細胞を蛍光顕微鏡下で培養しながら個々の細胞を長時間経時観察することで細胞周期変化の解析を行った。その結果、比較的高い線量(5Gy)での細胞周期遅延時間は、約3時間程度であった。さらに、バイスタンダー効果により、非照射細胞にも周期変化が誘発されることも見出した。バイスタンダー効果による細胞周期への影響はこれまで研究例がなく、本研究が初めてである。今後は、バイスタンダー効果の伝達経路として考えられているギャップジャンクション並びに、培地中に放出されるバイスタンダー因子のキレート剤を用いてそれぞれの経路を遮断することで、各経路の細胞周期変化への寄与を突き止める予定である。
成田 あゆみ; 神長 輝一; 野口 実穂; 横谷 明徳; 小林 克己*; 宇佐美 徳子*; 藤井 健太郎
no journal, ,
細胞周期に依存した放射線照射影響を詳細に解析するために、これまでに我々はFUCCI(Fluorescent Ubiquitination-based Cell CycleIndicator)発現細胞、放射光X線マイクロビーム、そしてタイムラプス顕微システムを組み合わせた新規実験手法を確立してきた。その結果、照射した細胞周期によって現れる影響の違いをリアルタイムで観察することに成功した。本研究ではさらに詳細な照射影響を観察するために、照射後により長時間の経時観察を行うことで照射された個々の細胞の挙動を検証した。また照射された細胞だけでなく、照射細胞と同一視野内にある非照射細胞への影響も比較した。照射細胞に関してG1期で照射した場合には、照射後S期からG2期に進行するものの、そこからM期へは進行しなかった。G2期で照射すると60%の細胞がG1期に進行することなく細胞死した。一方で非照射細胞では、G1期から観察を始めた場合には照射細胞とほぼ同じ傾向を示した。それに対してG2期から観察を始めたときには細胞周期がM期からG1期に進行した。しかしながらG1期に進行したあとで細胞死する個体が照射細胞に比べて6倍になった。これは照射細胞から受けるバイスタンダー効果であると推測される。以上より、照射細胞だけでなく非照射細胞においても周期によって異なる現象が現れたことから、非照射細胞への影響も周期に依存性があることが明らかとなった。
神長 輝一; 嘉成 由紀子; 坂本 由佳; 成田 あゆみ; 宇佐美 徳子*; 小林 克己*; 野口 実穂; 横谷 明徳
no journal, ,
放射線の曝露を受けていない細胞(バイスタンダー細胞)が放射線の曝露を受けた細胞からのシグナルを受けることで何らかの影響が発現する現象はバイスタンダー効果と呼ばれ、特に非照射細胞が細胞集団中で多数を占める低線量放射線照射下における影響を考える上で重要なカギとなる。これまでにバイスタンダー細胞に、微小核形成やアポトーシスなどが現れることが知られている。本研究では、バイスタンダー効果が細胞周期に与える影響を明らかにすることを目的とした。コロニー内の任意の細胞に放射光X線マイクロビームを照射した後、全自動タイムラプスイメージングを行える実験系を確立し、細胞分裂を経た細胞にも細胞周期に変異があるかどうかを調べた。その結果、バイスタンダー細胞にも明らかに細胞分裂周期の変異が観測された。非照射細胞が照射細胞からの何らかのシグナルを受け取ることで、自らの細胞周期を制御するための反応経路があることが推定される。
嘉成 由紀子; 神長 輝一; 成田 あゆみ; 宇佐美 徳子*; 鈴木 啓司*; 横谷 明徳
no journal, ,
本研究では、細胞内のエネルギー分子(ATP)生産を担うミトコンドリアの活性が、放射線照射によりどのように影響を受けるかを明らかにすることを目的とした。ヒト正常細胞(BJ1-hTERT)に対して、高エネルギー加速器研究機構フォトンファトリーから得られるX線マイクロビームを照射した後に継時観察し、細胞核のみ・細胞質のみに照射した場合を比較した。細胞は、観察の直前にミトコンドリアを特異的に標識するJC-1試薬で染色した。この試薬はミトコンドリアの膜電位が高いと赤色蛍光のドットとして観測され、また低いと緑色蛍光が観測される特徴がある。その結果、細胞核照射群は細胞質照射群よりも細胞あたりのJC-1赤色発光のドット数が、照射後12時間程度まで優位に増加することが明らかになった。核内で損傷したDNAの修復にATPが用いられるために、活性が亢進したと推測される。
嘉成 由紀子; 神長 輝一; 坂本 由佳; 成田 あゆみ; 野口 実穂; 宇佐美 徳子*; 小林 克己*; 鈴木 啓司*; 横谷 明徳; 藤井 健太郎
no journal, ,
ミトコンドリアは独自のDNAを持ち、生体内エネルギー分子であるATPの生産を担うため、細胞に欠かせない重要な器官である。我々は、細胞の部分照射によるミトコンドリアへの放射線影響を明らかにすることを目的とした。細胞中の特定部位に対する部分照射を行うため、放射光X線マイクロビームを利用した。ヒト線維芽細胞(BJ1 hTERT Fucci)に対し、細胞核照射、細胞質照射及び細胞全体照射の3パターンで照射をし、ミトコンドリアを経時観察した。ミトコンドリアは膜電位に依存して蛍光発色が緑と赤を示すJC-1試薬を用いた。その結果、赤色蛍光で確認される高膜電位のミトコンドリアの面積は、どの照射パターンでも照射直後に大きな値を示し、その後は減少した。細胞核照射では6時間後、細胞質照射では12時間後、細胞全体照射では2時間後まで減少し、その後は増加を示した。細胞質照射後24時間での面積は他の2つの照射パターンと比較し、優位な増加が見られた。以上の結果から、照射部位に依存してミトコンドリアの膜電位の影響が異なる可能性が定性的に示唆された。
野口 実穂; 嘉成 由紀子; 神長 輝一; 坂本 由佳; 成田 あゆみ; 藤井 健太郎; 横谷 明徳
no journal, ,
放射線による細胞影響は核DNAへの損傷を起点として多くの研究が行われているが、低線量放射線被ばくなど細胞質のみがヒットを受けた場合の細胞影響を明らかにすることも必要不可欠である。ミトコンドリアは細胞質に広範囲に存在する細胞小器官であり、独自の遺伝子を持ち、エネルギー産生、細胞死の調節など細胞の重要な機能を担う。そこで、本研究では細胞質の中でも特にミトコンドリアに注目し、ミトコンドリアに対する放射線の影響を明らかにすることを目的とした。本研究では、ミトコンドリアをMitotracker Red、核をHoechst33342で染色し、X線照射後4日間経時的にミトコンドリアの形態変化を観察した。また細胞周期はNMuMG-Fucci2細胞を用い、核の色素変化によりその周期を同定した。その結果、ミトコンドリアは線量の増加ともに細かく断片化され、断片化ミトコンドリアを持つ細胞数は照射後3日目がピークになり、その後は減少することが明らかになった。また、8Gy照射により8割以上の細胞はG1期で細胞周期を停止することも明らかになった。本発表では放射線照射後のミトコンドリアの形態変化と細胞周期変化との関係性について報告する。
神長 輝一; 成田 あゆみ; 野口 実穂; 横谷 明徳
no journal, ,
細胞に放射線が照射されると細胞周期がある個所では停止並びに遅延を起こす現象は以前から報告されてきた。しかし、これらの研究の多くはフローサイトメトリーなどの細胞集団を対象とした解析によるものだった。今回我々は、Fucci細胞を蛍光顕微鏡下で培養しながら個々の細胞を長時間経過観察することで細胞周期変化の解析を行った。その結果、比較的高い線量(5Gy)での細胞周期遅延時間は、約3時間程度であった。さらに、バイスタンダー効果により、非照射細胞にも周期変化が誘発されることも見出した。バイスタンダー効果による細胞周期への影響はこれまで研究例がなく、本研究が初めてである。今後は、バイスタンダー効果の伝達経路として考えられているギャップジャンクション並びに、培地中に放出されるバイスタンダー因子のキレート剤を用いてそれぞれの経路を遮断することで、各経路の細胞周期変化への寄与を突き止める予定である。
神長 輝一; 嘉成 由紀子; 坂本 由佳; 成田 あゆみ; 宇佐美 徳子*; 小林 克己*; 野口 実穂; 横谷 明徳
no journal, ,
X線マイクロビームを特定の細胞に狙い撃ちした際に、照射細胞及びその周囲の非照射細胞に生じる細胞分裂の様子の変化を、ライブセルイメージングにより追跡した。X線マイクロビームの照射は、高エネルギー加速器研究機構・フォトンファクトリーのBL27Bの顕微照射システムを利用した。従来の顕微照射システムでは、長時間に渡る細胞の継時観察は困難である。そこで照射顕微ステージとは別に、培養器を備えた観察用顕微システムを導入し、照射細胞の位置座標をこの二つの顕微システム間で校正するため特殊なパターンが印字されたポリエチレンフィルムを製作するなど、タイムラプス細胞観察が行える新たな実験システムを工夫した。細胞周期の遅延や分裂後の娘細胞同士の融合が、照射細胞の周囲の非照射細胞(バイスタンダー細胞)にも伝搬するか否かに着目し、20分間隔で48時間にわたり連続して取得した画像データの解析を行った。その結果、マイクロコロニー中の細胞を一つだけ選んで照射しても、周囲の細胞同士の融合現象は観察されなかった。しかし、アポトーシス等の細胞死は、照射細胞だけではなくある頻度でバイスタンダー細胞にも起る可能性が示された。
横谷 明徳; 成田 あゆみ; 神長 輝一; 嘉成 由紀子; 坂本 由佳; 野口 実穂; 宇佐美 徳子*; 小林 克己*; 藤井 健太郎; 鈴木 啓司*
no journal, ,
放射線照射後の細胞をライブイメージング法により追跡して調べることで、これまで細胞集団の平均値としてしか得られなかった放射線影響を個々の細胞の運命として解析するこが可能になった。このような時間軸に対する一連の細胞のダイナミクス(動的)データは、将来のシステムズバイオロジーへの展開・拡張に必須である。本講演では照射による細胞周期の遅延やミトコンドリアの動態を指標として、KEK-PFにおける軟X線マイクロビーム照射した幾つかのFucci細胞に対するライブイメージングにより得た結果を紹介する。さらに、通常の培養ディッシュの単層培養細胞に比べより生体に近い細胞間相互作用を維持していると期待される3次元培養したHeLa-Fucci細胞のスフェロイドを作製し、これに対してマイクロビームを部分照射することでより生体組織に近い環境におけるバイスタンダー効果の観察も試みている。熱力学的には"非平衡状態"にある相互にフィードバックをかけ合う多数のストレス応答の集合として細胞集団システムを捉え、放射線に対する頑強性(ロバストネス)の予測やこれを支える遺伝子スイッチングのメカニズムについての知見が得られると期待される。